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2008年11月22日

低身長を治療する成長ホルモン製剤ジェノトロピンが承認される

「低身長」広がる治療法

 極端な背の低さは、いじめ被害や引きこもりにつながる場合もある。原因によるが、治療の可能性も広がっていることを親は知っておきたい。

 医学的に低身長とは、同年齢の背が低い方から約3%以内をさす。現時点では低くても伸びが良ければ追いつけるが、伸びも悪い場合は治療対象になる可能性がある。

 国立小児病院(現国立成育医療センター)で検査入院した低身長児284人を原因別で分けた結果によると、最多が、特に病的な原因がない「特発性低身長」で38%。親も背が低い「家族性低身長」は8%いた。これらは病気ではなく、治療できない

 治療対象の代表的なものは成長ホルモンの分泌不足で18%を占めた。そのほか、女性だけの先天的な病気ターナー症候群などの染色体異常が5・6%あった。これらは明らかな病気であるため、成長ホルモン製剤で治療できる。

 同調査で16%を占めたのが「SGA」。SGAは子宮内発育遅延の英語の略で、母体にいた期間を考慮した上で、身長と体重が小さい方から10%以内の場合をさす。その9割は2〜3歳までに身長が正常範囲に入るが、1割は追いつかず、「SGA性低身長症」と呼ばれる。ホルモンは正常なことが多く、病気と扱うべきかで議論があったが、欧米同様、日本でも10月、成長ホルモン製剤「ジェノトロピン」が治療薬として初承認された。

 日本小児内分泌学会理事長で旭川医科大教授の藤枝憲二さんは「子供の背が低くてもいいと考える親もいるだろう。ただ、背の低さは病気ではないと最初からあきらめている親も多い。治療の道もあることを知ってほしい」と話す。

 治療は早期に行い、思春期前に正常身長に近づけるのが理想的だ。低身長の程度にもよるが、平均5年の治療で患者の5〜6割は正常身長に達する。ただ、糖代謝の異常や骨年齢の老化を早めるなどの副作用の報告もされている。

 藤枝さんは「成長ホルモン製剤はあくまで治療用。単に、もっと背を伸ばしたいという美容整形的な目的では使えない」と乱用を戒める。



 ホルモンが分泌されてない、もしくは反応しない、または病気のせいでそのような状態になったりします。これらの病気で背が伸びない場合には、治療の対象となります。

 逆に言えば単に背が低いだけ、という場合には治療対象とはなりません。治療用以外に、成長ホルモンを投与すれば背が伸びるから使いたい、となってしまうと、副作用などで怖いことになってしまいますから。

 ホルモンというのはそれだけ全身に関わってくるものなのです。

関連
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2008年10月20日

痛風のリスクを40倍に高める遺伝子を発見

痛風のリスクを高める3つの遺伝子

 痛風と関連するとされる1つの遺伝子に加え、新たに2つの遺伝子が特定(同定)され、これら3つの遺伝子が疼痛を伴う痛風のリスクを40倍にまで高めるという報告が、医学誌「The Lancet」オンライン版に9月30日掲載された。

 痛風は、尿酸の増加によって生じる強い痛みを伴う関節炎で、特に足の関節や腱、その他の周辺組織に尿酸結晶が沈着し、炎症反応を引き起こす。今回の知見は、症状が出現するはるか以前にリスクのある人を特定することにつながり、3つの遺伝子すべてが特定されたことは新しい治療法の開発に役立つ可能性がある。

 米国立心肺血液研究所(NHLBI)のCaroline Fox博士らは、フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)の参加者約7,700人、およびロッテルダム研究(Rotterdam Study)の4,100人以上の遺伝子構造を検討した結果、痛風のバイオマーカーである尿酸に関連する3つの遺伝子が見つかった

 同氏らは、この知見を確認するために「地域社会におけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究」に参加した白人1万1,000人、黒人3,800人以上を対象に、同じ研究を行った。その結果、腎臓における尿酸塩輸送に関わる遺伝子SCLA29と、尿酸塩輸送に関わる可能性のある2つの遺伝子、ABCG2およびSLC17A3との関連が認められた。

 痛風は、フラミンガム心臓研究参加者の2〜13%、ロッテルダム研究参加者の2〜8%、ARIC研究に参加者した白人の1〜18%に認められた。研究者らによれば、この3つの遺伝子変異をすべて持つ場合には、相加作用により痛風のリスクが40倍に高まる可能性があるという。

 同誌の論説著者であるドイツ、カール・グスタフ・カールスCarl Gustav Carus大学臨床センター(ドレスデン)のMartin Aringer博士は、「これらの遺伝子多型はいずれも非常に一般的であり、いくつかの多型があれば、痛風になる可能性が高くなる。痛風リスクを増大させる遺伝子組成を理解すれば、より直接的にこの疾患を標的とする新薬開発が可能になるだろう」と述べている。



 痛風も、結局は尿酸が蓄積して結晶が出来ることで発症するわけですから、尿酸の溜まりやすいような遺伝子があれば、痛風になりやすくはなりますかね。

 いずれは、その遺伝子をターゲットにした治療法なども出来てくるんでしょうけれど、まだまだ先のことになりそうです。ですが、こういった発見を蓄積することで医学は進歩していくのです。

