[がん]の記事一覧

2009年01月27日

ピロリ菌の新たな胃がん発症のメカニズムを発見する

ピロリ菌の新たな胃がん発症メカニズム解明

 慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍や胃がんの原因と考えられているピロリ菌が、がんを引き起こす新たなメカニズムを東京大学医科学研究所の研究者たちが見つけた。

 胃粘膜に感染することで病気の原因となるピロリ菌の危険因子としては、CagAタンパクが知られている。このタンパクが胃上皮細胞内でリン酸化される結果、細胞増殖にかかわる活性化補助因子であるβ-カテニンが発がん関連遺伝子の転写を促進することは、これまでも分かっていた。

 東京大学医科学研究所の笹川千尋・教授と鈴木仁・助教らは、CagAタンパクがリン酸化されなくてもβ-カテニンを活性化する新たな発症メカニズムがあることを突き止め、この新たな経路にかかわるCagAタンパクの部位を特定することに成功した
 
 リン酸化されないCagAタンパクの感染役割が分かったことで、日本人の胃がん原因の大半を占める慢性胃炎や胃潰瘍といったピロリ菌感染症に対する新たな治療薬やワクチン開発につなげることが期待できる、と研究チームは言っている。

 この研究成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)研究領域「免疫難病・感染症等の先進医療技術」の一環として得られた。

 ピロリ菌を発見し、胃炎や十二指腸潰瘍との関連を明らかにしたオーストラリアのロビン・ウォレン、バリー・マーシャル両博士は、2005年のノーベル医学生理学賞を授賞している。



 ピロリ菌が発見されたときも医学界に激震が走りました。胃酸のなかに細菌が生息しているなど思いもしなかったためです。常識を覆す発見をしたことでノーベル医学賞も見事に受賞。

 特に日本人はピロリ菌と、胃がんの2つは切っても切り離せない関係ですから。こういった研究は自身の今後と密接にかかわってくるので期待大です。

関連
医学処:ピロリ菌が胃癌を発症させるメカニズムを解明
医学処:ピロリ菌は細胞死を抑制する
医学処:ピロリ菌は食道腺癌を予防する作用をもっていた。
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2009年01月23日

生物内で最大のたんぱく質「ボルト」を治療に応用する。

最大のたんぱく質の構造解明 感染症・がん新薬に期待

 兵庫県立大、大阪大のグループは、生物の細胞内で最大のたんぱく質「ボルト」の構造を大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)で解明した。ボルトは細菌に対する免疫や、抗がん剤が効かなくなる仕組みに関係しており、治療薬の開発に応用が期待される。16日付の米科学誌サイエンスで発表した。

 ボルトは1986年にネズミの肝臓から発見されたラグビーボール形の輪郭をもつたんぱく質。脊椎動物などの細胞内にある。分子量は一般的なたんぱく質の100〜1千倍ほどにあたる約1千万で、知られている細胞内のたんぱく質としては最大で、詳しい形はなぞだった。

 兵庫県立大の月原冨武特任教授らは、スプリング8の非常に強いX線を1分間あてることで構造を解明した。ひも状の分子が上下39本ずつ計78本寄り集まり、つるを編み込んだ籐籠のような形になっていた。

 ボルトは、人間が緑膿菌に感染したとき、体内の免疫が菌を殺すのを助ける。また、複数の抗がん剤が効かない多剤耐性のがん細胞は、ボルトの部品であるひも状分子を大量につくることが知られている。今回、構造が特定されたことで、ボルトの機能の研究が進み、感染症やがんの治療効果を高める薬の開発に結びつくと期待されるという。



 分子量1000万!すごいですね。こんなバカでかい分子量をもつ蛋白とは。どこかの医学部の入試の化学の問題で出てくれないかなぁ。笑
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2009年01月19日

着床前診断で乳がん遺伝子を持たないことが確認された赤ん坊

乳がん遺伝子を持たない赤ちゃん、着床前診断で誕生 英国

 英国で1月初旬、着床前診断で「乳がん」遺伝子を持たないことが確認された赤ちゃんが誕生した。着床前の受精卵の段階でがんの遺伝子がないことが確認されて生まれた赤ちゃんは、英国で初めてとなる。

 ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジによると、女の赤ちゃんが生まれたのは1月9日。乳がんや子宮がんの発症リスクが50─80%高くなる「BRCA─1」遺伝子を持っていないという

 英国では「BRCA─1」遺伝子の有無を調べる着床前診断について、2008年に認可されている。

 この赤ちゃんの誕生で、着床前診断に対する議論が噴出している。ある専門家は、「これは乳がんの治療ではない。病気を持っている子供を排除するものだ」と、倫理的に大きな問題を持っていると指摘。「病気の遺伝子を持っている受精卵は廃棄されてしまう。本質的には殺人だ」と述べている。

 一方、ユニバーシティ・カレッジ病院側によると、赤ちゃんの両親一家は乳がんの発症率が高く、「両親は、娘に乳がんが発症するリスクを残したくないと願っていた」と話している



 まあ殺人とは違うと思いますけども。

 遺伝的な疾患の可能性を減らすことが、そんなに罪なことなんでしょうか。正直なところ。親のどちらかが、常染色体優性遺伝の疾患を抱えていて、ものすごく苦労したとする。子にはそんな苦労は味わってほしくないし健常な子を欲していたとする。しかし高確率で遺伝してしまう。そういう時に着床前診断を行いたいと思い、できるだけ遺伝しないようにしてもらいたい、と思うのは第三者として受け入れるべき感情ではないでしょうか。

 科学が発達してそういうことが可能になっただけでして。もちろん倫理的な面というんですかね、要するに自分の掲げている宗教と社会との折り合いやら何やらの面に関しては、そういう議論が好きな人に任せます。

