妊婦搬送:大阪でも19病院拒否、自宅で出産 06年7月 奈良県橿原市の妊婦(38)が同県と大阪府の計9病院に搬送を断られて死産した問題と同様、大阪市でも06年7月、産気づいた妊婦が
19病院に受け入れを断られていたことが7日、分かった。妊婦は、
かかりつけの産科がなく、搬送先を探している最中に自宅で出産。母体と新生児は20カ所目の同府内の病院に運ばれ、母子の命に別条はなかった。
通常のお産では、妊婦は健診のため産科に通い、陣痛が始まった時に運ばれる医療機関は決まっている。橿原市のケースでも妊婦は産科にかかっておらず、
消防が受け入れ病院を探した。
大阪市消防局によると、今回の妊婦は30代。昨年7月24日夜、陣痛が始まり、午後8時11分ごろ、119番通報した。救急隊が駆けつけたが、かかりつけの病院がなかったため、その場で待機し、府内の病院に次々と受け入れを求めた。しかし、19病院に断られた。
その間、妊婦は救急車内で待機したが、トイレに行くため自宅に戻った際に出産してしまったという。医師や助産師はおらず、救急隊員が介助したという。その後、搬送を受け入れる病院が見つかり、午後10時12分に自宅を出発。16分後に病院に到着した。
同消防局によると、昨年1年間で産科に搬送されたのは2673人。このうち、かかりつけ病院など搬送先が決まっておらず、119番通報後、受け入れ病院を探したケースは135件あった。同消防局は「約9割は1〜3回の依頼で受け入れ先は見つかり、平均すると2・3回。19件も断られたのは特異なケース」と話している。
産科婦人科学会:救急医療体制の整備など求め陳情書 奈良県の妊婦が相次いで病院に受け入れを拒まれ、死産した問題を受けて日本産科婦人科学会は7日、舛添要一厚生労働相に、
産科救急医療体制の整備と産婦人科医不足に緊急に対応するよう求める陳情書を提出した。
陳情書では(1)10年以上前につくられた現行の周産期医療対策では「1次救急」や、受診歴のない妊婦対応が検討されていない(2)産婦人科の当直医は交代勤務制になっていない−−などの問題点を指摘している。
まず、妊娠直前にもかかわらずどの病院にもかかっていないというのがそもそも「ありえない」話です。胎児に必要なスクリーニング検査などまるでせず、陣痛が始まったらいきなり119番に電話し、搬送される。意味がわかりません。
本来お産ってそういうものじゃないでしょう?ここまで医療が発達する前の時代だって、お産っていうのは周期ごとにちゃんとケアをし、安定した中、お産婆さんに取り上げてもらうのが常識じゃないですか。
いきなり救急車を呼んで、出産までのプロセスをとれ、と言われても、「誰だよ」って話ですよね。順調に経過を辿っている人が大勢来る病院で、いきなりこられても、実際に手がふさがっていることのほうが多いわけですし。何でお産のサイクルに乗れないんでしょうか?乗りたくない訳でもあるんでしょうか。普通、赤ん坊が欲しくて妊娠してるなら、何ヶ月も放置しておかないものですけどねー。
まぁ、受診しない妊婦をひとくくりにするつもりはないんですけど、さすがにこんな馬鹿みたいな案件で医者がバッシングされるようじゃたまったもんじゃありませんよ。医療従事者はこういう問題が起こっても、「それでも人命が大事だから」と穏便に済ませようとします。全国の医者がそういうスタンスであることを、一般の方にもっと認識してもらいたいですね。
非常に
興味深い記事を見つけたんで、最後に載せておきます。
奈良、札幌の受け入れ拒否 「受診しない妊婦にも責任」 奈良県や札幌で、救急搬送された妊婦の受け入れを医療機関が相次いで断った問題で、拒否された患者全員が出産まで一度も産科を受診してなかったことから、産婦人科医の間で批判の声が上がっている。背景には
札幌市内だけで年間一千万円を超す出産費用の未払いがあり、救急態勢の改善だけで問題は解決しない。
「病院や役所ばかり責められるけど、妊娠六カ月まで医者に行かない妊婦がそもそも悪い」
札幌市内の総合病院の産婦人科で働く四十代の男性医師は、奈良の女性の自己責任を問う。奈良の女性も、札幌で五回以上受け入れを断られた女性五人も、全員に産科の受診歴が無かった。
「妊娠したかなと思ってから出産まで約二百八十日。その間、一度も受診しないというのは
確信犯ですよ」。札幌市産婦人科医会の遠藤一行会長も語気を強めた。
通常の患者は妊娠の兆候に気づいた時点で産科にかかる。容体が急変しても、119番通報すれば、かかりつけ医に運ばれる。国民健康保険なら一人三十五万円の出産育児一時金も支給される。
遠藤医師が「確信犯」と嘆く
患者の大半は国保の保険料が未納、または無保険者という。保険料未納なら、失業や災害など特別な事情がない限り一時金は差し止められる。保険を使えないので妊娠しても産科にかからず、陣痛が始まってから119番通報する。
「救急車に乗れば必ずどこかの病院に行けますから。無事産んだら、退院する段になってお金がない、と。
ひどい場合は子供を置いて失踪する。病院はやってられませんよ」。遠藤医師は嘆く。
同医会の調査によると、二○○六年度に、救急指定を受けた札幌市内の十四医療機関だけで、出産費用の未払いは二十六件、総額一千万円を超す。同医会理事で市立札幌病院の晴山仁志産婦人科部長は「予想より多い数字」と驚いた。
医療機関からみると、かかりつけ医がおらず、救急搬送される妊婦は、未熟児などの危険性が不明でリスクが高い上、出産費不払いになる可能性も高く、受け入れを断る病院が出てくる。
ただ、
産科にかからない妊婦を責めるだけでは、子どもの生命は守れない。胆振管内で産婦人科を開業する六十代の男性医師は「産科に行かない妊婦にはそれぞれ事情がある。救急態勢以外に、母親側の背景を検討して対策を講じないと、問題は繰り返される」と訴えている。