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2008年09月27日

若い女性と中高年は葉酸を積極的に摂取しよう。

「葉酸」健康の源

 葉酸は胎児の発育を促すだけでなく、脳卒中や認知症のリスク軽減にも有効という報告があり、注目されている。葉酸をPRし、市民の健康づくりに役立てようと試みる自治体も登場している。

 鶏卵を扱う業界最大手の「JA全農たまご」(東京)は、自社ブランド「しんたまご」を改良し、葉酸含有量を約2倍に増やして9月から発売を始めた。10個入りが300〜400円で全国のスーパーなどで販売されている。

 一般の卵の場合、100グラムあたりの葉酸量は43マイクロ・グラム(1マイクロ・グラムは100万分の1グラム)。それに対し、「しんたまご」は80マイクロ・グラム含まれている。鶏のエサに葉酸を添加することで開発に成功したという。

 「加熱しても葉酸の量が減らないし、体内での吸収もいい。健康に貢献できる商品を作りたかった」と同社。

 首都圏を中心に約90店ある「ナチュラルローソン」では、「葉酸玉子の厚焼玉子おにぎり」(158円)をはじめ、葉酸入りのクッキーやあめなどを扱う。

 葉酸は、ブロッコリーやホウレンソウなどに多く含まれるビタミンの一種。胎児の正常な発育に欠かせないと言われており、厚生労働省では妊娠を希望する女性に対し、1日400マイクロ・グラムの摂取を推奨している。

 しかし、認知度は今ひとつで、若い女性の摂取量は1日250マイクロ・グラム前後といわれている。葉酸の不足から、先天性の病気を持つ赤ちゃんが生まれる懸念もある。そのため医師らを中心に「葉酸と母子の健康を考える会」(京都市)が昨年発足。葉酸のPR活動に取り組んでいる。

 さらに最近では、脳卒中や認知症などのリスク軽減にも期待できることが、各国の研究からわかってきた。アメリカでは、成人の1日の摂取推奨量を日本の約2倍の400マイクロ・グラムに設定。1998年からは、小麦などの穀物に葉酸の添加を義務づけるなど、国策として葉酸摂取を推進している。食物への葉酸の添加は、カナダなど世界50か国以上で実施されているという。

 「アメリカでは葉酸の添加を義務化して以降、脳卒中の発症が減っている。毎日、摂取することで認知症や脳卒中の予防に効果が期待できる」と女子栄養大副学長で医師の香川靖雄さんは話す。

 葉酸を含む食品の開発支援も行う。首都圏に約30店舗を展開するパン店「サンメリー」と地元のパン店4店は、坂戸市の働きかけに応じ、「葉酸ブレッド」を発売、人気商品となっている。同市内では、葉酸入りのレトルトカレーや手打ちうどん、ドレッシングなども登場している。

 「自然の食品から必要量の葉酸を摂取できるのが理想だが、実際には難しい。葉酸を添加した食品を上手に生活に取り入れて無理なく摂取してほしい」と坂戸市健康づくり政策室では話している。



 外食している若い世代は、葉酸が不足しがちかもしれません。

 特に女性の場合、赤ちゃんが二分脊椎症にならないためにも、葉酸は摂取しなければいけないのですが・・・葉酸を摂取するタイミングは「妊娠前から」ですので。妊娠してから、じゃあ予防のために葉酸を摂ろうと思っても遅いんですよね。妊娠の可能性のある女性は積極的に摂取するようにしてください。

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糖尿病向け運動療法、エアロビックを無料でご紹介

糖尿病にエアロビック療法、DVD・ネットで紹介

 糖尿病の運動療法を支援するため、日本イーライリリーと日本エアロビック連盟は「誰でもできるエアロビック」プログラムを開発した。

 医療機関にDVDを無料配布すると共に、インターネットでプログラムの一部公開を始めた。

 運動療法に楽しんで取り組んでもらうのが狙い。8歳で糖尿病を発症し、治療を続けながら競技エアロビック選手として国際的に活躍する大村詠一さん(22)が、高齢者や初めての人でもできるエアロビックを紹介する。

 いすに座ったままできる運動を交えた初級編と、立って息が軽く弾む程度に運動をする中級編の2種類。全身のストレッチ、有酸素運動、足腰を鍛える運動を織り交ぜ、糖尿病患者に必要な全身運動が無理なくできる構成になっている。

 プログラムを監修した日本糖尿病協会の清野裕理事長は「運動はインスリンの働きを改善し、血糖のコントロールを良くする働きがある。無理のない運動を、できるだけ毎日行うことが大切」という。



 糖尿病の方に対しては、まず食事指導がありますけれど、運動のやり方も大切な治療の1つです。糖尿病に限らず、心疾患などでも運動は大事なのですが、なかなか続かないものです。

 こういう、楽しくできる運動療法を身につけて、毎日行うことで、かなり改善できるのではないでしょうか。是非一度ご覧になっていただきたいと思います。

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2008年09月18日

肥満遺伝子を持っていても運動すれば帳消しされる。

肥満遺伝子の影響、運動で帳消しと アーミッシュ研究

 肥満になりやすい遺伝子を持っていても、1日3─4時間の運動を続ければその影響は現れず、肥満を避けることができるとの研究結果を、米国の医学者らが発表した。伝統的な生活様式を守り続けるキリスト教プロテスタントの一派、アーミッシュの人々に注目して、遺伝子と体重の関係を調べたという。

