[生殖]の記事一覧

2008年02月19日

患者に防腐剤を飲ませた浦安市川市民病院

女性患者に防腐剤誤投与、東京地裁が9800万円賠償命令

 千葉県浦安市の浦安市川市民病院に入院していた女性患者(56)が、看護師の誤った指示で防腐剤のアジ化ナトリウムを飲まされ、低酸素脳症になったとして、患者と家族が同病院を運営する浦安市市川市病院組合に損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。

 孝橋宏裁判長は「誤投与でアジ化ナトリウム中毒となり、脳症を発症した」と認め、同組合に約9880万円の賠償を命じた。

 判決によると、女性患者は2004年7月、糖尿病の治療のために同病院に入院したが、看護師がアジ化ナトリウムを内服薬と思い込み、女性患者に服用するよう指示。女性は低酸素脳症となり、身の回りの介護が必要な認知症の症状となった。

 浦安市川市民病院の話「判決内容を精査し、今後の対応を考えたい」



 ・・・なんでこんなことが起こってしまうんでしょう。

 内服薬だと思い込んだということは、アジ化ナトリウムを薬だと思っていたということですよね。従来の誤投与とは違って、単純なミスではなく、無知が引き起こした事故ではないでしょうか。

 無知は罪という言葉がありますが、医療現場において、知識のない人ほど怖いものはありません。人の命を預かる以上、最低限の知識は絶対にもっていなければならないものです。
posted by さじ at 23:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生殖

2008年02月18日

我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します

新小児科医のつぶやき


医師にとって2.18日本の医療のターニングポイントになりました。




我々は福島大野病院事件で逮捕された

産婦人科医師の無罪を信じ支援します





「やぶ医師のつぶやき」


 その日を境に、日本では

 産科医が1人で出産を扱う病院は激減しました。




さあ 立ち上がろうー「美しい日本」にふさわしい外科医とは


 どうして、こんな事態に陥ったのか・・・

 誰が溝を深め、傷口を広げたのだろうか?




天漢日乗


 人間は「死を避けられない存在」であり、

 お産は「母子共に命の危険がある」営みなのです。




女医^^遊佐奈子の政治と医療・裁判員制度と冤罪


 私も無罪を信じます。

 正しいことを正しいと堂々と言える社会を作るために。




勤務医 開業つれづれ日記


 決して忘れまい。

 一人の医師がいて、

 なんら医学的に間違ったことをしていなくても

 検察に逮捕されたこの日のことを…。




医療報道を斬る


 実際に医師が逮捕されるまで、重大な病態の患者が死ぬことは当たり前だという常識は、誰にでもあるのだと思っていた。手術がいくら安全になったとはいえ、やはり命がけの行為なのだと言うことは理解されているのだと思っていた。



 まさか、ミスがなければ患者は死なないと言うことが常識になっていたとは知らなかった






 医療界に激震が走った2006年2月18日からちょうど2年が経ちます。

 「福島大野病院事件」です。

 患者を全力で助けようとした医師が、何故刑事訴訟に追い込まれなければならないのか。

 メディアでは、産婦人科医が激減していること、お産を取り扱う病院が減っていることを報じています。それは医師の怠慢でも何でもありません。世間が追い込んだ結果です

 これは本来なら、医師が闘う問題ではないと思います。世間一般の方々に、産婦人科という領域、お産のもつリスクについて、広く認知してもらわなければならない事です。

 是非ご理解の程を、宜しくお願いいたします。


推奨まとめサイト:ある産婦人科医のひとりごと
福島県立大野病院の医師逮捕事件について

 
 産婦人科医の現状と、裁判について見事に書ききった小説「ノーフォールト」を是非一度、ご覧になってみて下さい。


関連
医学処:難しい手術を断る産婦人科が増えていく
医学処:産婦人科医の過剰な逮捕は、医療を萎縮させる。
医学処:福島県立大野病院の帝王切開死亡事件の裁判、始まる。
posted by さじ at 03:50 | Comment(6) | TrackBack(0) | 生殖

2008年01月27日

妊婦がカフェインを多く摂ると流産の危険に

妊婦とコーヒー

 妊婦がコーヒーやお茶に含まれるカフェインを多く摂取すると、流産の危険が大幅に高まることが21日、米最大の健康医療団体「カイザー・パーマネント」の研究チームの調査で分かった。

 研究チームは「新陳代謝機能が完全でない胎児にとって、胎盤を通じて入り込むカフェインの代謝は困難であり、胎児の成長が阻害される可能性がある」としている。研究論文は米産婦人科ジャーナル(電子版)に掲載された。

 研究チームは1996年から98年にわたって、カリフォルニア州の1063人の妊婦を対象に飲み物の種類などを詳細に調査した。その結果、1日にカフェイン200ミリグラム(2杯程度のコーヒーに相当)を摂取した妊婦が流産を起こすリスクはカフェインを全く取らない妊婦の2倍に達することが判明。200ミリグラム以下の摂取量でも、流産のリスクは1.4倍になっていた。 



