[脳神]の記事一覧

2009年12月26日

読書を行うことで自閉症の治療に繋がるかもしれない。

読書治療でコミュニケーション能力も向上、自閉症治療に期待

 集中的な読書治療を受けた子どもは、読書力が向上するだけではなく、脳内回路が活性化されコミュニケーション能力も向上するとの研究結果が、9日の医学誌「ニューロン(Neuron)」電子版に発表された。

 米カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)の研究者らは、8〜10歳の子ども72人の脳のスキャンを、6か月間100時間の読書治療の前と後に行った。

 その結果、脳の白質(情報処理を担当する灰白質に信号を伝達する脳組織)の機能が、治療後には大幅に向上していた。信号伝達効率が上がったことがスキャン画像から示唆されたほか、子どもたちへのテストでも読書力の向上が認められたという。 

 研究者は、「脳の白質の活性化が可能だと分かったことは、読書障害や自閉症などの発達障害の治療に新たな可能性が開けたことを意味している」と話している。



 一人で本を読むだけでもコミュニケーション能力って上がるんですね。まぁ確かに、本っていうのは、人と人とのつながりのお手本のようなものか。

 結構、本を読まない人って、ホントに読まないんですよね。ちょっと信じられないんですが、年1冊も読まないという人がいるらしい。そういう人よりは、本を沢山読んでいる人のほうが、なんというか深いですよね。手軽に世界を広げられる可能性もありますし、何より考え方を支える知識も増えるし。

 脳を使っていきましょう。もっともっと。
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2009年11月17日

NR2B遺伝子操作で世界一賢いラットを誕生させる。

遺伝子操作で知能向上、人への適用は?

 たった1つの遺伝子に手を加えただけで、世界で最も賢いラット“ホビー・J”が誕生したという最新の研究が発表された。同様の遺伝子操作で人間の知能も大幅に向上する可能性があるが、知能が高すぎることが本人のためになるとは限らないと科学者は警告している

 『アルジャーノンに花束を』や『ニムの秘密』など、映画や小説の世界では以前から科学の力によって驚異的な知能を得たネズミが登場するが、この“ホビー・J”はフィクションではない。

 今回の研究対象となったラットは記憶を保持できる時間が、同種で最も賢いとされるラットの3倍になったという。ホビーは主に記憶力の向上によって、複雑な課題をほかのラットよりもはるかに上手にこなすことができた。例えば、ラットの知能を測定する代表的な手法である、断片的な手掛かりだけを頼りに迷路を通ってエサまで到達できるかを調べるテストなどだ。

 ジョージア医科大学のジョー・Z・チェン氏が率いる研究チームは、まだ胚の状態だったホビー・Jに対して、脳細胞間で伝達される情報量の制御に関わるNR2Bという遺伝子を過剰発現させる遺伝物質を注入した。

 この操作によってホビーの脳細胞は、通常のラットよりわずか1秒間だが長く情報を伝達できるようになった。このラットが平均的なラットよりはるかに賢いのはこれが原因だと研究チームは考えている。

 チェン氏の研究チームは10年ほど前に、テレビドラマに登場する天才少年医師ドギー・ハウザー博士にちなんで名付けられた“ドギー”というマウスの知能を同じように向上させたことがある。

 チェン氏は電子メールでの取材に次のように答えている。「NR2Bは、ドギーの学習能力と記憶力を上げるスイッチとして機能した。ホビー・Jでも同じ結果を示している。これは、この遺伝子を標的とした薬を使用すれば、認知症やアルツハイマー病のような疾患の治療に役立つ可能性があるということだ」。

 ドギーのプロジェクトに参加した神経科学者、劉国松(リュウ・グオソン)氏は、。その劉氏は、次のように展望する。「この研究は非常に刺激的だ。なぜなら人間の記憶力を強化できる可能性が高まったからで、これこそ私の研究室が目指しているものだ」。

 しかし、北京の清華大学とアメリカのテキサス大学に所属し、今回の研究には参加していない同氏は、将来直面するであろう2つの課題を指摘する。まず、人間の胚の遺伝子操作には倫理上の問題が生じるため、薬によってNR2Bを過剰発現させる方法を開発する必要がある。