 メリーランド大のソレン・スニトカー博士らが、内科専門誌「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」に報告した。専門家らによれば、欧州系白人の約30%が持つFTOと呼ばれる遺伝子の変異形は、肥満傾向に関係することが分かっている。同博士らは、ペンシルベニア州ランカスター郡のアーミッシュ居住地域で暮らす704人を対象に、血液検査でこのタイプの有無を調べ、影響を検証した。

 アーミッシュは18世紀から19世紀にかけて北米で暮らし始めたドイツ系移民で、現在も車や電化製品を使わず、当時の質素な生活を続けている。アーミッシュの社会では、多くの男性が農業や大工仕事、女性は家事や育児に、それぞれ1日の大半を費やしてきた。同博士らによる研究の対象者らは1週間、昼夜を問わず電池式モニターを装着し、こうした生活の中での運動量を記録した。

 その結果、1日に3─4時間、掃除や庭仕事、早歩きなどの運動をしている人は、たとえ肥満を起こすとされるタイプのFTO遺伝子を持っていても、肥満傾向が増大しないことが分かったという。一方、運動量が最も少なく、平均的米国人並みだったグループは、運動を続けたグループに比べ、体重が平均7キロ近く多いとの結果が出た。

 スニトカー博士は「一般の人々にとって、肥満防止のために19世紀の生活様式に戻すというのは非現実的な発想だろう。しかし、夜テレビを見る代わりに散歩をしたりエレベーターの代わりに階段を使ったり、車に乗る代わりに徒歩で出かけたりすることは、それほど難しくないはず」として、活動的な生活を呼び掛けている。



 ハードな運動を3,4時間しろ、というわけではなく、歩いたり階段を上ったりする程度でいいようです。

 それだけで、肥満遺伝子の影響を打ち消すことが出来る。結局、運動しなければ始まらないってことですね。遺伝子のせいにする前に、運動しましょう。

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食欲を増進するホルモン「グレリン」が心筋梗塞を改善する

食欲増進ホルモン「グレリン」、心筋梗塞を改善

 胃から分泌されるグレリンという食欲増進ホルモンが、急性心筋梗塞の症状を改善することを、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の研究チームがラットの実験で確認した。

 国内では年間約4〜5万人が急性心筋梗塞で死亡しており、治療薬開発への応用が期待される。米国の内分泌学専門誌に掲載する。

 研究チームは、ラット26匹に心筋梗塞を起こさせ、グレリンを注射した群と、しない群とに分けて比較した。その結果、注射したラットは、6時間後に10匹が生存し、不整脈もほぼゼロだったが、注射しないラットは不整脈が頻繁に起き、3匹しか生き残らなかった。

 グレリンには、不整脈を引き起こす心臓の交感神経を鎮静化させる働きがあるらしい。岸本一郎医長は「グレリンはもともと体内にある物質で、心筋梗塞の有効な治療薬になる可能性がある」と話している。



 ホルモンって面白い。

 グレリンについて、まだまだ解明されていないことが多そうですが、食欲に関与するだけのホルモンではなく、もっと大きな調整も行われているようです。ここらへんの全身に与える影響が、内分泌の興味深いところなんですなぁ。

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2008年09月16日

小6の時に肥満だった人はメタボリック症候群になりやすい

成人女性のメタボ発症リスク、「小6」時の食習慣が影響

 小学校6年時の食習慣が成人女性のメタボ発症に強い影響―。労働者健康福祉機構が運営する全国の労災病院内に設置する九つの勤労者予防医療センターが、メタボ患者400人と健常者399人を対象に調査した。それによると小学校6年生の時に肥満であった人のメタボ発症リスクはそうでなかった人に比べ、男性が2・8倍、女性10・1倍と、特に女性のリスクが高いことが初めて分かった。

 男女とも小学校の時に決まったスポーツをしていた人の発症リスクが高いほか、男性では体育が好きだった人の発症リスクが高いことも判明した。食行動、食事の嗜好では、男女とも「大食」「ストレスで食べ過ぎる」と回答した人のメタボ発症リスクは健常者と比較して高かった。一方、不規則勤務の有無では、メタボ患者と健常者とを比較して差異は見られなかった。



 まぁそりゃぁそうか。。。子供の頃はしっかりとした食生活と運動さえしていれば肥満にはなかなかならないものですからね。

 ってそれは成人になってからでも変わらんか。やせないやせないと言っている人は往々にして運動を怠っているようなものですから。

 しかし子供の頃肥満だった人、というのは可哀相かもしれません。完全に親のせいでもありますしね。
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2008年09月06日

子供の肥満には、母親のストレスが深く関与する

母親のストレスが子どもを太らせる?

