[救急]の記事一覧

2009年03月20日

医療アラームを聞き逃し、患者が死亡する事故が多発している

医療アラーム「聞き逃し」多発、救命遅れで死亡30件

 入院患者の容体急変を知らせる医療アラームを病院側が聞き逃し、その後に患者が死亡したケースが2000年以降、少なくとも30件に上ることが、日本看護協会(久常節子会長)の調査でわかった。

 警告が出る設定などに問題があり、異常がないのに鳴る「無駄鳴り」が頻繁に起き、警告の聞き逃しにつながっているとして、協会は月内にも対策をまとめ、国に提言する。

 調査は、アラーム聞き逃しが医療事故や訴訟などとなった病院から聞き取りしたり、報告書を入手するなどして行った。患者死亡の30件は、急変を見逃して救命が遅れたといずれも病院が認めているものだが、死亡との因果関係は判断していない。

 横浜市立脳血管医療センターでは07年7月、50歳代の男性患者の不整脈をアラームが知らせたが、看護師3人が約30分間、気づかなかった。男性は心肺停止となっており、9日後に死亡した。同じ病棟では患者8人がアラームをつけ、1日6000回警告音が鳴っていた

 群馬県の公立病院では06年3月、70歳代の男性患者の心停止を知らせる警告音に対応が28分遅れ、約5時間20分後に死亡した。看護師3人が「無駄鳴り」と思い込んでいた。病棟では患者30人のアラームが絶えず鳴っている状況だった。

 アラームは人手不足の医療現場で、患者の急変を知るために広く使われている。患者に1日着けると原則1500円の診療報酬が出る。調査を担当した永池京子常任理事は、「装着の必要性や異常を知らせる設定値をよく考えないまま着けておくという医師も多い。このため『無駄鳴り』が増え、看護師が鈍感になり、本当の警告音を聞き逃すことにつながっている」と指摘している。

 協会では、「アラームの聞き逃しが看護師の不注意や怠慢のように言われてきた。調査結果は氷山の一角で国を挙げた取り組みが必要」と対策を提言する。提言は、〈1〉医療機器取り扱いの専門職である臨床工学技士(ME)の増員〈2〉医療の質を重視した診療報酬への見直し〈3〉看護師の医療機器に関する教育〈4〉聞き逃し事故の情報を共有するシステムの構築――を提言する。

 厚生労働省は「協会の検討結果を受け、対応を考えたい」としている。



 難しい問題です。たしかに病棟においてのアラームの無駄鳴りは多いといえば多いです。アラームが鳴ったらすぐに何かしなければならないような緊急事態というわけでもありませんからね。

 特に緊急性の高い異常の場合のアラーム音を別のものに変える、などの工夫が必要かもしれません。1日中頻繁に鳴り続けているようだとこういう事故は防ぎにくいですから。

関連
医学処:心停止のアラームに誰も気づかず死亡
医学処:心停止後120分経ってから奇跡的に生還。
posted by さじ at 04:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

通路側の席に座った方がエコノミークラス症候群になりにくい

「エコノミークラス症候群」なりにくいのは通路側=米研究

 米国の研究チームは、飛行機内では通路側の席に座った方が「エコノミークラス症候群」になりにくいと報告した。また、たとえビジネスクラスを選んでも変わりはないという。

 レイヒー・クリニック医療センターのマーク・ジャンドロー氏が率いた研究チームが、英医学誌ランセットで論文を発表した。

 同チームによると、エコノミークラス症候群として知られる深部静脈血栓症を発症したケースの75%が、十分に動いていなかったことが原因。そのうちのほとんどが、より動きが制限されがちな通路側でない席に座っていた乗客だったという



 動きにくいですもんね、窓側。飛行機とかだとオシッコに行きにくかったりしますし。

 長時間の移動の場合は1,2時間ごとに席を立ってトイレに行ったりするといいと思います。血栓を作らないように脚をうごかすことが大事です。

関連
医学処:4時間以上動かない姿勢で、血栓ができる可能性が通常の約2倍に高まる
医学処:飛行機内のエコノミークラス症候群は女性に集中している
医学処:大気汚染物質でエコノミークラス症候群に。
posted by さじ at 03:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

2009年03月18日

山梨県で救急隊が患者を誤送する事故が発生。

救急隊誤送、患者は死亡…山梨

 山梨県甲斐市の甲府地区消防本部西消防署(金丸俊明署長)の救急隊が、心肺停止状態の甲府市内の男性患者(60)を、受け入れ要請していた病院とは別の病院に誤って搬送し、約10分遅れで受け入れ要請した病院に転送していたことが分かった。

 男性は転送先で死亡が確認された。誤送先の病院には受け入れを要請しておらず、同本部などで死亡との因果関係や転送判断について調べている。同署は男性の家族に謝罪した。

 西消防署の発表によると、7日午後8時1分に男性の家族から119番があった。男性のかかりつけ医がいる山梨大付属病院(山梨県中央市)が受け入れを承諾したが、隊長は運転手に搬送先を伝えず、運転手は心肺停止患者を運ぶことの多い県立中央病院(甲府市)に向かった。救命措置をしていた隊長は到着後、誤りに気付き、約7キロ離れた山梨大付属病院に搬送し直した。その結果、同病院に直接行くより約10分遅れた。

 県立中央病院に受け入れ要請をしなかったことについて、西消防署の乙黒広道副署長は「隊長は『頭が真っ白だった』とする一方、山梨大付属病院に搬送する方が早いと考えたと説明している」とした。



 慣れのようなものでしょうかね。忙しい救急隊からするとまぁこのような事故が起こってしまう状況も分からんでもないですが。

 こういう事故を0にするためにも、確実に搬送先をすぐにダブルチェックできる工夫があるといいですね。運転席に表示するとか。
posted by さじ at 13:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

2009年02月14日

全国で献血者が減少する中、秋葉原の献血ルームが盛況。

「アキバ献血ルーム」が盛況

 献血者数は近年、全国的に減少が続き、特に冬場は落ち込む

 そんな中、東京・千代田区のJR秋葉原駅近くにある「アキバ献血ルーム」が盛況だ。開所以来の3年間で、献血者数を1・5倍に伸ばす勢い。アキバの街に足しげく通う男性たちが熱心な「リピーター」となり、血液の需要を支えている。

 秋葉原電気街の中心部に立つオフィスビルの1階。木目調のテーブルと約30席のいすが並ぶ待合室は週末、献血を待つ人で満席になる。本棚はアキバらしく漫画本約800冊でぎっしり。これほどの数になるのは、献血者自身が寄贈してくれるからという

