[脳神]の記事一覧

2009年06月20日

脳梗塞の血栓溶解療法、病院ごとに実施数に差が生じている。

脳梗塞 血栓溶解療法 実施に差

 脳卒中には、血の小さな塊(血栓)が脳の血管に詰まる「脳梗塞」、動脈にできたこぶが破れて、くも膜下に流れ込む「くも膜下出血」、脳内の細い血管が出血する「脳出血」がある。

 くも膜下出血の治療は、破裂した血管のこぶの根元を金属で挟んで再出血を防ぐ手術(クリッピング)や、脚の付け根の血管から脳まで細い管を通し、破裂したこぶに金属製のコイルを詰める脳血管内治療が行われる。また脳出血では、血圧を下げるなどの薬物治療や、重症の場合には血の塊を取り除く手術が行われることもある。

 脳梗塞では、血を固まりにくくする薬物治療のほか、発症して間もない患者では、血栓を溶かして血液の流れを回復させる血栓溶解療法(t―PA治療)も行われている。t―PAは血栓を溶かす薬剤で、腕の静脈から点滴する。治療を受けた患者の4割程度で、3か月後にほぼ後遺症がなく回復するとされている。

 ただしt―PAは、発症から時間がたった患者では、脳出血の危険性の方がかえって高まるため、使用は「発症から3時間以内」が条件だ。そのために病院では、脳梗塞が疑われる患者を受け入れ後、手早く検査・診断できる体制を整える必要がある。

 脳梗塞患者数に対する実施率は平均で4%。5%未満の施設は269施設、5〜10%が119施設、10%以上が27施設だった。一方、実施数がゼロの施設も46か所あり、医療機関によって差があった

 聖マリアンナ医大(川崎市)神経内科教授の長谷川泰弘さんは「救急隊との連携体制など地域全体の取り組みが問われる。治療の効果などを検証し、結果を公表する仕組みを早急に作る必要がある」としている。脳卒中では、顔・手足の片側のしびれ、ふらつき、うまく言葉が出ない、激しい頭痛や吐き気・嘔吐などの症状が突然表れる。異変を感じたら迷わず受診するよう、長谷川さんは呼びかけている。



 日本の良いところは、全国どこでも標準の治療を受けられる、という点ですからね。

 脳梗塞の症状があって、画像でもそれを確認できて、発症から時間が経っていないとしたら、t-PAによって劇的な治療効果を挙げることができます。それをしない、のは医療を提供する側の体制の不備です。

 救急車要請されて、病院にすぐに到着して、早期発見するのも重要なポイントではありますが、t-PAの実施がゼロというのは解せませんね。救急体制の問題なのか、それとも病院そのものの問題なのか。大きな改善点ではあります。

関連
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2009年06月16日

のどを集中的に冷やして脳の温度を下げる咽頭冷却法について

のど冷却脳低温療法 臨床研究へ 

 岡山大病院の武田吉正講師(麻酔・蘇生学)らは6月中にも、重い脳障害を受けた患者の脳を冷やして神経細胞の保護・回復を図る「脳低温療法」で、のどを集中的に冷やして脳の温度を下げる咽頭冷却と呼ばれる手法の有用性に関する臨床研究に乗り出す。

 脳低温療法は頭部外傷や脳血管障害で脳の損傷が激しい患者の体温や脳の温度を33度程度に下げ、神経細胞の破壊を食い止める。発症後8時間までは有効性が確認されており、全身や頭部を冷やす手法などが救急現場で用いられている。

 咽頭冷却は、内部に冷却水を循環させるチューブをのどに入れ、脳に向かう血液を冷やす方法。武田講師らはサルを使った心肺蘇生時の実験で、脳の温度が10分間で2度下がることを確認している。

 臨床研究は心筋梗塞や窒息などによって心肺停止状態となった患者300人が対象。人工呼吸器による気管挿管と同時に治療を始め、2時間かけてのどを冷却。脳の温度がどの程度下がるかを見る。



 脳にいく血液そのものを冷やしてやろうという手法。なかなかいいかもしれません。

 この手法がうまくいけば、より脳へのダメージを減らし、脳を賦活化させることができるかも。喉の奥というと椎骨脳底動脈系ですかね。あれはもうちょっと後ろか。普通に内頚動脈を冷やすのかな。
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2009年06月14日

筋ジストロフィーの症状改善に犬での実験で成功する。

筋ジス症状の改善に犬で成功 国立精神・神経センターなど

 筋力が徐々に失われる難病、筋ジストロフィー(筋ジス)の症状を、遺伝子の働きを妨げる手法で改善することに、国立精神・神経センターなど日米のチームが成功し、米神経学会誌に発表した。チームは「将来、多くの患者に応用が期待できる」としている。

 筋ジスの中で最も多い「デュシェンヌ型」の犬で実験。同型は、筋肉細胞の形を保つタンパク質の合成が、遺伝子変異で途中で止まり、筋力の低下や萎縮が起きる。

 チームは「モルフォリノ」という化合物を注射し、変異した遺伝子が働かないようにする手法を開発。タンパク質を合成できるようにした。筋ジス犬に週1回、計5回注射すると、以前より早く走った。注射しない犬は症状が進み、走るのが遅くなった。

 ただ、足の筋肉細胞の中で合成されることを確認したが、心臓ではほとんど合成されず、筋肉の種類で効果が分かれたという



 注射するだけで遺伝子に働きかけ、蛋白質合成を促進する治療法って珍しいですねぇ。人間にも応用できれば、定期的な注射で寿命を延ばすことも出来るようになるのかもしれません。