 10歳以下の子どもの肥満には母親のストレスが深くかかわっているという調査結果を、イリノイ大学などの研究者が発表した。ストレスのたまった母親を見て子どもがストレスを感じ、不健康なお菓子に手を伸ばしてしまうのだという。

 ロイター通信によると、母親のストレスは貧しさに起因し、お金のないことを嘆いたり、仕事が辛かったり、十分な健康保険がなかったりすることから生まれると考えられる。調査を主導したイリノイ大のクレイグ・ガンダーセン氏は「人はストレスへの反応として物を食べる。この場合、子どもは母親以上に敏感に反応しているのではないか」と話す。

 現在、米国の2〜19歳の子どもの約17%が肥満、16%が太り気味と推定されている。今回の調査関係者は、母親がストレスを抱えていると子どもがその状況から逃れようとお菓子を食べ、10歳までに肥満体型になってしまうと推定している。

 ガンダーセン氏によると、ストレスを感じる子どもは、家に食べ物が豊富だと過食になりやすい。しかも問題は、冷蔵庫にある食べ物に肥満の原因となる不健康な物が多いことだ。特に3〜10歳の子どもは、ストレスで肥満になる傾向が強いという。10歳以上の子どもは、家の外で友だちや仕事を通じてストレスを発散する機会が増える。



 子育てをするのには覚悟が必要ですね。子供のことを考えて真っ当な人間に育てようと思ったら、親は自分勝手にやりたい放題で生きてはいけない、と思います。

 やりたい放題で接した結果、子供が精神的に不安定になった例は多く見てきましたが、やはり子供は親を見て育つものですからね。そこらへん、親としての自覚が問われるところだと思います。

 人間ですから、母親もストレスを感じます。ですがそれが子供に過度に感じ取られると、子供もストレスに反応してしまいます。そのことを踏まえた上で、行動してもらいたいなぁ、と。

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2008年08月31日

富山大学で、糖尿病のオーダーメイド医療を実現する

遺伝子調べ個別治療 富山大医学部、糖尿病に導入検討

 富山大医学部第一内科は、同大付属病院で、患者の遺伝子を調べた上で糖尿病の治療法を考える「オーダーメード医療」の導入を検討している。戸辺一之同科教授(50)の調査で、糖尿病の原因遺伝子を多く保有する人が発症しやすいことが分かっており、成果を治療に生かす。戸辺教授は「遺伝子情報を基に、効果的な薬の種類や量を患者ごとにきめ細かく判断できる。来年にもスタートしたい」と話している。

 糖尿病は過食や運動不足のほか、遺伝子を原因とするインスリン分泌不足により発症し、腎不全や脳卒中、心筋梗塞を引き起こす。国際的な研究の成果で、インスリンの分泌を阻害し、糖尿病を引き起こす恐れのある約十種類の遺伝子が昨年までに特定されている

 戸辺教授と岩田実助教(42)、院生の加村裕さん(44)は昨秋から、富山大付属病院の入院患者約百七十人の血液を採取し、糖尿病の原因遺伝子の有無を調査。70パーセントの患者が四種類以上の原因遺伝子を保有していることや、六種類以上を持つ患者の発症年齢が、五種類以下の人より五歳早いことが分かった。

 研究成果を患者に還元しようと、富山大医学部第一内科は来春にも、同学部倫理委員会にオーダーメード治療の是非を諮り、来夏以降の導入を目指す。今後は済生会高岡病院、社会保険高岡病院などと連携して患者の情報を集め、糖尿病と原因遺伝子の関連性をさらに調べる。

 厚生労働省の人口動態統計(十七年)では、富山の糖尿病を原因とする死亡者は人口十万人当たり十四・四人で、徳島、大分に次いで多い。

 遺伝子情報の活用には、個人情報保護などの観点から賛否もあるが、戸辺教授は「患者から同意を得る方法や、遺伝子情報が外部に漏れないような態勢作りを進めたい」と話している。



 いよいよ細かいレベルでの個人別医療の提供が可能になるかもしれません。

 まさしく、遺伝子も個人情報の時代、ですからね。まだまだ情報漏えいの可能性があるので、確実なシステム構築を目指してほしいと思います。

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2008年08月30日

手術で治せる高血圧「原発性アルドステロン症」

手術で治す高血圧

 脳卒中や心筋梗塞など高血圧が原因で起こる病気の予防に向け、金大附属病院と芳珠記念病院(能美市)が連携し、石川県内全域で診療体制を整備する。

 手始めに手術で治せる高血圧「原発性アルドステロン症(PA)」の専門医を双方の病院に配置し、治療の拠点とする。周辺医療機関と検査、手術、術後指導などをまとめた計画表を共有し、退院後も最寄りの病院で手厚い治療が受けられるようにする。

 PAの治療で大学病院と地域の病院が連携するのは初めて。手取川以北は金大附属病院と同大の関連病院が受け持ち、同以南は芳珠記念病院が担当する。同病院は金大大学院医学系研究科臓器機能制御学(山岸正和教授)の高血圧内分泌グループから指導医を受け入れて専門医療チームを結成し、患者の検査、治療にあたる。

 拠点病院となる金大附属病院と芳珠記念病院は、地元医師会と研究会を開くなどしてPAの周知を図り、地域の開業医らが手術の必要な患者を両病院に紹介する体制を構築。双方の病院などが独自に開発した検査方法を使って短時間で正確に診断、手術や薬物療法を行う。周辺医療機関と計画表「連携パス」を共有し、術後も最寄りの病院などできめ細かな治療を実施する。

 PAは腎臓の上にある臓器「副腎」に腫瘍ができ、血圧を上げたり、動脈硬化を促進するホルモン「アルドステロン」が過剰に分泌されることで起こる。金大附属病院と芳珠記念病院は、PAの診療体制を構築することで、県民が高血圧が原因で発症する病気を未然に防ぎたい考えである。