 先月下旬、土曜日。漫画を開いて順番を待っていた千葉県船橋市の新聞販売店長、佐藤智一さん(29)は「ゲームを買うついでによく寄るんです」と笑顔。献血歴16回のうち13回がアキバルームでの献血だった。

 同ルームが開所したのは2005年6月。「すべてはあれから始まった」と東京都赤十字血液センターの矢沢幸雄広報係長(50)は振り返る。06年3月の1か月間、ルームの宣伝のため、近くのフットケアサロンの女性に来てもらい、献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ

 日本赤十字社本社には「品位がない」と不評の声もあったが、反響は大きく、ネットで知った男性たちが有志を募り、約60人がいっぺんにやってきたことも。メイドのサービスはその時だけだったが、今も「メイドさんは?」と訪ねて来る人がいるという。

 他の献血ルームでも手相やタロット占い、メンタルセラピーなどの無料イベントを行い、献血者を募っているが、アキバでは月1回、手相占いをするだけ。それでも、05年度に約2万2100人だった献血者は、06年度約3万人、07年度約3万4600人と増加。最近ではますます勢いがつき、昨年夏には採血ベッドと問診室を増設したほどだ

 特徴は男性の比率の高さ。日赤によると、都内の献血者の男女比は6対4ほどで推移しているが、アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。200と400ミリ・リットルのうち、400を選ぶ人が91%(07年)を占め、都内平均を8ポイントも上回っている。買い物や旅行のついでに立ち寄る人が多く、献血者の住所は北海道から沖縄まで。全国でも著名な血液センターになった。

 2か月に1度、買い物に来る度に立ち寄るという群馬県太田市の男性会社員土岐操さん(35)は「人とかかわるのは苦手だけど、献血なら深くかかわらなくても社会貢献できるから」。週末ごとに開かれる声優やアイドルらの無料ライブを見に来る東京都江戸川区の男性会社員(29)は「午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。寝ているだけで良いことをした気分になれる」と話した。



 前回行ったキャンペーンというのはこちらですね。懐かしいなぁ

 医学処:「ご主人様、献血お疲れ様でした。」in秋葉原

 いやしかし、こうやって人を集めることができているのは素晴らしい。その後同様のキャンペーンを継続せずとも、多くの人をひきつけることに成功しております。

 献血者自身による800冊の漫画本というのもすごいですね。普通は2,30冊ぐらいしか置いていないのに。飲み物も飲み放題だし、漫画喫茶のようです。

関連
医学処:1年間の献血者数が初めて500万人を下回る。
医学処:献血に行こう!Part1 献血を不安に思っている人へ送る体験レポート
医学処:献血に行こう!Part2 献血に関する知識を身につけよう。
医学処:献血に行こう!Part3 献血後のお楽しみ、おみやげの詳細
医学処:献血に行こう!Part4 献血後に届く血液検査結果について
医学処:659回目の献血を行った熊本市の本松さん
posted by さじ at 13:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

2009年02月07日

鳥取大学医学部付属病院の救急専門医が全員退職する。

救急科専門医、全員退職へ 鳥大病院救急センター

 鳥取大学医学部付属病院(鳥取県米子市西町、豊島良太院長)は四日、救命救急センターの八木啓一センター長(54)ら救急科専門医四人全員が三月末で退職すると発表した。八木センター長は人員体制や設備の不備などを挙げて「救急に夢が持てなくなった」と理由を説明。同病院は四月以降のセンターの運営に支障が出ないよう後任の医師の確保を急いでいる。

 退職するのは、センター開設時からセンター長を務める八木教授と准教授ら四人。センターは現在、他診療科の常勤医師三人の応援を得て運営している。

 八木教授は退職理由について「魅力ある救急ができていない現状では、若い医師を引き止められない。夢が持てなくなった」と語り、「スタッフと設備の充実度は二、三十点。理想を言えば二十人くらいほしい」と指摘した。

 さらに「救急医を時間外の番人としか思っていない人がたくさんいる。プライドを踏みにじられるような状況が続いてきた」と悔しさをにじませた。

 後任教授は通常は立候補形式で選ばれるが、緊急事態に配慮し、病院側が指定した候補者を学内の選考委員会で審査して選ぶ。ほかのスタッフは公募するという。豊島院長は「既に二人の目星はついており、確保できる見通しはある」としている。また、三、四年以内にセンターを拡大する計画も明らかにした。

 センターは二〇〇四年十月、心肺停止など重篤患者を受け入れる三次救急医療機関として、県と県西部の市町村の支援を受けて設置。年間約九百人の患者を受け入れている。



 うーむ、気持ちは分かるが無責任な気も?いやでも行動にうつさなければ何も変わらないわけですからね。おそらく救急医は今まで病院側に改善を要求してきたのでしょう。しかし実際聞き入れられず、思わずカッとなって行動してしまったのか。

 鳥取の人たちはどうするんでしょうね。三次救急が出来なくなるというか、大学病院の救急専門医が全員退職というのは大学側としても致命的。

 逆に大きすぎる病院だと、救急がやりづらいというのはありますけどね。たとえ救急車で来ても、その疾患に準じた当直医がいるわけですから、確かに時間外の番人のようになってしまっているケースも多いのではないかと思います。市中病院などですと全部やってしまうので救急医としてのやりがいを感じるのかもしれません。

 あとはスタッフか。そこまで救急に割けられないというのもあるのかもしれませんが…。大学病院は「万が一」に備えて万全の体制をとっているからこそ、最後の砦としての存在価値があると思うのですが・・・。

 苦しい状況でもあえて現在の職を全うし救命をやっている先生方は、尊敬できると思います。さじは大学病院の救命医を応援しております。
posted by さじ at 16:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

チェックリストを用いて外科手術の合併症を減らそう。

チェックリストで外科手術後の合併症が減少、生存率が向上

 手術室で簡単なチェックリストを用いることにより、外科手術による合併症が減少し、生存率が上がることが報告された。世界では年間2億3,000万件(米国内では6,000万件)もの大きな手術が実施されており、米国人は生涯に平均9回の外科的処置を受けていることからも、「外科手術の安全性はいまや大きな公衆衛生問題となっている」と、研究を率いた米ハーバード大学(ボストン)公衆衛生学部准教授のAtul Gawande博士は述べている。

