[脳神]の記事一覧

2008年12月05日

神経細胞が必要な物質を的確に選別して運ぶ仕組み

分子モーター:配送のしくみ、東大・広川教授ら解明

 最長1メートルに及ぶ神経細胞の末端まで、必要な物質を的確に選別して運ぶ仕組みを、東京大の広川信隆教授(分子生物学)らが解明した。細胞内の運び屋「分子モーター」に、配送票のようなたんぱく質がくっついて「積み荷」をより分け、目的地に着くと、このたんぱく質が分解されて積み荷が降ろされるという。

 広川教授らは、エネルギーを生み出すミトコンドリアなどが末端に届く仕組みを調べた。その結果、これに使われる分子モーターは「KIF1A」、「KIF1Bβ」の2種類で、いずれも「アダプター」となるたんぱく質「DENN/MADD」がくっつき、さらに小胞膜のたんぱく質「Rab3」と選択的に結合することで積み荷が選ばれることが分かった。細胞末端に着くとRab3が加水分解されて結合が外れる。

 広川教授は「アルツハイマーなどでは細胞内の輸送が遅くなる。輸送機構の解明が神経機能の活性化や治療法開発につながるはず」と説明している。



 たんぱく質関連の研究が加速していますねぇ。今はまだ「発見」の段階ですが、これが薬に応用されたり、臨床で使えるようになる可能性を秘めています。今まで治療不可能だった疾患や原因不明な病気が解明される日も近いかもしれません。

関連
医学処:学習や記憶に使われた神経細胞だけが、大人になっても生き残る
医学処:神経細胞を正しく結合させる蛋白「Wnt4」を発見する。
医学処:神経細胞を使って計算回路を作成する。
posted by さじ at 00:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月29日

脳のニューロンを活性化して麻痺した四肢を動かす。

脳ニューロンから麻痺した四肢を直接動かすことに成功

 麻痺した四肢を動かすための最新の取り組みの中で、脳の個々の単一ニューロンを活性化して麻痺した手首を動かす方法が突き止められたという。米ワシントン大学(シアトル)の研究グループは、サルを用いた実験で、脳−コンピューターインターフェースという装置を用いて脳細胞と接触し、麻痺した神経部位を迂回して、腕の筋肉に刺激を与えることに成功した。この研究は、脊髄損傷、脳卒中をはじめとする運動障害の治療や、人工装具の開発につながる可能性があるという。

 同大学生理学・生物物理学のChet Moritz氏らが今回用いた方法は、麻痺した筋肉を刺激する研究においてほかの方法とは異なる。ほかの方法は、実際の運動や運動イメージに関わる脳細胞を利用しようとするものであったのに対し、Moritz氏らは、生体フィードバックを用いて多数のニューロンを、筋肉を刺激するように再訓練できることを突き止めた。この報告は、英科学誌「Nature」オンライン版に10月15日掲載された。

 今回の研究では、一時的にサルの腕を麻痺させ、サルの脳から腕の筋肉へ運動制御シグナルを伝達する人工的な迂回路を作った。「運動皮質と呼ばれる脳部位の個々の単一ニューロンを記録し、コンピューターを通じて経路を作り、このニューロンの活性を用いて麻痺した筋肉を刺激した」とMoritz氏は説明する。サルはこの刺激方法を用いて、あらかじめ教えられた手首の曲げ伸ばしを要するテレビゲームをすることができたという。

 「いったん麻痺させると、サルが手首を動かす唯一の方法は脳の個々のニューロンの活動を変えることで、サルは筋肉への刺激を制御した」とMoritz氏はいう。研究グループは、試験したニューロンの3分の2が筋刺激の制御に利用されることを突き止めたほか、サルが極めて短時間で、別のニューロンを制御して筋肉を刺激できるようになることも明らかにした。

 研究共著者で同大学教授のEberhard Fetz氏は、今後の研究ではこの脳−筋肉インターフェースの持続時間を延長することに焦点を当て、最終的には、脊髄を刺激して筋肉群に調和した動きをさせることを目指したいとしている。別の専門家もこの研究を有望視しており、「装置の長期間の脳への埋め込みや小型化など、いくつかの問題を克服すれば、筋肉の運動を回復させることも可能になるかもしれない」と述べている。



 最近麻痺した腕を動かしたり、無くなった腕を機械で動かしたりするニュースが増えてきました。

 この分だと再生医療の分野は、神経をも克服した存在になるでしょうね。機械を介してでも動かすことができれば、脊髄疾患などの神経の異常を患う方は社会復帰可能なまでに回復するかもしれません。

関連
医学処:慶大チームが、カビから脊髄を再生させる物質を発見する
医学処:胴上げをして遊んでいた少年が、頭の骨を折る重症に
医学処:人工の義腕の感覚を胸部に伝えることで、圧力や温度を感じる技術
posted by さじ at 19:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月27日

スポーツや音楽でトップになるには1万時間の練習が必要

天才アスリート、アーティストになるのに必要な時間

 ドイツ・ベルリンのある音楽院が発表した最新研究の結果によると、スポーツ界でのトップアスリートや音楽界のトップアーティストになるには、少なくとも1万時間の練習時間が必要だという。

 イギリスのデイリーメールが23日に報じたところによると、この音楽院は1グループのバイオリン練習者を研究対象に選んだ。彼らは5歳からバイオリンの練習を始め、毎週2-3時間練習してきたという。練習時間は年齢とともに増え、20歳になった時、グループ内で優秀と呼ばれるようになった人の練習時間は1万時間前後に達していたとのこと。アーティストとしての能力が優秀者よりやや劣ると判断された人の練習時間は8000時間だったとのことだ。

