[生殖]の記事一覧

2009年01月11日

長野県立須坂病院に常勤の産婦人科医師が2名配属。

南郷、前医師を採用〜産婦人科は4人常勤に

 県立須坂病院(斉藤博院長)に昨年11月から非常勤で勤務する産婦人科医師2人が1月1日付で常勤採用され、5日、県庁で辞令が交付された。南郷周児医師(46)と前和幸医師(36)は6日、取材に対し抱負を語った。5日、仕事始めの式で斉藤院長は「対話を忘れず、介護・福祉と連携を密に一人ひとりを大事にする医療を」と職員に訓示した。今年の標語はパートナーシップ。病院機能評価の更新や地方独立行政法人への移行準備が予定される。

 南郷医師は東京出身。慶応大学医学部を昭和62年卒業。旧豊科日赤に4カ月赴任し栃木や都内に勤務した。「スタッフが好意的で仕事がしやすい環境。普通にお産ができる施設と医師が必要とされるこの地域の期待に応えたい」。徒歩7分の市内在住。

 前医師は大阪府豊中市出身。東京大学医学部を平成10年卒業。長野県立こども病院に1年赴任し、静岡や都内、東大医局に勤務した。「よりよい医療を提供しようと同じ方向を向く姿勢が見える。受けられるべき医療を力の範囲内で提供したい。住民として地域に溶け込みたい」。徒歩5分の市内在住。

 病院からは東京へのアクセスがよく、景観や自然環境、温泉、そば、スキーの信州の魅力に加え、迎える職場の環境や、院長、副院長、県の姿勢が好印象を与えたようだ。

 産科は3月15日からお産を再開する。担当医師は内藤威副院長と、信大病院で研修中の永井友子医師が4月に戻ると新年度は4人体制となる。

 同院は5日現在、医師37人、看護師208人、医療技術者42人、事務13人の合計300人。定数は310人で医師2人、看護師8人の減。なお臨床研修医は6人。



 熱意のある産婦人科医が2人も。

 医者側が地域に根ざした産科医療を頑張ろうとしているので、地域の方々も出来るだけ出来立ての土台を崩さないように、協力してほしいと思います。
posted by さじ at 08:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生殖

2009年01月09日

13年間冷凍されていた飛騨牛の精巣からクローン牛を誕生させる

「飛騨牛」元祖のクローン牛誕生…冷凍保存の精巣で

 岐阜県特産「飛騨牛」の元祖とされる牛と同じ遺伝子を持つクローン牛を、死後13年間冷凍されていた精巣を使って誕生させることに、近畿大学と県畜産研究所の研究チームが成功した。

 米科学誌「プロスワン」に8日、発表した。

 内閣府食品安全委員会の作業部会は、クローン牛が食品として安全なことを認める方針を固めており、すでに死んだ牛から肉質のよいクローン牛を量産することに道を開く成果だ。

 使われた牛は、約4万頭の飛騨牛を誕生させ、そのブランドの立役者となった「安福号」。1993年9月に死んだが、精巣が凍結保存されていた。

 佐伯和弘・同大教授(家畜繁殖学)らの研究チームは2007年1月、精巣を解凍し、生きていた一部の細胞を培養。

 増殖させた細胞の核を、核を除去した別の牛の卵子に入れて、子宮に移植した。同年11月〜08年7月に4頭が生まれ、このうち2頭が今も育っている。

 マウスの死体からクローンマウスを作ったことがある理化学研究所の若山照彦チームリーダーは、「凍結した牛から生きた細胞が見つかったのは画期的だ。スーパーで販売されている凍結した肉からも、クローン牛が作れるかもしれない」と話している。



 日本人の食にかける情熱は異常なまでに研ぎ澄まされてますなぁ。

 まぁそのおかげでこんなにもおいしいものを食べることができるんですけど。やはり国産牛のおいしさは格別ですね。

 ただそれを、そのー、今までは努力でおいしくしていたわけで。クローン牛は科学的に考えれば食用として通用するとは思いますけれど、本当に努力して育てた飛騨牛と一緒なんだろうかという気も。やはりクローン羊ドリーの最期が頭に残ってますからね。

 あとこのコピペ思い出したのでついでに貼っておきます。

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もうずいぶん前の話だが、昔アメリカの大学に留学してた頃テレビ
でこんな感じのニュースレポートを見た。
「日本人はなぜアメリカ産牛肉を買わないのか?」

レボーターが日本と米国の食肉輸入障壁の問題を説明する。全体的にやや非難がましい口調。
そして日本での街頭インタビュー。「国産牛肉の方がおいしいから」
「アメリカの牛肉まずいから」などと答える日本人。
一緒にテレビを見ていた現地学生たち、ちょっとムッとするw
レポーター:「確かに最近ニューヨークでは日本産牛肉を売り物にした高級レストランが増えている。日本産の牛肉はそんなに美味いのか? 私は自分でそれを確かめるべく、ニューヨークで一番人気といわれるレストランXX(店名忘れた)に足を運んだ。」
レポーターの前に出されるステーキ。日本人の目から見ると結構な大きさがあるが、レポーターは「信じられるかい? こんなちっぽけなステーキが300ドルもするんだ!」と大げさに驚く。
ステーキを口にするレポーター。
しばらく沈黙。

レポーター:(神妙な口調で)「……我々がこれまで食べていたのはサンダルの底だった」

医学処:ペット犬のクローン作りを韓国が受注する。
医学処:世界最年少でクローンマウスの作製に成功した近畿大の21歳女性
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2008年12月31日

習慣性流産の原因遺伝子を藤田保健衛生大学が突き止める

藤田保健衛生大・倉橋教授ら

 流産を繰り返し起こす原因となる遺伝子の一つを、藤田保健衛生大総合医科学研究所の倉橋浩樹教授(臨床遺伝学)らのグループが突き止めた。これまで習慣性流産(不育症)は大半が原因不明だったが流産の可能性を科学的に予測、効果のない不妊治療を避けることも可能になるという。成果は24日の米国の医学誌(電子版)に掲載される。

 ヒトは卵子、精子をそれぞれ生成する際に46本の染色体を23本ずつに分ける。マウスを使った研究で、卵子の染色体数を分けるのにかかわる遺伝子に変異があると、染色体の異常を起こしやすいことが分かっていた。