 癌の発症しやすい家系で、自分の子には癌になってほしくないと思って着床前診断をする、そういう気持ちと技術を宗教的な意味だけで無下に否定できますまい。

医学処:幼少期に多量の大豆を摂取した女性は、乳癌の発症が少ない
医学処:乳がんの再発予防にハーセプチンが認可される。
医学処:乳腺超音波画像コンピューター支援診断(CAD)システム
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胃癌検診に酢を用いることで癌の部位を浮かび上がらせる技術

胃がん:酢で染色、部位把握 岡山大・河原助教らが発見

 色素に酢(酢酸)を混ぜ、胃がん部位を浮き上がらせる検診技術を岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗助教らが発見、日本消化器内視鏡学会の英文誌「Digestive Endoscopy(消化器内視鏡)」に発表した。胃がんの正確な診断や早期発見につながる手法として期待されている。

 胃がんの治療は近年、患者の負担が少ない内視鏡手術が発達。患部の根元に薬剤を注入し、がんを持ち上げて切り取る「内視鏡的粘膜下層剥離術」が普及し、内視鏡で切除可能な胃がんは直径約2センチから10センチ以上になった

 一方、通常胃がんの診断には、インジゴカルミンという青色の着色料で胃内部を染め、凸状になった患部を浮き上がらせる手法が用いられる。しかし、胃壁は元々起伏があるためがんと見分けがつきにくく、正診率は約70%という。取り残しは再発につながるため、がん部位を正確に把握するための検出技術が求められていた。

 河原助教らは胃の細胞は粘液で胃酸から身を守り、がん細胞は粘液をつくる力を失う点に着目。内視鏡検診時は胃の中が空で胃酸、胃粘液とも分泌されないため、検診時にインジゴカルミン溶液に0・6〜0・8%の酢酸を混ぜることで胃を刺激、粘液を分泌させた。結果、着色料は正常組織の粘液と結合して青く染まって胃がん部分だけが浮き上がり、正診率は90%以上に向上したという

 河原助教らは既に日本の特許を取得し、科学技術振興機構の支援を受けて海外でも特許を出願する予定。河原助教は「特殊な機器が不要で、低コストで正確な診断ができるようになった」と話している。



 おお、見事。

 からっぽで何も分泌されない胃の状態で検診するのが当たり前のようになっていましたが、酢を用いてわざと分泌させてやることで違いをはっきり際立たせる技術。この手法を導入するのとしないとでは成績も大きく異なりそうです。

 ちょっとした違いが大きな前進に。

医学処:胃癌検診の裏側〜異常を拾い上げる能力〜
医学処:がん検診の質は、市によって格差が生じている可能性も
医学処:がんの発見の遅れを医療ミスとして1000万円を払う。
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2009年01月16日

臨床試験の抗がん剤マツズマブ投与後に死亡した件で訴訟に

臨床試験薬を投与後死亡 遺族が病院・製薬会社を提訴へ

 臨床試験(治験)中の抗がん薬「マツズマブ」(EMD72000)を投与された後に死亡した大阪市の男性(当時71)の遺族が、近畿大医学部付属病院(大阪府大阪狭山市)側とドイツの製薬会社「メルクセローノ」の日本法人(東京)に慰謝料など4950万円の賠償を求める訴訟を14日、大阪地裁に起こす。

 遺族は、日本癌治療学会のガイドラインでは治験薬の投与は「従来の標準的治療法ではもはや無効か、確立された治療がない場合」に限られており、投与はこれに反するものだったと主張。近大病院には「国が承認済みの抗がん剤を施す余地もあったのに治験を優先した過失がある」、メルク社については「不適切な治験を監督する義務を怠った」としている。病院側は朝日新聞記者の取材に「男性側とは示談交渉中のため取材には応じられない」と回答。メルク社は「個別の事情は承知していない」としている。

 EMDは05年9月、メルク社が武田薬品工業(大阪市)と共同開発を始め、昨年2月、「効果が得られない」として開発を打ち切った。非公表の関係資料によると、投与例は少なくとも海外で265件、国内で26件。このうち頭痛や発熱、発疹などの副作用の症例が海外で214件、国内で8件報告されている。死亡例は海外で34件あり、国内では男性の死亡まで報告がなかったとされる。

 遺族側によると、男性は03年に肺がんと診断され、05年から近大病院で治療を受けた。06年4月、担当医は男性にEMD投与を勧め、副作用情報も示したうえで「あなたにはEMDが効く」などと告知。男性は同意のうえ、EMDの点滴を2度受けた。まもなく肺炎を発症し、翌月、転院先で死亡した。

 一連の経過をめぐって遺族側は、近大病院側が肺炎の発症がEMDの副作用によるものと認める一方、その責任は否定したとしている。

 厚生労働省は薬事法に基づき、メルク社からEMDの治験データや副作用情報の報告を受けてきた。医薬食品局審査管理課はEMDにかかわる報告について「治験段階では企業秘密の面もあり、副作用など安全にかかわる情報であっても企業が公表していない内容は答えられない」としている。



 治験ってのはその名のとおり臨床実験ではあるわけですけど、患者にとって不利益なものであってはなりません。それはもう人体実験ですからね。

 実際こういう訴訟が起こってしまうようなのはもう治験と呼べるのかどうかといったところでしょう。インフォームドコンセントをしっかり行うことの大切さを再度認識させられます。今回の場合は副作用などのことを伝えてはいたようですけれど、治験を優先するような説明が果たして適切なことかどうか、といったところが焦点にあてられるでしょう。

医学処:脳梗塞治療薬tPA、副作用の脳出血で48人が死亡していた
医学処:日本人は新薬の国際共同臨床試験の対象とされていない
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2009年01月15日

がん患者よりも医師のほうが死への恐怖感を強く抱く

死への恐怖、がん患者より医師の方が強い

 医師はがん患者よりも死への恐怖感を強く抱いていることなどが、東大医学部附属病院のアンケート調査で分かった。同病院緩和ケア診療部の中川恵一部長らが1月14日、記者会見して明らかにした。中川部長は「医師は死を哲学的ではなく、科学的にとらえる傾向があることなどが分かった。医療者はがん患者の生き方に学び、歩み寄る必要がある」と話している。