 Gawande氏らは、手術の安全性を高めるため、航空機のパイロットが離着陸時に用いるのと同様な、声に出して読み上げる1ページのチェックリストを開発した。このリストは、「タイムアウト(timeouts)」と呼ばれる時間帯(麻酔開始前、最初の切開の前、患者を手術室から搬出する前)に、手術室の全スタッフに患者の重要な情報を確実に伝えるように作られたもの。最初の切開の前に必ず抗生物質を投与すること、手術室の全スタッフが互いの名前を知っていること、予想される失血量や手術の所要時間についてチームが簡単な説明を受けていることなどを確認する項目がある。

 チェックリストの有効性を検証するため、Gawande氏らは患者7,688人(チェックリスト使用前3,733人、使用開始後3,955人)のデータを集めた。1年間の研究の結果、チェックリストの使用により、手術による主な合併症の発生率は11%から7%へと3分の1以上減少。さらに、死亡率は1.5%から0.8%へと40%以上減少することがわかったという。

 このチェックリストはシアトル、トロント(カナダ)、ロンドン(英国)、オークランド(ニュージーランド)、アンマン(ヨルダン)、ニューデリー(インド)、マニラ(フィリピン)およびイファカラ(タンザニア)で使用され、ほぼ同程度の死亡および合併症の減少が認められた。現在、米国ではワシントン、ノースカロライナ、南カリフォルニア、インディアナおよびニューヨークの5州の病院協会でこのリストが採用されており、英国、フィリピン、アイルランドおよびヨルダンでも全国的に採用される予定だという。

 手術部位の左右の間違いなどの手術ミスについて、メディケア(米国の高齢者医療保険)が払い戻しの対象外とするとの見解を示したことから、米国では外科手術に「タイムアウト」の導入が義務付けられたという。「当初は少し子どもじみているように思われたが、今では広く受け入れられるようになった。航空機のパイロットにもチェックリストがあるように、このリストが避けられるミスを減らすのに有用であることに疑問はない」と同氏は述べている。この報告は、米医学誌「New England Journal of Medicine」オンライン版に1月14日掲載された。



 これは日本でも行うべき内容ですね。

 部位の確認などは確実にしているでしょうけれど、手術にかかわるスタッフ全員で術前に患者情報などについて確認しあうことは大事です。

 こういう地道な作業を行うことで、事故も減るんですよねぇ。やはり最後は手間を惜しまず確認することが重要と。

関連
医学処:多汗症の交感神経切断術には合併症などのリスクが多い。
医学処:歯科インプラント手術で、術中に大量出血し死亡する。
医学処:三井記念病院の麻酔研修事故、指導医らを告訴する方針へ
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2009年01月25日

一般市民がAEDで救命させた人の一ヶ月生存率は42.5%

AED:1カ月後の生存率42.5%

 心肺停止状態となった際に一般市民からAED(自動体外式除細動器)で救命措置を受けた人の1カ月後の生存率が07年、42.5%に上ったことが22日、総務省消防庁の調査で分かった。06年は33%だった。AEDによる救命措置が実施されなかった場合と比べ生存率は4倍超で、市民からAED措置を受けた人の数も06年の144人から07年は287人とほぼ倍増した。総務省消防庁は「一般市民の迅速な救命手当てが非常に重要だと明らかになった」と分析する。

 AEDは心臓が止まった人に電気ショックを与えて蘇生させる機器。04年に市民の使用が認められ、駅や空港など公共施設中心に07年末現在、全国で約13万台設置されている。

 調査結果によると、07年に市民の目の前で心肺停止状態となりAEDの措置を受けた287人のうち、1カ月後も生存していたのは122人(42.5%)で、うち102人(35.5%)は日常生活をほぼ支障なく送れるまで回復した。一方、AED措置を受けなかった人の1カ月後生存率は9.7%だった。



 すごい救命率。まさかこんなにとは。

 全国的にAEDが配備されるようになり、どこでも見られることが出来るようになりました。大きな施設にいくと大抵、AEDがどこにあるかを記してありますからね。

 その費用も全く無駄ではなく、AEDによって助けられた人は2007年だけで122人。そのうち102人もの人が日常生活に復帰できたというのですから。

関連
医学処:一般人がAEDを使う際にためらいが生じる可能性も
医学処:全国の学校の25%に、AEDを設置。
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2009年01月13日

現状をみて、短期的な医師不足の応急処置は「集約化」すること。

「集約化」で医療資源の有効活用と過重労働の軽減を

江原朗さん(北大大学院医学研究科客員研究員)

 「医師不足を根本的、長期的に解決するには医師の絶対数を増やすしかないが、短期・中期的な応急措置としては“集約化”が有効だ」―。

 こう話すのは、北大大学院医学研究科客員研究員で小児科医の江原朗さん。医師は「不足」しているのではなく「偏在」しているだけと言い続けてきた厚生労働省も、昨年2月の政府答弁書で「医師不足」を認めた。さらに昨年は多くのメディアで、医師不足による救急患者の受け入れ不能、診療科や病院の閉鎖、医師の過重労働などの問題も取り上げられた。集約化が実現することによって、医師不足はどの程度解消できるのか。そして、地域医療はどう変わるのか―。江原さんに聞いた。

― 江原先生が考えていらっしゃる“集約化”について、具体的に聞かせてください。

 救急患者の受け入れ不能が各地で発生し、医療提供体制の不備が社会問題になっていますが、これは「中途半端な規模の病院がたくさんあるのが原因だ」と指摘する声も少なくありません。医療資源を地域の拠点病院一か所に集めれば、これらの問題も解消できます。一般的に、病院は集約化が進んでいる方が、スケールメリットによる資材調達費用の軽減など、経営環境においても改善が見られるといわれています。英国やカナダなど海外でも集約化と機能分担が進んでおり、医療資源が効率的に使われています。

 厚生科学研究費補助金(医療技術評価総合研究事業)の2001年度総括研究報告書(主任研究者=田中哲郎・国立公衛生院母子保健学部長)によると、夜間の救急患者の5割は小児です。ところが、それを診察する小児科医の数は全く足りていません。06年の時点で、全国の医師数約25万人のうち小児科医はたったの1.4万人(5.6%)。勤務医数で見ると、16万8327人のうち8228人(4.9%)しかいないのです。また、産科領域でも、産婦人科勤務医5361人、産科勤務医322人と少ない状況です。

 しかも、体力的に元気な20代後半の医師が増えていないのです。20代後半の小児科医の数は、1996年は1522人、2004年は1519人と、ほとんど変わっていません。産科と産婦人科の勤務医は、1070人から837人と減少しています。