 倉橋教授らは、ヒトの染色体で同様の働きをする遺伝子「SYCP3」に注目。原因の分からない習慣性流産の女性26人についてSYCP3を調べたところ、二人に変異が見つかった。正常な出産だった150人でSYCP3を調べると異常はなく、SYCP3の変異が習慣性流産の一因と結論づけた

 倉橋教授は「今回、遺伝子に変異が見つからなかった習慣性流産の患者に別の遺伝子変異が見つかる可能性もあり、さらに研究が必要」と話す。

 3回以上流産を繰り返す習慣性流産は、全妊娠の1−2%ある



 おおー。流産は母体の因子がらみが結構ありますけれど、これも遺伝子として現れるんですねぇ。今後は、まずこの遺伝子を検索することも、不妊治療のひとつになるときが来るのでしょう。

医学処:24歳以下の妊婦ほど、妊娠中の喫煙率が高い
医学処:受精卵の遺伝病を調べる着床前診断は出生率が低い
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2008年12月18日

受精卵の遺伝病を調べる着床前診断は出生率が低い

「着床前診断」低い出生率…44件実施で誕生3人

 日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は13日、体外受精した受精卵で遺伝病の有無などを調べる「着床前診断」について、全国で過去3年間に行われた件数と結果を公表した。

 同学会に報告した8医療機関では44人の女性に受精卵64個を戻したが、生まれた子供は3人と少なかった。着床前診断の実施成績が明らかになったのは初めて。

 着床前診断は生命の選別につながるとして賛否両論がある。そのため同学会では、実施を望む医療機関からの申請を審査し、設備や実施内容が問題ない場合に限って認めている。

 今回公表したのは2005年4月〜今年3月の結果で、同学会は107件の申請を受け、73件を承認。このうち、夫か妻の染色体異常で流産を繰り返す「習慣流産」の夫婦が57件を占めた。出産に至った3件はいずれも習慣流産の夫婦で、遺伝病を持つ夫婦の出産例はなかった。

 出産率の低さについて、同学会倫理委員長の星合昊・近畿大教授は「受精卵を分割する時に傷つけてしまうなど、原因は技術的なものかもしれない」と語った。

 また同学会は、日本生殖医学会が兄弟姉妹などから提供された精子・卵子を使った非配偶者間の体外受精を認める方針を決めたことに対し、「厚生労働省の部会は、精子・卵子の提供を『匿名の第三者』に限定し、それ以外は好ましくないと報告している。我々はそれを尊重したい」(星合委員長)との見解を示した。

 非配偶者間の体外受精や着床前診断、代理出産などの生殖補助医療は法制化が進んでいないことから、日本産科婦人科学会は近く、早急な法整備を求める要望書を舛添厚生労働相に提出する予定。



 受精卵を調べるというリスクをおかす必要性を考えるとちょっと微妙な感じもします。

 法整備、こういう問題はちっとも進まんですよね。日本においては生殖補助医療と臓器移植関連の議論が求められているにもかかわらず。技術はあって需要もあるのに議論されない、というのは酷いもんですよ。結局丸投げして、世間でもナァナァになってきたときに、そろそろ反発も少ないだろうからGOサイン出しますかって感じで決まるじゃないですか。よくわかんないです、それって。今苦しんでいる当事者の声を聞け、と。

関連
医学処:後頚部浮腫像検査はあくまで参考程度に。
医学処:Duchenne型筋ジストロフィーに対して着床前診断が行われる
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2008年12月13日

世界最高齢、70歳が体外受精で出産する。

70歳、体外受精で出産 インド地元紙「世界最高齢」

 インドで11月下旬、70歳の女性が体外受精で妊娠し、女児を出産した。地元紙タイムズ・オブ・インディアなどが8日付で伝えたもので、同紙は「世界最高齢での出産」と報じている。

 出産したのは、インド北部ハリヤナ州に住むラジョ・デビさん(70)。デビさんは結婚後50年以上、子どもができず、今年4月に不妊治療で受精卵を移植したという。卵子の提供者などは明らかにされていない。

 治療にあたった医師のアヌラグ・ビシュノイ氏によると、体への負担を考え、双子を妊娠しないような方法で治療を施したという。母子ともに健康で、デビさんは同紙の取材に「長く子どもができなかったのでうれしい」。父親のバラ・ラムさん(72)は「親類が大勢いるので子育てには問題ない」と話した。

 ビシュノイ医師は別の地元紙の取材に「インドの人口の15%が不妊の問題に直面している。しかし、もはや社会的なタブーではなく、科学的に治療できる」と語った。



 でも70歳でしょう・・・?素直に喜べませんね。まあインドの家庭状況は分かりませんけれども。親戚に育てられるという話は美談もあれ悪い話もあるので。

 日本だったら、というか、自分だったら、どうなんですかね、自分が10歳になった時に両親が80歳っていうのは。難しいもんですね。子供のことを考えたらちょっとどうかなぁ、と。子供がほしい気持ちは分かりますが・・・早いうちに養子なりなんなりといった手はあったのではないか、と。

関連
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医学処:キヤノンが、社員の不妊治療費を100万円分補助する。
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2008年12月01日

「妊娠の心得11か条」から、妊娠や出産について学ぼう

「出産は死の危険さえあります」 医師作成「妊娠の心得」大反響

 産婦人科医がブログに書いた「妊娠の心得11か条」が、ネット上で大反響を呼んでいる。背景には、「飛び込み出産」の例のように、リスクに無知な人が増えていることがあるらしい。どうしてこんなことになったのか。

「神様から授かったら、それがどんな赤ちゃんでも、あなたの赤ちゃんです」

 こんな当たり前とも思える「妊娠の心得」。それを「11か条」にまとめたのが、岡山県の川崎医科大学附属病院で産婦人科医長をしている宋美玄さん(32)だ。宋さんがこの11か条を、自らのブログ「LUPOの地球ぶらぶら紀行」に書き、医療介護CBニュースが2008年11月17日付記事で伝えると、たちまちネット上で話題が沸騰した。

 宋さんは11か条で、常に妊娠の可能性を考え、出産では死の危険も覚悟しなければならないと強調。生まれる子どもについても、流産したり、脳性まひになったりする可能性を知っておくべきだとする。そして、かかりつけ医を持ち、妊婦検診を受け、タバコ・酒、ダイエットを避けて、医師不足の中で出産する病院を確保する必要性を説いている。