 2倍は怖いですね。

 母体からは胎盤を介して胎児に栄養を送っていますが、そのときに問題となるのが「胎盤通過性」という概念です。

 一般的に、分子量500以下、非イオン型、脂溶性の薬物は、胎盤通過性が良いと言われています。つまり母体に薬を投与して、胎児に移行しやすいということです。また、どんな薬でも沢山投与すれば胎盤は通過します。

 また、胎児の発育時期によっても、使っていい薬、ダメな薬が分かれます。例えば妊娠初期に危険性が高いと考えられている薬の代表としては、ストレプトマイシンの第八脳神経障害、小肢症。性ホルモンのVACTERL症候群、テトラサイクリンの歯牙着色異常、ワーファリンの顔面奇形などがあります。

 流産は、胎児の器官形成期でもある妊娠2〜8週、更に口蓋形成・生殖器形成の18週あたりまでの、薬を慎重に使わなければならない期間に起こります。カフェインもおそらくこのあたりで、胎盤を介して胎児に作用すると思われます。まぁ他の薬のように顕著に奇形が報告されているわけではありませんが、慎重になりたい人はあまり飲まないほうがいいかもしれません。

 まぁ子供より自分優先という人は、胎児によくないと知りつつも摂取します。本人のことなのでどうこう言えるわけじゃないんですが、大人にとってたまらない嗜好品であっても、それを子供に強要するのは間違いだと思いますので、そこらへんの良識ある判断をこれから親になる人はもってもらいたいと思いますね。

関連
医学処:パーキンソン病予防に、カフェインが効く
医学処:コーヒーを1日4杯以上飲むと痛風の予防になる
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2008年01月15日

高額請求した包茎手術費用を返せ

「包茎手術費を返せ!」 高額請求で相談件数増加

 「高額請求した包茎手術費用を返せ−」 東京都消費生活総合センターは9日、都内などの3医療機関が、安価な包茎手術費をうたった広告で患者を勧誘しながら、手術の痛みを緩和するからとコラーゲン注入を強要し、実際には高額な手術代を請求したのは不当だとする20代の男性ら3人の訴えを、都消費者被害救済委員会に付託し、あっせんなどによる紛争解決に乗り出すことを明らかにした。

 同センターによると3医療機関は昨年9月ごろ、ファッション雑誌の広告やホームページで「無痛で15万円から包茎手術ができる」とうたって、いずれも20代の男性3人を勧誘。医療機関を訪れた3人に対し、手術痕が目立つ写真を見せて「15万円だとこんな感じになる」と言って、「9ccコラーゲンを打てば手術後痛まない」「安いコースは見た目も悪く、きれいにできないので高いコースがいい」「ほとんどの人は一生に一度のことだから一番高いコースにしている」などとあおって、1cc12万円から15万円のコラーゲン注入を強要し、広告掲載費用の約10倍にあたる140万円から280万円の手術費を要求した

 手術を受けた男性らは「コラーゲンの効果も、高額な手術代にも納得できない」として、3医療機関に対し、手術費の減免を求めている。

 同センターによると、平成18年度の包茎手術に関する相談件数は44件で、15年度の23件の約2倍。同センターは「表沙汰にしにくい問題だけに、毎年相談件数が増えているということは、実際に被害者が増えているということ。早期に食い止める必要がある」と話した



 長茎術として、コラーゲン注入はよくやられるようですが、3ヶ月ぐらいで戻ってしまうらしいですし、まぁやる意味はないかなというのが正直なところです。

 いくら美容形成が自由診療とはいえ、患者を騙しお金を儲けようとする行為は許されるものではありません。患者が納得していないのですから、そのような医療行為はバッシングされて当然、でしょう。

関連
医学処:包茎手術でのボッタクリに対抗すべく審議会が立ち上がる
医学処:広告の数倍高い値段を請求される包茎手術の問題点
医学処:【完全版】ペニス増大トレーニングについて
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2008年01月14日

男女差のある病気に着目した性差医療について

性差医療に本腰 4月から聞き取り調査 厚労省

 患者数が男女で大きく差がある病気に着目して、男女で異なる医療上の対応をとる「性差医療」について、政府が本格的に取り組むことになった。厚生労働省は昨年12月に発足させた民間有識者らによる「女性の健康づくり推進懇談会」で性差医療に関する議論を深める。その上で、4月から研究施設や医療現場の要望を聴取して性差医療の具体策をまとめる。

 自律神経失調症や頭痛、めまいなどを伴う更年期障害などについては、妊娠や出産にかかる過程で起こりやすい女性特有の疾患として、従来も対策が取られてきた

 しかしこれ以外にも、内閣府男女共同参画局が厚労省のデータを基に昨年12月にまとめた、疾患ごとの男女別通院数(1000人あたり)によると、認知症では女性が3・4人で、男性(1・7人)の倍となった。また、白内障は男性17・2人に対して女性33・0人、肩こりは男性16・0人に対し女性39・7人と、女性に多い症状であることが分かった。