 アルドステロンというホルモンは腎臓に作用して、簡単に言うと、ナトリウムを再吸収して血液中のナトリウム濃度を上げます。ナトリウムは水をひきつけるので、血管内の血液量は増えます。すなわち、血圧も上がるというわけです。

 高血圧の5〜10%ほどがこの原発性アルドステロン症といわれていますので、高血圧の予防(鑑別?)のためには必要ですね。

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2008年08月14日

尿崩症が起きる仕組みを東京医科歯科大学が解明する。

尿崩症:東京医歯大などが仕組み解明 新薬開発に光

 大量の尿が出て脱水状態に陥る病気「尿崩症」が起きる仕組みを、東京医科歯科大などが解明し、11日付の米の科学誌「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」電子版に発表した。尿から水を吸収する役割を果たす物質の移動に、不可欠なたんぱく質を突き止めた。この仕組みを利用することによって、尿崩症の新薬開発が期待できるという。

 尿崩症の患者は、数万人程度いるとみられる。1日最大10リットル近く尿が出るため、水を補給しないと昏睡状態になることもある。遺伝性の尿崩症の場合、尿を調節するホルモンを補充する治療があるが、精神系の薬の副作用が原因の場合、治療法はない。

 脱水時は一般に、細胞に水分を取り入れるたんぱく質「アクアポリン」が尿細管の細胞内部から細胞の表面へ移動し、尿から水を吸収する。しかし、尿崩症患者は、脱水状態でもアクアポリンが細胞表面に移動せず、尿からの水の取り入れができないため、脱水状態が続くとみられる。

 研究チームは、アクアポリン移動の仕組みを分子レベルで調べた。通常はアクアポリンを細胞内部にとどまらせる「柵」の働きをするたんぱく質「トロポミオシン」が、脱水をきっかけにアクアポリンと結びつき、柵の役目をしなくなり、アクアポリンが自由に移動できるようになることが分かった。

 研究チームの野田裕美・同大助教は「トロポミオシンの量や働きを調節することで、今まで治療できなかった患者のための新薬が開発できるかもしれない」と話している。



 腎臓から尿として排出されるまでの間に、尿を濃縮するシステムがあります。そこで薄い尿を出さないで水分を体内に戻そうとする機能を司っているのが、抗利尿ホルモン「バゾプレシン」です。

 バゾプレシンが出なくなる、またはバゾプレシンが腎臓に効かなくなるなどの理由で、尿から水分を再吸収することができなくなり、結果としてじゃんじゃんおしっこが排出されてしまうのが尿崩症です。

 こういう説明だとバゾプレシンだけの話みたいになってしまいますけれど、実際には記事中にあるようにアクアポリンの働きだとかも関係してくるんですよね。
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2008年08月13日

東京慈恵会医大病院で期限切れのインスリンを使っていた。

期限切れ製剤使う インスリン注射で 東京慈恵会医大柏病院

 柏市の東京慈恵会医大柏病院(久保政勝院長、640床)で6月、糖尿病患者の70代女性に、有効期限が1カ月半過ぎたインスリン製剤を自己注射させていたことがわかった。女性に健康被害はない。病院は女性と家族に謝罪し、柏市保健所に報告した。

 同病院によると、女性は当時、同病院に入院中で、6月14、15日の2回、看護師の指導で計0・12ミリリットルのインスリン製剤を自分で注射した。同16日に別の看護師が使われた製剤容器の使用期限の記載を見て、4月末に期限切れになっていたことに気付いた。

 期限切れ薬剤は、病院の薬剤部が病棟から回収している。4月末、このインスリン製剤を内科病棟から回収した際、薬剤師が伝票に「期限切れ薬品」と記載しなかったため、再利用するため保冷庫に保管。5月16日、薬剤部から再び病棟に送られたという。



 イージーミスですけれど、医療にeasyはないですからね。特にインスリンのように、効果がなければ命にかかわるようなものは厳重に扱わないと。

 他の病院の人たちもご注意下さい。

慈恵関連:資格がないのに解剖を行った助手を解剖保存法違反容疑で
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2008年08月04日

糖尿病患者向けに砂糖不使用のあんパンを。

あんパンなのに砂糖なし 秋田の薬局、糖尿病患者向けに

 薬局がパン屋に持ちかけて、珍しいあんパンをつくった。砂糖を使わないあんと大豆を使った生地で、熱量と糖質を大幅に減らした。「血糖値が上がるからパンなんて何年も食べてないよ」。糖尿病のお年寄りが薬局で漏らしたひと言がきっかけになった。

 秋田県能代市、赤玉薬品の熊谷陽三専務(61)と白神パン工房の山田哲也社長(55)。日本食品分析センター(東京)の調べなどによると、2人が考案したあんパン(1個60グラム)は一般的なものより熱量が28%少ない121キロカロリー。糖質は53%少ない13.5グラムになったという。一方、食物繊維とたんぱく質は倍以上になった。

 「糖尿病は食事制限が大変だ」。薬をもらいに毎月薬局にやって来る糖尿病の高齢の女性が熊谷さんの前で嘆いた。好物のパンから遠ざかっているという。

 自らも高血糖に悩んでいた熊谷さんは、そのつらさがよく分かる。だから、商店街仲間の山田さんに「血糖値の上がりにくいパンができないかな」と持ちかけた。

 2人で相談し、炭水化物の多い小麦粉を半分以下に減らし、糖質が少なく高たんぱくの大豆粉を混ぜることを決めた。熊谷さんが成分分析を担当した。だが、こねてもこねても粘土のように硬い大豆粉に悪戦苦闘。昨年10月、ロールパンや食パンが半年がかりで出来上がった。