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医学処:パーキンソン病の患者からiPS細胞を作ることに成功する。
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医学処:脳の特定のニューロンをレーザーで活性化することに成功する
posted by さじ at 19:17 | Comment(1) | TrackBack(0) | 脳神

Wiiでパーキンソン病の進行を抑制しよう。

パーキンソン病、ゲーム機使い進行抑制 徳島病院

 国立病院機構徳島病院(吉野川市鴨島町敷地)は、神経の難病「パーキンソン病」専門のリハビリセンターを開設した。センターでは、家庭用ゲーム機を使って病気進行要因のストレスを解消するリハビリを実施、薬物療法に並ぶ新たな治療法として確立を目指している。徳島病院によると、神経難病を対象にした本格的なリハビリは全国でも珍しいという。

 センターは症状の軽い患者が対象で、神経内科医と言語、作業、理学各療法士の計16人で運営。リハビリに取り組む入院期間は4週間で、その間に独自のメニューに取り組んでもらう。本年度は60人を受け入れる見込み。

 メニューは患者一人一人に合わせ、柔軟体操や発声練習などの基礎訓練と、ストレス解消を目的とした訓練を組み合わせる。

 ストレス解消方法として、バランス運動ができるゲーム機「Wii(ウィー)」を使ったプログラムや音楽鑑賞、カラオケ、化粧などを取り入れている

 パーキンソン病は薬による治療が一般的。しかし、対症療法のため効果には限界があることから、ストレスを解消するリハビリで病気の進行抑制を図るのが狙い。

 5月中旬から患者2人が入院し、リハビリに取り組んでいる。その1人、井川政男さん(71)=北島町北村=は「どの訓練も楽しく、10日目ぐらいから体が軽くなった。退院後も自宅で続けたい」という。

 センター長の三ツ井貴夫医師は「患者には心配性の人が多い。楽しいリハビリで少しでも症状を和らげてほしい」と話している。



 Wii Fitがかなり売れているらしいですが、確かにああやって楽しく運動できればお年寄りでも良いかもしれませんね。

 より高齢者向けの、Wii Fitのシートバージョンのようなものがあれば、いっそう安全に取り組めると思います。医療関係で特注してみたら面白いかも。

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2009年06月03日

埼玉医大の脳腫瘍摘出手術訴訟で大学側は争う構え。

埼玉医大の医療過誤訴訟:埼玉医科大、請求棄却求め争う姿勢

 脳腫瘍の摘出手術で正常な脳組織を損傷され植物状態になったとして、高崎市の女性患者(24)の両親が埼玉医科大=埼玉県毛呂山町=を相手取り、慰謝料など計約2億4800万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が28日、前橋地裁高崎支部(村田鋭治裁判長)であった。同大は請求棄却を求める答弁書を提出し、全面的に争う姿勢を見せた

 訴状によると、女性は05年1月、同大病院で脳腫瘍の「中枢性神経細胞腫」と診断された。女性が摘出手術を受けた際、正常な脳組織を損傷し意識障害や脳機能不全が生じ、植物状態になったとしている

 原告側は「執刀医は脳手術の際に出血を抑え、しっかりと術野を確保する義務を怠り、正常な脳組織を傷つけた」と主張。一方、同大は次回期日で認否についての準備書面を提出するとした。



 真っ向から争う構え。ということは落ち度がなかったと確信しているのでしょう。

 まぁ実際のところはどうだったのかは分からないので何とも言えません。ミスがあったのかもしれないし、ミスはなくとも切除するためには仕方なかったのかもしれないし。

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医学処:埼玉医大にお金払ったのに卒業できなかった。金返せ!
医学処:担当の教授が退職したため、埼玉医大での性転換手術を中止
医学処:心臓移植認定取り消しの埼玉医大、再申請も認められなかった。
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2009年05月31日

脳の特定のニューロンをレーザーで活性化することに成功する

「レーザーで脳ニューロンを正確に刺激」する新しい治療法

 MITメディア・ラボの研究者たちが、サルの脳にある特定のニューロン(神経単位)をレーザーを使って活性化することに成功した。この技術は、魚、ハエ、ネズミの神経回路の制御と研究に用いられ大いに喧伝されてきたが、霊長類に使用されたのは初めてだ。

 この研究の中心になっているのは、MITで神経科学を研究するEd Boyden教授と、研究員のXue Han氏だ。「この技術を発展させれば、いくつかの精神疾患の新しい治療法につながる可能性がある。これはトランスレーショナル・リサーチ[基礎的な研究から実用的な開発にまで及ぶ研究]の観点から言って非常に刺激的だ」と、Boyden教授は述べる。

 「特定タイプの細胞に生じた変化と関係のある疾患は多い」と、Boyden教授は言う。「臨床目的では、特定の細胞に影響を与えても、正常な細胞はそのままにしておきたい。光を使って特定の細胞を正確なタイミングでオン・オフできるとなると、原理的には新しい療法につながる可能性がある」

 この光遺伝学的(optogenetics)技術の利点は、対象とするニューロンを限定できることだ。レーザーと遺伝子工学を組み合わせて使うことにより、限定されたニューロンの発火をミリ秒単位で制御できる。問題のある細胞と神経回路だけに照準を合わせ、関係のない細胞を対象から外すことで、副作用が起きる可能性を最小限に抑えることができる