 同病院放射線科、緩和ケア診療部は昨年1月から1年間かけて、「死生観」と「望ましい死」についてアンケート調査を行った。対象は、同病院放射線科の受診歴がある患者312人と同病院の医師106人、看護師366人、無作為抽出した一般の東京都民353人の計1137人。患者は75%が治療済みで、治療中の人は20%だった。

 アンケートでは、各質問項目に対し「当てはまる」(「当てはまる」「かなり当てはまる」「やや当てはまる」)と回答した割合を集計した。

 「死への恐怖」の項目で、「死がこわい」が当てはまると回答したのは、がん患者51%、一般市民56%に対し、医師は64%。「死は恐ろしい」というよく似た設問もあったが、こちらでも、がん患者、一般市民とも37%に対し、医師は48%と、医師の方が多かった。

 「苦痛と死」の項目で、「死は苦しみからの解放」が当てはまると答えたのは、がん患者24%、一般市民18%に対し、医師は16%。「死は痛みからの解放」というよく似た設問もあったが、こちらでも、がん患者35%、一般市民26%に対し、医師は15%と、がん患者の方が多かった。

■「死後の世界」看護師は「ある」、医師は「ない」

 「死後の世界に対する見方」の項目では、がん患者と一般市民に比べ、看護師は死後の世界を肯定し、逆に医師は否定する傾向が見られた。「死後の世界はある」の質問では、がん患者28%、一般市民35%に対し、看護師は48%と高く、医師は19%と低かった。「霊やたたりはある」も同様に、がん患者26%、一般市民33%に対し、看護師は44%、医師は21%。「また生まれ変わる」も、がん患者21%、一般市民30%に対し、看護師は44%、医師は18%だった。

 中川部長は、がん患者の死生観について「『伝統的死生観』には頼らず、死を思い、死を恐れず、充実した今を生きている、と言えるのではないだろうか」と指摘。医師の死生観については「医師は科学的死生観を持っている。未来を希望する一方で、死を思うことは少なく、死への恐怖も強い」と語った。



 医師という職業上、宗教的なことを心の拠り所にするより、医学という学問に専念しているため、死後の世界を想像しにくく、ゆえに死という漠然としたものを怖いと感じるのではないでしょうか。

 まあでも医師に限っていえばそれでもいいんじゃないですかね。患者の宗教観を大事にして、患者とともに死を受け入れていくためには、自身が何かに傾倒していては見えてこないものもあるかと思います。

関連:アメリカ人の半数以上が、医者よりも神の奇跡を優先する。
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2009年01月04日

乳腺超音波画像コンピューター支援診断(CAD)システム

乳がんかも…画像診断 医師補助するソフト開発

 岐阜大学大学院医学系研究科の藤田広志教授(知能イメージ情報学)の研究グループが、超音波で撮影した女性の乳房画像をコンピューターで分析し、乳がんの可能性がある部位を医師に知らせるソフト「乳腺超音波画像コンピューター支援診断(CAD)システム」を開発した。医師の診断をコンピューターで補助することで、がんを見落とす確率が大幅に減ると期待される。

 CADは超音波で乳房を撮影し、3次元の立体画像にしてコンピューターで分析。乳がんの恐れがある部分を画面上で矢印などで示すことで医師に注意を促す。検診車などによる集団検診や人間ドックでの使用を想定しており、一度に多くの画像を診断する医師を補助し、乳がんを見落とす確率を減らすことを目指している。

 乳がんは女性のがん罹患率1位。現在の乳がん検診はマンモグラフィー(乳房X線撮影)が主流だが、母乳をつくる組織の乳腺が白く映るため、乳腺密度が高い若年層だとがんが見えにくく、小さながん細胞だと見落とす可能性もあるという

 藤田教授らは、超音波で撮影すると、がんの部位が黒く丸い影として映ることに注目。これまでに乳がん患者の画像データ約109症例を集め、がん細胞を識別するようにプログラムを作成した。

 とはいえ、約150枚に上る超音波の立体画像解析で、がんに似た細胞に反応する「偽陽性候補」が平均4カ所あるなど、最近の実験でCADによるがん検出率は81%

 共同研究者の福岡大輔・岐阜大准教授は「医師のうっかりミスを防ぐのが主目的なので、必ずしも検出率100%でなくてもいいが、1千症例ぐらい集め、もう少し精度を上げたい」と話す。千差万別の乳がんの形態などを記憶し、自動診断する自己学習機能の向上も課題という

 研究は文部科学省の知的クラスター創成事業の一環で、産学協同による地域経済の活性化が目的のため、将来の商業化が求められている。企業などと協力して来夏にも医療機関向けに商品化する予定。藤田教授は「人種的な特徴なのだろうが、アジア人は欧米人より乳腺密度が高い人が多い。需要はあると思う」と話す。11月30日に米シカゴであった北米医学放射線学会で研究成果を発表するなど、世界でも注目されている。

 国立病院機構名古屋医療センター放射線科の遠藤登喜子部長は「超音波は撮影画像が膨大。コンピューターで診断を支援してくれたら助かる。マンモグラフィーと補完し合えば、乳がんの早期発見に大きく役立つだろう」と期待している。



 おーこういう技術はどんどん進展してほしいですね。

 まあ今の日本では、乳癌を画像で判断できる医師はかなり多いとは思いますが、それでもうっかり見逃す可能性も無きにしも非ず、ですから。確実性を増すためにもコンピューターによる診断を導入したほうが良さそうです。偽陽性に反応するといっても、それは医師が見ればどうなのか分かりますからね。

 進歩し続ける、放射線科の技術。

関連
医学処:マンモグラフィーで脳卒中のリスクを予見できる。
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2008年12月28日