 次に、過剰な記憶力は大きな負担になる可能性があり、悪夢にすらなり得るという。「私たちがものごとを忘れるのには理由がある。いやな体験の記憶を捨て去ることで、そうした記憶に悩まされずに済むようになっているのだ」。

 このような理由から劉氏は、もし人間に投与できる薬が開発されたとしても、投与の対象はアルツハイマー病などの重い精神疾患を抱える人に限るように呼びかける考えだ。「健康な人の記憶を伸ばすのは非常に危険かもしれない」。



 リアル・アルジャーノン。あの話も、不幸になりつつありましたが。

 ただ記憶力を伸ばすだけだと、あまり人にとって幸せにはなりえないんでしょうね。誰しもが記憶力を欲するものですが、忘れられる今だからこそ、人として重圧に耐えられるのではないか、という気はします。

 しかしこの研究から、認知力を失いつつある疾患の人に投与できる薬が開発されれば、かなり有益でしょう。子供に投与すべきではないと思いますが。
posted by さじ at 13:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

幹細胞を脳に移植して記憶能力を回復することに成功。

放射線浴びたラット、幹細胞移植で記憶能力回復 脳腫瘍治療へ応用も

 放射線を照射されたラットに幹細胞を移植して、記憶能力を回復させることに成功したという論文が今週、米科学アカデミー紀要に掲載された。脳腫瘍の放射線治療で記憶障害が起きた人の治療に応用できる可能性がある。

 論文を発表した米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California at Irvine)の研究チームによると、放射線治療を受けたラットの頭に幹細胞を移植したところ、放射線治療から4か月以内に記憶能力が回復したという。一方、幹細胞の移植を受けなかったラットは認知機能が50%以上損なわれた。

 放射線治療を受けた患者は何らかの記憶障害が起き、生活に悪影響が出ることもある。研究チームは、放射線でダメージを受けた脳の組織を幹細胞を使って回復させることが可能なことが初めて示されたとして、移植した幹細胞がラットの認知機能を改善したメカニズムを調べている。



 記憶。記憶かぁ。

 脳障害で、記憶能力が低下する、というのは稀ながらあります。人間に応用する場合、どのあたりに幹細胞を、どうやって移植するのか、がポイントとなりそうです。

 ある程度リスクがあっても、記憶能力は取り戻したいものですからね。「メメント」のように、記憶できない人、というのは実際に存在します。そういう人の治療法にもなりえるのかもしれません。
posted by さじ at 13:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2009年11月10日

与謝の海病院の脳神経外科を再開。手術、入院も可能に。

与謝の海病院:脳神経外科の手術と入院治療を再開

 府は9日、府立与謝の海病院(与謝野町男山、内藤和世院長)で休止状態にあった脳神経外科の手術と入院治療を、27日から1年7カ月ぶりに再開すると発表した。

 同科は08年4月、2人いた医師が1人になり、手術や入院治療に対応できなくなっていた。今年3月には、勤務医の退職に伴う医師の補充ができず、外来診療を休止していた。

 府立医大と舞鶴医療センターからの医師の派遣で7月14日から週2度の外来診療を再開。さらに今回、京都第一赤十字病院の医師4人が府職員として併任のうえ、交代で与謝の海病院に勤務。これまでの2人の医師の応援も継続し、救急時も含め、手術や入院に対応できるようにする。火、金曜日だけだった外来診療も月、木曜日が加わり週4日体制になる。



 花形といわれる脳外、しかも京都にもかかわらず人が不足しているんですね。

 しかし脳外の領域の医療は、急性期のものが多く、一分一秒を争うものもあります。手術が可能になった、というのは大きなことだと思います。
posted by さじ at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 脳神

2009年10月30日

熱ショックタンパク「HSP」の役割とは

熱ショックタンパク質損傷で脳疾患 金大・山嶋准教授ら研究

 金大大学院医学系研究科・再生脳外科学教室の山嶋哲盛准教授と三重大の共同研究グループは23日までに、ニホンザルの脳を使った実験で、脳梗塞やアルツハイマー病など脳疾患の原因である神経細胞死が、細胞を保護する「熱ショックタンパク質」(HSP)の損傷によって生じることを突き止めた。ヒトの脳疾患にもHSPの保護や補給が有効とみられ、新薬開発や治療への応用が期待される。