 もともと藻類で発見された、青い光に反応する特殊なチャネルを発現する遺伝子を、ウイルスを使ってニューロンに送り込む。このニューロンに青いレーザーを当てると、チャネルが開いて細胞内にイオンが流入し、ニューロンが発火する、という仕組みが利用されている。

 この技術にとって決定的に重要なのは、ウイルスが脳のごく小さな部分だけに注入されるようにすることだ。つまり、限定されたニューロンだけにウイルスが感染し、チャネルが開くようにする。そして、レーザービームの照準を、脳の限定された部分に正確に合わせる。これに対し、薬剤や電極を使う現在の治療技術では、ずっと広い範囲に影響を及ぼしてしまう。

 4月30日付けで『Neuron』誌に発表されたBoyden教授の新しい研究は、霊長類にもこの技術を適用できるだけでなく、安全でもあることを示している。複数回にわたってウイルスを注入されたアカゲザルは、8〜9カ月にわたってレーザー刺激を受けてもニューロンに損傷はなく、ウイルスを使う場合は当然懸念される脳の免疫系の発動も見られなかった。

 将来の応用としては、現在すでに使われている脳深部刺激療法(ニューロンを電極で活性化・非活性化する療法)の代わりに、光を発する神経補装具を使うことが考えられる。脳深部刺激療法はパーキンソン病、てんかん、鬱病などの治療に役立つことが分かっているが、刺激を与える対象となるニューロンが限定的でないことも一因で、いくつか副作用が生じる可能性がある。



 ここまで細部の操作が可能になると、あとは脳の細かい領域区分が分かってしまえば、ある程度までの難病を治療することができるようになるかもしれません。鬱病や統合失調症なども原因となる場所は分かっているわけですから、あとはそこを狙って叩いてやるといった治療法も可能となるかも。正常なニューロンには影響を与えない、という点が大きいですね。

関連
医学処:2008年度の慶應医学賞に京都大学の坂口志文教授ら
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2009年05月07日

外国語の文法習得には左脳の下前頭回が関係している。

外国語:文法習得は老若と無関係?左脳「下前頭回」が影響

 外国語の文法を習得する際の得意、不得意に関係する脳の部位を、酒井邦嘉・東京大准教授(言語脳科学)らの研究グループが突き止めた。年齢や習得期間に関係なく、左こめかみの裏側付近にある「下前頭回」と呼ばれる大脳皮質の一部の体積が、右脳の同じ部位より大きい人ほど文法テストの成績が良いことが分かった。27日発行の米科学誌「ヒューマン・ブレイン・マッピング」に発表した。

 生まれて初めて覚える母語と、成長してから習得する外国語では、学ぶ際の脳の働きは異なる。酒井准教授らはさまざまな年齢層と英語の習得期間を持つ日本人中高生78人、英語圏以外からの外国人留学生17人の計95人に英語のテストをし、成績と左右の脳の対称性との関係を調べた。

 その結果、左前頭葉の下前頭回にある550立方ミリほどの領域が右側に比べて大きい人ほど、文法テストの成績がよい傾向が分かった。一方、つづりなどの語彙テストでは、脳の形状との関係はみられなかった。

 この部位が大きいから文法能力が高いのか、文法能力が高いから部位が大きくなったのかは不明という。酒井准教授は「外国語が苦手な人には習得時間を増やすなど、個人の適性を客観的に把握し、それに基づいた教育をするのに役立つのではないか」と話している。



 私はおそらく下前頭回が発達していないのでしょう・・・。

 母語と同じように外国語を少しでも教えれば、すんなりと外国語習得に結びつくのでしょうけれども。

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医学処:MEDO医歯薬英語辞書を、翻訳ソフトBabylon6のフリーコンテンツに
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2009年04月30日

頭で考えたことを直接Twitterに投稿する装置を開発する。

脳から直接Twitterに投稿可能、米大学院生が装置開発

 頭の中で考えた事を、直接「脳」からインターネットの一言ブログサービス「Twitter」に投稿ができる装置を、米国の大学院生が開発した。装置やシステムをさらに改良することで、「閉じ込め症候群」といった、意識はあるが運動機能を失った人々とコミュニケーションできる可能性が高まったと、期待されている。

 ウィスコンシン大学マディソン校で生物医学工学を専攻するアダム・ウィルソンさんが開発した装置は、赤い帽子のようなヘッドギア。脳内で考えたことを電気信号として受け取り、コンピュータに送ることができる。

 担当教官のジャスティン・ウィリアムズ准教授が装置開発に着手したのは、ラジオで聞いた質問だった。「思ったことがそのままTwitterに投稿できたらすごくない?」という一言を聞いて、「なるほど」と考え、「明日にでもできる」と思いたったという。

 ウィルソンさんが数日中に、既存の技術を使って頭で考えたことをTwitterに投稿できるソフトウェアを書き上げ、3月31日に初めて、自分でTwitterに投稿した。

 ウィリアムズ准教授は、英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士が使う音声合成装置を例に挙げ、脳から直接Twitterに投稿できる仕組みは、既存技術の応用だと説明。ただ、インターネット上のサービスの中でも、Twitterが電子メールなどと比べて、脳から直接投稿しやすいシステムだったことから、開発が容易だったと話している。



 Sugeeeeeeeeeeeee!!!