 病気の種類によって、発症しやすさに男女差があるという事実は以前から知られており、予防や治療の面で性別によって異なる対応をとることが有効だというのが、性差医療の考え方。民間レベルでは平成15年に学会が発足したほか、「女性専門外来」を設ける医療機関も増えている。

 こうした状況を踏まえ、男女共同参画局は性差医療に取り組む必要性を厚労省に指摘した。懇談会は基本的な議論を進めた上で、4月からは実際に患者や医療関係者などの意見を聞き、医療現場が必要としている性差医療の具体像をまとめる。さらに、職種などに応じた症状の違いに注目しながら対策を検討する。

 男女共同参画局は「若年期から性差に配慮すれば、将来的にもきめ細かな生活習慣病対策や介護予防策ができる」として、高齢者医療の観点からも性差医療の必要性を強調している。



 こういった類のモノって、「男女共同参画局」がまっさきに否定するのかと思ってましたが、どうやら違うようです。

 まぁ確かに女性にとってのメリットが大きいですからね。否定するはずもないか。

 でも医師にとっては、学生の頃から「この疾患は男性のほうが多い」とか、もっと言ってしまえば「好発年齢は中年女性」ぐらいのことは覚えていますし、性差医療とかいうのも、取り入れやすいとは思います。

 っていうか、取り入れるも何も、どういうことなんでしょう。もしかして女性は女性らしく扱えとかそういうことでしょうか。女性には女性外来で女性医師をつけて適切にケアすべきだとかそういうことを求めてるのでしょうかね。そりゃ疾患には性差がありますし、現状でもそれに応じて対応していると思うんですが。イマイチ必要性というのが分かりません。
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2008年01月12日

胎盤がうまく機能するための遺伝子を発見

胎盤働かす遺伝子発見

 母体と胎児との間で栄養などのやり取りを行う胎盤がうまく働くために重要な遺伝子を、東京医科歯科大や国立成育医療センター研究所のチームが発見した。

 この遺伝子は、細胞に感染するウイルスのように外来の遺伝子が起源であることがわかっており、哺乳類の進化の過程を明らかにする一歩になるという。研究成果は6日付の科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に掲載される。

 研究チームが発見した遺伝子はPeg11/Rtl1。マウスの実験で、この遺伝子を失わせると、胎児が母体から栄養や酸素を得る胎盤の毛細血管の形が異常になり、胎児は出産前後に死んでしまったという。また、この遺伝子の働きが強くなったり弱くなったりしている人では、胎児期や生後に発育障害などを起こしていることも確認した。



 産婦人科領域は未知なところが多くて学問的に非常に面白いんですが、如何せん難しいんですよね。このニュースも、パッとイメージすることが出来ませんでした。笑

 胎盤

 妊娠すると、子宮内にできる哺乳類に共通の器官。胎児は、そこから伸びる臍帯を介して、母体から栄養分をもらったり、酸素を取り込む。また、分泌されるホルモンは、妊娠状態の維持に重要な役割を果たす。出産後には自然に脱落する。

関連
医学処:体外受精は、胎盤や臍帯に異常が発生する可能性が高くなる
医学処:妊婦向けに毛髪中の水銀濃度を検査するサービスを開始
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2008年01月09日

産婦人科医の書いたケータイ小説が書籍化

「性」学べる携帯小説 産科医が出版

 東京の産婦人科医、須藤なほみさん(31)が、中高生に人気のケータイ小説サイトで書いた初の小説が書籍化された。産婦人科勤務の傍ら、3年前に性教育の携帯サイト「Dr.なおみのラブ&バディカフェ」を自費開設。10代の不幸な妊娠を招かないため、そこで伝えたかった「自分をもっと大事にして」というメッセージが作品になった。

 「ラブ・コミュニケーション」で、うたい文句は「まじめなエッチのケータイ小説」。女子高生の主人公カナと大学生リュウの純愛話を読みながら、避妊や性感染症について学べる。

 カナはかつて、付き合っていた彼からのセックスの誘いを断った経験がある。妊娠を心配したためだったが、「つまんねえヤツ」と舌打ちされ、「私が受けいれなかったから、嫌われたんだ」と自分を責めた。しかし、今の彼と出会い、互いに相手を思いやることを学んでいく――。こんなストーリーだ。

 須藤さんは広島大医学部を卒業後、女性医療を学ぶために東京へ。携帯サイトで相談を受けるのも、小説を書いたのも、「中絶したいんですけど」と診察室を訪れる少女に会うときの、何とも言えないつらさが根っこにある。「自分の体を差し出すことを愛情と勘違いしてはいけない」と伝えたかった。