 研究者はこの結果を受け、「インスピレーションや才能も重要だが、天才と凡才を分ける決定的要因は練習時間」との結論を出したとのこと。

 またある神経学者はイギリスBBC関係の科学雑誌の取材に対し、「脳は物事を消化吸収するのに1万時間を要する。一つの技能を完全にものにするには1万時間の時間が必要なのだ」と話しているそうだ。



 結局、才能があっても、努力をしないと芽は出ないということでしょうねぇ。

 遺伝的な素因などで才能があった、親が子にそれを習わせた、子は大きくなってもそれを嫌がらずに続けた、その3つが重なって初めて、世でいう「天才」になるのかもしれません。

関連
医学処:薬指の長さはスポーツ能力との関連性がある
医学処:ドラマーの体力は、一流サッカー選手と同等。
posted by さじ at 19:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月26日

いじめっ子の脳には他人の苦しみを喜ぶ回路があるかもしれない

人の災難を喜ぶいじめっ子の脳John Roach

 脳のfMRIスキャンを使用した最新の研究によると、すぐにけんかを始める、うそをつく、物を壊してはしゃぐ、そんないじめっ子の脳には、他人の苦しみを見ると喜びを感じる回路が備わっているかもしれないという。今回の最新研究は、「Biological Psychology」誌の最新号に掲載される。

 研究チームの一員でシカゴ大学の心理学者ベンジャミン・レイヒー氏は、「この発見は予想外だった」と話す。研究チームでは、いじめっ子は他人の苦痛を目撃したときになんの反応も見せないだろうと予想していた。なぜなら、彼らは冷酷で、感情を高ぶらせることがないために、例えば良心の呵責を感じることなくおやつ代を盗むことができると考えていたからだ。

 レイヒー氏は、「人が他人の苦痛を目にすると、自身が苦痛を経験したときと同じ脳内領域が光ることはこれまでの研究で判明していた。感情移入を示す反応だ」と話す。今回の最新研究では、いじめっ子の脳の場合、該当領域がさらに活発に活動を行っていることが判明した。

 しかし、いじめっ子が示す感情移入反応は、扁桃体と腹側線条体の活動によってゆがめられたものだと思われる。扁桃体や腹側線条体は脳内領域の中で報酬や喜びに関係すると考えられている部位である。「つまり、いじめっ子は人の苦痛を見るのが好きだと考えられる。この考えが正しい場合、彼らは弱い者いじめをして他人を攻撃するたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進んでいることになる」とレイヒー氏は話す。

 今回の最新研究では、うそや窃盗、公共物破損、弱い者いじめといった経歴を持つ16〜18歳の少年8人の脳活動を検査した。8人の少年は臨床分野で攻撃型行為障害(aggressive conduct disorder)と呼ばれる症状を持っており、そのような経歴を持たない同年代の少年グループとの比較を通じて調査が行われた。

 検査では、苦痛の状況を描く短いビデオ映像数本をいじめっ子グループに見せた。映像には、つま先に金づちが落ちるシーンなど不慮の事故を描くものと、ピアノの演奏中にふたを閉め演奏者の指を挟むシーンなど意図的な行為を描くものが含まれていた。

 脳のfMRIスキャンを行った結果、喜びに関係する脳内領域と、苦痛に関係する脳内領域の活動が判明し、さらに、感情の統制に関係する脳内のある部位が、いじめっ子の脳では活動していないことが明らかになった。言い換えると、いじめっ子は、例えば昼食の列に並んでいるときに子どもが誤ってぶつかってきた場合などに、自分を抑制するメカニズムを欠いていることになる。

 「自己制御を欠いている点を処置する、あるいは埋め合わせる治療法を開発する必要があるだろう。いじめっ子が自己制御を欠いているのは事実だと考えているし、他人を傷付けるたびに心理的な報酬を受け取り、反応の強化が進む可能性がある」とレイヒー氏は語る。

 クレムゾン大学家族・近隣生活研究所でオルヴェウスいじめ防止プログラムを担当するマレーネ・スナイダー氏は次のように話す。「今回のテーマについて脳撮像による科学的調査で次第にさまざまなことが発見されるのは驚くことではない。脳がどのように機能しているのか、その解明は始まったばかりなのだ。脳の仕組みの理解が進めば、有意義な関与方法を見いだすことができるようになるだろう」。



 怖いですね。もし自分の子供がこんな回路もってたら。社会的には不適合、と。

 しかし何故そのような報酬系が発達してしまうんでしょうね。先天的なものなのでしょうか?それとも家庭などの環境によるんでしょうか。

 まあでも思うんですけど、いくらそういう報酬系があったとしても、よほど酷い場合以外は、自制させることはできると思うんですよ。そりゃ人間ですから、高次に発達した「知能」があるわけです。脳がどういうものを好もうと、自制することはできるはずです。そのための教育、そのための家庭環境だと思います。

関連
医学処:現代では豊かな階級のほうがいじめっ子になる
医学処:いじめを受けると心だけでなく脳内の扁桃核にも傷が生じる
医学処:いじめで心身症の悪化した気管支喘息持ちの子供を養護学校へ。
posted by さじ at 00:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月24日

恋愛している相手を見ると中脳の腹側被蓋野が活性化する

愛を司る脳の部位が特定される

 米国ラトガース大学の人類学者、Helen Fisher氏が、脳機能マッピングを使って恋愛を司る脳の部位を特定しました。

 現在熱愛中のボランティアを対象に、恋人の写真と知らない人の写真を見たときの脳活動の違いを半年間に渡って観察したところ、恋人の写真を見たときは中脳の腹側被蓋野にある特定領域が活性化することがわかったそうです。

 米国人と中国人で活性化する部位に違いは見られなかったとのこと。また、自分の伴侶を現在も愛しているという結婚20年以上の男女17人を同様の手法で観察したところ、同じ部位が活発化したものの、こちらの場合は脳幹のセロトニンやバソプレシンを多く含む部位も活性化したそうです。