 当然知っているべきこうした「心得」が、なぜ知られていないのか

 まず考えられるのが医療の進歩だ。ピルなどの避妊手段が普及し、出産で命を落とすケースもかなり減っている。そして、こうした医療を過信して、妊娠・出産期間を通じて、安全・安心が当たり前と思っている人が増えていることがある。

 医療過信の典型的な例が、「飛び込み出産」だ。

 奈良県で2007年8月29日、救急車で搬送中の妊婦(38)が16回も病院に受け入れ拒否されて死産したケースは、妊娠7か月にもかかわらず、かかりつけ医がいなかった

 「飛び込み出産ですと、HIVにかかっているのか、赤ちゃんが逆子なのかという情報がなく、病院側も不安になって尻ごみしてしまいます。そうして、妊婦の方も、結果的に不利益を被ります」と宋さん。「マスコミの論調は、どんな妊婦でも命を救って当然というものです。妊婦が無責任なケースでも、救えなければ医療側が責められるというのはどうかと思いますね

 都内では、脳内出血の妊婦(36)がたらい回しにされ死亡した事故が08年10月22日に発覚した。このケースはかかりつけ医がいた。しかし、宋さんは、病院が受け入れても助かったか分からない危険な状態であったのにもかかわらず、ニュースが搬送を断ったことだけを強調していると感じた。そこで、妊娠リスクの存在を知ってほしいと思い、「妊娠の心得11か条」を書いたという。

 とくに、晩婚化が進んでいる中では、高齢出産によるリスクも増えていると宋さんは指摘する。「なおさら、合併症の発症などリスクの高さに気をつけないといけません」

 ただ、はてななどの書き込みの一部では、リスク強調は不安を与えるだけ、ますます子どもが生みたくなくなるといった声も出ている。

 これに対し、宋さんは、「患者と医者は、立場が違うので溝があるのは当然です。だから、私たちが毎日の医療で安全に力を入れていることも知ってもらい、その溝を埋める架け橋になりたい。11か条は、そのためにまとめました」と話している。



 読んでみましたが、素晴らしく丁寧にまとめられています。妊娠する可能性のある全ての女性、及び妊娠する行為をしている男性に、読んでもらいたいです。

 葉酸のことなど、細かいところまで書かれている点も流石です(参考:医学処:先天性障害の発症リスクを下げる「葉酸」を知らない妊婦が多すぎる。

 コピペして普及させてほしい、という作者の意図を汲んで、以下に転載させていただきます。ただの性教育や安易な倫理指導と思わないで、是非読んでみて下さい。きっと役に立つと思います。


1.セックスをしたら妊娠します。

 この世に100パーセント避妊する方法は、セックスをしない以外にありません。(ピルですら100%ではありません。でも、もちろん避妊することは望まぬ妊娠を大幅に減らすことが出来るので、妊娠したくない人は必ず避妊しましょう!!)

 日頃セックスをしているなら、常に妊娠の可能性を考えましょう。
そして、子供が欲しいと思っているなら、赤ちゃんの神経系の病気(二分脊椎など)を防ぐために葉酸のサプリメントを飲みましょう。(1日0.4mg)


2.「この男の子供を産むためなら死んでもいい!」と思うような男の子供しか妊娠してはいけません。

 妊娠出産は何が起こるかわかりません。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病など、妊娠にまつわる病気になるかもしれません。また、お産も体にとっては大きな負担となります。

 毎年、約60人の妊婦が出産で死亡しています。あなたが生きて出産を終える保証はどこにもありません。

 妊娠をするにはそれなりの覚悟が必要ですよ!

(妊娠はよく考えて、覚悟を持って!、というたとえでシングルマザーなどの選択を否定するものではありません。)


3.妊娠しただけでは喜ばない。安易に他人に言わない。

 妊娠が非常に初期に診断されるようになってから、妊娠初期の流産が15%以上と非常に多いことがわかりました。

 最低でも妊娠4ヶ月に入るまでは手放しで喜んではいけません。職場で仕事を軽くしてもらいたいと上司にお願いするなど重要な時だけ人に言いましょう。

 出来ることは赤ちゃんを信じてあげることだけ。

 また、運悪く15%に入っても、あなたのせいじゃありません。不必要に自分を責めないでくださいね。


4.神様から授かったら、それがどんな赤ちゃんでも、あなたの赤ちゃんです。

 この世に完全に正常な人間なんていません。重いものから軽いものまでいろんな障害を持って生まれてくる赤ちゃんもたくさんいます。
妊娠中に診断できる異常はごく一部。中には幼児になってからわかる異常もあります。

 誰しも自分の赤ちゃんが正常だという保証のもと、出産することなんて出来ません。親になるということは、どんな赤ちゃんが生まれても自分の子供として受け入れることです。


5.産む、産まないは自分たち夫婦で決めましょう。

 とはいえ、妊娠中に赤ちゃんの異常や、もしかしたら異常があるかもしれないというサインがあると主治医に告げられるかもしれません。

 それが中期(妊娠21週まで)であれば、望んだ妊娠であっても異常の程度によっては中絶という選択肢が出て来る場合もありますが、あくまでも夫婦二人でよく話し合って決めましょう。価値観や考え方は人それぞれ。大事なことは責任を持って自分たちで決めましょう。(大事なことを責任を持って決められる大人になってから妊娠しましょう。)

 また、このことについては妊娠前から二人で話し合っておくべきです。


6.かかりつけ医をもちましょう。

 当然ですが、ちゃんと妊婦健診を受けましょう。きちんと初期に超音波で予定日を決めること、HIV、B型肝炎、血液型、梅毒などの初期検査を受けることは、妊娠中に管理方針を決めるのに後々重要であったり、あなたの赤ちゃんを守ったりするために必要です。また妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の早期発見には欠かせません

 もしあなたにお金がなくても、自治体が発行する母子手帳には最低限の妊婦健診を受けるためのチケットがついていますし、分娩費用も援助してくれる制度があります。

 また、産科医不足からお産を出来る場所が限られています。妊娠が分かったら、病院などに早めに問い合わせてお産をする場所を確保しましょう。里帰りしようなどと思っていても、受け入れてくれる場所がないかもしれません。