 若い医師が増えないので、小児科医の高齢化が進んでいます。小児科医の平均年齢は、1982年は42.4歳、92年は44.5歳、2006年は49.0歳と上がる一方です。また、団塊世代の勤務医の定年退職もさらに続くので、小児科医不足はさらに深刻なものになります。医師数を大幅に増やす政策と集約化を同時に、しかも早急に進めなければ、各地で「無専門医地区」が発生してしまいます。

 05年12月、厚生労働省、文部科学省、総務省が「小児科・産科における医療資源の重点化・集約化について」というタイトルの通達を各都道府県に出し、多くの都道府県は集約化に向けて医療対策協議会を立ち上げています。また、日本小児科学会も、二次医療圏を基本的な単位として地域小児科センターを整備し、集約化・重点化した上で、24時間365日体制の小児科医療を提供しようと提言しています。この提言では、「入院機能の集約化と外来機能の継続」をうたっており、「時間外・休日の救急外来や入院機能は集約化された施設が行うが、日中の外来診療は各地の病院小児科がこれまで通り実施する」としています。

―勤務医の過重労働問題も「集約化」である程度改善できますか。

 過重労働に苦しむ医師たちと比較的ゆとりのある医師たちが、地域の拠点病院で一緒に診療を行えば、労働時間も平均化され、より効率的な医療サービスが提供できます。

 医師の勤務時間を法定労働時間(週40時間)に収めた上で、24時間診療体制をつくるとなると、交代制にして医師を1人常駐させるだけでも、4.2人以上必要ということになります(168時間/40時間=4.2)。実際には最低7、8人の医師が勤務していなければ、各診療科の専門医による24時間365日体制の医療は提供できないということになります。現在、病院当たりの小児科医数は2人強。従って、3つ以上の病院の小児科を1つにするくらいの思い切った重点化が必要になります。

 逆に言えば、現在の医療機関ごとの小児科医数では、24時間体制の診療は不可能です。すべての二次医療圏で小児科医の数が10人以上(勤務医・開業医の合計)いるのは、04年の時点で、栃木、茨城、岐阜、大阪、兵庫、鳥取、愛媛の7府県だけなのです。

―NICU(新生児集中治療管理室)はどこも満床だといわれていますが、この問題も集約化で解決できますか。

 周産期の領域では、拠点病院への重点化と機能分担がある程度進んでいます。NICUを増やすためには、新しいポストと予算を用意して、周産期に携わる医師・看護師を増やす必要があります。

―「集約化を進めると、近所の病院がなくなって通院が不便になる」という声も出てくると思いますが。

 小児救急医療の受診者は軽症患者が多く、時間外・休日の受診数は小児1人当たり年間1回程度です。また、入院のために二次搬送となる患者は受診者の5%前後にすぎません。従って、拠点病院から遠く離れた地域では、小児科医以外の医師がまず応急措置を行い、必要があれば拠点病院に搬送することで、対処は十分可能だと思われます。

 地域医療の衰退を懸念する声もありますが、高速道路など交通網の整備により、地方から中核病院へのアクセスは以前と比べるとかなり改善されています。受け入れてくれるかどうか分からない病院が近所に何か所もあるより、ちょっと遠くても「24時間365日、確実に受け入れてくれる病院」が一つある方が、患者にとっても医師にとってもメリットが大きいでしょう

 北海道の「小児科医療の重点化計画」で提示された小児科の重点化施設から、15歳未満の住民の居住市町村までの距離を測定すると、約9割の人が50キロ以内。車を使えば1時間以内に到着できる範囲に住んでいるのです。一番大事なことは、「いつでも必ず受け入れてくれること」だと思います。

 もちろん、過疎地域の医療をなくしてはいけません。こうした地域にはプライマリーケアに強い医師を招聘したり、交通網を整備したりする必要があるでしょう。クマしか歩かないといわれている高速道路でも、地域医療においては重要なインフラなのです。



 うーむ、そのとおりですねぇ。

 今の現状、つまり医療費もそこまで変わらずに、小児救急医療の質を日本全体で保つためには、結局中途半端な病院を変えなきゃならんですな。現実的に考えて。

 大病院の医師はどれだけ働かされるんだってくらい働いてますからねぇ。開業医や中堅クラスの病院が果たしてどこまで受け入れるのか、ということが不明瞭なため、結局大病院に送られて負担が増えている、という悪循環が一番困ります。

 そのためにいっそのこと大病院に集約したらどうか、ということなのでしょう。

 別の考えとしては、大病院はそのままに、中堅クラスの病院をグレードアップ、例えば地域の夜間診療を行っていない開業医が今以上に中堅クラスの病院を支えるとか。実際、余裕のある医師ってのはいますからね(小児科に限って言えば、少ないでしょうけれど)

 あと10年、20年すれば多少なりとも医師不足も解消されるかもしれませんが、その10年の間にどれだけ医師の負担が増えるかと思うと、ゾッとします。応急処置的にパワーバランスを偏らせるのは、まぁ正しいかなと。
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2008年12月30日

軽症者の救急患者から時間外加算金を徴収する

救急外来「軽症者に加算金」拡大、夜間・休日医師の負担軽減

 緊急性がないのに夜間・休日に救急外来を受診する軽症患者から、全額自費の時間外加算金を徴収することを地方厚生局に届け出ている病院が、123施設に上ることが読売新聞の調査で分かった。

 制度は1992年に始まったが、最近5年間で76施設も増加。このうち最も多かった理由は軽症患者の抑制で、44施設と6割近くに上る。

 医師不足などで患者の「たらい回し」が相次いでいるほか、軽症患者が安易に病院に行く「コンビニ受診」が問題になっているが、勤務医の負担を軽減するための“自衛策”が広まりつつある。

 時間外加算金は、例外として保険適用外が認められた制度。医療機関は、管轄の地方厚生局に届け出れば、緊急性がないと判断した患者から徴収できる。

 本社が12月1日時点で調べた。過去5年間に届け出た病院の設定額は8400円〜300円。7施設は徴収を始めていない。

 夜間・休日の軽症患者の受け皿としては、地域の夜間診療所や当番医がある。時間外加算金を徴収している複数の病院によると、軽症患者が「病院の方が安心でき、夜だと待ち時間が短い」「当番医は毎日変わるので、分かりにくい」などとして、病院に来るという。

 最高額8400円を徴収しているのは、山形大医学部付属病院(山形市)。今年5月には840人いた時間外の患者は、徴収を始めた6月以降、毎月600人台に減少。一方で、このうち入院した重症患者は、5月の119人から128〜156人と増加した