 Helen Fisher氏は「恋愛は伴侶を引き合わせるためだけにあるのではなく、二人の関係を長く保ちより強めるためにも作用することが示された。」と結んでいる。



 これはあれなんですかね。良く知ってる人と知らない人じゃ、そりゃ脳の活性部位も違うと思うんですけれども。恋人と、異性の友人と、同性の友人と、知らない人でも全く違うんでしょうか。

関連
医学処:雌への求愛などの性行動を活発にする遺伝子を発見
医学処:雄が求愛の歌を歌っている時は報酬系神経回路が活性化している。
医学処:WHO曰く、ネットで販売される薬の半分は偽物。
posted by さじ at 05:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月23日

首のコリを治せば、自律神経失調症の9割が治る。

自律神経失調症 首の凝りが影響

 持続的なめまいや頭痛、体調不良などを訴える自律神経失調症患者に対し、首の筋肉の凝り、異常などを解消すると、9割以上の患者で症状が治まることを、東京脳神経センター(東京都港区)の松井孝嘉理事長(脳神経外科)が7日の日本自律神経学会で発表した。

 松井理事長は、長期に症状を訴える自律神経失調症の患者は、重い頭を支える首の筋肉に痛み、硬さなどの異常が多いことに着目。2006年〜08年5月にかけて同センターに自律神経失調症で入院した265人に対し、首の筋肉の異常をなくす治療を実施したところ、92・5%が1〜3か月で治癒した

 治療は、痛みや異常が首のどこにあるか36か所をチェック。それに基づいて低周波治療器、温熱療法、はり・きゅう、ビタミンB群投与などを組み合わせる。外来での治療も可能だ。

 松井理事長は「自律神経失調症は30〜40歳代の首の細くて長い、なで肩の女性に多い。長時間のパソコン作業などは首に負担がかかるので、15分おきに休むことが大切」と話している。



 全身にはりめぐらされている交感神経と副交感神経。それらの活動が低下したり、または過敏になったりすることで、嫌な症状が出ることがあります。

 交感神経は胸髄の1番目から腰髄の2番目までの間から出ています。副交感神経は、3,7,9,10番目の脳神経と2,3番目の仙髄から出ています。

 首のコリ、とは要するに首の部分の血流障害などによって、自律神経がうまく働いてないということですかね。ですのでその部分を改善してやることによってかなり症状は緩和されるということでしょうか。

 現代人のデスクワークは、腰や首に大きな負担をかけますからねぇ・・・。15分ごとに休みをとれといっても、難しいといえば難しいでしょう。それ以外のこと、例えば運動やら入浴やらで、十分に首周辺をいたわってやることが大事のようです。

 ただこれはあくまでも首の凝りに原因がある場合。自律神経失調症は、神経の問題であったり糖尿病やアルコール依存症やアミロイドーシスの可能性もあるので。

関連
医学処:長時間パソコンを使う女性は自律神経失調症状が出やすい
posted by さじ at 00:20 | Comment(9) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月16日

突然性格が変貌した人がいたら、脳腫瘍の可能性がある。

【脳を守る】異常行動は脳の前頭葉に腫瘍?

 今まできわめて常識的だった人が突然、異常行動をとることがあります。このような時には脳の中に腫瘍などができているかもしれません。異常行動の原因となる特徴的な場所が脳にはあるのです。

 60歳代のある女性は妻として母として、誰が見ても理想的な人でした。子供の教育にも熱心で、3人の子供は独立し社会人として立派に活躍しています。夫の経営する会社にも協力し、夫婦仲はきわめて良好。典型的なおしどり夫婦でした。

 ところがある日、自分の財布がないと言い出し、夫が隠したに違いないと言い張って家族を困らせる事件がありました。結局、その時は自分で机の引き出しに置いたのを忘れただけと判明しました。

 それから2週間ほどたった日のこと。夫が自宅に帰って来ると、妻はブロック塀の上に立ち、夫に「ここよ、ここよ」と手を振っています。あぜんとした夫は妻を連れて脳神経外科を受診しました。

 脳のMRI(磁気共鳴画像装置)をみて、担当の脳外科医は腫瘍が原因で異常な行動が出ている、と判断しました。前頭葉と呼ばれる場所に大きな腫瘍が見つかったのです。脳の膜から発生した「髄膜腫」と呼ばれるもので早速、手術で取り除きました。この腫瘍は血管が豊富で大量の出血がありましたが、後遺症もなく無事に手術を終了できました。

 穏やかな性格の人が急に怒りっぽくなったり、異常な行動を示したりするときは、脳の前頭葉に腫瘍ができていることがあります。前頭葉には自分の行動が社会的にみて正しいかどうかを判定する働きや、自己を抑制する働きがあり、この場所に異常があると自己抑制がきかず、反社会的な行動をとることがあるのです。

 また、性格の穏やかさも前頭葉の働きで決まってくるようです。人間として生きるために大切な働きをしているのが前頭葉、と言っても過言ではないでしょう。

(和歌山県立医科大学脳神経外科板倉徹)



 髄膜腫は通常は良性で、硬膜(脳を包む膜の1つ)に付着しています。矢状静脈洞周囲や円蓋部、小脳橋角部、脊髄背側に生じることが多く、女性に発生しやすい腫瘍です。発生する時期は中年期に多いとされています。

 部分発作や、緩やかに進行する局所神経症状、頭蓋内圧亢進症状で発見されることがあります。今回の記事のように、前頭葉付近に髄膜腫が出来た場合には、前頭葉が障害されてこのような性格の変化も出現するのでしょう。

 良性の髄膜腫ならば、全摘除で治癒します。もし全部取れないような場合には放射線による照射療法を行います。

 このブログで取り上げたかもしれませんが、若い女性で、性格が変貌して怒りっぽくなって、周りの人も嫌気がさしてその人から離れていった。半年後、実は脳腫瘍であったことが発覚して、その人は亡くなってしまった、ということもありました。