腎細胞がんの抗がん剤ネクサバールで急性肺障害が生じる

ネクサバール服用2人死亡、急性肺障害起こす

 抗がん剤のネクサバール(一般名ソラフェニブトシル酸塩)を服用した患者4人が間質性肺炎などの急性肺障害を起こし、うち2人が死亡していたことがわかり、厚生労働省はこのほど、薬品の添付文書に「重大な副作用」として追記するよう、販売元のバイエル薬品に指導した。

 同剤は、進行した腎細胞がんに対する初の抗がん剤として、今年4月に発売。11月までに約2000人に使用されている。



 うーむ、どうしても肺に障害が起こってしまうものなのか。腎臓と肺ってのも密接に関与していまして、肺胞の基底膜と腎臓の糸球体の基底膜の構造ってのは似てるんですよね。

 糸球体の基底膜に対する自己抗体が形成される、U型アレルギーとしてGood pasture症候群があります。これは腎臓を攻撃するのですが、肺の基底膜は、糸球体の基底膜と同様の構造なため、この自己抗体は肺も攻撃します。

 基底膜が似ているために起こったとは限りませんし、抗がん剤ですから、ただ肺に影響を及ぼしやすいだけなのかもしれません。副作用が強烈だと、どうしても使用をためらってしまいます。難しいところですね。あとは患者の意思か。

医学処:肺がん治療薬「イレッサ」、副作用による死亡者が643人に
医学処:肺癌治療薬イレッサの副作用発症率は他の薬の3倍
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2008年12月24日

肺癌、膵臓癌、リウマチを早期発見できる糖鎖について

北大、血液検査でがんなど診断 / 早期発見に期待

 北海道大は16日、塩野義製薬(大阪市)と共同研究で肺がんや膵臓がん、リウマチの早期発見につながる可能性がある物質を特定したと発表した。血液検査により、がんなどを早期発見できるようになるという。

 これは糖質が鎖のように結合して細胞表面から突き出した「糖鎖」と呼ばれるもので、がんなどの診断や経過観察に役立つと期待されている。

 北大は血液に含まれる糖鎖を解析する機器で、健康な人とがん患者などの糖鎖の量の差を解析。肺がんと膵臓がんでは、それぞれ特定の糖鎖が患者の方が健康な人より少なくなりリウマチでは逆に、別の糖鎖が患者の方が健康な人より多くなることを突き止めた

 一滴以下の血液での解析が可能で、肺がんでは約90%、膵臓がんでは約93%、リウマチでは約96%の確度で区別できるとのデータが得られたという。

 北大の西村紳一郎教授は「実用化されれば早期発見が極めて困難だった肺がんや膵臓がんを、健康診断で発見できるようになる」と話している。



 これは面白い。

 今年はたんぱく質やら糖鎖やら、細かい物質による診断法の確立が多かったように思います。大変良いことというか、患者にとっては非常に有益なことです。特にがんなどの場合、予後などと密接に関与してきますし。

 あとはこの技術が全国的に統一されるかどうか、というところでしょうね。今でも、とある物質(抗体など)を精査するために大学病院に血液を送ったりしていますし。そういう技術が全国に普及すれば、もっと迅速に患者の変化に対応できるでしょう。

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医学処:血液一滴で、遺伝病を簡便に診断できる技術を開発
医学処:統合失調症を早期に発見できる検査キットを開発する。
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2008年12月18日

ビタミンCやビタミンEのサプリを飲んでも癌予防にはならない

ビタミンCやE、ガン予防に効果みられず 米研究

 ビタミン類のサプリメントを服用すれば、ガン予防にある程度の効果があるとされてきたこれまでの研究に異議を唱える研究結果が発表された。米医師会の医学誌「Journal of the American Medical Association、JAMA」(1月7日号)で発表された2つの研究によると、ビタミンCとビタミンEには、ガンのリスクを低下させる効果がみられなかったことが明らかになった。

 研究によると、50歳以上の約1万5000人を対象に8年間にわたる調査を行った結果、ビタミンC、ビタミンEのどちらもガンのリスク低下にはそれほど効果はなかったことが明らかになったという。これまでの研究では、ビタミンCやビタミンEと、前立腺ガンなどのある特定のガンのリスクを低下させる効果との関連性が指摘されていた。

 また、50代以上の約3万5533人を対象に7年間にわたって行われた、セレンとビタミンEの摂取による前立腺がんの予防効果を調べる「Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial(SELECT)」でも同様に、ビタミンEを摂取してもガンリスクの低下はみられなかったという。

 米成人の半数以上は、ガン予防を期待してビタミン類のサプリメントを服用しているといわれるが、そうした人びとにとっては、残念な結果となったといえるかもしれない。



 これはサプリなどで摂取しても意味がないということですよね。まぁ癌のリスクなんてのは他に色々あるわけで、ビタミン程度じゃたかが知れているということでしょうかね。

 日本で、癌の予防のためにサプリ飲んでいる人がいるのか、という点もありますけど。

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医学処:ビタミンB6の摂取が多い男性と、コーヒーを飲む女性は、大腸がんが少ない
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2008年12月13日

新鮮な血液を輸血することで手術中の癌患者の生存率が上がる

“新鮮な”輸血で癌患者の生存率が向上

 癌患者へ“新鮮”な赤血球を輸血することにより、癌の再発を回避できる可能性が高くなり、長期生存の確率も向上することが新しい研究で示された。

 特定の癌の手術中に輸血を行うと、再発率が高くなり、生存率が低下するというマイナスの効果をもたらすことがある。イスラエル、テルアビブ大学のShamgar Ben-Eliyahu氏らによる今回の研究は、この問題を解明しようとしたもの。白血病および乳癌を発症させたラットモデルを用いた試験の結果、研究グループは、使用する血液が9日以上保存されたものであった場合にのみ、輸血が(生存確率の)オッズを損なうことを突き止めた。