 同大は「金額は、大学病院としての役割、医師の人件費などを勘案した。入院患者が増えたのは、医師に余力が生まれたからではないか」(医事課)としている。

 静岡県の志太榛原地域では、焼津市立総合病院など4自治体病院が、足並みをそろえて今年4〜6月にかけて導入。いずれの病院も時間外の受診者数が前年比で1〜3割減った。

 患者にすれば時間外加算金など、ない方がいい。それでも徴収する救急病院が急増している背景には、軽症にもかかわらず、夜間・休日に気軽に来院する“コンビニ受診”が、勤務医を疲弊させている事情がある。

 軽症患者が増えると、重症患者への診療に支障をきたしかねない。保険証一枚で自由に診療先を選べる「フリーアクセス」が認められているとはいえ、病院での専門的な治療を求めようとする軽症患者に、病院側が待ったをかけた格好だ。

 徴収を始めた病院では、時間外の患者が減る一方、重症患者が増加するなど、効果が出ている。目立ったトラブルもないが、緊急性や症状の軽重など徴収の条件を巡って、一部の患者から、戸惑いや不満の声も出ているという。



 ニュアンスのすごいと思うところはあれですかね、軽症患者の夜間のお金を多くするというのが、完全に「自制目的」で行われているという点でしょうか。

 利益がどうのこうの、ではなく、料金を高く設定することで「おいおいちょっと考えろよ。」と国民を抑制するためだけに生まれた制度。なんか生まれること自体が情けないっちゃ情けないですけどね。

 日本の医療は世界的に見ても高品質で安い。しかしそれを当たり前のように感じてしまっているのがまた。日本以外の、たとえば東南アジアとか、アフリカとか、アメリカなどに行ってみれば、いかに医療というものが金のかかるものか、わかるでしょう。

関連:「或る病院の一生」から、病院というものについて考える
posted by さじ at 02:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 救急

2008年12月26日

激増する119番対策として、どんな時に119番するのか意識調査を

こんな時119番する?「緊急」の目安、具体例で意識調査

 緊急性の低い119番が激増する中、東京消防庁は近く、一般市民がどんな場合に救急車を呼ぶと考えているのか、初の意識調査に乗り出す。

 来年2月末をめどに結果をまとめ、救急車の不適切な利用を減らす指針を来年中に策定する。

 調査は都民3000人を対象に実施する。「指を切って血がとまらない」「酔って転んでけがをした」「骨折の疑いがある」といった具体的な場面や症状を40項目ほど示し、〈1〉119番する〈2〉自力で病院に行く〈3〉病院に行かない――などの選択肢から回答を求める。

 同庁が管轄する東京都内(一部地域を除く)の救急出動件数は年々増加し、昨年1年間の69万1549件は20年前の約2倍。この間、救急車両の数は1・4倍増にとどまり、要請の増加に体制整備が追いついていないのが現状だ。これは全国的な傾向で、昨年1年間の救急車の平均現場到着時間(7分)、現場到着から病院収容までの時間(26分24秒)はともに過去最悪だった。

 中でも増加が目立つのが、「カッターで指を切った」「風邪気味で頭が痛い」など緊急性が低い通報。結果的に軽症と診断された要請者の割合は、救急業務が消防法で定められた45年前の3割から、昨年は6割にまで増えた

 しかし、消防法が「緊急に搬送する必要がある」とする「緊急」の定義が明確でないため、症状が軽くても搬送せざるを得ないのが実情。同庁は昨年から、明らかな軽症者には搬送辞退を求める取り組みを始めているが、実際に辞退したケースは全体の0・1%未満で、今回の調査で、市民が緊急性の“目安”をどのように考えているのかを把握し、救急車の適正利用を促す仕組み作りを進めたい考えだ。

 同庁救急管理課は「調査結果を生かし、必ずしも救急車が必要ではないケースについて119番以外の搬送形態が可能かどうかを模索したい」としている。



 軽症で呼ぶのは論外ですけれど、あとはもう、夜間まで我慢した挙句、夜間に救急車を呼ぶというパターンですね。

 何故昼間のうちに来なかったのか、というような例は後を絶ちません。日本人特有の「遠慮」やら「我慢」といった風潮が、そうさせるんでしょうけれど、医者にしてみれば昼間に来てもらったほうがどれだけ助かることか。

 まず我慢をしないこと。我慢しても病気は良くなりませんし、かえって状態を悪化させてしまいます。そして、我慢できるなら翌日まで待つこと。全然たいしたことのない症例であっても夜間に来るぐらいなら、翌日受診して下さい。医者が当直でいるとはいえ暇ではありませんし、日中も働いているわけですから、寝たいのは当然のことです。
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2008年12月21日

医療事故実例集を過半数の病院が受け取ることすらしていない

医療安全情報:事故例集 受け取りは全国の病院の半数以下

 医療事故や医療ミスの実例を紹介して再発防止に役立ててもらおうと、厚生労働省所管の財団法人・日本医療機能評価機構が無料配布している「医療安全情報」を、全国約9000病院の過半数が受け取ってないことが分かった年間約1億2000万円の予算が使われている国の医療事故情報収集事業の成果が現場で生かされていない格好で、機構は11日から全病院に改めて情報の活用を要請する。

 国の医療事故収集事業は、04年10月にスタート。責任追及と切り離すために匿名で情報を処理し、厚労省の業務委託を受けた同機構が分析。事故やミスが相次いで注意喚起が必要と思われる事案は、医療安全情報としてファクスで病院に流すことになっており、これまで「手術部位の左右取り違え」「人工呼吸器の回路接続間違い」など24回発行された。

 しかし、機構が過去に2度、全国の病院に文書を送って医療安全情報を受け取るよう要請したが、同意したのは全国9108施設の半数以下の4232施設にとどまる。医療事故や事故手前の「ヒヤリ・ハット事例」の収集に参加している病院も、医療法で報告が義務付けられている大学病院などを除くと約1000施設しかない。

 同機構に集まる事故報告は年間1500件近くに上り、発生原因や当事者の勤務状態なども分析している。医療安全情報の内容について、病院から不満などは寄せられておらず、関心の低さが受け取らない主な理由とみられる

 後信・医療事故防止事業部長は「せっかく集めた実例が不必要なはずはなく、病院は関心も持たずに『事故防止対策を取っている』と言っても説得力がない。医療界の信頼を高めるためにも、せめて情報は受け取ってほしい」と話している。