 どういう仕組みなのでしょうか。

 Twitterというのは、いわゆる独り言のような短文を載せることができるmixiのようなものです。

 確かにこの技術はお遊びではなく、記事中にある「閉じ込め症候群」に有用です。

 閉じ込め症候群は「locked in syndrome」といわれ、両側橋底部腹側の障害によって起こります。

 「閉じ込め」の意味どおり、そのまんまなのですが、簡単に言ってしまうと意識ははっきりしているのに身体が全く動かせない状態です。眼球だけは動かせることが多く、その眼の動きでYES、NOなどの意思疎通は可能となっています。しかし手も足も動かせなければ頭を動かすことすらできません。

 ですが意識ははっきりしているわけですから、この機器を用いれば動かなくても文章で意思疎通ができるようになるかもしれない、と。自立することも簡便になるかもしれませんね。

関連:27年間経過した「閉じ込め症候群」 - リハ医の独白

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遺伝性脳障害の原因遺伝子HTRA1を特定する。

遺伝性脳障害の原因特定 認知症研究に応用も

 新潟大の小野寺理准教授を中心とする研究グループが、若いうちから脳の細い血管に障害が出て脳梗塞を起こす、まれな遺伝性疾患の原因遺伝子を特定した。23日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載される。

 症状が似ているほかの脳障害や、脳血管障害が原因で起きる認知症の研究にも応用が期待されるという。

 この疾患は脳の内部の「白質」と呼ばれる部分で、血管が詰まって血液が流れなくなる梗塞が起きる。研究グループは、患者や家族の血液で遺伝子を分析した結果、患者では「HTRA1」という遺伝子の働きが低下していることを突き止めた。

 この遺伝子の作用を調べたところ、細胞の増殖などを促す「TGFベータ」というタンパク質の働きを抑えることが判明。患者では、このタンパク質が健康な人より余分に働くため、血管が硬化し、脳梗塞を起こしているらしい

 グループは「TGFベータが脳血管障害を起こすことが分かったのは大きな意味がある」として、今後、遺伝性ではない脳血管障害でも、このタンパク質の働きを弱めることで症状が軽減できるか、患者に協力を求めて研究したいと話している。



 こういう研究の積み重ねで、未知とされる疾患の治療法も少しずつ解明されていくのでしょう。

 蛋白質の研究がさかんになって、1つ1つの研究においては劇的な変化はないかもしれませんけれど、それが重なっていくことでいずれは深刻な病状も克服することができるようになるかも。

 基礎医学的な研究をされている方を、応援しています。
posted by さじ at 01:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2009年04月26日

携帯電話の電磁波が子供に与える影響を大規模に調べる。

携帯の電磁波:子どもへの影響は? 東京女子医大など

 携帯電話の電磁波による健康影響に関心が高まっている。世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、日本を含む13カ国参加の共同疫学調査の結果を分析中だ。日本の携帯電話加入数は1億を超え子どもにも急速に普及しているが、長期的な影響を調べたデータは少なく、大規模追跡調査が始まったところだ。

 3月末、東京都内で開かれた日本衛生学会のシンポジウム。携帯電話の電磁波による健康影響について報告が相次いだ。武林亨・慶応大教授(公衆衛生学)は、日本の研究では脳腫瘍などとの関連を示すデータは出なかったと発表。「北欧では長期使用者で携帯電話をあてる側に発生リスクが上昇したという報告もある。国際的疫学研究の全体の解析結果を待ちたい」との考えを示した。

 また、東京女子医大の佐藤康仁助教(公衆衛生学)は「成人については疫学研究が行われている。しかし、小児を対象とした研究はほとんどない。WHOが優先度の高い研究課題に位置づけている」と説明した。

 IARCが解析中の国際的疫学研究(インターフォン研究)も、対象は成人だ。日、欧、豪州、イスラエルなど13カ国が共通の研究計画で実施した。日本では00年から4年間、首都圏に住む30〜69歳の男女で、脳腫瘍や聴神経鞘腫と診断された患者と健康な人を対象に実施した。神経膠腫、髄膜腫などの脳腫瘍や聴神経鞘腫の発症率は、携帯電話使用の有無で差がなかった。携帯電話をあてる側と腫瘍との関連もみられなかった。

 しかし、10年以上の長期使用者では携帯電話をあてる側でリスクが上昇する結果が、一部の国で出ている。スウェーデンでは聴神経鞘腫の発症率が3・9倍になったほか、北欧と英国5カ国のデータを合わせて解析した結果は、1・8倍になった。

 WHO国際電磁界プロジェクト事務局の勤務経験がある大久保千代次・電磁界情報センター所長は「長期使用者の症例数が少ないうえ、右側に脳腫瘍ができれば、右側に携帯電話をあてていたと思いがちだ」と、調査結果に疑問を投げかける。IARCは各国のデータを一つにして解析中で、その結果を踏まえ、WHOが11年にも健康影響の評価書を作成するとみられている。

 WHOは96年、国際電磁界プロジェクトを発足させた。現在は60カ国以上が参加し、携帯電話に限らず、0〜300ギガヘルツのさまざまな周波数の電磁波リスク評価に取り組んでいる。子どもについては、高圧送電線と小児白血病との関連が研究され、07年にリスク評価書が発表された。

 送電線の周波数は50〜60ヘルツと超低周波。ただ、浴び続けると白血病の発症頻度が上がることが分かった。評価書は、0・3〜0・4マイクロテスラ(テスラは磁界の強さ)以上だと、小児白血病が倍増するという疫学調査結果を認めた。しかし、動物実験では発がん性が確認されず、関連を示す証拠は強くないと結論付けた。