 この研究は、ヒトを対象とした重要な研究への扉を開く可能性があるという。「動物モデルで輸血が癌再発の独立した危険因子(リスクファクター)となることが明白に示されたほか、さらに2つの驚くべき知見が得られた」とBen-Eliyahu氏は述べている。その1つは、輸血する血液の保存期間が有害作用の有無を決める重要な因子で、新鮮な血液であれば害はないということ。もう1つは、このような作用をもたらすのは白血球ではなく赤血球であるということだという。

 これまでは、輸血による有害作用を引き起こしているのは、血液に含まれる白血球であると広く考えられていた。このため、白血球を除去した血液を癌患者の輸血に用いるという方法が一般的に取られているが、Ben-Eliyahu氏らの研究では、白血球を除去しても効果はないことがわかったという。

 輸血の方法を変えることによって癌患者の予後を改善することができるかどうかを確かめるには、癌患者を対象にさらに研究を重ねる必要があるとBen-Eliyahu氏は述べている。この知見は、医学誌「Anesthesiology(麻酔学)」12月号に掲載された。



 新しい概念ですねぇ。輸血の新鮮さと、赤血球か。

 癌とは直接関わりがないようですけれど、実際には何らかの因子が関与しているんでしょうね。不思議なものですが。普通は、免疫システムなどの関係上から、白血球が一番問題であると考えられますが、実際には赤血球。酸素を供給している赤血球が、予後に影響していると。

 しかし輸血する血液をできるだけ新鮮なまま、というのはなかなか難しい話なような気も。圧倒的に血液不足なのが常ですからねぇ。
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2008年12月12日

ミリ単位以下のがんまで見つけ出すことのできる検査方法を開発

ミリ以下のがん見分ける検査法開発

 非常に小さながん細胞まで見分けることができる「検査分子」を、浦野泰照・東京大学大学院薬学系研究科准教授らが開発した。さまざまながん細胞に適応できる汎用性と、これまでの検査法に比べはるかに高いがん検出能力を持つことから、将来、実際のがん臨床に画期的な役割を果たすと期待されている。

 浦野准教授が小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の協力を得て開発に成功したのは、がん細胞に取り込まれたことを検知して初めて光り出す小さな有機プローブ分子で、小さな分子である蛍光プローブと、大分子(抗体など)の組み合わせから成る。プローブを変えることによって蛍光の色を、大分子を選択することで調べたいがんの種類を選べることから、いろいろながんの検出が可能になる

 これまでがん診断には、PET(陽電子放出断層撮影)やMRI(核磁気共鳴イメージング)が、広く利用されてきた。しかし、これらは投与されたプローブが、すべてがん細胞だけに取り込まれないため、検出できるがんの大きさがセンチメートルまでという限界があった。これに対し、浦野准教授らが開発した検査分子は狙ったがん細胞にしか取り込まれないため、ミリメートル以下の小さながんまで検出できるのが特長。さらに、蛍光を発するのはがん細胞が生きている間だけ、つまり開発した「検査分子」はがん細胞が生きているかどうかを見分けられることから、治療効果をリアルタイムで確認しながら手術を行うことも初めて可能になる。

 浦野准教授らは、すでに微小がんを持つモデルマウスを使い、蛍光内視鏡を使って生きている状態でリアルタイムに微小がんを検出し、除去する疑似手術に成功している。



 ミリ単位以下のがんまで発見できるようになったら、どうなるんですかね。手術しなくても、例えば放射線療法とかで治っちゃうんじゃないでしょうか。放射線感受性の良い・悪い癌はありますけれど、感受性が悪い癌であってもミリ単位だったら完璧に治ってしまうのでは。

 この「がん細胞にしか取り込まれない」検査分子に、抗がん作用をもつ薬をつけたら、そのまま治療にもなりそうです。

 一生のうちに大半の人がかかる「がん」というもの、その癌と人との関わりを根底から覆しそうな発見です。

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2008年12月09日

CT検査は癌になる確率を高めるか?

CTスキャンは癌のリスクを高める!?

 CTスキャンを受けると、癌になる確率が高まるという。アメリカの研究員が2日に発表した。

 ボストンのある産婦人科病院の研究員がシカゴで行われた北米放射線学会の会議で述べたところによると、彼らは現在、患者がCTスキャンを受けたことによる癌発症のリスクを見極める新しい方法を研究しているという。

 CTスキャンは疾病や怪我の具合などを調べることができる医療機器で、癌の進行状況の検査によく使われているが、最近の研究で、CTスキャンの放射線により患者が癌になるリスクが増加する可能性もあることが指摘された。

 今回の研究は、CTスキャンを受けた患者を対象に実施された。研究員は次のように述べている。「患者の約7%で、癌発症率が癌の基準発症率より1%高くなったことが確認された」。

 研究員は今後、患者の過去のCTスキャン使用暦に基づいてその患者の癌発症率を算出し医師に警告することができる機器を開発したいとしている。



 本当でしょうかね。

 そりゃCTも放射線を使うわけですから、害がないとはいいませんが。癌発症のリスクとして考慮されるほどのものではないような気がします。

 というか、何か異常があるかどうか、CTを施行しなければ分からないものですからねぇ。そりゃやりすぎは良くないですけど、日本の保険システムなら、期間ごとの回数制限があるので、やりすぎることは無いでしょうし。

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2008年12月08日

医学ちょっといい話10「末期乳がんの女医が送るメッセージ」

末期がんの女医が贈る患者へのメッセージ

 「わたしが“生き見本”です。どんなにつらくても、決してあきらめないでほしい」と呼び掛ける小倉さん

 21年前に乳がんの全摘手術を受け、再発、再々発、全身転移し、現在も治療を続けている小倉恒子さん(小倉耳鼻咽喉科医院副院長)が12月5日、「乳がんの女医が贈る 乳がんが再発した人の明るい処方箋」(主婦の友社)を出版した。病状は悪化し続けているが、現在も週1回の抗がん剤治療を受けながら、耳鼻咽喉科医としてフルタイムで働いている。自分や家族が「がん」と宣告されたとき、再発したとき、全身転移したとき、どう向き合えばいいのか―。小倉さんに聞いた。