7.赤ちゃんは全ての運命をあなたに預けていることを忘れないで。

 赤ちゃんは栄養や酸素など、生きて成長するために必要なものを全てあなたに依存しています。お母さんが煙草やお酒など赤ちゃんにとって毒となるものを摂取すると、胎盤を通して赤ちゃんに移行します。
 
 体型を気にして、妊娠中にダイエットをするなどはもってのほか。(妊娠前に標準的な体重だった人は9〜12キロ体重を増やさなくてはいけません。)

 煙草が我慢できないような人は、お母さんになる資格はありません。また、「出産したら遊べなくなるから」と旅行をするのもいいですが、何かあっても後悔しない程度に。旅先で何かあってもすぐに診てくれるところがあるかは最低確認を。おなかの赤ちゃんのために時には自己犠牲を払うことも覚悟の上妊娠しましょう。


8.赤ちゃんが完全に元気であるか分かる方法はありません。

 胎児心拍のモニターや超音波など、赤ちゃんが元気であるか評価する検査はありますが、どれも完全ではありません。予定日を目前にお腹の中で突然死をしてしまう赤ちゃんもいます。もし動きが少ないと思ったら病院へ。

 無事に産まれるまでお母さんも赤ちゃんも安心できないのが妊娠なのです。毎年5000人以上の赤ちゃんがお産の間際や生まれてすぐに死亡しています。また、脳性麻痺になる赤ちゃんがいますが、その90%は分娩前にすでに原因があり、分娩を機に脳性麻痺になる赤ちゃんはわずか10%であることも知っておきましょう


9.出産は出来うる限り安全な場所でしましょう。

 妊娠経過にどれだけ異常がなくとも、出産の時に赤ちゃんやお母さんが急変することは誰にでもありえます。専門家が考える安全な場所とは、緊急時に、高次の医療機関(産科医と新生児医と麻酔医が揃っていて、帝王切開や未熟児医療ができる体制)か、そこへすぐ搬送できるくらいの近さの産院です。

 部屋がきれいだから、ご飯がおいしいから、好きな姿勢で産めるから、上の子を立ち会わせたいから・・そんな理由で緊急時の安全性が劣る産院を選ぶのはおすすめしません。もちろん、納得の上でなら構いませんけれども。

 お産をなめてはいけませんよ。
(残念ながら現在産科医不足のため、妊婦さん全員が安全性の高い病院を選ぶとパンクしてしまいます。だから、リスクの低い妊婦さんには高次の医療機関ではなく開業の産婦人科を選んでもらわないといけない場合も多いです。でも、最低でも産婦人科医立会いの下お産しましょう。)


10.下から産んでも、お腹から産んでも、あなたはお母さん。

 人によっては骨盤位(逆子)などの理由ではじめから帝王切開をしないといけない人もいます。また、陣痛が来て頑張っても、下から産まれなくて帝王切開をしないといけない人もいます。

どんな出産になっても、あなたが身を削って赤ちゃんを産んだことには変わりありません。帝王切開で産むと子供の性格が悪くなるとか、親子の愛情が無くなるとかいう悪意に満ちた色々な妄説に惑わされないで。あなたと赤ちゃんにとって一番安全な方法でお産をしましょう。


11.妊娠・出産は一つとして同じものはありません。

 妊娠・出産を経験すると、自分が何でも知ってる気になってしまう人がいます。年配のご婦人で「私のときはこうだったわよ」のように先輩面をする人もよくいますよね・・でも、一つとして同じ妊娠・出産はありません。同じ人が次にまた妊娠しても、同じようになるとは限りません。

 自分の経験を別の人や別の妊娠にあてはめないようにしましょう


引用:LUPOの地球ぶらぶら紀行

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2008年11月29日

iPS細胞から精子や卵子をつくる研究が容認される。

万能細胞から精子など 容認へ

 あらゆる組織や臓器になることができるとされるiPS細胞やES細胞などの万能細胞から精子や卵子をつくる研究について文部科学省の専門家委員会は禁止していた、これまでの方針を改め、今後、認めていくことを決めました

 ヒトの万能細胞から精子や卵子をつくり出す研究は倫理的な問題があるとして、国はガイドラインで禁止していますが、不妊症や先天性の難病などの治療につながると期待されることから文部科学省の専門家委員会が検討を進めてきました。

 その結果、27日の会合で、これまでの研究を通じて研究機関の間では生命倫理に関する理解が深まっているなどとして万能細胞から精子や卵子をつくりだすことを認めるとしました。しかし、これらの精子や卵子から受精卵をつくり出すことについては、さらに慎重な議論が必要だとして引き続き禁止としました

 文部科学省では今後、ガイドラインの改正などの手続きを進めることにしています。委員会の主査で理化学研究所の豊島久真男研究顧問は「万能細胞への期待は大きいが、高い倫理が要求される問題なので、社会的に許される部分を慎重に判断していきたい」と話しています。



 お。これは期待。生殖細胞にも応用されれば、不妊症や遺伝的疾患で悩む方の救いになることは間違いありません。

 ガイドラインづくりは難渋するかもしれませんが、早いうちにやらねばならないことでもありますからね。「慎重に判断する」というのは議論に議論を重ねることであって、決して「議論を放棄する」ことではありません。どうも日本はこういう倫理的に難しい問題に対しては考えることをやめてしまう傾向にあるような気がするので(臓器移植問題然り)、この件に関しては期待です。

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2008年11月25日

注射液の起こす痛みはワサビの刺激と同じ仕組み。

注射液の痛み=ワサビの刺激 アルカリ溶液の反応仕組み解明

 アルカリ性の注射液が起こす痛みはワサビの刺激と同じ仕組み――。自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県岡崎市)の富永真琴教授らの研究グループがこうした研究結果をまとめ、13日付の米医学実験雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に論文が掲載された。

 抗けいれん剤やヘルペスの化学療法剤の注射剤はアルカリ度が高く鋭い痛みを感じる。酸による刺激の解明は進んでいるが、アルカリへの反応の仕組みを解明したのは初めてといい、「痛くない注射」の開発に役立つ可能性がある。