 携帯電話の電磁波は送電線とは違い、1ギガヘルツ前後の高周波だ。大久保さんによると、これまでの動物実験では携帯電話と同レベルの電磁波が、生体に影響をもたらすという再現性のある研究結果は確認されていないという。総務省も健康に悪影響を与える科学的根拠はないという見解だ。

 では、なぜ、子どもへの影響が心配されているのか。山口直人・東京女子医大教授(公衆衛生学)は「子どもは今の大人より長期間使うことになるし、頭部の形状も大人と違う」と説明する。携帯電話は頭部に密着させて使ううえ、使われ始めてからまだ年数が浅い。影響を十分調べたとはいえない状況だ。

 日本では昨年から総務省予算で、東京女子医大が中心となり、インターネットによる疫学調査を進めている。小学4〜6年の保護者が対象で、子どもの携帯電話の使用状況や入院の有無などを、定期的に電子メールで回答してもらう。しかし、小児の脳腫瘍は10万人に2人程度と発症率が低いため、信頼性の高い結果を得るには多くの参加者が必要で協力者を募っている

 携帯電話と脳腫瘍については、米国では訴訟が起きている。この問題に詳しいジャーナリストの矢部武さん(55)は「米国の訴訟では労災が認められたケースもある。安全性が証明されていない中で、英国のように子どもは携帯電話の使用を控えるよう勧告している国もある。利用者はリスクがありうることを知った上で使ってほしい」と訴える。



 まだ出来て間もないものですから、慎重にしないといけませんね。あと100年後に公然の事実となっているかもしれないことですが、今はまだ分からない時期です。もしかすると脳腫瘍が増える結果となるかもしれないし、何も影響しないかもしれない。

 まあ脳腫瘍がどうのというより子供に携帯電話、というのは微妙といえば微妙ですけどね。昔の携帯みたいにネット機能だけでもないほうがいいと思います。どんなに便利なものでも使うものの程度が追いついていないと不幸を呼ぶのです。

関連
医学処:携帯の電磁波は天井や壁で反射するので優先席付近だけ警戒しても無駄
医学処:ペースメーカーがハッカーに悪用される恐れが生じている
医学処:電磁波について中立的立場から情報を提供する活動。
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2009年04月21日

気候が悪いときのほうが、物覚えは良くなる。

気候が悪いと物覚えがよくなる?=豪の研究

 オーストラリアのニューサウスウエールズ大学の研究チームの実験で、寒くて風があり、雨が降っているような日の方が、太陽の光がさんさんと降り注ぐ快適な日よりも人間の物覚えがよくなるとの結果が得られた。

 チームは、人間のそのときのムードが細部を記憶する能力にどのような影響を及ぼすかを調べた。商店の棚におもちゃの大砲や赤いバス、子豚の貯金箱など10点を並べ、店から出てきた人に何があったかを尋ねた。

 その結果、寒くて雨風の天気の悪い日は天気がよくて陽気な日に比べて、人々の物覚えが3倍もよくなることが分かった。また、雨降りの天気の悪い日には、なかった物を答える率も低かった。

 研究の中心となったフォーガス氏は、天気が悪いことに起因するネガティブな気持ちによって記憶の正確さが改善されると予想していたが、その通りの結果となったと語った。

 同氏は、ムードがよくないことによって人は周囲のことに注意深くなり慎重さを増すのに対して、幸福感は人の注意力をそらし、自信と忘れっぽさを増幅するようだと分析している。



 太陽の光が降り注ぐようだと、幸せな気持ちになりますもんね。昔に比べて太陽にあたる時間が短くなったせいか、太陽にあたっているときはまったりと落ち着いた気持ちになれます。

 そういうときには注意力は確かに散漫になっているかもしれませんが、陰鬱なほうが集中できるんですかね。面白い研究です。それでも日光に当たりたいっちゃ当たりたいですけど。

関連
医学処:ワサビを1日に12.5g食べると脳細胞の再生促進に。
医学処:計画力を鍛える知的な趣味と運動で認知症を改善する。
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2009年04月13日

専門家からアドバイスを受けると意思決定の脳の部位が停止する

専門家のアドバイスで、脳は「思考停止」

 金銭に関わる選択を行なう人の脳をスキャンした研究から、専門家からアドバイスを受けると、意思決定をつかさどる脳の部位がしばしば活動を停止することがわかった。

 このことの問題点は、もちろん、専門家のアドバイスが的確でない可能性があることだ

 「専門家のアドバイスがまったく道理にかなわない場合でも、行動に影響することを確認できた。まるで自分自身の価値判断を行なっていないかのようだ」と、研究論文の執筆者の1人であるエモリー大学の神経科学者、Greg Berns氏は述べている。

 Berns氏は神経経済学という学問分野を研究している。以前は注目を浴びるような分野ではなかったが、最近は注目を浴びている。世界的な経済情勢の悪化を受けて、市場の「見えない手」がどう動くのか、説明を求める人が増えている結果だ。

 Berns氏の論文は、3月4日付けの『Public Library of Science ONE』に掲載された。研究チームは、24人の大学生を脳スキャン装置に接続し、受け取りを保証されている金をあきらめて、それよりも当選金が高額であるような籤を引くチャンスを選ぶかどうか考えさせた。この際、学生自らが決定を下す場合と、米連邦準備銀行(FRB)にも助言しているエモリー大学の経済学者Charles Noussair氏が紙に書いたアドバイスを受け取る場合の2通りの実験を行なった。

