産後の入院短縮 広がる 出産後の入院期間を、現行の1週間前後から3〜6日に短縮する取り組みが広がっている。東京の日本赤十字社医療センターでも、来年1月から早期退院制度を導入。出産を扱う医療機関が不足する中、「お産難民」の解消策として期待される。
横浜市の主婦山田満希子さん(35)は10月末、同市の神奈川県立汐見台病院で次男を出産した。入院日数は、出産した日を含めて4日。長男(3)を同病院で出産した際は7日入院したが、今回は、2007年7月に同病院が導入した早期退院の制度を利用した。「実家に預ける長男が心配だったので、早く帰れて助かりました」と話す。
退院翌日とその2日後には、病院が提携する同市の「みやした助産院」の助産師が自宅を訪れ、母子の健康を確認。授乳の相談にも乗り、山田さんは安心できたという。
同病院周辺ではお産をやめる医療機関が相次ぎ、同病院にお産が集中した。
05年に年間約500件だった同病院の出産件数は、07年に700件に急増。ベッド不足の状態になっていた。また、2人目、3人目を産む母親からは「上の子が心配だから早く退院したい」という要望もあったという。
そこで同病院では、経産婦で母子ともに健康、早期退院を希望する場合に限り、これまで6日だった入院期間を4日に短縮。
退院後は助産所の助産師が自宅を2回訪問することにした。
高度の産科医療に取り組む総合周産期母子医療センターに指定されている日本赤十字社医療センター(渋谷区)でも、来年1月から、早期退院と、助産師による自宅訪問の制度をスタートさせる。
同センター周辺でも出産の取り扱いをやめた医療機関が相次いでいる。同センターの昨年の出産件数は約2500件で都内最多と見られ、3年前の25%増。1月から新病棟に移転し産科の病床数が減る事情もあり、「より多くの出産を受け入れたい」(周産母子・小児センター長の杉本充弘さん)と入院期間短縮を決めた。
現在は初産婦が出産当日を含め7日入院、経産婦は6日が基本だが、母子の状態が良好な場合、それぞれ1日ずつ短縮する。状況によっては、さらに早期の退院もできるようにする。
横浜市の産科診療所「池川クリニック」では、出産した日を含め入院日数は3日が基本で、当日退院した人もいるという。退院後、希望者には助産師が訪問するほか、診療所を訪れた母親の母乳指導を無料で行っている。
横浜市では昨年度から、早期退院に取り組む医療機関と、退院後の訪問指導を行う助産所に補助金を支給している。
こうした取り組みは広がると見られる。日本助産師会は1月から、早期退院した人を地域で支える役割を果たそうと、地域で開業している助産師を対象に、母子の健康チェックなどの研修を始める。同会会長で順天堂大特任教授の加藤尚美さんは、「自宅で過ごす方が母子はリラックスし育児にも早く慣れることができる。医療が必要な時期が過ぎたら早く退院し、自宅で支援を受ける態勢が理想的だ」と話している。
ある地域では、地域住民が産科病院を保護する運動を進めているようですが、こういう大都市圏ではなかなかそういう意識も芽生えていないようです。
お産というのはリスクがつきもの。そのリスクを極力減らすためにも定期的な妊婦検診やかかりつけ病院を作らなければいけないんですが、実際には飛び込み出産など、リスク軽視をしている人が多い。そしていざ何かあったときに、病院のせいにしたり、医療過誤だとして訴えたりする人がいる。
そういう問題があり、お産を取り扱う病院が減少。1つの病院に集中するようになり、ベッド数が足りなくなってくる。
こういう悪循環を断ち切らないと、産婦人科医療を続けるのは困難ですが、いかんせん医療機関の改革だけでは難しいところです。
唯一できる対策がこの助産所を有効活用した入院期間の短縮ですが、どこまでできるかどうか。