 精神科的疾患もそうですが、このように脳腫瘍によって本人の性格が変貌してしまった場合、自分で「おかしいな」と思って病院を受診することは極めて稀なことです。周囲が気付いたら、病院へ連れていきましょう。

関連:脳腫瘍の増殖を促進する遺伝子、メルク。
posted by さじ at 15:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月07日

岡野栄之教授がiPS細胞を用いマウスの神経難病治療に成功

慶大:iPS細胞使いマウスの神経難病治療に成功

 さまざまな細胞や組織に分化する能力を持つ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を使ってマウスの神経難病を治すことに、慶応大が成功した。岡野栄之・同大医学部教授(再生医学)は「ヒトの治療への応用には時間がかかるが、iPS細胞の効果を確認できた」と話している。

 実験に使ったのは「ミエリン形成不全症」という難病を発症させたマウス。神経から腕のように伸びる軸索を覆う「ミエリン」と呼ばれる細胞が生まれつき作れないため、脳からの命令がうまく伝わらず、震えや歩行困難などを起こす。

 研究チームは、別のマウスの体細胞に四つの遺伝子を導入して作ったiPS細胞から神経幹細胞を作り出し、病気のマウスの脊髄に移植した。8週間後、脊髄の神経細胞にミエリンができているのを確かめた。また、脊髄損傷で歩けなくなったマウスにこの神経幹細胞を移植したところ、歩けるようになったという。

 同大などは、ミエリン形成不全症のほか、アルツハイマー病、パーキンソン病などの患者から体細胞を提供してもらい、iPS細胞を作る研究を進めている。



 お。岡野教授とiPS細胞のタッグ。

 マウスの神経難病が治ったということは、人への臨床応用の可能性も十分にあるわけです。今まで治療不可能だった疾患が、完治する可能性も秘めているiPS細胞と、それに取り組む岡野栄之教授。どちらも応援しています。

岡野栄之教授関連
医学処:慶大チームが、カビから脊髄を再生させる物質を発見する
医学処:子宮筋肉に、幹細胞が存在する。
医学処:iPS細胞を用いて、脊髄損傷の症状が改善する。

iPS細胞関連
医学処:iPS細胞を用いて未熟児脳症を治療する。
医学処:筋萎縮性側索硬化症の患者からiPS細胞を作ることに成功する。
医学処:がん化する危険のない、新世代iPS細胞誕生。
posted by さじ at 07:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年11月04日

アルツハイマー病は、記憶の形成維持プロセスに依存した疾患

記憶の再固定化のプロセスが加齢に伴う記憶障害に関与

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、脳の記憶プロセスに関係するタウタンパク質をリン酸化する酵素の1つ「GSK-3β」の活性化が記憶を呼び出し、それを再び固定化するプロセス(記憶の再固定化)に必須であることを発見しました。

 理研脳科学総合研究センター(田中啓治センター長代行)アルツハイマー病研究チームの高島明彦チームリーダー、木村哲也専門職研究員らの成果です。

 アルツハイマー病は、アミロイドベータタンパク質の蓄積とともに、タウタンパク質が嗅内野、海馬、扁桃体、前頭前野など記憶プロセスに重要な記憶ネットワークに蓄積することで、認知障害を引き起こします。

 一方、脳の老化は、認知症を引き起こす前にタウタンパク質が嗅内野に蓄積することで、軽い記憶障害に至るとされています。研究チームは、このタウタンパク質が蓄積する仕組みを明らかにする目的で、タウタンパク質の蓄積に関与するタウタンパク質リン酸化酵素GSK-3βの正常脳での役割を調べました。

 その結果、GSK-3βは、再起した記憶の再固定化に必要なことがわかりました。加齢と共に知識が増えることで記憶の再固定化のプロセスが頻繁に活性化されますが、このことがGSK-3βをさらに活性化してタウタンパク質の蓄積を引き起こし、老化による記憶障害を引き起こすと考えられます。

 脳老化は、アルツハイマー病を引き起こす前提条件です。本研究と、研究チームの最近の成果から、アルツハイマー病は単純なタンパク質の変成疾患ではなく、脳の記憶形成維持プロセスに大きく依存した疾患であることが明らかになってきました。そして、脳科学が加齢した脳(加齢脳)の記憶プロセスに対応したライフスタイルや生活環境を提案することで、脳の老化を遅延しアルツハイマー病の発症を制御できるようになると考えられます。



 難しいー話ですな。正直なんだかよくわかりません。

 アルツハイマー病が単なる蛋白質の変性によるものではなく、記憶を再固定する過程と密接に関与している、ということでしょうかね。

 理化研の研究レベルは抜群ですね。医学はこうして進歩してゆく。

関連
医学処:アスパラガスに含まれるアスパラギン酸が記憶に関与している
医学処:適度な運動を行うことで高齢者の記憶力を向上できる。
posted by さじ at 21:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

神経細胞を使って計算回路を作成する。

神経細胞から計算回路を作成:イスラエルの研究チーム

 イスラエルのレホボトにあるワイツマン科学研究所の研究チームが、培養したニューロン(神経細胞)を使って計算回路を作り出す方法を開発した。

 研究チームは、ガラス板の上で神経を培養し、その結合箇所と活動を制御することによって、脳細胞回路の構成要素となるANDゲートとダイオードを作成した。

 このプロセスは次のようなものだ。細胞を寄せ付けない物質でコーティングしたガラス板の表面に回路パターンを彫り、細胞の働きを阻害しないような接着剤を使って結合する。こうすることで、細胞はプレート表面に彫られた細い筋の中でしか成長できなくなる。この筋は非常に幅が狭いので、神経細胞は一定方向にしか伸びられないという仕組みだ。