 よろしくないですなぁ。受け取らなかった病院はリスクマネージャーとかいないんでしょうか。

 むしろこれで受け取った病院には何らかの認定を出せばどうでしょうか。すごく大層な名前の。日本医療事故防止委員会認定とか何とかで。そしたら受け取ってない過半数の病院は認定されない。そうすると患者としてはそんな病院行きたくないですよね。医療事故を起こさないように努力している半数の病院のほうに行きますよね。

 いやー病院によって患者さんの生死が変わるってのは、国民皆保険制度を導入している日本ではあってはならないことです。

関連
医学処:医療の事故防止キャンペーンを開催。
医学処:医療ヒヤリハット、過去最高の20万件を超える。
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2008年12月07日

三井記念病院の麻酔研修事故、指導医らを告訴する方針へ

三井記念病院で麻酔後に死亡、男性遺族が告訴状

 東京・千代田区の三井記念病院で歯科医による外科手術麻酔の研修が不適切な形で行われていた問題で、研修中の歯科医から2006年に全身麻酔を受け、その後死亡した都内の男性(当時73歳)の遺族が3日、同病院の当時の指導医ら4人を業務上過失致死と医師法違反容疑で告訴する告訴状を警視庁に郵送した

 遺族側代理人の弁護士が記者会見して明らかにした。遺族はこの日、厚生労働省の医道審議会医道分科会に対しても、4人の行政処分を申し立てた。

 告訴状によると、当時の指導医らは06年10月、重い腎臓病だった男性に人工透析のための手術を行った際、心機能が低下しているのに全身麻酔を選択するなど術前の評価を十分せず麻酔も歯科医に単独で行わせた。その結果、男性は直後に心停止に陥り、意識不明のまま2か月後に死亡した、としている。

 この問題で同病院の事故調査委員会が今年3月にまとめた報告書は、麻酔と事故の因果関係を明確には認めていない。

 同病院は「現時点で告訴内容を把握していないのでコメントできない」としている。



 人工透析のための手術というと、おそらく腕の手術でしょう。透析の針は太い上に、数多く行わなければいけないため、腕の動脈と静脈を繋げるシャント手術を行います。簡単な手術なのですが、、、それで死亡してしまうとは本人も家族も分からなかったでしょうね。

 その原因が麻酔にあり、麻酔をかけた人が不適切な研修によるものであるとしたら・・・。

関連
医学処:三井記念病院の歯科医による麻酔研修は患者側への説明も嘘ばかり。
医学処:歯科医を対象に、ずさんな麻酔研修を行っていた三井記念病院。
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2008年11月29日

扁桃摘出術後の再手術で、胃内の大量血液を誤嚥して死亡。

医師2人を起訴猶予=患者死亡、「経験不足」−新潟地検支部

 JA新潟厚生連刈羽郡総合病院(柏崎市)で、扁桃摘出手術を受けた男性患者=当時(28)=が死亡した医療事故で、新潟地検長岡支部は28日、業務上過失致死容疑で書類送検された執刀医(40)と麻酔医(31)について、いずれも起訴猶予処分にしたと発表した。

 両医師は2004年3月3日深夜、前日扁桃摘出手術を受けた男性に出血が見られたため、再手術する際、胃の中にたまっていた血液を抜く措置を講じずに全身麻酔をかけ、手術時に逆流した血を誤飲させ男性を死なせたとして、書類送検された。

 地検は執刀医は整形外科、麻酔医は耳鼻咽喉科が専門と指摘。起訴猶予について「胃腔内は空虚だと判断したのも無理からぬことで、経験不足を問うのは酷。遺族との間で示談が成立していることなども踏まえた」と説明している。



 なるほど・・・。んー、経験不足を問うのは酷かー。何で専門外の人がやったんでしょうね。夜間の緊急か何かだったんでしょうか。

 しかし患者さんも28歳ですからね、本人も家族も、まさか死ぬとは思っていなかったでしょう。

 専門でなければ、胃内に大量の血液があって、それが誤嚥(記事中では誤飲となってますけど、誤嚥が正しいのでは)するとは思わなかった、とすると、根本の原因は麻酔科医不足ではないでしょうか。
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2008年11月24日

緊急の救急かどうか迷うときは「#7119番」を使用しよう

救急外来モンスターペイシェントに困惑する病院職員

 東京都では昨年より救急車の不適切な使用を減らすため「救急相談センター」のサービスを拡充。緊急時には、これまで通り「119番」を使用し、緊急を要するか判断に迷ってしまうような場合は「#7119番」を使用するように進めている。

 これまで東京都では緊急を要さない「119番への」問い合わせも数多く、本当に緊急を要する重態患者の問い合わせが遅れてしまう例もあった。そうした混雑を解消し、緊急時の問い合わせを確保するため同サービスを昨年より導入している。

 そこで、ある病院の夜間事務当直を担当する男性(21)にその実情について尋ねてみた。「私が勤めている病院は小規模のため、重体患者はほとんど来ないのですが、それでも夜間でも10人は救急外来として来ます」。しかし、本当に緊急を要するような事例もあれば、その中には目を疑うような救急外来も多いという。「救急で来たのに、ただの下痢だったり、夜中の3時に泥酔したカップルが救急を要さぬようなかすり傷で来たこともありました

 もちろん、事態は急を要することもあるが、適切な対処を受けるため、そして本当に救急車を必要な人が助かるためにも、「7119」の存在を覚えておくのも良いだろう。



 本当に、夜間救急には、医療関係者ではなく一般の人でも「ありえない」症例というのが数多く来ます。

 普通だったら翌日来るであろう病状で、夜間の救急がうまってしまうのはなんだかやるせないです。自分のことしか考えてないような人たちばかり、そういうことをする傾向にあって、本当に必要な人たちが助けられないというのは・・・。

 #7119。活用していきましょう。
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2008年11月22日

急患のたらい回しをなくすため、「東京ルール」を導入する。

救急医療体制「東京ルール」を来年度からスタート

 東京都は、急患の「たらい回し」をなくすため、病院間で受け入れ先を探す新たな救急医療体制「東京ルール」を来年度から始める。

 都内の24病院を「地域救急センター」に指定し、患者を受け入れられる病院を見つける。急患の受け入れで、病院同士で連絡を取り合って決める試みは全国初。都は「地域救急の新たなモデルになる」と期待している。

 急患は東京消防庁の救急隊が病院に照会し、搬送先を決めている。

 都救急災害医療課によると、東京ルールは、都内を12地域に分け、手術や入院が必要な重症患者を扱う2次救急病院の中から、1地域で2か所をセンターに指定。救急隊の受け入れ先探しが難航した場合、センターが救急隊に代わって患者を受け入れる病院を探したり、受け入れたりする。