 人気のケータイ小説を読み込み、短い文章や改行の多用など独特の「作法」を習得。マンガのような読みやすさを心がけた。

 中高生が無防備に妊娠、中絶してしまう内容のある携帯小説が100万の単位で売れる時代に、初版1万5000部ながら、一石を投じたつもりだ。



 不思議なことに人気のあるケータイ小説。その土俵に自ら入って、伝えたいことを伝えようという姿勢は非常に評価できます。

 実際問題として、性教育がどうとかいうより、ケータイ小説にあるような稚拙な恋愛に若い女の子が憧れているという点が今までとは違ったのでしょう。まだ奥ゆかしいほうがよかったですね、医学的には。

 「自分を大事にして」といくら大人が言っても、子供にとっては子供の世界があるので、まぁほとんど聞きませんよね。それでも伝え続けることに意味があるとは思うのですが、この作者のように、「相手と同じ目線で接すること」が最も効果があると思います。なかなか出来ることじゃありません。

 日本男児がチャラチャラするようになったのも一因ですけどねー。無意識なんでしょうけれど、自分より年が下の女の子をいいように利用して、また「利用している自分」をカッコイイとか思っちゃったりしてるんでしょうかね。そんな男のどこがかっこいいのか分かりませんが、若い女の子にも、男を見る目だけは養ってもらいたいものです。

関連
医学処:10代で妊娠する少女は将来を軽視しすぎている。
医学処:女子生徒が高校内の女子トイレで出産。新生児は窒息死。
医学処:福島県立医大のサークル「DearPeer」が避妊の大切さを指導する。
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2007年12月18日

飛び込み出産の1割がリピーターで4割が医療費未払い

未受診妊婦、1割がリピーター=医療費未払いも4割

 妊婦検診をほとんど受けないまま、出産時にいきなり病院に来る「未受診妊婦」の1割強は、過去にも飛び込み出産したことのある“リピーター”だったことが15日までに、日本産婦人科医会広報委員の前田津紀夫医師の調査で分かった。

 また、医療費未払い率も4割に上り、同医会は「未受診は母子のリスクが高いだけでなく、(医師や病床などの)医療資源を浪費することになり、社会的にも問題」としている。

 調査は、未受診妊婦に関する過去の文献と、静岡県内の5施設の受け入れ状況調査を合わせ、計586人分について分析。未受診妊婦は年々増える傾向にあり、対象のほとんどは最近5年以内の事例だった。



 結局、医療費を払いたくないから飛び込み受診をする、ということですよね。

 なんかこの考え方って凄く恐ろしいな、と。自分さえ良ければそれでいいと思っているような人間は勿論存在しますけれど、この場合は「妊婦限定」の話ですからね。

 医療費を払いたくないから飛び込みで受診して、産んだらトンズラしようという妊婦。現代の怪奇です。

 こんな馬鹿な親から生まれた子供がまともに育つはずもなく、また社会に全く貢献しない人間として成長していくかと思うと…。

 怖いです。

関連
医学処:急増する「飛び込み出産」
医学処:出産直前に医療機関を受診する「飛び込み分娩」が増加中
医学処:妊婦の緊急受け入れを行った病院には診療報酬を優遇するよ
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2007年12月17日

おしりが大きいと安産、という俗説は正しくない。

「おしりが大きいと安産」はウソ、骨盤の形は見ただけでは分からない

 2007年12月13日、北京の地元紙「京華時報」は、「お尻の大きい女性は安産」という俗説は正確ではないという、専門家の指摘を報じた。

 それによると、安産になるかどうかは骨盤の形に左右される。骨盤が大きくても骨盤内部のスペースが狭い場合や、生まれつき骨盤自体が狭い場合は、お産に影響することがある。しかし、骨盤の形や内部の広さは、外からでは判別することができない

 また、安産になるかどうかは、骨盤の形以外に、胎児の大きさや位置、妊婦の精神状態や体力などが関係してくる。つまり「おしりが大きい=安産」とはかぎらないのだという。



 んー、まぁ、そりゃそうだろうと。

 さも当たり前のことを詳しく証明していくのも、医学の1つの道なのかもしれません。

関連:医学処 何故男性は「巨乳が好きだ」と言わないのか。
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2007年12月13日

人間の精子を凍結乾燥した後で正常な状態に戻すことに成功

精子保存に「凍結乾燥」…日米大学チームが成功

 カップラーメンのように、人間の精子を凍結乾燥(フリーズドライ)した後、正常な状態に戻すことに、旭川医科大の上口勇次郎教授と米ハワイ大の柳町隆造教授の研究チームが成功した。

 不妊治療では精子を液体窒素で保存する方法が広く用いられているが、停電などの事故で精子が失われる恐れが指摘されており、バックアップとして、この手法が役立つ可能性があるという。英国の生殖医学誌「ヒューマン・リプロダクション」に掲載された。