 「薬局として健康に役立つ食べ物を売りたい。メタボの人にも勧めたい」と熊谷さんが言えば、「おいしくなければ体によくても仕方ない。パン屋35年のプライドをかけた」と山田さん。

 砂糖を使わない、あんをどう作るか――。2カ月間、2人で研究を重ね、植物から抽出したカロリーゼロの天然甘味料だけで、しっとりと甘いあんを練り上げるのに成功した。生地にも砂糖は使っていない。こしあんだと食物繊維が減るからという熊谷さんの意見で、あんは粒あんだ。

 冷凍した商品を薬局の店頭とインターネットなどで6月から販売している。天然甘味料と大豆粉が高価なため2個500円。発売初日、さっそく、糖尿病の女性が訪れ、「ずっとがまんしてたんだ」とあんパンを買っていった。

 6月16日の発売から半月の売り上げが約1200個。その後も好調で、県外からの注文も増えている。

 問い合わせは赤玉薬品の駅前店(0185・53・4616)へ



 あーこういう商品はいいですね。高くても売れるな、と感じます。

 糖尿病だと食べたいものが食べれないので、日常生活はかなりつらくなりますね。特にパンが食べられないというのは結構大きいみたいです。

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2008年08月02日

大豆の食べすぎは精子に影響が出る

大豆製品の食べ過ぎ、精子の数を減らす可能性 米調査

 米ハーバード公衆衛生大学院の研究者は23日、大豆原料の食べ物を摂取し過ぎると、精子の数が減少する可能性があるとの調査結果を発表した。

 調査は2000−2006年に不妊治療クリニックを訪れた男性99人を対象に実施。大豆ベースの食べ物15種類をどの程度食べていたかを調べた。同調査は、大豆製品に多く含まれる植物性エストロゲンと精子の関係について、ヒトを対象にした調査としては過去最大の規模となる。

 同調査によると、大豆製品を最も多く食べていたグループの精子の数は、まったく食べていない男性に比べて1ミリリットル当たり4100万匹少なかった。一般男性の精子の数は1ミリリットル当たり約8000万−1億2000匹で、2000万匹以下だと少ないと考えられている。

 調査を率いたジョージ・シャバロ教授は「大豆製品を最も多く食べていた男性の精子濃度が、大豆製品を食べていない人に比べて低かったことが明らかになった。比較的大きな違いが出た」としている。



 エストロゲン様作用によるもの?食物として摂取しているだけなのにそんなにも影響出るんですかね。まぁ出ても不思議ではありませんが。女性で様々な影響が出るくらいですから、男性にも起こっても。

 何事もほどほどがいいようです。

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2008年07月12日

牛にホルモン剤を投与すると地球温暖化を防止できる。

乳牛への成長ホルモン投与で温室効果ガス削減?米研究

 100万頭の乳牛に乳量を増加させる成長ホルモンを投与すると、自動車40万台分に相当する温室効果ガス削減が可能とする米研究チームの研究が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)6月30日号に発表された。

 ニューヨーク(New York)のコーネル大学(Cornell University)のジュディス・キャッパー(Judith Capper)氏らの研究チームは、乳牛への遺伝子組み替えウシ成長ホルモン(rbST)の投与が温暖化防止につながると主張している。

 キャッパー氏は、大規模な牛乳生産には、広大な土地に加え、水や飼料も大量に必要であることを指摘。rbSTを使用すると生産者は需要を満たす量の牛乳を生産しながら、温室効果ガスを削減することができるとしている。

 しかし、rbSTの使用に反対する意見も根強い。欧州連合(EU)は乳牛の健康への懸念からrbSTの使用を禁止しているし、rbSTは伝統的な小規模農家が生産する農産物価格を下げる大手企業の権益の象徴とみなされることもある。

  研究チームでは、100万頭の乳牛にrbST を投与すると、15万7000頭少ない乳牛で同じ量の牛乳が生産でき、乳牛の飼料もトウモロコシが49万1000トン、大豆が15万8000トン、飼料全体で最大230万トンの削減できるとしている。また、酪農に使う土地を最大で21万9000ヘクタール減らすことができ、土壌流出を年間で最大230万トン減らせるとしている。

 国連(UN)の食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO)が2006年にまとめた報告書によると、人間活動に起因するメタンガス(CO2以上に地球温暖化を促進する)の37%がウシの飼育によって排出されたもので、その大半が家畜の消化に伴って発生したものだという。また、人間活動に起因するアンモニア(酸性雨の原因となる)については64%がウシの飼育によって発生しているという。

 FAOのこの報告書は、ウシの飼育に起因するCO2は、人間活動に起因するCO2全体の9%を占め、世界全体では自動車が排出する量を上回るだけでなく、SO2などのCO2よりも有害な温室効果ガスも排出しているとしている。



 牛の反芻(物を噛んで第一の胃に入れ、一度戻し、更に噛んで飲み込んで第二の胃に送り・・・というのを繰り返して草を消化していくこと)の際に出るゲップが、実はかなりの勢いで温暖化をまねいているという報告を10年以上前にみたことがあります。