 地域のほかの2次病院は、センターに空きベッド、当直医の専門や人数などの情報を提供する

 それでも受け入れ先が見つからないケースでは、東京消防庁指令室の救急救命士が務めるコーディネーターが、ほかの地域のセンターと調整する。

 都救急災害医療課は、「たらい回しを防ぐには、地域の病院が責任を持って救急を支えるしかない」と話している。

 急患の搬送を巡っては、病院が「ベッドは満床」「当直医が専門外」「処置中」などと受け入れを拒否するケースが後を絶たず、10月に出産間近の妊婦が8病院に断られて、出産後に死亡する問題も起きている。

 都内では10年前と比べ、救急医療機関数は2割減少し、335か所(2008年)。一方、救急搬送患者数は3割増え、62万人余(07年)となっている。「夜間・休日になると、当直医が1人しかおらず、休業状態になる2次病院も多い」(公立病院医師)といい、より高度な医療を行う3次救急病院にしわ寄せが行っている。

 全国でみると、2次病院の当直体制(07年)は、1人が4割、2人以下が7割に上り、手薄な状況にある。

 救急医療体制の「東京ルール」で、急患受け入れに、地域の病院が責任を持つことになる。地域救急センターが、2次救急病院の当直医の専門や空き状況を把握することで、効率性も増し、「たらい回し」対策につながるとされる。

 地域と病院の違いはあるが、東京ルールは、すべての患者を救急医が受け入れて診療科の医師へとつなぐ北米型ER(救急治療室)の地域版に一歩近づけようという試みとして、成否が注目される。

 しかし、たらい回しの原因である医師不足が改善されるわけではない。医師を急患受け入れの基幹となる病院に集約するのでもない。センター病院の負担ばかりが増え、新ルールが絵に描いた餅になる恐れもある



 救急医療を再度円滑に進めるようにするためには、医師の増加と労働条件の改善が絶対的に必要です。

 いわば東京ルールはそれまでの間の代替案のようなものです。医師らのギリギリのスキマをも埋めてしまうという感じですかね、悪い言い方をすれば。

 うまく使えば助けられる患者さんは増えると思うので、今後に期待していきたいと思います。ただ、いつまで持つのか、という気はしますが・・・。これによって更に医師一人あたりの負担が広がらないようにうまく利用していけば・・・。

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2008年11月21日

割り箸死亡事故、医師に過失なしの無罪判決が出る。

割りばし事故医療過誤事件控訴審 業務上過失致死に問われた医師に無罪判決

 東京・杉並区で1999年、のどに割りばしが刺さった当時4歳の男の子が病院で受診後に死亡した事故をめぐって、業務上過失致死に問われていた医師に対し、東京高裁は、1審に続き、無罪を言い渡した。

 この事故は1999年7月、杉野隼三ちゃん(当時4)が綿あめを口に入れたまま転倒し、割りばしがのどに刺さり、杏林大学付属病院で診察を受けた翌日に死亡した。

 診察した医師は、脳の中に残っていたおよそ8cmの割りばしの破片に気づかず、化膿止めを塗っただけで、隼三ちゃんを帰宅させていた。

 この事故の責任をめぐって、診察した医師・根本英樹被告(40)は業務上過失致死の罪に問われてた。

 2006年3月の1審では、「頭蓋骨の中の傷を想定して、CT検査などをするべきだった」と、医師の過失は認めたものの、「正しく判断できたとしても、命を救うことは困難だった」と無罪判決が言い渡され、検察側が控訴していた。

 そして20日、東京高裁は「本件控訴を棄却する」と検察側の控訴を棄却し、あらためて無罪を言い渡した。

 また裁判長は、1審が認めた医師の過失についても、「被告人には、頭蓋内損傷を疑って、これを確認すべき注意義務があるとは言えない」として、医師に過失はなかったと結論づけた

 20日の判決に、隼三ちゃんの母・杉野文栄さんは「治療が不十分なものであったことを認めてくださることを祈って、それだけを信じて傍聴を続けてきました。注意義務違反も含めて、今回なくなってしまったことが、本当に残念でなりません。今回も隼三に、裁判の結果について伝えることができない」と語った。

 一方、無罪判決を受けた医師側の弁護士は、「本日の判決結果については、業務上の注意義務違反。過失そのもののを否定した裁判所の判断に感謝している」と語った。



「謝罪して欲しい」両親ら痛切 男児割りばし死亡事件

 隼三ちゃんの父の杉野正雄さん(57)と母文栄さん(51)は20日、判決後に記者会見し、「過失を認めない内容は受け入れがたい」と批判した。文栄さんは「一言の謝罪を求めての9年間だった。医師と病院に『もう少し丁寧に診ればよかった』と謝罪して欲しい」と改めて訴えた。

 同じく高校教師の正雄さんは、隼三ちゃんを亡くした悲しみに加え、「ああいう家族がいるから救急医療の現場が崩壊する」といったネット上の中傷や事実無根の書き込みに心を痛めた。正雄さんは「真実を知りたい、謝罪してほしい、過ちを繰り返さないでほしいと願う被害者が声を上げられなくなる」と危機感を募らせた。

 一方、日本救急医学会理事の瀧健治・佐賀大教授は判決を「救急医療の現場を理解してくれた」と評した。事故後、訴訟を嫌う医師が専門外の診療を避ける傾向が強まったと感じる。「事故を戒めとし、重い患者を見落とさない仕組みを作らなければ」とも話した。



 うーん。当然の判決。

 今回の二審では、過失すらもないことが認められました。根本医師にとっては長く辛い闘いだったと思います。自分の人生を大きく歪めてしまう裁判になったのではないでしょうか。

 当然、遺族は納得はできないのでしょうけれど・・・。

 遺族にとっては酷かもしれませんけれど、「過失がなかった」、というのが「真実」であり「謝罪する必要」もなければ「過ち」でもないという話です。

 それを理解しろというのも酷ですし感情的になってしまう気持ちは分かりますけれど、感情的な意見で医師を傷つけるのはもっといけないことだと思うのであえて言いました。事故は事故で、医師が謝罪する必要はない。そしてそれが現実であって、それを受け入れて子供に報告すべきなのではないか、と思います。