 その結果、電子回路内の配線のような結合部が形成され、2つの入力があると1つの出力を生成するANDゲートの作成が可能になる。さらに、少量の薬品でニューロンを刺激すると、信号が送信されて回路が完成する。

 『Nature Physics』紙に発表された同研究チームの論文要旨には、「機能的な超小型論理回路は、脳内の計算能力に関する最も重要な構成要素だ。しかし、単一のニューロン結合だけでは信頼性がなく、高速な応答再現性を獲得するにあたって、ニューロン集合がどのような構成をとるのかはまだ明らかになっていない」とある。



 なんか凄い話すぎて。SFの世界ですね。

 粘菌コンピューターもそうですけれど、100年後のコンピューターって、今とは全く別の形になっているかもしれませんね。情報処理するだけではなく、新たに自ら構築していくような・・・。想像もつきませんが。

関連
医学処:ガンプラを作ることで前頭葉が活性化する。
医学処:記憶を司る海馬の神経細胞はカフェインで増強される。
医学処:学習意欲が湧く中枢は脳の線状体にあった。
posted by さじ at 00:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

多発性硬化症に白血病治療薬アレムツズマブが効く。

白血病薬アレムツズマブ、多発性硬化症にも効果 ケンブリッジ大報告

 英ケンブリッジ大(University of Cambridge)の研究チームは23日、白血病治療用に開発された薬剤アレムツズマブが、多発性硬化症(MS)にも効果があるとの発見を報告した。多発性硬化症の進行を阻止するだけでなく、回復も促進するという

 多発性硬化症は自己免疫疾患の一つと考えられており、白血球やリンパ球などの免疫系が中枢神経系の神経線維を攻撃してしまう結果、視力の低下や四肢のまひ、疲労といった身体障害のほか、抑うつや認知障害などを起こす。患者数は世界で数百万人とされ、英国では10万人、米国では40万人が発病している。

 試験では、アレムツズマブによって発症回数が減り、さらに障害を起こした機能が回復した。破壊された脳組織が修復されたためで、研究開始時よりも患者の健康障害が改善した。

 今回の研究を多方面で準備した同大臨床神経科学部の講師、アラスデア・コール(Alasdair Cole)博士は、「脳組織の修復を促進するMS治療薬の存在はかつてなかった。十分早期に使用されれば、MSの進行を停止すると同時に、組織修復により失われた機能も回復させる薬だ」と期待する。

 英国最大の患者支援団体、多発性硬化症協会の主任研究員リー・ダンスター氏は、今回の試験結果に対し、市販薬として承認を受けるまでにはさらなる研究が必要だとしながらも「MS治療で病状の進行を止める可能性がある薬は初めて。アレムツズマブはさらに機能回復効果もあるという。毎日症状に苦しんでいる人たちにとって、この上ない朗報だ」と歓迎を表明した。



 欧米では、青年期の神経障害の原因としては外傷に次いで頻度が高いといわれている、この多発性硬化症。

 神経には、有髄神経と無髄神経があります。軸索という中心の棒のようなものの周りに、髄鞘というカプセルが何個も覆われているのが有髄神経です。こうすることによって、カプセルごとに伝導が移動する「跳躍伝導」という形を取れるため、無髄神経に比べて伝導速度がかなり早くなります。この髄鞘が自己免疫などで壊されることで、多発性硬化症の症状が出るわけです。

 中枢神経の伝導速度の異常によって、四肢の脱力(筋力低下、疲労感、歩行障害など)や、感覚障害、視神経炎、膀胱直腸障害、など色々な症状が起こります。多発性硬化症によって死亡することは稀ですが、これらの症状がいかに生活の質を下げるか、想像に難くありません。(多発性硬化症患者の25年生存率は85%といわれており、死因の多くは、衰弱した患者に起こった肺炎などの合併症や自殺によるものと言われています)

 ステロイドなどで自己免疫を抑制したりインターフェロンやビタミンDを使う治療もあるようですが、神経そのものを回復させる治療薬として、アレムツズマブが臨床応用されれば、多発性硬化症の症状で苦しむ患者にとってはまさに救いの手となることでしょう。

関連
医学処:ビタミンDの摂取で、多発性硬化症を予防できるかもしれない
医学処:多発性硬化症にインターフェロンで37%が治療中止に。
医学処:多発性硬化症はNR4A2という遺伝子を抑制すれば症状が軽快する。
posted by さじ at 00:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年10月19日

全く酒を呑まない人の脳は、脳容積の減少が最も少ない。

アルコール、飲むほどに脳が縮小=米研究

 アルコールを飲めば飲むほど脳が縮小するという研究結果が13日、明らかになった。米マサチューセッツ州のウェルズリー大学のキャロル・アン・ポール氏が率いる研究チームが、神経学の専門誌「Archives of Neurology」で発表した。

 研究チームでは、適量のアルコールにより加齢によって進む脳容積の減少を食い止めることが可能かを検証しようとしたが、結果は不可能だったという。

 同研究によると、生涯にわたって酒を飲まなかった人々が最も脳容積の減少が少なかった。続いて、過去に飲酒していたが今は飲まない人々、現在適度な飲酒をする人々、現在大量に飲酒する人々の順で、脳容量の減少の割合が少なかった。

 これまで、多くの研究によって適度の飲酒は心臓に良いとされてきた。



 ほんの少しは、アルコールによる利益というものはあるんでしょうけれど、それでも脳が萎縮していくんだったら、考え物ですよね。

 自分があまりお酒呑まないんで、電車の中とかでチューハイ飲んでる中高年を見ると愕然とします。そこまでして飲みたいものなのかと。飲みたいんでしょうねぇ。。。

関連
医学処:大酒飲みは自殺のリスクが著しく高い
医学処:アルコール中毒に対する対処法は?
医学処:欧州最高齢の112歳男性の長寿の秘訣は酒と煙草と激しい女
posted by さじ at 21:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年09月20日