 アドバイスはNoussair氏の名前で与えられたが、必ずしもNoussair氏自身が従うような内容ではなかった。きわめて慎重なアドバイスで、当たる確率と当選金が高くても、籤を引かずに、保証されている少額の金額を受け取るよう学生に促すことが多かった。だが学生は、状況に関係なくNoussair氏のアドバイスに従う傾向が見られた――特に状況が悪い時には。

 学生が自分の頭で考えた時には、脳の前帯状皮質と背外側前頭前皮質が活性化していた。これらは意思決定や計算に関係する部位だ。一方、Noussair氏からアドバイスをもらった時には、これらの部位は活性化しなかった。

 これは、管理された状況下で少数の大学生を対象に行なわれた実験の結果であり、予備研究でしかないが、その意味するところは常識に沿っている。Berns氏は投資家たちに、自分で調べて慎重に行動することを勧め、「立派な信用証明書や財務上の経歴」も、経済に明るいことを保証するものではないことを覚えておくよう勧めている。

 一方、将来的には、「意思決定能力が働いていない場合」にそれを知らせる脳スキャン装置を開発することは可能かもしれない、とBerns氏は述べている。



 権威ある人のアドバイスというだけで自分の判断のスイッチを切ってしまったかのような対応をしてしまうんですねぇ。

 大金を扱う時にはご注意を。
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2009年04月09日

脳の免疫細胞「ミクログリア」の働きを解明する。

脳免疫細胞:鍋倉淳一教授、働きを解明、新治療法に活用も

 脳の免疫細胞がほぼ1時間に5分の頻度で異常の有無に対して定期検査の働きをしていることを、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の鍋倉淳一教授(神経生理学)が解明した。1日発行の米神経科学学会誌電子版に発表した。

 最新のレーザー顕微鏡で、マウスの脳の免疫細胞「ミクログリア細胞」(直径0・1ミリ)の働きを撮影した。神経のつなぎ目のシナプスに、50〜80分に一度、4分30秒〜4分50秒にわたって接触し、異常の有無を検査していた。先端を膨らませて接触する様子は、まるで医者が聴診器をあてるようだった。

 脳梗塞や脳虚血などの異常があると、接触はシナプス全体を包んで1〜2時間と長くなり、精密検査の役割を果たしていた。異常時にはシナプスが再編成されたり、除去された。

 鍋倉教授は「免疫細胞を刺激すれば、傷害を受けた脳の修復を早めたり、リハビリに効果的かもしれず、新しい治療法の可能性が出てきた」と話している。



 人体って凄いです。

 簡単に、何億年も前に生物が生まれて、進化を重ねて、今の人間がいるといっても、ホントありえないぐらい細かいメカニズムで動いているもんです。脳の極小の神経細胞を定期的に検診して、異常があったら再編成したり除去したりしてくれる細胞が、当たり前のようにいるんですよ。

 ホント凄い。大興奮。(私だけでしょうか・・・)

 確かにこの細胞を活性化することができれば、脳梗塞などの時に、すぐに再生することもできるかもしれません。期待の膨らむ研究です。
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2009年04月06日

世界で4人しかいない、出来事をすべて記憶する病気

謎の病気で5歳以降の出来事を逐一記憶している男

 アメリカに、5歳以降に起きた出来事を逐一記憶している男性がいる。専門家によると、このようにズバ抜けた記憶力を持っているのは世界でわずか4人しかいないとのことだ。

 イギリス「デーリー・テレグラフ」24日付の報道によると、このアメリカ人男性とはロサンゼルスに住むテレビプロデューサー。自分がズバ抜けた記憶力を持っていることは中学に入ってから気づいたという。学生時代、勉強内容を難なく覚えることができたとのことだ。

 現在58歳のこの男性は、5歳以降、自分の誕生日をどのように祝っていたのか、40年間の正月の過ごし方などを事細かに思い出すことができるという。また1971年以降、誰がアカデミー賞を受賞したかもしっかりと覚えているとのことだ。彼の携帯電話のアドレス帳は「真っ白」で、友達の電話番号はすべて頭の中に入っているという

 専門家によると男性は「超常記憶総合症」という珍しい病気で、患者は現在世界にたった4人しかいない病気の原因については特定できていないとのことだ。



 どの分野にいても、記憶力というのもは必要なスキルです。覚えないより覚えているほうがいい。

 しかしこの方のように「何でも覚える」ということは「忘れられない」ということであり、人間に備わった「嫌な記憶を忘れる」という事象も起きないのでしょう。

 それは記憶力がいいから得をしたという点よりも、大きいことかも。案外苦しいものなのかもしれませんね。

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2009年03月27日

魚には認識能力を発達させるオメガ3脂肪酸が含まれている。

魚を食べる男子は知能指数がアップ、スウェーデン研究

 子ども時代に「魚を食べれば頭が良くなるよ」と母親から言われてきた男性は多いが、やはりお母さんは正しかった。スウェーデンの研究チームが魚類を食べる頻度と知能指数(IQ)との関連性を示した研究結果が9日、小児医学誌「Acta Paediatrica」3月号に掲載されたのだ。

 イエーテボリ(Gothenburg)のシャルグレンスカ大学病院(Sahlgrenska University Hospital)のKjell Toren教授らは2000年、スウェーデンの15歳男子3972人を対象に知能指数、言語能力、空間把握能力を測定。彼らが徴兵期の18歳を迎えた3年後、再び同じ項目を測定した。