 富永教授らはワサビなどの辛み成分によって活性化する「トリップ・エーワン」というたんぱく質に注目。このたんぱく質は細胞表面にあり、刺激されると、痛みを伝える電流が流れることがわかった。



 夢の技術ですねぇ。

 痛くない注射が出来れば患者さんも相当助かるでしょう。薬による痛みを緩和して、あとは針を刺すときの痛みを緩和することが出来れば・・・。

 糖尿病の自己注射も、針がめちゃくちゃ細くなることで痛みをほとんど感じないまでになりましたからね。医療技術は患者さんのためのもの。痛みをできるだけ無くす方向に進化してゆく・・・。

  /l、
 (゚、 。 7   
  l、~ ヽ      
  じし' )ノ 

関連
医学処:新人看護師の技術低下が著しく、一人では注射もできない。
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2008年11月09日

済生会宇都宮病院に正常分娩を対象とした院内助産所を作る

済生会宇都宮病院に院内助産所 産科医の負担軽減へ

 産科医の負担軽減を図ろうと、済生会宇都宮病院(中沢堅次院長)は五日、正常分娩の妊婦が対象の院内助産所「バースセンター」を宇都宮市竹林町の同病院九階に開設した。県内の中核病院では二番目の院内助産所。同病院によると、産科病棟とは別の場所に設置し、助産師が独自に運営する施設としては全国で初めて。

 同センターは、妊婦が陣痛から出産、産じょく期までを過ごす個室四室や、マタニティーヨガなどを行う多目的スタジオなどを整備。助産師六人が出産前後の妊産婦健診や相談、運動指導などを行う

 年間百五十人の受け入れを見込んでいる。妊婦の経過に異常がみられリスクが高いと判断された場合、同病院母子医療センターの産科医が即対応する

 開所式で中沢院長は「医師が行っていた正常分娩の一部を移譲できれば、産科医のマンパワーを異常分娩に集中できる。院内助産所は産科医の地域貢献にも今後役立っていく」とあいさつした。

 この日同センター初の出産に挑むことになった宇都宮市の三十代の女性は「こういう施設ができたのは魅力。信頼している助産師さんがずっと一緒にいてくれるので安心できる」と話していた。



 ああ、これは素晴らしいですね。患者さんにとってもリスクが減るし、医者にとっても負担が減るし、何より助産師の能力を最大限に発揮できると思います。

 今後、こういった形の病院が増えてくれば、産婦人科医の過重労働も軽減して、結果的に妊婦さんにとってリスクの少ないお産ができるようになるのではないでしょうか。

関連
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2008年10月30日

性同一性障害者同士のカップルが結婚する。

性同一性障害カップル結婚「行動すれば壁越えられる」

 鹿児島市役所 戸籍の性別をともに変更した性同一性障害のカップルが17日、鹿児島市役所に婚姻届を出した。

 2人は、同市の飲食業若松慎さん(35)と窪田麗奈さん(36)。幼いころから心と体の性が一致せず、違和感に襲われ続けた。容姿にそぐわない言動のため、いじめや偏見の対象となる悩みもあったという。

 「本来の性」に戻ろうと性転換手術を相次いで受け、今年2月には戸籍の性別を若松さんは女性から男性に、窪田さんが男性から女性へと変更した

 2人は友人の紹介で知り合って5年目。慎さんの誕生日に合わせて結婚した。市役所には若松さんの店の従業員も駆けつけ、「おめでとう」と祝福した。慎さんは「うれしい。責任も感じる」。麗奈さんは「明るい家庭をつくりたい」と笑顔。2人は「行動すれば壁は乗り越えられる。同じ障害で悩む人には、こういう道もあると知ってほしい」と話した。

 鹿児島家庭裁判所によると、性同一性障害者に戸籍上の性別変更を認める特例法が2004年施行された後、県内で8月末までに6件の変更が認められている。



 凄い偶然、なんでしょうかね。

 いや、でも同じマイノリティとしての悩みや背景を持つ段階で、お互いに深くまで惹かれあったのでしょう。

 こういう偏見は早くなくなってほしいですね。自分に正直に生きることの出来る社会が出来てくれたらな、と思います。
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2008年10月27日

医学ちょっといい話7「ベテラン助産師の卒業」

60年で赤ちゃん6千人、ベテラン助産師「卒業」 高松

 約60年間で6千人の赤ちゃんを取り上げたベテラン助産師が引退した。高松市多賀町3丁目の平野艶子さん(86)。戦時中は無我夢中でへその緒を切り、70年代のベビーブームには寝る間もなく妊婦の元に駆け付けた。小さな体から力いっぱいの産声が上がるたび、「命の尊さ」を実感した。引退を機に、自宅近くに子どもたちの安全と健康を祈る「お地蔵さん」を建て、毎日手を合わせている。

 1942年11月、20歳で香川県西部の三豊郡神田村(現三豊市)に保健師として赴任した。男性は次々と出征し、女性や子ども、お年寄りばかりが残っていた。赤痢などが流行し、「死」と隣り合わせの日々。村に医師はおらず、助産師の資格も持つ平野さんに妊婦の世話が回ってきた。

 初めてのお産は真夜中だった。「生まれそうだからすぐ来て」と玄関をたたかれた。無我夢中でへその緒を切った。「新しい命に感激した」

 結婚して移り住んだ高松市内を45年7月、米軍機が襲った。道のあちこちに黒こげの死体が転がっていた。「地獄だと思った。人の命が簡単に失われるのが恐ろしかった」。命を大切に守り育てなければならないと誓い、助産師として生きていこうと決意した。

 スクーターで妊婦の家を回った。56年、自宅を改装して平野助産院を開設。71〜74年ごろの第2次ベビーブームでは、寝ずに1日7人を取り上げたこともあった。

 今年2月、心臓を患って入院し、「これ以上続ければ母子に迷惑がかかる」と引退を決めた。先月末、助産院を閉じた。これまでお産にかかわったのは約6千人。3代にわたり世話した家族もあれば、5人の子どもすべてを取り上げた母親もいる。「思い出の場所を残して」「再開して」との声は根強い。