超音波を使って脳の微小動脈の血流をリアルタイム測定する

超音波で脳表面のリアルタイム血流測定に初めて成功

 脳が活動するとき、よく働いている部分の血流が増えることは知られているが、これまでは、測定している血管を画像で直接確認し血流を測ることはできなかった。自然科学研究機構・生理学研究所の畑中伸彦助教らの研究グループは、東京都医学研究機構東京都神経科学総合研究所、科学技術振興機構と共同で、病院で心臓の血流検査などに用いられる超音波断層法や超音波ドプラー血流測定法を組み合わせることで、脳が働いているときの血流の変化を微小な動脈ごとに直接測定することに成功した

 同研究グループは、大脳表面の大脳皮質内の微小動脈を、超音波脳断層図とカラードプラーイメージ法を組み合わせて見つけ出し、その後、その微小動脈の血流の速さの変化を断続的に測定可能なパルス・ドプラーモード法で測定することにより、見つけ出した血管の血流をリアルタイムで測定することができた

 畑中助教によると「脳内に挿入した電極等の位置を確認するために超音波診断装置を用いていたところ、脳表層の小動脈の血流速が測定可能であることに気付いた。そこで二次元的に高周波の超音波が発信・計測できるプローブを用いて微細な脳部位の血流速を測定すれば、リアルタイムに脳局所の機能を調べることが出来ると考えた。実際、サルの大脳皮質を測定した結果、神経活動のリアルタイム測定が可能であり、また皮質運動野の新たな機能についてもわかった。さらに、低コストでの脳機能イメージングが可能,専用の設備を必要としない、などの利点もあった」という。

 また、この方法でサルの大脳皮質運動野(運動の司令を出す部分)の血流を測定し、運動を学ぶ際の脳活動について、脳の部分ごとに血流の変化が異なることを見いだした。今回開発した方法を『経脳硬膜超音波ドプラー法』と名付けた。

 今後、この方法を応用すれば、運動や刺激による反応などで起こる脳の血流変化を直接測定できるため、脳外科手術の際の脳部位の把握や臨床診断などにも用いられると期待される。



 CTやMRIで脳の血液が多い部位少ない部位というのは分かりますが、この方法はもっとリアルタイムで微細な血流の変化を見れるらしいです。

 この手法でデータが多く揃えば、神経内科や脳外科の領域で更に精度の高い診断や治療が出来るようになるかもしれません。

関連:癌の化学療法を受けた患者に起こるケモブレインとは
posted by さじ at 23:09 | Comment(2) | TrackBack(0) | 脳神

2008年09月10日

方向音痴は海馬の歯状回で細胞が増加していない

脳細胞増えないと「方向音痴」?…京大教授ら解明

 道順などの記憶には脳細胞の一部が新しく作られ続ける必要があることを、京都大の影山龍一郎教授らがマウス実験で突き止めた。記憶障害の仕組み解明につながる成果で1日、科学誌ネイチャー・ニューロサイエンスに発表する。

 脳細胞は、減り続けるだけと考えられていたが、近年、大人でも新しい細胞ができることが分かってきた。影山教授らは生後2か月以降のマウスの脳で、新しくできた細胞を検知する技術を開発。新しく脳細胞を作れなくする操作も使って、影響を調べた。

 その結果、空間認識など複雑な記憶の中枢とされる海馬の歯状回では、8か月間で細胞数が約15%増えることが判明。新しい細胞を作れなくすると、1週間後には一度覚えた道順をたどれなくなった。また、においを感じる脳前部の嗅球は、1年間で6〜7割の細胞が入れ替わっていた。新しい細胞を作れなくすると3か月後、組織に空洞ができた。ただ、においの記憶は残っており、道順などの記憶とは仕組みが違うらしい。



 面白い。

 方向音痴の人って、ホントに分からないようですね。私は一度通った道ならなんとなく覚えていますし、地図をみればこのへんだろうと見当つけられますが、方向音痴の人はどうして?と思うほど見当違いのところへ行こうとします。

 でもそれって、この記事と関係あるんでしょうかね。「風景に全く興味がない」人が私の知人にいますけれど、そういう方向音痴もあるのかもしれません。

関連:道順を記憶するニューロンを発見。方向音痴のメカニズムを探る
posted by さじ at 21:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年09月09日

学習意欲が湧く中枢は脳の線状体にあった。

「学習意欲」、本能かかわる脳中枢に 大阪市大など解明

 人は達成感があると、学習意欲がわく。この心の動きは脳のどこで生まれるのか。答えは意外にも、言語や理解など高度な知性を受け持つ大脳皮質ではなく、より原始的な本能にかかわる脳の奥深くの線条体という場所だった。達成感がなければ、この中枢は働かない。意欲を育む教育法開発に脳科学が一役買いそうだ。

 大阪市大と生理学研究所(愛知県岡崎市)の研究グループの成果で、3日から沖縄県名護市で始まった国際疲労学会で発表する。

 大学生14人に、パソコンで数字を使ったテストをさせ、脳の動きを特殊な装置で調べた。学生には事前に「知能の検査です」と告げた。正解するたびに画面上のマス目が埋まり、自分がどれだけ正しく答えたのか分かる。マス目が埋まっていくことで学生は達成感を得、好成績をあげることで「自分は頭がいい」と実感する仕組みだ。

 達成感を与えるマス目を表示せずに同様のテストをしたときと比べると、脳の記憶や計算に関係する部分はどちらも同じように働いていたが、線条体は「マス目あり」のテストの時だけ活発に働いていた。さらに14人それぞれの日頃の学習意欲を調べると、日頃の学習意欲が高い人ほど、線条体は活発に動いていた