 実験では、人間の精子を特殊な溶液に37度で10分間浸した後、液体窒素で急速凍結し、真空内で凍結乾燥。その結果できた乾燥精子を4度の冷蔵庫で1か月間保存した後、水で元に戻し、精子の染色体の状態を観察したところ、8〜9割が正常で、自然の状態の精子と差がなかったという

 一方、マウスでも、同様の方法で凍結乾燥して元に戻した精子を卵子と受精させ、代理母マウスの子宮に戻したところ、正常に胎児が発育。精子の遺伝情報が正常に残っていることが確認されたという。

 実験を行った日下部博一助教は「不妊治療への応用のほか、貴重な野生動物や遺伝子組み換え動物の精子を保存するのにも利用できる」と指摘している。



 凍結だけでなく、乾燥もオッケーとは。遺伝子情報をたっぷりと満載しているのに、そんなにも耐えられるんですねぇ。

 原始的な構造をしていればしているほど生き残るのも容易なんでしょうね。人間は複雑すぎてちょっと変わっただけでアウトですが。命ってのはふしぎなものです。

関連
医学処:死んだ夫の精子で体外受精→子の親として認知できる?できない?
医学処:凍結保存した精子は、本人の死後に廃棄することを決定する
医学処:南極の氷から600万年前の微生物を解凍・復活することに成功。
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2007年12月01日

産婦人科医不足の市で、助産師による助産院を開設

産科医不在受け市が助産院 遠隔健診で通院負担を軽減

 産婦人科医の不在に悩む岩手県遠野市が1日、市立助産院を開設する。出産は扱わないが、盛岡市などの医療機関が実施するインターネットを通じた遠隔健診の手助けを助産師がするほか、お産が迫った時はそれらの医療機関にスムーズに救急搬送できるよう連携し、「妊婦が安心して安全に子供を産める」(遠野市)環境づくりを進める。

 厚生労働省によると、独立した公立の助産院は全国でも珍しく、東北地方で初めて。医師不在の地域でも産科の医療サービスが受けられ、遠距離通院などの妊婦の負担や心配を軽減する試みとして注目されそうだ。

 助産院は、平日の日中は助産師2人が常駐。胎児の心拍数を検出する機器を使ってデータを医療機関に送信し医師がデータや電子カルテを診断して母体や胎児の状態をチェックする。ネットを使ったテレビ会議システムで、妊婦が医師と直接話せるようにもしている。



 後半の記事をみると、結局遠隔ながらも医師が色々やっているような気が。

 とはいえ岩手県でもご多分に漏れず産科医不足ですから、少しでも医師の労働を減らしたいがための策なのでしょう。確かに助産師が色々サポートできれば、かなり負担は減りそうです。助産師は、産科のスペシャリストですから、妊婦にとってもかなり安心できるのでは?この際、助産師の権限をもっと広げてもいいと思うんですけどね。そのかわり助産師の大学卒後の研修をしっかりやる形で。

 ただ全国的にみれば、その助産師さえもが不足、だそうです。

関連
医学処:産科医不足に続き、助産師不足が深刻に
医学処:産婦人科医不足の対抗策に、「助産師外来」
医学処:産婦人科医は月に17回当直し、1年の休みはたったの50日
医学処:助産師が不足してるんだから看護師が内診してもいいじゃない
医学処:助産に関して、看護師による内診を認めない方針を貫く
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2007年10月06日

凍結保存した飼い猫の卵子から子猫を誕生させることに成功

世界初、冷凍保存された猫の卵子から子猫誕生

 米ニューオリンズのオーデュボン絶滅危惧種研究センターと、加藤レディスクリニック(東京都)の共同チームが、凍結保存した飼い猫の卵子から子猫を誕生させることに成功したと3日、発表した。

 ネコ科の卵子には脂肪分が多く凍結保存は難しいと言われるが、世界初の成功例である。子猫は雌2匹、雄1匹の計3匹で、今年8月下旬にオーデュボンセンターで誕生し、現在も順調に育っている。卵子は不妊手術で切除した飼い猫の卵巣から計28個を摂取し、「ガラス化保存法」と言われる急速凍結法で約3週間保存後、解凍。うち18個を顕微受精させ、代理母役の雌猫の子宮に受精卵をしたところ、約2か月後の8月に3匹の子猫が生まれた。今後この技術は、絶滅危惧種に含まれるチーターやアムールトラなどのネコ科の動物の保全に役立つと期待される。



 卵子の凍結が可能になると、記事中にもありますように、絶滅危惧種を保護するのに役立ちますね。凍結さえ可能ならば、数十年後、より生殖技術が発達した時代ならば、高確率でよみがえらせることも可能か。
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2007年09月11日