 「新しい命に触れる感動を60年も味わえて幸せだった。子どもは宝物。引退はしたけれど、地域の安全に貢献したり、子育てに悩むお母さんの相談に乗ったりしたい」



 こういう尊い人が、地域の医療を支えているんだなぁ。志をもった人が日本中に配属されれば、まだまだ日本の医療も。

 60年間お疲れ様でした。

 分娩を助け、妊産婦や新生児の保健指導をする助産師は、産科医の不足もあって再び脚光を浴びつつある。厚生労働省などによると、助産師は06年で2万7352人。ピーク時の51年(7万7560人)に比べ、大幅に減った。だが、10年前と比べると約3千人増えている。

 日本助産師会(東京都台東区)の加藤尚美専務理事は「お産における大病院志向などもあり、地域の助産所は廃業が相次ぎ、一時なり手が減った。しかし身近な相談相手として再び見直されてきている」と説明する。


 お産に興味のある看護師志望の高校生などは、助産師の資格を目指してもいいかもしれませんね。今後の需要もありますし、何より産科に特化したスペシャリストという魅力もありますし。

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2008年09月16日

高齢出産でも、「おめでとう」を。

高齢出産:1 何歳でもおめでとう 大葉ナナコ

 「妊娠したと言うと、『大丈夫なんですか』としか言われない。誰も『おめでとう』と言ってくれない」。ある母親学級で、45歳の妊婦が泣きながら訴えました。

 周りの過大な心配は、配慮としては伝わらず、ときとして「あなたには無理」というメッセージになってしまいます。難産予備軍とでもみなした言葉かけや視線こそ、妊婦の血中ストレス濃度をあげ、母子を不健康にするのです。

 日本では35歳以上の出産を高齢出産と呼びます。92年までは30歳以上が高齢出産でした。

 現在、日本人女性の平均初産年齢は29.4歳。35歳になった途端、全例をハイリスク群のようにみなす扱いには根拠がありません。ちなみに海外ではお産を一定の年齢で区別せず、「高齢出産」という言葉自体もないのです。

 何歳の妊娠であろうと、体調の個人差は大きいものです。合併症の恐れや持病がある場合など、医療の介入が必要なお産は全体の約2割と言われます。古今東西、リスクのないお産などありません

 そもそも、妊娠は母体の健康度が高い時に成立します。新しいいのちの始まりは、生命力が高い母子に起きるのです。

 「おめでとう。今のあなたから生まれてきたいいのちなのね」。妊婦はその言葉を待っています。新しいまなざしと、心からの祝福が、少子化社会を救うのです。



 確かに高齢出産にはリスクは付き物です。

 しかし出産される方はそのリスクを覚悟の上での妊娠ですので、周りから言われたくはないかもしれませんね。

 誰しもが、新しい命を授かった時には驚きの表情と、喜びの表情と共に「おめでとう」と言ってもらいたいものです。

 こういう点でのささやかな配慮を。

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2008年09月14日

出産育児一時金を3万円引き上げ、無過失補償制度に。

出産一時金3万円上げ=産科補償制度スタートで−厚労省

 厚生労働省は12日、出産時に妊産婦に対し公的医療保険から支払われる「出産育児一時金」を35万円から38万円に3万円引き上げる方針を決めた。

 分娩時の事故で赤ちゃんが脳性まひとなった場合に、医師の過失に関係なく3000万円を補償する無過失補償制度が来年1月からスタートするのを踏まえた措置。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療保険部会に提示し、同部会は大筋で了承した。



 いよいよですね。

 まあこの制度が良いのか悪いのかは難しいところですけどね。国民皆保険制度みたいに、「痛み分け」をするわけですから。脳性まひという、出産を行うにあたって当然出現するリスクを、誰のせいにもせずに、3000万払うという大胆な制度です。

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2008年09月10日

59歳の女性、不妊治療の結果3つ子を出産する。

59歳女性、パリの病院で3つ子を出産

 ベトナムで不妊治療を受けた59歳の女性がパリで3つ子を出産したことが分かった。病院のスポークスマンが8日、明らかにした。

 フランスでは、自然な妊娠出産が不可能な年齢に達した女性に不妊治療を提供することは違法とされており、この女性の妊娠が発表されて以来、国内メディアでは非難の声が広がっていた。

 8日付パリジャン紙は、「この点に関しては科学の進歩は人類にとって好ましくない」とするカトリック教会のアンドレ・バン・トロワ大司教のコメントを掲載した。

 スポークスマンによると、女性は6日夜にパリ市内の病院で帝王切開により、それぞれ体重2.3キロと2.1キロの男の子と、同2.4キロの女の子を出産。母子ともに健康状態は良好という。病院側はこれ以上の詳細を明らかにしていない。

 イタリアの不妊治療専門家セベリノ・アンティノリ医師が63歳の女性の出産を手掛け世界的な物議を醸した1994年以降、さまざまな国では50代後半から60代の女性による出産例も報じられている。



 まぁねぇ。難しいですよねぇ。例えば技術的に80歳での出産が可能になったとして、でもその女性は子供が20歳になるまで生きている可能性は結構低いわけで、それは育児の責任としてどうなんだ?という話にもなってきます。

 子育てに関しては、全責任を親が負わなければいけないわけで、「自分の勝手でしょう」というわけにはいきません。

 もうすぐ還暦なのに三つ子。ちゃんと育て上げて幸せにすることが出来るのでしょうか。いささか不安ですね。個人個人の考え方はあるのでしょうけれど、産むのならやはり「生殖可能な年齢」のうちに。

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2008年08月31日

誘発剤を用いた不妊治療に明確な効果がみられなかった

誘発剤と人工授精「効果なし」

 特段の原因が見当たらない不妊夫婦に対して最初に行うことの多い2種類の治療法について、実際には明確な効果がみられなかった、との研究を英アバディーン大などのグループがまとめ、英医学誌に報告した。

 他の専門家も「いずれも効果を科学的に検証せずに長年、経験的に行ってきた治療法で、見直しが必要だ」と指摘する。

 研究チームは、2年以上原因不明の不妊に悩んでいる女性580人のうち、3分の1に排卵誘発剤のクエン酸クロミフェンを投与、3分の1に夫の精子を子宮へ入れる人工授精を6か月間実施、残り3分の1には治療を行わなかった。

 その結果、出産にこぎつけたのは誘発剤で14%、人工授精23%、無治療17%だった。これら三つの方法の差はわずかで、統計的には「効果なし」と判定された。

 不妊夫婦は、国内では7組に1組いて、その4分の1は原因不明とされる。誘発剤や人工授精は費用が安いため、まずこれらの方法を試してから、成功しなかった場合に、より本格的な治療へと進むのが一般的になっている。