 線条体は、卵をつぶさないようにそっと握るなど、細かな運動にかかわっていることが知られている。実験をした水野敬・科学技術振興機構研究員は「学習意欲という複雑な心の動きが、脳の特定の1カ所に集約されていたのは意外だった」と話す。



 学習意欲、要するに知的好奇心の特化したものですかね。いやどちらかというと褒められたときに感じる喜びに似たようなものなのか?そうするとやはり原始的な機能、なのかな。犬とかにもありそう。
posted by さじ at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年09月08日

歴史医療漫画「JIN―仁」が100万部突破。

歴史医療まんが「JIN―仁」 幕末の庶民描き人気

 「六三四の剣」や「龍―RON」などの作品で知られるまんが家・村上もとかの「JIN―仁」(スーパージャンプ)が連載9年目を迎えた。あまり例のない歴史医療まんがだが、このほど単行本の12巻が刊行され、累計も100万部を突破。人気が広がりつつある。

 主人公・南方仁は東都大付属病院の脳外科医局長。タイムスリップで日本の幕末に流され、コレラや梅毒などに苦しむ江戸の人々を救うために奔走する。西郷隆盛、坂本龍馬、一橋慶喜ら、歴史上の人物も登場するが、「物語の中心となるのは、あくまで病気に苦しむ当時の庶民たち。そこに飛び込んだ現代の医者が何ができるのか。それを描きたかった」と村上は話す。

 物語の魅力の一つが、抗生物質であるペニシリンの抽出など、史実では江戸時代にできなかったはずの医療行為を、仁が創意工夫を重ねながらやり遂げてゆく点だ。「当時の時代環境の中で、どの程度のことまでなら可能なのか、一つ一つ医療の専門家の方に確かめています。ただ、仁は本来、脳外科が専門なのに、研修医の頃の記憶などを頼りに、必要なら帝王切開までやってしまう。その意味では、ものすごい医者なのかもしれません」

 村上は51年生まれ。「赤いペガサス」(77年)で、当時まだ珍しかったF1の世界を描き、剣道まんが「六三四の剣」では、小学館漫画賞(84年)を受賞した。

 だが、戦前から第2次大戦を舞台にした前作「龍」以来、歴史ものに力を注ぐ。「小伝馬町の牢屋敷の格子の幅まで調べました。ただ、そのまま描くと、中の人間の顔が見えなくなってしまうので、作品では少し広めにしています」。細部まで表現された吉原や江戸の湯屋などの描写は、まるでそこにいる気分になるほど。

 そんなこだわりが評価されたのか、30代までの読者が多い「スーパージャンプ」の中で、50代以上の読者からのファンレターが目立つという。

 このほど出た12巻では、仁は長崎に赴き、暴漢に襲われた英国商人トマス・グラバーの手術を担当する。「物語はこれからがクライマックス。仁は政治に巻き込まれ、歴史にどこまでかかわるべきかで思い悩む。そのあたりをきっちり描いていきたい」



 私も愛読しております、歴史医療漫画の「JIN(仁)」です。名作です。スーパージャンプというかなりマイナー雑誌ゆえにあまり見かけませんでしたが、最近は書店へ行くとかなり大きく取り上げられています。

 村上もとか氏が非常に細かく取材しているというのが分かるほど、この漫画ではリアルな時代背景を見ることが出来ます。その時代の流れの中で、現代医学を学んだ南方仁が人々を助けていきつつも歴史の流れに葛藤する様が非常に面白いです。

 医療面に関していえば、よく医療漫画にありがちな「手術シーンは派手に見せて終わり」というものではなく、淡々と手術のプロセスを解説しながら描かれている点が非常に高ポイントです。手根管症候群の手術のやり方などをここまで描いた医療漫画は存在しないでしょう。歴史だけでなく医療においても圧倒的な取材力に脱帽です。

 なんか最近また医療漫画ラッシュが続いておりますが、中でも「医龍」とこの「JIN -仁-」は誰にでもオススメできる漫画です。
 
参考:仁 -JIN-

関連
医学処:小児脳神経外科医のことを描いた漫画「義男の空」
医学処:東大病院監修医療漫画「最上の命医」
医学処:「漫画を読むと頭が悪くなる」論に反論しよう。
posted by さじ at 00:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年08月31日

アスパラガスに含まれるアスパラギン酸が記憶に関与している

記憶の仕組みにアスパラガスのアミノ酸 岡山大が解明

 アスパラガスに含まれるアミノ酸の一種「アスパラギン酸」が、神経細胞で情報伝達にかかわる仕組みを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の森山芳則教授(生化学)らが突き止め、米科学アカデミー紀要電子版に発表した。この仕組みの異常で、発達障害などが起こる難病になる可能性も示され、記憶・学習の仕組み解明につながりそうだ。

 記憶にかかわる脳の海馬で、アスパラギン酸が神経伝達物質のグルタミン酸とともに存在することなどは知られていた。大学院生の宮地孝明さんらは、細胞内でアスパラギン酸を運ぶたんぱく質を特定し、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)と名づけた。

 VEATは、神経細胞のつなぎ目にある神経伝達物質を蓄える袋に、アスパラギン酸を運びこむ。蓄積されたアスパラギン酸は、この袋から分泌されて神経伝達物質になるとグループはみている。

 これまでVEATは別の働きで知られており、その異常で、幼児期から精神発達や運動障害が起こる「サラ病」になることがわかっていた。今回の発見で、サラ病は神経細胞の情報伝達の異常で起こる可能性が示された。

 森山教授は「グルタミン酸だけでは説明が難しい情報伝達の仕組みが、アスパラギン酸の働きを調べることでわかるかも知れない。認知症などの薬の開発につながる可能性もある」と話している。