精子をつくる細胞が特定の場所に存在することを発見

精子:おおもと細胞が特定場所に存在 京大チーム発見

 京都大医学研究科の吉田松生助教(生殖細胞学)らのチームは、精巣内で精子を作るおおもととなる細胞「未分化型精原細胞」が、血管近くなど特定の場所に存在することを発見した。また、この細胞が分裂しながら分化する際、精巣全体に広く移動する様子の動画撮影にも成功した。精子の形成過程の解明や、将来的には男性不妊の問題解決などにつながる基礎となるという。成果は6日(米東部時間)、米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載される。

 哺乳類の精子は、精巣内に曲がりくねった状態で詰まっている「精細管」の中で形成される。チームは、マウスに蛍光遺伝子を組み込んで“おおもと細胞”が光るようにしたうえで、露出させた精巣の一部を顕微鏡に固定。3日間、コマ送りでビデオ撮影した。

 その結果、おおもと細胞は、精細管を取り巻く血管や、男性ホルモンを作る細胞の近くに多く存在していることが判明。血管の場所を移すと、おおもと細胞もその近くへ移った。また分化して精子になるにつれ、精細管内で分布が均一になるように動いていった。

 吉田助教は「精子の形成過程はいまだに謎が多い。次の課題は、おおもと細胞が好む場所で、どんな物質が出ているかを探ること」と話している。



 生殖医療には未だ、謎が多く残っています。

関連
医学処:煙草の煙は、精子のDNAに変異を起こし、永久的な変化をもたらす。
医学処:糖尿病の男性は、精子が損傷されやすい。
医学処:牛肉を週に7回以上摂取した母親から生まれる男は、精子数が少ない
医学処:無精子症でも新技術で取り出せば出産率が25%にも上昇する。
医学処:日本人の精子はフィンランド人の2/3しかない
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2007年09月02日

凍結保存した姉の卵巣組織を移植する手術をアメリカで行う

姉の凍結卵巣を妹に移植へ 米病院で10月にも

 骨髄移植で卵巣の機能を失った米国人女性(31)に対し、凍結保存した姉の卵巣組織を移植する手術を、米セントルーク病院(ミズーリ州)が日本の加藤レディスクリニック(東京都新宿区)と協力して10月にも行うことが29日分かった。

 仙台市で開かれる日本受精着床学会で、同クリニックの桑山正成研究開発部長が31日報告する。同部長らはまた、白血病治療で機能が失われる恐れが強い東京都内の女性(27)の卵巣組織を将来、本人に移植する可能性を残すため、凍結保存したことも発表する。

 いずれの事例も、同部長らが開発した「ガラス化法」と呼ばれる急速冷凍法で、1センチ4方、厚さ1ミリ程度の組織を保存。この大きさで、卵子や卵子の基になる卵母細胞が数1000個得られるという。

 桑山部長によると、米国人女性は今年1月、同じ姉から片方の卵巣の提供を受け移植したが、生着しなかった。今回は、この卵巣から採取し、同部長の指導で凍結した組織を使い、セントルーク病院で再度移植を試みる。



 生殖領域の医学の進歩は著しいですね。もしこの社会に「倫理」というものが存在しなかったら、もっと色々とできるんでしょうけれど。21世紀の生殖医療はまさしく倫理との闘いです。闘いって表現もおかしいんですけれど。

 アメリカのような国ならば比較的簡単に受け入れられるんでしょうけれど、「家」や「血」を重視する日本だとどうかなぁって感じではありますね。死後の卵巣、別の人の卵巣で生んだ子供の親は、戸籍上誰になるのか、とか、そういった問題も。

関連
医学処:卵巣がん治療に使える抗がん剤を早く保険適用してほしい!
医学処:がん患者から卵巣組織を取り出して凍結保存し治療後体内に戻す
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2007年08月21日

受精卵に蛍光灯などの光を当てると出生確率が下がる。

受精卵、蛍光灯の光に弱く・県立広島大などマウス実験

 県立広島大学の堀内俊孝教授らと米ハワイ大学の柳町隆造教授は共同で、受精卵に蛍光灯などの光を当てると出生確率が下がることを、マウスの動物実験で明らかにした。堀内教授は「ヒトの受精卵でも同様の可能性があり、不妊治療などの際は光に注意した方がよい」と話している。

 ほ乳類は、通常の妊娠で受精卵に光が当たることはない。だが不妊治療や家畜の育種などのために体外受精をすると、光に当たることが避けられない。

 実験ではマウスを交尾させて受精卵を取り出し、研究室で用いられる1200ルクスの蛍光灯に15分間当てた。その後暗所で培養してメスの子宮に移植したところ、42%が出生した。受精卵を光に当てず、ただちに暗所に移した場合は66%が出生に至り、蛍光灯の光が悪影響を与えることが分かった。



 成る程。不妊治療ならではのリスクか。

 受精卵という繊細なものを扱う以上、本当に微妙な時期だからこそ、蛍光灯のような光にも注意しなければならないのでしょうね。先天性疾患で太陽の光を浴びるのが害となる病気もありますが、それと同じように、受精卵には光に対する抵抗力がないのかもしれません。