 しかし、だからといって牛にホルモン剤を使う、というのはどうにもね。エサだけでも結構ナイーブになりつつあるのに、そこにホルモン剤を使うとなると。あんまり食べたくないですし飲みたくないですね。もはや酪農の域を超えてしまうような。

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2008年07月10日

生姜に含まれる6-ジンゲロールが血糖値を改善する。

ショウガ 辛み成分が血糖値上昇緩やかに

 そうめんや冷ややっこなどの夏の薬味として親しまれているショウガ。その辛み成分には食後の血糖値上昇を緩やかにする効果があることが、近畿中国四国農業研究センターの研究で明らかになりつつある。動物実験の段階で人での効果は未確認だが、糖尿病予防につながると期待される。

 マウスの体重1キロあたり50mgのショウガ抽出物を19日間投与。その後、体重1キロあたり2グラムのグルコース(ブドウ糖)を与えて60分後の血糖値を調べたところ、平均上昇値は147.3mg/dlで、ショウガ抽出物を投与しなかった対照群の平均228.4mg/dlより低かった。

 血糖値上昇が抑制されるのは、ショウガの辛み成分「6−ジンゲロール」が、血液中のグルコースを取り込む「脂肪細胞」を増やすためだ。脂肪細胞に分化する前のマウス由来の「前駆脂肪細胞」に6−ジンゲロールを加えると、6−ジンゲロールの濃度が高いほど脂肪細胞への分化が進んだ。濃度100μMのときの脂肪細胞分化は、6−ジンゲロールを加えない場合の4倍以上になった。

 同センターの関谷敬三・特産作物機能性グループ長は「6−ジンゲロールは、眠っている前駆脂肪細胞を目覚めさせて分化を促進し、小型の脂肪細胞を増やす。1つの脂肪細胞がインスリンに反応しやすくなり、グルコースを多く取り込むことも確認できた」と話す。人でも同様の効能が明らかになれば、糖尿病の予防や治療に新しい道をひらくことになりそうだ。



 インスリンの感受性を上げるということかな、要するに。だとするとかなりナイスな発見ですわな。

 生姜って、小さい子は嫌いでしょうけれど、大人になってくると、欠かせない食材になってきますよね。あの生姜の用途の広さには感服させられます。

 糖尿病となるとどうしても食に広がりがなくなってしまいがちですが、そこでひとつ生姜を用いた食事、なんてのはいかが。

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2008年07月02日

ビタミンD値が低い人は心臓発作を起こす確率が高くなる

ビタミンDが欠乏すると死亡リスクが高まる、オーストリアの医科大学

 ビタミンDが欠乏すると、特に心臓血管系疾患による死亡リスクが高まる。オーストリアのグラーツ医科大学(Medical University of Graz)がこのような研究結果を23日発行の医学誌に発表した。

 米国医学会(American Medical Association)の機関誌「Archives of Internal Medicine」によると、研究チームは、同大の病院に1997-2000年に来院した患者3258人(平均年齢62歳)のビタミンD値を測定し、7.7年間にわたり追跡調査した。

 この期間に737人が死亡したが、その内訳はビタミンD値が最も低いグループでは307人で、ビタミンD値が最も高いグループの103人を2倍以上上回った。なかでも、ビタミンDの欠乏と心臓血管系疾患による死亡には強い相関が認められた。死者数の62.8%にあたる463人が心臓血管系疾患によるものだったのだ。

 ビタミンDが人間の免疫系に重要な役割を果たすことは、数々の研究で示されている。米ハーバード大学(Harvard University)は6月初め、ビタミンD値が低い人では心臓発作を起こす確率が高くなるとの研究結果を発表している。ビタミンDの欠乏が糖尿病、肥満、高血圧のリスクを高めるという研究も発表されている

 同機関誌によると、世界の高齢者人口の50%以上でビタミンDが欠乏しており、若年層でも同じような傾向が見られる。ビタミンDの欠乏は、屋外活動の減少や加齢、大気汚染が原因に挙げられる。

 ビタミンDは、紫外線に当たることで体内に生産される。太陽に1日あたり10-15分当たるだけで充分という。ビタミンDを含有する食品には、魚、牛のレバー、卵黄などがある。マグロ缶85グラムには200 IUのビタミンDが含まれているという。(c)AFP



 現代人の食生活はビタミンが不足しがちですからねぇ。

 ビタミンDは脂溶性ビタミンといって、水溶性ビタミンと違って沢山摂取しても尿に出ていくようなものではないので、過剰に摂取すると「ビタミンD過剰症」として、要するに高カルシウム血症や尿路結石になってしまうんです。

 ですからサプリとかで無計画に飲み続けると危険です。毎日必要な分だけを、食事で摂取する習慣をつけましょう。

ビタミンD欠乏症
日照不足や過度な紫外線対策、肝障害、腎障害によりビタミンD3が不足して、くる病、骨軟化症が引き起こされることがある。

ビタミンD過剰症
高カルシウム血症、肝機能障害、腎臓障害、多飲・多尿、尿路結石、尿毒症、高血圧、易刺激性(不機嫌)、腹痛、発熱、発疹、かゆみ、吐き気または嘔吐、食欲不振、便秘、虚弱、疲労感、睡眠障害、歩行困難、体重減少、貧血、脱毛、けいれん、昏睡など