 その結果、3年後のIQは、15歳の時に少なくとも週1回、魚を食べていた男子では7%、魚を食べる頻度が週2回以上の男子では12%上昇していた

 魚は、認識能力の発達や脳機能に重要な役割を果たすオメガ3脂肪酸を直接摂取できる理想的な食物だ妊娠時に魚を接種すると、胎児の知能発達が高まるとした研究結果も、複数発表されているほか、魚食は高齢者の認知能力衰退を遅らせることに有効だとする研究結果もある



 なんかアレ思い出しました。受験勉強がものすごい韓国ではマグロの頭だか豚の頭だかを買ってきて食卓に出すとか。

 でも魚はホント、いい食べ物ですから。おいしいですし。子供といえばやはり肉肉系が好物ですけれど、魚もうまいこと調理すればそのおいしさは分かると思います。小学生だか中学生の頃の家庭科で、自分でヒラメのムニエルだか何だかを作ったときはそのおいしさに感激したものです。

関連
医学処:イルカの知能は、ネズミや金魚以下である。
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2009年03月24日

脳神経の部位によっては、使っても減ることもある。

脳神経使っても減る? 部位によって違い…阪大教授ら

 使うほど強化され使わないと削除されると思われていた脳の神経回路が、部位によっては、使っても減るなど発達の仕方が大きく異なることを、大阪大大学院生命機能研究科の藤田一郎教授らのチームが明らかにした。神経回路の形成異常が原因とされる発達障害の治療などに役立つ可能性があるとしている。11日の米国科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」の電子版で公開される。

 藤田教授らは、神経細胞間で情報を伝達する「シナプス」に着目。サルの大脳のうち、見える物の形などを認識する「一次視覚野」、見た物に意味づけなどをする「視覚連合野」、視覚以外の多くの感覚を扱う「前頭葉連合野」の三つの部位で、シナプス数の変化を調査した。その結果、誕生時では、「前頭葉連合野」が最も多く、誕生まで使うことがなかった「一次視覚野」は最も少なかった。

 通説では「使うシナプスほど強化される」とされ、誕生後さかんに使われる一次視覚野ではシナプスは増えるはずだった。しかし4歳半で比較すると、一次視覚野のシナプスは誕生時よりも半減。ほかの2領域は増加していた。



 へぇ。使えば使うほど増えるというわけではないんですね。脳の領域はまだまだ未知。こうした発見の発達で、応用が利くようになるのでしょう。

関連:脳神経カテゴリー一覧
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脳活動をみるだけで、何を考えているのかを知ることが出来る

マインドリーディングにまた一歩近付く

 海馬は記憶に不可欠な領域であることが広く知られているが、研究者らは、脳のこの領域でイメージがどのように記銘され、想起されるのかだけに着目した。

 ウェルカムトラストの研究者らは、4人の被験者を訓練し、いくつかのバーチャルリアリティ空間を認識出来るようにした。Current Biology誌に載った論文によると、(海馬における)脳活動の認識可能なパターンが、彼らがどこにいるかを示していたということだ。

 海馬のニューロンは、動いている時に、我々がどこにいるのかを我々自身に伝えるために活動する「場所細胞」としても知られている。ロンドン大に拠点を置く研究チームは、脳内の血流量の変化を測定する特殊なスキャン装置を用いた。この装置のおかげで、研究者らは、被験者-全員がビデオゲームの経験のある若者-がバーチャルリアリティ空間を動き回っている時の、場所細胞の活動を調べることが出来た。続いて、データはコンピュータで処理された。

 Eleanor Maguire教授は言う。「我々は、被験者が何を考えているか-この場合、どこにいるか-を知ることが出来る、興味深いニューロンの活動パターンがあるかどうかを調べました。」「驚くことに、脳活動のデータを見るだけで、我々は被験者らがバーチャルリアリティ空間のどこにいるかを正確に当てることが出来ました。言い換えれば、我々は彼らの空間的な記憶を『読み取れた』のです。」「何万ものニューロンの活動を見ることで、我々は、空間的な記憶がどのようにエンコードするかという基本的な構造-パターン-があるに違いないと思えるようになりました。」

 しかし、同教授らは、誰かの心の奥底にある思考を読み取ること-もしくは嘘をついているかどうか計算すること-についての見通しが、まだはるかに遠いことを強調した。今回の被験者は、彼らの脳をよく訓練し、モニターされることを望んだ自発的な人々なのだ。

 データ解析プログラムを組んだDemis Hassabis氏は言う。「協力しないことは非常に簡単で、そうすれば読み取り装置は機能しません」「そのようなシナリオは、大きな技術的飛躍を必要とするでしょう。」

 このような研究から利益を得られそうなのは、アルツハイマー病のような脳の病気の患者である。

 同教授は説明する。「どのように我々が学習し、記憶するかを理解することは、どのように記憶が障害されているかという状態を理解する助けになり、リハビリの過程にある患者を助けられるようになるかも知れません。」

 アルツハイマー病学会の研究ディレクター、Clive Ballardは言う。「この興奮すべき発展は、アルツハイマー病の影響を受ける重要な領域で、記憶に関して脳の最も重要な領域でもある海馬についての理解を加速させるでしょう。」「脳がどのように活動するかをもっと調べれば、アルツハイマー病でどのタイプの神経細胞が失われるのかを計算する助けになるはずです。」
 
 アルツハイマー病研究財団のRebecca Wood氏は、この研究を「魅惑的」だとしている。「記憶がどのように形成されるかを理解することは、アルツハイマーのような病気の元で、このプロセスが上手く働かないということを知るための手助けになるかも知れません。」