関連
医学処:遺伝子治療により、メスになるはずの受精卵をオスに変更。
医学処:多胎妊娠を防止するため、体外受精の受精卵数を減らす方向に。
医学処:閉経後の卵子提供により出産した高齢者の8割が、重い合併症を呈する。
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2007年08月17日

豊胸手術を受けた人の自殺リスクは、通常の3倍。

豊胸手術、患者の自殺リスク3倍に=米研究

 豊胸手術を受けた女性患者は、同手術経験のない女性と比べて自殺するリスクが3倍近いという研究結果が明らかになった。

 米テネシー州にあるバンダービルト大メディカルセンターのローレン・リップワース氏の研究チームが8日、形成手術専門誌「Annals of Plastic Surgery」上で発表した。

 同チームは、1965─93年に豊胸手術を受けたスウェーデン人女性3527人を追跡し、その死因を調査した。このうち24人が手術から平均19年経過した後に自殺していた。

 研究チームは、これは人口全体に対する自殺者の割合と比べると3倍であるとして、豊胸手術を行う医師らに注意を促している。



 コンプレックスが解消されたのですから自殺リスクは減るはず……でもうまくいかないのも現状か。

 自殺した理由は何でしょうね。やはり手術をしても自分の満足いく胸に仕上がらなかったから?もしくは、豊胸手術をする人の性格(コンプレックスを感じやすい)を考慮すると、元々自殺しやすい群に所属していた可能性も。

 「スキン」という美容形成漫画にもありますように、元々女性は自分のバストに色々なコンプレックスを抱くものです。完璧なものなんて存在しないわけですし。自分のバストを受け入れる姿勢も必要だと思います。

参考:SKIN All Need is Beauty.

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2007年08月13日

天使病院の経営側に不信感を抱いた産婦人科医4人が辞職する。

天使病院 産婦人科医4人辞職へ 危険性高い出産に対応 「経営側に不信感」

 道の地域周産期母子医療センターとして、道央の産婦人科医療の拠点となっている札幌市東区の天使病院(杉原平樹院長、二百六十床)で、産婦人科医六人のうち四人が、病院を辞める意向を固めたことが七日分かった。病院側は「仮に一部の医師が退職しても、新たな医師を確保して診療機能は維持する」としている。

 同病院は、全道に二十五、札幌市内に四施設ある地域周産期母子医療センターの一つ。年に約八百件の出産のほか、道央で最大規模の新生児集中治療施設(NICU)を設置し、緊急の帝王切開手術や低体重児の出産など、危険性の高い出産に対応している。

 同病院は、二○○三年に社会福祉法人聖母会(東京)から医療法人社団カレスアライアンス(室蘭)に経営が移管されたが、今年十月には、特定医療法人社団カレスサッポロ(札幌)への移管が決まっている。

 関係者によると医師四人は「経営母体が頻繁に変わる理由や、移管先の経営内容について情報開示が不十分。経営側と信頼関係が築けず、リスクが伴う周産期医療は続けられない」と退職の理由を説明しているという。残る二人も、退職を検討している。

 杉原院長は「一部の医師が、新法人での勤務を希望していないのは事実だが、現在も説得を続けている。診療規模と医師数は、今後も維持する」と話している。



 医者は医業に専念できる環境を作るためには、病院の雑務全般が機能的に行われていることが前提となります。経営母体が変われば方針も変わり、それは医療方法にも直接影響を与えます。医師たちが不安に思うのも頷けます。

 少ない当直で、緊急性の高い帝王切開などの手術を行うことの辛さ、大変さについては、ノーフォールトにてリアル描かれていますので、是非一度参考にしてみて下さい。とても面白い小説なので一般の方でもすぐに読めてしまうと思います。

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2007年07月16日

第三者から卵子や精子の提供を受ける体外受精で、124人の子供が誕生

体外受精、124人誕生=10年間に160件実施−諏訪マタニティークリニック

 不妊で子供に恵まれない夫婦が第三者から卵子や精子の提供を受ける「非配偶者間体外受精」は国内で、これまでの約10年間で160組に実施され、84人が出産、124人の子供が誕生してことが16日、分かった。実施した諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長が同日、記者会見で発表した。

 非配偶者間体外受精については、厚生労働省の厚生科学審議会が2003年、匿名の第三者からの卵子提供を容認する報告をまとめたが、同クリニックでは、姉妹や兄弟などの親族が卵子や精子を提供したケースが多かった。

 根津院長は「一刻も早く非配偶者間体外受精や代理出産が公に行われることを心待ちにしている」と訴えた。



 ニーズがありますからねぇ。おそらく認められる方向に動くとは思うんですけれど。不妊症の夫婦がいて、子供を欲して、そして子供を宿すだけの技術がある、となると、そりゃやってもらいたいですよね。そして何で認められないかというと、法整備されてないからでして、それに対して諏訪マタニティクリニックが問題提起している状態なわけです。