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 抗がん剤治療を続けているがん患者の中には、「化粧する気力もない」「外に出たくない」と内にこもってしまう人も少なくありません。同書では特に女性のがん患者に向けて、わたしのメイク術を公開しています。

 わたしは約8年間、抗がん剤を打ち続けて、髪の毛、まつげ、まゆ毛が抜け、皮膚には色素が沈着しています。しかし、メイクとウィッグで別人になることができます。今では自分が抗がん剤を打ち続けていることを伝えても、信じてもらえないことが多いほどです。本当は色素沈着している素顔の写真は出したくなかったのですが、皆さんに「末期がんでもこんなに元気なんですよ」というメッセージを伝えるために、思い切って公開しました。がんだからといって内にこもらず、明るい気分になってどんどん出掛けてほしいですね。

■患者同士つるんでスピリチュアル・ペインを軽減

 病気が長引いてくると、「わたしだけがなぜこんなに苦しまなければならないのか」と、精神的な苦痛を強く感じることがあります。また、死を自覚しなければならないような病状になった場合や、他人のお世話にならなければ生きていけなくなった場合、自分の存在価値・存在意義に疑問が生じることもあります。こうした目に見えない苦痛は「スピリチュアル・ペイン」と呼ばれ、それなりの対策が必要とされています。スピリチュアル・ペインを克服して明るく生きていくためには、孤立せず、患者同士で「つるむ」ことが大切です。最近では各地でがん患者を対象にした集会やイベントが開かれているので、積極的に参加されることをお勧めします。がんになったことがきっかけで、仕事を辞める人も少なくありませんが、「自分は病気には負けてない」と強く意識して、職場への復帰を目指してほしいですね。

■精神的にタフになって

 早期発見できなかった人、再発や再々発してしまった人、全身転移してしまった人でも、夢と目標を持ってがんと共存しながら、強く生きてもらいたい。長い闘病生活を送ることになったとしても、自分の目標に到達する努力は続けてほしい。そして、人生を終える時も、「いい人生を送ることができた」と思えるような、そんな生き方をしてほしい。

 わたしはこれまで21年間、がんと闘ってきましたが、臨床的に見ると、どんどん悪くなっています。「がんに効く」といわれている民間療法や薬は何でも試し、選択肢がどんどん少なくなっています。嘔吐、脱毛などの副作用にも苦しみながら8年間、何種類もの抗がん剤を打ちましたが、同じ抗がん剤の使用を続けると、耐性ができて効かなくなってしまいます。国内で承認されているもので、わたしの体に効果が期待できる抗がん剤は、あと2つしか残っていません。

 がんの再発、再々発、全身転移を経ていくにつれて、目の前の道はどんどん細くなり、暗くなっていくばかりでした。同じような境遇の人はたくさんいると思いますが、わたしが皆さんの一歩前を歩き、暗くて細い道に少しでも光を照らしたい。後に続く人たちに、少しでも希望を与えたい。そんな思いを込めて、この本を書きました。

 がん患者やその家族からよく「治療の苦しみにどうやったら耐えられるのか」と質問を受けますが、同書ではわたしなりの「精神訓練法」「副作用などの苦しみを乗り越える方法」も書いています。どんなにつらくても、決してあきらめないでほしい。わたしが“生き見本”です。

 がん患者でなくても、挫折してしまった人、精神的に弱っている人、体調を崩している人にもぜひ読んでいただきたいと思っています。

■担当医と患者の信頼関係を

 がん治療を続けていく上で、担当医と患者間で信頼関係を構築することも大切だと思います。最近ではインターネットなどにあらゆる情報がはんらんし、患者もいろいろな知識を身に付けている。しかし、「頭でっかち」になって、担当医や医療機関を疑ってばかりでは、ベストの治療を受けることはできませんし、高い治療効果も望めません

 受け入れてくれる医療機関が全くない、いわゆる「がん難民」という状態も、患者が頑固な態度であったために起こるケースも少なくありません。柔軟性を持って、担当医の話を受け入れ、信頼関係を築いていくという姿勢も大切です。

 また、担当医には、「患者の精神的苦痛と肉体的苦痛を一緒に背負う」「患者に寄り添う」という気持ちを持って医療に当たっていただきたいと思います。 

■「ドラッグ・ラグ」の解消を

 「ドラッグ・ラグ」とは、海外の医療現場で使用されている薬が、日本国内で使用できない状況を言います。例えば、ある種の抗がん剤の使用が日本以外の国では認められていて、効果を発揮していても、日本では厚生労働省の承認が下りていないため、使用することができないケースが少なくありません。 

 わたしは、現在もフルタイムで耳鼻咽喉科医の仕事を続けています。休日は日曜のみで、金曜の午後は毎週抗がん剤治療。病状は年々悪化していますが、昨年はこの20年間で所得額も納税額も最も多かった。末期がんのわたしでも遅刻もせず、夏休みも取らずに働いて、一生懸命、税金を納めているのです。納税者の一人として、一刻も早くドラッグ・ラグが解消されることを望みます。抗がん剤で延命するしかないがん患者は、国内での承認が延び延びになっているうちに、どんどん亡くなっていきます。国民2人に1人ががんになる時代ですから、政治家も役人も人ごとと思わないで、真剣に考えてほしい。予防に力を入れるのも大切ですが、末期がん患者を見捨てないでください。

【著者紹介】
小倉恒子(おぐら・つねこ)さん


 21年前(1987年)に乳がんが発病し、全摘手術を受けた。その後、2000年に再発、05年に再々発、07年に全身転移。病状は悪化し続けているが、現在も週1回の抗がん剤治療を続けながら、耳鼻咽喉科医としてフルタイムで働いている。

