秋田市の料理人が作った黒蜜シロップが、薬を拒む白血病などの子どもたちを救っている。「薬の苦みが甘みの中に溶けて飲みやすい」と評判を呼び、昨年秋から大手医薬品卸会社も販売を始めた。
料理人は、日本料理店「たかむら」店主の高村宏樹さん(35)。3年前に常連客と交わした会話がシロップ作りのきっかけだ。
「苦い薬を飲んでもらうにはどうしたらいいだろう」。子どもに風邪薬を飲ませる母親の苦労話をしていた薬剤師の小松田瑞穂さん(41)が言った。総合病院小児科診療部長の渡辺新さん(52)からは、抗がん剤など苦いとされる薬を拒んで病状が悪化する白血病の子どもがいる、と聞いた。
高村さんは22歳の時、臓器に肉芽腫ができる難病「サルコイドーシス」と診断された。複数の薬を飲み続けた経験から、その苦痛が理解できた。
試行錯誤が始まった。自家製の黒蜜を薬に添えるシロップとして使えないか。原料は水とショ糖だけだから、薬効が失われることはない。ほどよい甘みを残しながら、薬の苦みを消すには。
営業後の深夜、材料の配分や煮詰める時間などを変え、抗炎症剤や抗感染症薬などの薬と一緒に試飲。3カ月後、ようやく試作品が完成した。
04年春、渡辺さんは担当する急性白血病の2歳の女児に与えた。これまでは食べたものと一緒に薬を吐き出していた。シロップに薬を溶かしパンに塗ると、女児は「おいしい」と笑顔を見せた。退院した女児の母親から受け取った手紙には「おかげで薬が飲めるようになり、病気を克服できました」とあった。
渡辺さんは、学会や白血病児を持つ親の会などでシロップを紹介。全国の病院や薬局から問い合わせが相次ぐ。
高村さんは「料理人としてのこだわりで子どもたちを救うことに貢献できてうれしい」と話す。
問い合わせは販売元の「トゥー・ワン・コア」(018・866・0887)へ。
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子供に苦い薬を飲ませる、という、強制の段階で、何か違いますからね。小児医療は難しいですが、こういったアイディアのおかげで、助かる命は増えていくのでしょう。
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