 サラ病とはまたマニアックな疾患が出てきましたね。

★遊離シアル酸蓄積症:常染色体性劣性遺伝するライソゾーム病の一種。ライソゾームの膜の輸送障害により、ライソゾームに遊離シアル酸が蓄積することで症状が起こる。

(病型と症状)
遊離シアル酸蓄積症(重症型):乳児期より、発育不全、肝臓や脾臓の腫大、発達障害、ムコ多糖症様の顔貌と骨の変形が認められる。

サラ病(Salla病)(軽症型):幼児期より、精神運動発達の遅れや運動障害(アタキシア)が起こる。

治療:有効な治療法は無い。


参考:難病情報センター
posted by さじ at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年08月26日

6個目の味覚を新たに発見。その名も「カルシウム味」

甘い?辛い?いや「カルシウム味」 米で第6の味発見か

 米ペンシルベニア州にあるモネル化学感覚センターのチームがカルシウムを味わうための遺伝子をマウスで確かめ、米化学会で発表した。「カルシウム味」が第6の基本味である可能性もあるという。

 遺伝的に系統が異なる40種類のマウスにカルシウムを含む溶液を飲ませたところ、多くが飲むのを嫌うなか、がぶ飲みする系統が見つかった。遺伝子を比較した結果、カルシウムを味わうのに使う二つの遺伝子が特定された。

 人間の舌は、甘み、塩味、酸味、苦み、うまみという五つの基本味を感知する。今回のマウスの遺伝子に似たものは人間にもあることから、研究チームは「カルシウム味」が基本味の一つである可能性もあると考えている

 研究チームのマイケル・トルドフ博士は「カルシウム味は苦みに酸味が少し加わったようなものだ。適切に表現する言葉はなく、『カルシウムっぽい』としかいいようがない」と話している。



 カルシウムっぽい…?

 どんな味なんでしょう。カルシウムたっぷりな食材といっても、それ以外の味ですしねー。苦味に酸味。うーむ。チーズ?

 しかしこれが分かっても、おいしくはならんのでしょうかね。それともカルシウム味をうまく使って素晴らしい調理をする人も現れるんでしょうか。

関連
医学処:カルシウムサプリメントは骨粗鬆症の予防にはならない
医学処:ヒスタミンとカルシウムの関係にはSTIM1が関与している
医学処:カルシウム摂取が多いと脳卒中を予防できる。
posted by さじ at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年08月14日

記憶を司る海馬の神経細胞はカフェインで増強される。

北大:海馬の神経細胞、カフェインで増強 研究チーム発表

 記憶や学習に重要な役割を果たす脳の「海馬」の神経細胞が、心筋の細胞が収縮するのと同じ仕組みで記憶を形成し、その働きがコーヒーなどに含まれるカフェインによって増強されることを、北海道大などの研究チームが明らかにした。研究チームは「認知症や記憶障害の薬の開発につながる可能性がある」と話す。5日、米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。

 北大の神谷温之教授(神経生物学)らは、マウスの海馬の切片にカフェインを加えた。その結果、細胞内のカルシウムの濃度が高まり、30〜60分間、神経回路の信号伝達が良くなった。

 カルシウム濃度が高まったのは、「2型リアノジン受容体」と呼ばれるたんぱく質の働きが高まったためとみられる。このたんぱく質は心筋細胞に多く存在し、細胞内の「小胞体」という小器官に蓄えられたカルシウムイオンを放出させ、心筋を収縮させる。研究チームは、心筋収縮と同様の仕組みで、海馬での記憶形成が増強されたとみている。

 カフェインには、筋肉を収縮させる働きがあることが知られている。神谷教授は「実験で使ったカフェインは高濃度なので、コーヒーを飲むくらいでは記憶への影響はない。だが、カフェインや同様の働きを持つ物質から、認知症などの薬を開発することができるかもしれない」と話す。



 あくまで、飲む程度の量では効果がない、と。

 計算能力などは、カフェインによって向上するらしいですね。集中力が高まったりするんでしょうかね。試験前には飲むのをオススメします。

 あと脂肪燃焼目的で長時間の有酸素運動を行う前にコーヒーを飲んでカフェインを摂取すると、燃焼量が増えるとか。

関連
医学処:コーヒーを1日4杯以上飲むと痛風の予防になる
医学処:カカオ分を多く含むチョコレートは本当に身体に良いのか。
posted by さじ at 02:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2008年08月04日

カルシウム摂取が多いと脳卒中を予防できる。

カルシウム摂取で脳卒中予防に効果…厚労省研究

 ヨーグルトや牛乳などのカルシウムを含む食品を多く食べる人ほど脳卒中になりにくいことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査でわかった。摂取量の多いグループは、そうでないグループより発症率が3割少なかった。

 対象者は岩手、秋田など4県の40〜59歳の男女約4万人。脳卒中などの病気と食事との関連を13年間調べ、カルシウム摂取量に応じ、対象を5グループに分けて分析した。その結果、摂取量が最も少ないグループ(1日233ミリ・グラム)と比べ、最も多いグループ(同753ミリ・グラム)は脳卒中の比率が30%少なく、3番目に摂取量が多い中間のグループ(同439ミリ・グラム)でも21%低かった。同時に調査した心筋梗塞などの心臓病は関連が見られなかった。

 研究班の磯博康・大阪大教授は「カルシウムが血圧を安定させ、脳卒中を起きにくくしている可能性がある」と話している。



 4万人を対象にしたかなり大規模な研究。

 心臓との関連性はみられなかったものの、脳卒中のリスクを防止する点でいえばかなり低くなってますね。

関連
医学処:カルシウムサプリメントは骨粗鬆症の予防にはならない
医学処:ビタミンD値が低い人は心臓発作を起こす確率が高くなる
医学処:骨粗鬆症の新しい治療に欠かせない「ヘッジホッグ」。
posted by さじ at 00:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神