 著書には、「女医が乳がんになったとき」(ぶんか社文庫)、「怖がらないで生きようよ―がんと共生する医師のポジティブ・ライフ」(講談社)、「あなただって『がん』と一緒に生きられる」(KAWADE夢新書)、「WILL-眠り行く前に がんになった女医がわが子へ贈る愛のカセットテープ」(ブックマン社)などがある。

 12月7日に大阪市内で開かれる「アジア乳がん学会」では、「患者と医療者のパートナーシップ」という演題で講演する予定。

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2008年11月28日

茶カテキンの抗がん作用を増強させた薬を開発する。

茶カテキンの抗がん作用増強

 緑茶の渋みの元で健康食品としても使われている茶カテキンの成分から、がんを抑える作用の強い化合物を作ることに成功したと、京都大再生医科学研究所の玄丞烋准教授(医工学)と松村和明特任助教たちのグループが26日、発表した。食用成分を原料に使っていることから「副作用の少ない抗がん剤の開発が期待できる」という。

 茶カテキンの主要成分であるエピロガロカテキンガレート(EGCG)は、抗がん作用や抗酸化、抗ウイルスなどの働きがあり注目されている。しかし、体内ですぐに分解されるなど、そのままでは薬剤としては十分に作用が発揮できない

 玄准教授は、EGCGと脂肪酸の合成物質(EGCG−C16)を作製した。この合成物質は体内でも壊れにくく、がん細胞に結びついて増殖を抑えることを実験で確かめた。

 マウスの結腸がんの近くに合成物質を注射すると、EGCGのみを注射したマウスに比べ、1カ月後のがん組織の成長を約1割に抑えることができた。



 お、これはご当地モノじゃない!!・・・と思ったら京都か。これももしかしてご当地モノかもしれませんね。お茶といえば静岡、でも京都もお茶ですもんね。お茶メーカーが絡んでるかどうかは分かりませんが。

 でもこれはお茶メーカーが絡んでもしょうがないもんかもしれないですね。お茶に含まれている物質を薬として使えるようにした、というものですので。がんに効くといわれているカテキンを更にパワーアップさせたもの。抗がん剤としての効果に期待です。

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2008年11月27日

肺がんの新たな治療薬を自治医大が開発する

自治医大:マウスの肺がん消失に成功

 肺がん遺伝子が作る酵素の働きを抑える化合物で、マウスの肺がんを消失させることに、自治医科大などの研究チームが成功した。肺がんの新たな治療薬として期待される。25日、米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載された。

 チームは昨年、肺がん男性患者から、がん化にかかわる遺伝子「EML4−ALK」を発見。肺がん患者の約5%がこの遺伝子を持っていることが分かっている

 この遺伝子が肺がんを起こすことを確かめるため、肺だけで遺伝子が働くように操作したマウスを作ったところ、生後1〜2週間で両肺にがんができた。

 さらに、この遺伝子が作る酵素の働きを阻害する化合物を作り、肺がんマウス10匹に1日1回経口投与した。投与開始から25日ですべてのマウスのがんが消失した。投与しなかった肺がんマウス10匹は、がんが両肺に広がり、9匹が1カ月以内に死んだ。

 肺がんの治療薬としては「イレッサ」があるが、副作用がある上、効く患者が限られる。この化合物は別のタイプの肺がんへの効果が期待できるといい、既に複数の製薬会社が治療薬開発に着手している。間野博行・自治医科大教授は「投与したマウスの臓器や血液を調べたが、副作用はみられない」と話している。



 さすがに副作用がない、ということはないのでしょうけれど、イレッサのように重篤な副作用が出なければ大きな治療法になりそうです。

 遺伝子の作る酵素を選択的にブロックする化合物ということは、これも分子標的薬のくくりになるのでしょうか。分子標的治療薬は、特定の分子を狙い撃ちして、腫瘍が増殖するシグナルを抑制したりすることのできる薬です。慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ(グリベック)などが有名ですが、分子標的治療薬は劇的な効果をもたらすものが多いので、この薬も期待できそうですね。

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2008年11月04日

ICGを用いて肝癌細胞を光らせ、残さず切除する術法

肝がん細胞を光らせ切除 再発防止へ新手法開発

 肝臓がんの手術中にがん細胞だけを光らせることで残らず切除する手法を大阪府立成人病センター(大阪市)の研究チームが開発した。28日から名古屋市で開かれる日本癌学会で発表する。

 微小な肝がんを取り残すと約7割が5年以内に再発するとされ、センターは「手術後の再発防止につながりそうだ」としている。

 チームは、肝機能検査で使う試薬「インドシアニングリーン」が肝がん細胞に一定期間とどまるのを発見。光学機器メーカー「浜松ホトニクス」(浜松市)の小型赤外線カメラで患部を観察するとがん細胞だけが光って見え、従来は見つけることができなかった5ミリ以下のがん組織を手術中に見つけるのに成功した

 昨年2月からセンターで肝がん手術を受けた患者39人にこの手法を適用。うち7人で手術前の検査で見つからなかった新たながんを発見、切除したという。



 取り残しがないかどうかは、患者さんの予後に密接に関わってきますからねぇ。

 インドシアニングリーンというのは、本来は「ICG試験」としてよく用いられる物質です。これは、肝機能や肝予備能を知るための検査として広く行われている色素負荷試験で、一定量のICGを経静脈的に投与して、何分か後に血中のICG濃度を測定し、どのくらい血中に残っているかを測定します。

 (ICGは、血中のリポ蛋白に結合して肝臓に輸送され、類洞を通過する間に肝細胞に摂取され、抱合を受けることなく胆汁に排泄されます。要するに、肝臓で処理されればICGは体内から排泄されていくわけです。ですので、肝有効血流量が減少した場合や肝細胞摂取能が低下した場合には、ICGの血中消失速度は遅延します。)

 内科的には不顕性肝硬変の診断や肝硬変の「進行度」、予後の推測に有用で、他には心疾患や浮腫などで肝有効血流量が低下している患者では異常値を示すことがあります。

 肝臓系ではメジャーな検査です。なんか緑色のよくわからない液体を入れられた方もおられるのでは?そのICGが肝がんの細胞にも留まることを発見したため、今回のような診断法が可能になった、というわけですね。
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悪性中皮腫の発症は2つの受容体によるものだった。