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2008年11月09日

医療事故で家族を亡くした人と医師が対話をする。

シンポジウム:患者と医師「対立より対話を」−−奈良女子大

 医療事故で家族を亡くした人たちが、患者と医師の対立を超え、医療のあるべき姿を考えるシンポジウム「医療事故遺族が求める真実とは」が3日、奈良市の奈良女子大であった。福島県立大野病院で04年に起きた帝王切開中の医療事故で死亡した女性(当時29歳)の父の渡辺好男さん(58)が約70人を前に「娘が入院した25日間の真実を知りたい」と心情を吐露した。

 シンポジウムは福島県立大野病院の執刀医に対する福島地裁の無罪判決が確定したことを受けて開かれ、裁判では解消されない疑問があることを訴えた。渡辺さんの娘は前置胎盤で、ハイリスクの患者だったが、渡辺さんは「手術当日まで、医師からリスクの話はなかった。娘がなぜ死ななければならなかったのかと思う。いつか病院に聞きたい。情報も報道されたことしかなく、悔しかった」と、病院側の説明が十分でないことを訴えた。

 大淀町の町立大淀病院で06年8月、分娩中に意識不明となり、搬送先で死亡した高崎実香さん(当時32歳)の義父憲治さん(54)は産科の救急医療のあり方について主張。東京都立墨東病院などに受け入れを拒否された妊婦が死亡した問題に触れて「産科医がいなかったというが、主治医が(転送先に)付いていけば済むことではなかったか」と指摘した。



 医師と患者は本来、対立するものではありません。

 双方が歩み寄る必要があると、思います。

 医師は1人の患者に誠心誠意をもって尽くすべきですし、患者やその家族は、「医師は自分たちだけのものではない」ことを認識すべきです。

 お互いに気遣い、配慮をすることの大切さ、再確認したいと思います。

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2008年11月02日

群馬大学病院の時間外診療は軽症なら4200円上乗せ。

「軽症なら4200円徴収します」 群馬大病院が時間外診療に上乗せ

 群馬大病院(前橋市)は29日、夜間や休日の正規の診療時間外の救急受診について、軽症患者からは診療費のほかに4200円を12月1日から徴収すると発表した。

 診療時間外は医師が手薄なため、軽症患者の受診を減らし、緊急性のある重症患者の受け入れを強化する狙い。同病院によると、国立大の付属病院では山形大に次いで2例目

 (1)入院が必要(2)他院から紹介状を持参(3)緊急処置が必要と医師が判断−のいずれかに該当するケースは徴収しない。

 同病院が昨年度に受け入れた時間外受診の救急患者は約7600人だが、約半数は緊急性の低い患者だったという

 同病院の担当者は「緊急の患者に全力を挙げるためで、やむを得ない判断だ」と理解を求めた。



 これは大学にとっても、また一般市民にとっても良い話ではないかと思います。

 いやホント、何で夜来るの?ってぐらいの超超軽症患者が来たりしますからね。処置がまるで必要ないような患者でも、来てしまったらその分労力を割かれ、本当に処置しなければならないような緊急患者に全力を注げなくなってしまいます。

 ああいうのも1つのモンスターペイシェントなんでしょうね。4200円上乗せすることによって、そういう人たちを減らすことが出来ると思えば。

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医学処:救急
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2008年10月25日

救急たらい回し問題で、舛添厚労相と石原都知事がバトル。

舛添厚労相「週末の当直医1人だけ」 石原知事「医者増やすのは国の責任」

 脳出血を起こした東京都内の妊婦が8病院に受け入れを断られ、出産後に死亡した問題で、舛添厚生労働相と石原慎太郎・都知事が24日、互いに記者会見で、国と都の責任を批判し合った。

 口火を切ったのは舛添厚労相。午前の閣議後会見で、都立墨東病院がいったん受け入れを断ったことについて、「週末に当直医が一人しかいない。これが(重症の妊婦の緊急治療に対応する)周産期センターといえるのか」としたうえで、「とてもじゃないけど都には任せられない」と批判した。

 これに対し、石原知事は午後の定例会見で、報道陣の質問に答える形で反論。問題の背景に産科医不足の現状があることから、「東京に任せてられないんじゃなくて、国に任せてられないんだよ。医者の数を増やすのは国の責任。舛添君、しっかりしてもらいたいよ」と切って捨てた。



 よくわからんです。反論しあっているのか、果たして。

 これって結局は両方の責任逃れに過ぎないですよね。医者が不足していること、当直医が1人しかいなかったこと。解決するにはどうしたらいいのか?

 予算をまわせと。

 国立医学部の定員を全ての大学で10人ずつ増やせばいい。国立大学医学部の学費は私立に比べると非常に安いですが、結局1人を育成する費用は変わらなくて、その分は税金で負担されています。1人あたり税金でン千万払うとして、1大学あたりン億。国立は40校ぐらいあるから100億ぐらいか。1年間にそれだけまわせれば医者は増えますよ、えぇ。もしくはその100億を使って、医科大学を作ってしまう。自治医大システムで。

 予算ないですかね、1人死んだことでこれだけ大騒ぎするにもかかわらず、わけのわからない建物を作るお金はあるのに。いや政治家の役割は決して医療だけに目を向けていてはいけないことは重々承知ですが、問題解決のためにはやはりお金をどこかから持ってくるしかないと思いますよ。

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2008年10月24日

心臓マッサージ(1分間に100回)に最適な曲、日本版。

心臓マッサージには「ステイン・アライブ」

 米心臓協会(AHA)はこのほど、心肺停止時の蘇生救急としての心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行うときのリズムとして、ビージーズの1977年の大ヒット曲「ステイン・アライブ」が最適だとの研究結果を発表した。ロイター通信が伝えた。

 同協会は、心臓マッサージを行う際のリズムとして、1分間に100回の速さを推奨している。これを実際の楽曲に当てはめてみると、「ステイン・アライブ」は1分間に103拍と、ほぼ一致しているという。

 実際に大学で行われた心臓マッサージ訓練の際にも、「ステイン・アライブ」を聞くことで、正しい速度が保たれる効果があったとの報告があったという。研究者は「この曲は心臓マッサージにぴったりの上、だれでも知っている」と効用を強調している。

 ビージーズは英国出身の3人組。70年代の世界的なディスコ・ブームの牽引役としてヒット曲を連発した。



 これです。確かにぴったりかも。

 日本で、よく心臓マッサージ訓練の時にいわれる「1分間に100回のリズムの曲」と言われれば以下。

アンパンマンのマーチ
ぼくドラえもん
地上の星
夜空ノムコウ

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医学処:救急蘇生法に人工呼吸は不要。心臓マッサージだけで良い。
医学処:心停止で倒れている人をみつけたら、とにかく胸を押して下さい。
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