 何か起こらないと政治家が審議すらしてくれないのが今の日本なんで。そこが一番問題なんですよね。これだけ多くの尊い命が誕生しているという事実に目を向けてもらいたいです。

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2007年07月12日

閉経後の卵子提供により出産した高齢者の8割が、重い合併症を呈する。

提供卵子で高齢出産、妊婦8割が合併症

 閉経後に米国で卵子提供を受けた50歳前後の妊婦の約8割が、切迫早産などの重い合併症で入院が必要になったことが、東京日立病院(東京・文京区)の合阪幸三・産婦人科医長の調査でわかった。

 国内では、匿名の第三者からの卵子提供を認めようという声も強く、今後、提供卵子による高齢妊娠が増えそうで、合阪医長は「特に、超高齢出産の場合は、スタッフのそろった周産期医療センターなどでのケアが必要」と強調している。10日、都内で開かれた日本周産期・新生児医学会で報告した。

 調査対象は、合阪医長が過去5年間に担当した31人。平均年齢は50歳で、最高齢は56歳、最年少は46歳だった。米国で卵子提供を受けて、妊娠後、国内で出産を希望して来院した。多胎妊娠は4人で、すべて双子だった。

 多胎妊娠に比べリスクの低い27人の合併症の発生は、妊娠高血圧が9人(33・3%)と最も多く、卵子提供のない通常の出産よりも約6倍頻度が高かった。妊娠糖尿病も8人(29・6%)で約2・5倍、切迫早産も12人(44・4%)で約3倍だった。これらの合併症の治療のため、27人のうち22人が入院した。双子を妊娠した4人は全員、切迫早産のために入院した。また、母乳の分泌は、1か月検診時では、31人中17人が良好だったが、3か月検診時には3人に激減した。

 匿名の第三者からの卵子提供を巡っては、厚生労働省の生殖補助医療部会が容認した。しかし、法制化には至らず、日本学術会議で是非を検討している。



 まさに命がけでの出産です。しかし本来生物として機能を失っているものを、医学の力を借りて無理やり行うのですから、合併症が発生して当然といえば当然です。まぁその合併症を減らしていくのもまた、医学なのですが…。

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2007年06月29日

帝王切開が遅れたため後遺症が生じたとして1億を超える賠償請求。

「帝王切開遅れ後遺症」

 東京都町田市民病院で2003年、帝王切開が遅れたため重い後遺症が残ったとして、横浜市内の男児(4)と両親が、町田市と担当医師に介護費用や慰謝料など約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、横浜地裁であった。

 三代川俊一郎裁判長は「早く帝王切開していれば後遺症は回避できた」として、町田市と医師に約1億3840万円の支払いを命じた

 判決によると、男児の母親(39)は03年6月7日、破水のため入院。胎児の心拍数に異常があったことから、病院は同日、吸引器具で胎児を引き出そうとしたが失敗した。その後、帝王切開が行われたが、男児は仮死状態で生まれて低酸素脳症となり、肢体がマヒする重度の障害が残った。

 三代川裁判長は「吸引分娩を選んだ結果、出産が遅れた。適切な分娩方法を選択すべき注意義務に違反した過失がある」と指摘した。



 これは運というか、確率の問題なのでは?医師側の「過失」なんでしょうか。吸引分娩を選んで成功しなかったから賠償とは。逆に帝王切開を行って手術の合併症で後遺症が残ったら「帝王切開を安易に選択したことが後遺症につながった」とも言えるわけですよね。産婦人科医にとっては八方塞りの状況なのではないでしょうか。

 産婦人科って、一般の方にとってはかなり漠然としたイメージだと思います。「子どもを生む」という、一人の女性が一生のうちに数度しか経験しないことを扱っているわけですから。しかし、誰しもが通る医療でもあるわけです。現在の産婦人科医療の直面している問題は、他人事では済まされないほど切迫しています。

 「ノーフォールト 岡井崇」という小説をご存知でしょうか。昭和大学病院産婦人科科長の岡井崇さんが書いた産婦人科医療と裁判に関する小説です。

 現役産婦人科医が描くその医療現場はとてもリアルで、フィクションとはいえ圧倒的な迫力を感じます。内容は産婦人科医の、裁判にいたるまでの経緯、その心情、患者やその家族とのコミュニケート、弁護士や裁判官との観点の違いなど、取材したのでは到底書けないような深い内容を見事に纏め上げています。産婦人科医療の現状、そしてその解決にはどうすれば良いのか、一般の方にも分かるよう綿密な医療行為には補足がなされているのもポイント高いです。是非一度ご覧になってみて下さい。一度読み出したら止まらない面白さがあります。

関連:ノーフォールト 岡井崇

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