 クロミフェンを用いた排卵誘発法にメス。

 経験的に行っているものの、効果があまり期待できないものっていうのは、まだまだ沢山あるんでしょうなぁ。

 新しい医療が続々登場する中で、こうした昔ながらの医療についても再検討されていく「時代の節目」なのかもしれません。

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福島大野病院事件、地検が「控訴しない」ことを発表する

帝王切開した医師の無罪確定へ 福島地検が控訴を断念

 福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性(当時29)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた執刀医を無罪とした福島地裁判決について、福島地検は29日、「控訴しない」と発表した。これにより執刀医で同病院の産婦人科医、加藤克彦医師(40)=休職中=の無罪が確定する。

 控訴断念の理由について同地検の村上満男次席検事は、判決を覆すために必要な証人や鑑定といった「新たな証拠を出すことは不可能」と説明。加藤医師を逮捕・勾留したことについては「当時の判断としては、鑑定医の話や医学書の記載に基づいたもので、間違いはなかった」と話した。

 同地検は「女性が癒着胎盤で大量出血する恐れがあったにもかかわらず、子宮摘出に移行せずに胎盤をはがし続けて女性を失血死させた」などとして、06年3月に加藤医師を起訴。だが、20日の福島地裁判決は「胎盤をはがしはじめたら、継続するのが標準的な医療」として同地検の主張を退け、異状死の場合、死亡後24時間以内に警察へ届けなければならない医師法違反にも問えないとしていた。

 加藤医師の弁護団は「検察の主張はまったく立証されておらず、控訴断念は当然。裁判が産科を中心とする医療現場全般に与えた悪影響が無罪確定で終息することを期待する」とのコメントを出した。



 長きに渡る裁判の末、「控訴しない」。

 当然ともいえるべき判断、全国の産婦人科医は喜んでいるでしょうが、加藤医師は素直に喜べないでしょうね。たとえ自身の無実を勝ち取ったところで、失ったものはあまりにも大きい。

 現場に復帰して、数多くの患者さんを助けていくことでしょう。加藤医師のこれからの未来を、応援していきたいと思います。

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2008年08月11日

インドで代理出産するも、子供は帰国できず。

代理出産の女児、帰国できず…父母が離婚、国籍なし

 日本人夫婦が、インド人女性に代理出産を依頼して女児が生まれる前、離婚したため、子供の母親や国籍が不明になっていることが7日わかった。

 離婚した元夫は子供を引き取る意向を示しているが、外務省は、出産女性を母とする日本の民法の判例に従い、日本人としての女児の出生届は受理できないという判断を元夫に伝えている。

 元夫が、子供を引き取るにはインド、日本国内の養子縁組に関連する法律の手続きを踏む必要があり、子供は現在、インドを出国できない状態だという。

 代理出産の是非については、日本学術会議が途上国への「代理出産ツアー」を問題視し、「代理出産は新法で原則禁止とすべき」との報告書を今年4月にまとめたが、その懸念が現実化した形だ。

 外電などによると、昨年11月、愛媛県の40代の男性医師と妻だった女性は、インド人女性と代理出産契約を結び、インド人女性は同国西部のクリニックで妊娠、今年7月25日に女児を出産した。夫婦は子供が誕生する前の6月に離婚。元妻と代理母は子供の引き取りを拒否している。

 男性医師は子供を引き取る意向を示しているが、現在、ビザが切れて日本に帰国。男性医師の母親が現地で子供の世話をしている。

 卵子が元妻のものなのか、インド人女性のものなのかは明らかになっていない。男性医師は読売新聞の取材に子供がインドを出国できない状態にあることは認め、「今はどこまで話していいかわからない。子供を引き取れるよう弁護士に依頼している」と話している。

 インドでは代理出産に関する法律はなく、近年、商業的な代理出産が広まっているという。代理母には貧しい女性がなるケースが多く、65万〜162万円の金を手に入れることができるという。

 日本人夫婦がインドで代理出産を依頼していたことが発覚した。インドでは貧しさを背景に、商業的な代理出産が水面下で拡大しているとされ、「女性の搾取に日本人が加担していることは悲しむべきこと」と、水野紀子・東北大教授(民法・親子法)は批判する。

 国内では、代理出産を規制する法律はない。日本産科婦人科学会が会告(指針)で禁止し、今年4月には日本学術会議が代理出産を原則禁止とする報告書をまとめた。今後、代理出産規制法が検討される中で、今回の事例が大きな影響を与えることは確実だ。

 これまで、長野県のクリニックや、タレントの向井亜紀さん夫妻がそれぞれ代理出産を行ったと公表しているほか、100例以上の日本人夫婦が米国で代理出産を行っているとされている。同会議の議論でも、途上国への「代理出産ツアー」が大きな問題となった。

 米国での代理出産は近年、保険などの制約で実施が厳しくなっているとされ、希望する夫婦が途上国に流れている可能性がある。今回の事例を踏まえ、国による詳しい実態調査が必要だ。

 また、今回のケースでは、夫婦が出生前に離婚したため、子供の親子関係や国籍が宙に浮いた状態となっている。子供の福祉を最優先とした早期解決が求められる。



 インド人女性を使うという点がやはりなんというか…。アメリカの代理出産の何分の1かの値段で済んでしまうらしいですね。しかし65万円ほどの代理出産代を得られるということで、貧困層にとっては人気かもしれませんけれど、出産という非常にハイリスクなことをこなさないといけなく、いわゆる商売としてそれをやっていいかというと疑問が残ります。インドの女性産婦人科医は、双方にメリットがあるとしているみたいですけれど、お金がここまで絡んでしまうと、果たして対等なメリットなのか、と。

 これと同じか分かりませんけれど、朝日新聞に載っていたケースでは、日本人男性は相手すらいない状態で子供を欲したそうですね。そのためにインド人女性と日本で結婚し、その後離婚。提供卵子も代理母もインド人だそうです。ここまでくると何とも…。子供のことを考えているのなら、普通は法整備のことも考えて然るべきなのでは、という気もしますけどね。(法整備が進まないからあえて実行に移すというやり方も、子供の福祉を考慮すれば躊躇うものです)