 面白い研究です。マインドリーディングというSFの世界の話が、現実化しようとしているのかも。でも明らかなプライバシー侵害になるんでしょうね。倫理的には難しそう。医学的には非常に有益にみえますが。
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2009年03月22日

脊髄損傷後のリハビリ期間が長いほど、不快な痛みが生じやすい

脊髄損傷:リハビリの不快な痛み、神経の伸び方原因

 脊髄損傷患者がリハビリテーションで感じる不快な痛みは、リハビリによって再生した神経が誤った方向に伸びるため起きることを、自治医科大の遠藤照顕医師(整形外科)らの研究チームがラットの実験で突き止めた。神経を伸ばす物質の働きを抑えることで痛みを減らせることも確認した。欧州の神経内科学誌電子版に発表した。

 実験は、脊髄損傷を起こしたラットに、損傷1週間後から8週間、機械を使ってリハビリさせた。この間、刺激に対する足の動きから痛みの程度を分析すると、訓練期間が長くなるほど小さな刺激でも痛みを感じやすくなった。損傷個所では、痛みを脳に伝える末梢神経が、正常なラットとは異なり、深い方向に伸びていた。人間の脊髄損傷でもリハビリによって痛みが強まることが知られている。

 末梢神経の増殖にかかわる物質の働きを抑える物質をラットの脊髄内に注入すると、痛みの感受性が正常ラットとほぼ同じに戻り、神経細胞の深い部分への伸びも抑えられた。

 重い脊髄損傷の治療法として、幹細胞移植による神経再生の研究が進んでいるが、この過程でも痛みが起きることがラットの実験で指摘されている。チームの小林英司教授(移植・再生医学)は「同様の仕組みで痛みが起きている可能性がある。今後、人工多能性幹細胞(iPS細胞)など万能細胞を使った治療にも成果を応用できる可能性がある」と話す。



 iPS細胞の臨床応用でかなり期待できるこの脊髄損傷の治療ですが、痛みの加減なども考えるとまだ改良が必要ということか。

 より効率的なリハビリ方法と、痛みの神経をあまり伸ばさないような治療薬を併用することが必要なんでしょうね。

関連
医学処:神経細胞を正しく結合させる蛋白「Wnt4」を発見する。
医学処:脳のニューロンを活性化して麻痺した四肢を動かす。
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2009年03月20日

受動喫煙の量と脳の機能の低下には明らかな因果関係がある。

受動喫煙は認知力のリスクも高める、ケンブリッジ大

 受動喫煙は非喫煙者の認知症リスクも高めるとする研究が、13日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)」に発表された。

 非喫煙者が受動喫煙に継続的にさらされると、肺がん、糖尿病、心疾患、脳卒中などのリスクが高まることは、これまでの研究で明らかになっている。

 脳については、喫煙者の方に悪影響を及ぼすことは明らかになっているが、受動喫煙が非喫煙者の脳機能に与える影響についてはあまり知られていなかった。

 英ケンブリッジ大学(Cambridge University)のデビッド・ルウェリン(David Llewellyn)教授率いるチームは、かつて喫煙していた、または一度も喫煙したことのない50歳以上の約5000人を対象に、この種の実験の被験者数では過去最大の実験を行った。

 被験者は、だ液に含まれるニコチンの副産物「コチニン」の量をもとに、受動喫煙が多いグループから少ないグループまで、4つのグループに分けられた。

 次に、被験者に記憶力や数字・言語を扱う能力など、脳機能と認知能力に関するテストを受けてもらったところ、年齢や既往症などの諸要素を考慮した場合でも、脳機能の低下と受動喫煙の量に明確な因果関係があることがわかった
 
 たとえば、受動喫煙が最も多いグループでは、基準としたグループに比べて、認知能力の欠如のリスクが44%も高いことが判明した。また、こうした関係性は、かつて喫煙していたグループと一度も喫煙したことのないグループの両方でみられたという。



 喫煙している人自身だけでなく周囲にいる人にまで悪影響を与えてしまう煙草。受動喫煙の被害を防ぐためにも分煙をしっかりしなければなりませんね。吸わない人にとっては悲惨そのものです。

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医学処:受動喫煙で、肺腺がんになる危険は2倍に。
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2009年03月14日

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病でスペイン人が死亡。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病で女性死亡 スペイン

 スペイン保健省は6日、牛海綿状脳症(BSE)に感染したウシなどから伝染すると見られる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)により、北部都市サンタンデルの女性が今年1月に死亡したと発表した。スペインのvCJDによる死者は、2005年以来5人目となった。

 スペイン国立狂牛病研究センターのホセ・バディオラ所長によると、亡くなった女性は昨年秋に入院していたという。

 2001年にスペインで最初に確認されたvCJDによる死者は、首都マドリード郊外在住の若い女性だった。2007年12月には北部レオン州で50代の女性が死亡。08年2月にレオン州で41歳男性が、同8月にこの男性の60代母親が死亡した。

 昨年亡くなった親子については、同一家族内からのvCDJによる死者として初めてと見られている。

 vCDJによる死者が出たこと受け、保健省は牛肉業界への風評を懸念。vCJDの発症までには10年近くかかることから、死者はいずれも9年前に欧州で基準が強化された以前に感染していたと述べ、流通している牛肉に問題はないと通達している



 あの非常に有名となったBSE問題、今ではどのようになっているのでしょうね。日本でもあと10年後ぐらいに再度問題になったりするのでしょうか、「発症」という形で。。。

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医学処:BSEやクロイツフェルト・ヤコブ病の異常プリオンを激減させる物質を合成
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