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2008年06月26日

先天性魚鱗癬様紅皮症などの難病を難治性疾患克服研究事業対象に

先端巨大症など7難病を指定 治療研究事業対象に厚労省

 治療研究を公費で行う「難治性疾患克服研究事業」について、厚生労働省は23日、先端巨大症(患者数約1万人)など7疾患を、来年度から指定することに決めた。

 同日開かれた専門家会議が方針をまとめた。これまで研究が行われていない同事業以外の難病についても、研究班を公募し、実態を把握する仕組みを来年度から作る。

 事業対象となるのはほかに、

下垂体機能低下症(同約7千人)
HTLV1関連脊髄症(同約1400人)
クッシング病(同約千人)
先天性魚鱗癬様紅皮症(同約300〜150人)
原発性側索硬化症(同約150人)
有棘赤血球を伴う舞踏病(同約100人)。

 追加は昨春以来。現在の指定は123疾患。



 結構有名な難病が指定されたようですね。

 1億人の中でいえば数の割合が少ない、これらの難病ですが、それでも病気である以上、国の総力を挙げて治療法を確立してほしい、と思います。特にiPS細胞で現場も沸いていますので、今後の研究に期待したいところですね。

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術後の血糖値の管理を怠って昏睡状態になる。

「血糖値の管理を怠り昏睡状態」と日赤を提訴 京都

 糖尿病患者の京都市西京区の女性(73)が腰の手術後に昏睡状態になったのは京都第一赤十字病院(京都市東山区)が血糖値の管理を怠ったのが原因として、女性と家族が23日、日本赤十字社などに約7200万円の損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こした。

 訴状によると、女性は昨年1月、同病院で腰を手術後、「手足が震える」と訴えた。10日後に低血糖脳症で意識障害に陥り、現在も昏睡状態が続いている。

 原告側は「手術後に食事量が減っていたのに、担当医は血糖値を測定しないまま、血糖値を下げる薬の服用を続けるように指示した。初歩的なミス」と主張している。



 これは初歩的なミスの予感。

 ちょっとしたことで血糖値が変動する人の場合は、入念な管理が必要ですし、それに応じて薬も変えなければなりません。

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2008年06月22日

慢性疲労症候群の特徴について

慢性疲労症候群 体と心のバランス崩れ重症化

 「疲れ」は体の危険信号−。異常に長引く疲れをほっておくと、「慢性疲労症候群(CFS)」に陥る。長年、「疲労回復外来」を行ってきた東京都多摩北部医療センターの高橋孝・内科部長に聞いた。

 −−どんな病気なのか

 「およそ20年前から明らかになってきた病気。休みを取っても回復せず生活を著しく損なう疲れが6カ月以上続くと病気の可能性が高い。うつ症状との鑑別が難しいが、身体と心の両方のバランスが崩れて重症化する。厚生労働省の設定した基準もあり、他の原因が見当たらずに微熱やのどの痛み、筋肉痛、物忘れ・集中力低下などの自覚症状、および身体所見では、リンパ腺の腫れがなかなか引かないのが特徴だ

 −−その発症機序は

 「疲れがたまると、まず体の抵抗力(免疫系)が弱りリンパ系の異常をきたす。それが修復できないと今度は脳(神経系)に影響してくる。慢性的に脳にもストレスがかかり、ホルモン分泌もおかしくなる。そういう3つの相互作用から常に脳が“心の疲れ”を感じ内臓系にも影響する」

 −−疲労外来の経験では

 「中等・重症の方がほとんど。どこの病院でも異常なしといわれてドクターショッピングを重ねることになる。厚生労働省のアンケート調査では、3人中1人は6カ月以上の慢性疲労を訴えているという結果が出ているが、CFSはまだよく知られていない。好発年齢は、高齢者よりも若い人(15〜34歳)で仕事を休職するケースも多い。今後、進む一方のストレス社会では患者も増加するのでは。実は朝起きられず不登校になってしまった子供をよく調べたらCFSだったというケースもある」

 −−病気の原因は?

 「ちょっとした感染症が最初のきっかけだが、リンパ腺が何かの刺激を受け、普通はリンパ腺がが腫れても治療ですぐに引いてくるものだが、いつまでも腫れが引かない。前述のごとく免疫系・中枢神経系・ホルモン系の3つのバランスが大きく崩れて元に戻らなくなってしまったと考えられる」

 −−感染症というのは

 「ブルセラ菌という人と家畜共通の感染症があってよく似た症状を呈する。この研究は今でも進められているが、例えば、インフルエンザや溶連菌などの細菌も原因となることが知られている」

 −−回復、治療には

 「2年間病気だった人は、回復するのに2年かかる。メンタルな症状の強い人には、心理療法やカウンセリングを施し、運動療法や気力を高める漢方薬を勧める。それと予防もかねて、早寝早起き、3食しっかりとる食生活、日光浴など人の体内時計に合わせた自然な生活のリズムを取り戻すことが肝心。体の元気のもとであるペプチドや、疲労回復のマウス実験でも効果が明らかになったビール酵母エキスなどの健康食品も役立つ」



 今のところ病態機序がよくわかっていないだけで、実際には確実に何か起こっているんでしょうねぇ。ただ、うつ病との違いや、病気と定義してよいのかどうかといった点で、日本全国どこでも診断できるかというと、難しいでしょうねぇ。定義そのものも把握できている人は少ないと思いますし。

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