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2008年07月17日

肥満の男性は、精液量減少の確率が60%高くなる。

男性の肥満は精子に悪影響、英研究者が生殖医学会で発表

 肥満の男性は標準体重の男性に比べ、精子の状態が悪くなるという研究結果が9日、バルセロナで開かれたヨーロッパ生殖医学会で発表された。

 英アバディーン大学の研究チームはスコットランドの男性約5000人の精子を分析し、体重を身長の2乗で割った肥満度を表すBMIとの関係を調べた。その結果、BMIが標準値の20─25の男性は、太りすぎまたは肥満の男性に比べ、正常な精子の割合が高かった

 肥満の男性は精液量減少の確率が60%高くなり、精子に何らかの異常がある確率も40%高かった。なお、やせ過ぎの場合も肥満と同様の問題が出るとみられるが、スコットランドにはやせ過ぎの男性はあまりいないと研究チーム。

 子供ができにくくなるなどの影響があるかどうかは不明だが、別の研究者によれば、女性の場合は肥満で妊娠しにくくなることが分かっており、男女とも肥満のカップルは問題かもしれないという。



 肥満体になるということは、要するに代謝異常を来たしやすいということでして。おそらく血管の中の血液のめぐりとかも正常の人より悪いんでしょうねぇ。

 見てくれ、ではダイエットに励もうとしない人でも、さすがに精子に異常が出ると分かれば減量を行おうとするのではないでしょうか。自分の精子が少なくなると分かったら、ねぇ。

 ダイエットは1ヶ月で急激に痩せようとするのではなく、毎日ちゃんと食事して、適度に運動して、少しずつ少しずつ減らしていくのがポイントです。ハードトレーニングをして短期間にドカンと痩せようと考えたり、食を減らすことで痩せようと考えたり、しないほうがいいですよ。

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2008年07月15日

産科医療補償制度、来年元旦に生まれた子供から対象に。

出産事故で脳性まひ、補償3千万円 来年元旦から新制度

 出産時の事故で重い脳性まひになった子の救済制度は、来年1月1日に生まれた子から対象に始まることが14日決まった。補償額は、一時金600万円と子が20歳になるまで毎年120万円で、計3千万円になる

 制度を運営する財団法人・日本医療機能評価機構が同日、産科医療補償制度運営委員会を開き、方針を決めた。

 補償対象は、原則妊娠33週以降に体重2千グラム以上で誕生した子。医師の過失の有無にかかわらず支払われる

 染色体異常など先天的な要因の場合は補償を受けられない。また出産した施設が、損害保険会社6社共同で扱われる「産科医療補償責任保険」に加入している必要がある。同機構は加入施設にシンボルマークの掲示を求める予定。

 保険料3万円は、妊婦が支払う出産費用に上乗せされるとみられる。このため厚生労働省は、健康保険の出産一時金を引き上げる方針だ。



 いよいよ始まりますね〜。

 結局、根管としては妊婦さんが支払うことになったんですね。まあどうなんだろうコレって感じではありますが。

 妊婦さんとしてはこの保険に加入しているところでお産をしたいんでしょうか?出産に保険があったほうが良い?まぁ一生に1,2度ですし、3万円上乗せ程度ならいいか、と考えるか、命の誕生という神秘さに保険とはどういうことだと憤るか、反応はそれぞれだとは思いますが。

 再三言ってますけれど、この問題に関しては、小説「ノーフォールト」が非常にオススメです。何故こんな保険を作らなければならなくなったのか、今の産科医療の現状はどうなっているのか、など、大変分かりやすく興味深く描かれています。

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2008年07月12日

サルのiPS細胞で精子と卵子を作り、不妊症の原因解明へ。

サルのiPSで生殖細胞作製へ 滋賀医大など

 滋賀医大などのグループは、サルの体細胞から新型の万能細胞(iPS細胞)を作製し、精子や卵子を作る研究を始める。それらを受精させて健康な子ザルが生まれるか確認することもめざす。人に近いサルのデータで、不妊症の原因解明や治療法の開発に役立てたいとする。

 滋賀医大の鳥居隆三教授らは京都大の山中伸弥教授らと共同で、年内にもカニクイザルの体細胞からiPS細胞を作り始める。その細胞をサルの胚に入れて、あらゆる組織の細胞になるか万能性を検証する。

 三菱化学生命科学研究所などと共同で、iPS細胞から精子や卵子のもとになる細胞を作る研究に着手。それらの生殖細胞を使って受精卵を作り、サルの子宮に移植して出産をめざす。精子や卵子の形成過程を調べ、不妊になる仕組みの解明などにつなげる

 人の受精卵を壊して作る万能細胞(ES細胞)や人のiPS細胞では、精子や卵子を作ったり、受精させたり、子宮に戻したりすることは指針で禁止されている。

 一方、不妊の原因解明のために、精子や卵子を作り、受精能力を調べることを認めてもいいのではないかとの見方もあり、サルの研究が発展した場合には、議論をよびそうだ。実験は、大学や研究機関の倫理委員会などの承認を得た上で行う。

 万能細胞研究に詳しい京都大の位田隆一教授(国際法・生命倫理)は「サルでの生殖細胞の研究は、人のiPS細胞からの生殖細胞の研究の是非を考える重要な判断材料になる」と話す。

 一方、板井孝壱郎・宮崎大学准教授(生命・医療倫理)は、「サルであっても、霊長類の生殖細胞をいじるということに率直に違和感を感じる。iPS細胞については、国家レベルの利権競争などの背景があり、倫理的な制御がききにくいおそれがある。研究をするな、ということではない。一大学の倫理委員会だけで是非を検討するのではなく、多くの人に広く知らせて、意見を聞いたうえで研究デザインを構築するべきだ」と指摘する。



 まぁ、サルなら問題ないのでは?、と安易には言いませんけれど、ここまでくるとちゃんと議論して、研究施設内での倫理鉄則を厳密にして、その制約どおりに研究するのならば、医学の発展のためにはアリだと思いますけれどね。

 海外ならともかく、今の日本でブッちぎりのマッドサイエンティストみたいのは非常に出現しにくいでしょう。

 精子や卵子が受精卵になるまでの根本の過程、みてみたいです。

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