中皮腫「発症」を解明 治療薬向上に期待、愛知県がんセンター

 アスベスト(石綿)が原因とされる悪性中皮腫で、細胞外からの増殖信号による発症のメカニズムを愛知県がんセンターの研究グループが突き止めた。現在進められている治療薬の開発に成果が活用できるという。28日から名古屋市で開幕する日本癌学会で発表する。

 胸膜や腹膜にできる悪性中皮腫は早期発見が困難で、手術が難しい。現在は年間約1000人が死亡。過去のアスベスト使用の影響で、今後20年で死者数が約5倍に増えると見込まれる

 同センターは今回、細胞膜上にあり、外部から増殖の信号を受け取って細胞内に送る「受容体」が2種類以上、同時に異常活性化していることを突き止めた。現在は十数種類の受容体が確認されているが、これらが異常に活性化すると細胞分裂の信号を勝手に出すようになり、がんなどを発症させる。

 それぞれの受容体に働き、副作用がない薬の開発が進んでいるが、1つの受容体の異常活性化を抑制する薬を使用しても、7−8割以上、細胞が生き残った。しかし、2種類に対する薬を同時に投与すると細胞数は3割以下に下がった

 研究グループの同センター研究所分子腫瘍学部の関戸好孝部長は「こうした受容体の異常な活性を個別の腫瘍で見極め、同時に抑制すれば、有効な治療手段になる可能性がある」と話している。



 アスベストが原因と分かって、大問題となった悪性中皮腫の騒動ですが、まだ氷山の一角にすぎません。アスベストが撤廃された今であっても、既に体内に取り込まれたアスベストがいつ悪さをし始めるか、分からないのです。

 今回の研究で分かった2つの受容体を同時に抑制するような薬が出来れば、悪性中皮腫の生存率もかなり上がることが期待されます。

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ガン予防効果のあるレスベラトロールを含むビール

米大学生、「ガンに効くビール」作りに挑む

 米ライス大学の学生が、遺伝子工学を用いてガン予防効果のあるレスベラトロールを含むビールを作り出そうとしている。レスベラトロールはワインに含有される化学物質で、ガンや心臓病を抑制することが動物実験で示されている。

 この「BioBeer」はまだ1滴もできておらず、ビールの発酵とレスベラトロールの生成を同時に行う遺伝子組み換えイーストを作っている段階。数週間以内に試験的に醸造する予定だが、実験に必要なケミカル「マーカー」を含むため、これを取り除くまでは飲めないと研究チームは述べている。

 研究チームは、市販のビールで使われているイーストの遺伝子の2つの部分を組み換えている。1つ目の部分は、イーストが糖を代謝し、中間物質を分泌できるようにする。この中間物質を、2つ目の部分がレスベラトロールに変換する。2つ目の部分は組み換えができているが、1つ目の部分はまだ作業中としている。

 BioBeerは、11月上旬に開かれる国際大学対抗遺伝子工学技術応用機械(iGEM)コンペティションに出品される予定。なお、研究チームの学生のほとんどは、法律で飲酒が認められる年齢に達していないという。



 素晴らしいオチの記事ですね。

 しかしこういう商品は大抵「予防効果はあるかもしれないがそれ以上に飲みすぎによるリスクのほうが大きい」となりがちなんですよね。

 飲みすぎると気持ち悪くなるビールってのを造ったら案外需要あるかも?ないか。

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2008年10月25日

小児がん「神経芽腫」の原因遺伝子を東大が発見する。

小児がんの原因遺伝子発見 東大、治療薬開発に期待

 代表的な小児がん「神経芽腫」の新たな原因遺伝子を発見したと、東京大の小川誠司特任准教授(腫瘍遺伝学)らの研究チームが16日付の英科学誌ネイチャーに発表した。治療薬の開発につながる可能性がある成果。

 チームは、患者239人から採取した神経芽腫の細胞で遺伝子を解析。うち21人(9%)にALKという、酵素をつくる遺伝子に異常があることを突き止めた。

 次に、患者と同様の遺伝子異常を再現したALKの酵素をマウスに注入する実験をしたところ、全例でがんができた。酵素が過剰に働くことが細胞のがん化につながっているとみられるため、遺伝子の働きを抑える物質を発見できれば、有力な治療薬になるという。

 神経芽腫は、神経のもとになる細胞ががん化する病気で、国内で年間約1000人の子どもが発症。約30%が難治性で、骨髄移植など強力な治療をしても、助かるのは40%に満たない。今回の遺伝子異常は、大半が難治性の患者で見つかった。

 神経芽腫の原因遺伝子は別に一つ見つかっているが、その遺伝子の働きを抑える薬はできていない。

 小川准教授は「ALKは肺がんの原因遺伝子でもあり、研究は進んでいる。遠くない将来に治療薬ができるかもしれない」と話している。



 小児のがんで一番多いのは白血病です。二番目に多いのが、神経芽細胞腫、別名、「神経芽腫」です。

 神経提細胞が癌になるため、副腎髄質や交感神経節が癌に侵されます。おなかにできるものなので、おなかにしこりを触れたり、またはその腫瘍によって神経が圧迫されて症状が出たりします。

 全身症状としては、不定の発熱、貧血、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢、やせ、高血圧などが見られ、転移巣による症状としては、眼球突出、眼窩周囲鬱血、骨・関節部の疼痛(四肢痛)、跛行、肝腫大、皮下結節などがあります。

 今のところ取れそうならば腫瘍摘出術を行いますが、転移を伴い、予後不良因子を持つような症例ではどうしても・・・だそうです。この発見から、助かる子供が増えれば、これ以上ないほどの喜びですね。

参考:日本小児外科学会

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posted by さじ at 22:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | がん