 山嶋准教授らは、人工的に脳梗塞を起こしたニホンザルの脳からタンパク質を抽出。三重大と島津製作所(京都市)の協力を受けて詳細に解析した。

 この結果、熱ショックタンパク質の一つである「HSP70」の損傷が平常時と比べ、10倍以上に増えていることが判明した。

 HSP70は細胞内の小器官「リソソーム」から、タンパク質を分解する「カテプシン」の漏出を防ぎ、細胞が壊れないようにしている。解析結果では、HSP70が損傷を受けたことにより、リソソームが破裂して細胞成分が破壊されていた。

 これまで脳疾患にはカテプシンの漏出が関係していることは知られていたが、リソソームが破裂する原因は分かっていなかった。

 山嶋准教授によると、ニホンザルの脳はアミノ酸の構成がヒトと極めて近く、共通性が高いと考えられる。HSP70の損傷と脳疾患の因果関係が明らかになったことで、酸化からHSP70を守る抗酸化剤の活用や、HSP70を使った医薬品、健康食品の開発も期待できるという。

 研究成果は23日までに、オランダの医学雑誌「プログレス イン ニューロバイオロジー」の電子版に掲載された。山嶋准教授は「脳疾患の多くにかかわる神経細胞死の全容解明に大きく近づいた。一日も早い臨床応用を目指したい」と話した。

 九州大生体防御医学研究所の中別府雄作教授(脳機能制御学) 今回の研究成果によってHSP70の酸化を制御できれば、神経細胞死を防ぐことができると考えられる。分子標的の一つが判明したことで、創薬などへの活用も期待される。



 蛋白質関連。

 治療に役立つものですね。
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2009年10月29日

ハエに人工の記憶を植え込むことに成功する。

「人工記憶」ハエに書き込み 英米チームが成功

 脳に人工の「記憶」を書き込んだところ、経験していない、その記憶をもとに行動するようになった。オックスフォード大など英米の研究チームが、そんな試みに成功し、米科学誌セル(電子版)に発表した。もっとも、人間ではなくショウジョウバエでの話だ。

 ショウジョウバエに、ある種のにおいと同時に電気ショックを与える「訓練」を繰り返すと、その記憶をもとに、同じにおいを避けて動くようになる。研究チームは、そうした仕組みを担うショウジョウバエの脳の組織が12個の神経細胞(ニューロン)でできていることを突きとめた。

 光を当てる特別な方法で、訓練を受けていないハエの神経細胞を活性化させて「人工記憶」を書き込んだところ、ハエは危険を体験していないのに、そのにおいを避けるようになった。

 人間に応用できるかとなると、ヒトの脳は複雑なので、ハエ限定の話という。



 いやしかし、ハエとはいえ記憶を植えつけることができるようになったというのは凄いです。

 記憶というより、条件反射、というイメージですが。

 人間にも恐怖症というものは存在しますが、もしこの研究が成功すれば、例えば蜘蛛嫌いでなかった人を蜘蛛恐怖症にすることもできるかもしれないです。

 逆に言えば恐怖症の治療にもなりうる、と。

 もし出来たら私をやってほしいですね。蜘蛛嫌いなんで。蜘蛛嫌いだと結構日常生活で困るんですよね。老朽化した場所に座ってて、壁に大きな蜘蛛がいたりすると、もういてもたってもいられなくなりますんで。
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2009年10月22日

南田洋子さん、くも膜下出血でお亡くなりに。

南田洋子さん死去 長門号泣「この4年間本当に楽しかった」

 「太陽の季節」など多くの映画やテレビ番組で活躍し、夫の長門裕之(75)とおしどり夫婦として親しまれた女優の南田洋子(みなみだ・ようこ、本名・加藤洋子=かとう・ようこ)さんが21日午前10時56分、くも膜下出血のため東京都内の病院で死去した。76歳だった。数年前から認知症を患っていたが、17日に体調が悪化して入院していた。長門はこの日、公演中の東京・浜町の明治座に直行し、南田さんの最期はみとれなかった。

 20日夜、南田さんがくも膜下出血によって植物状態に陥ったと報告した夫・長門の悲痛な会見からわずか14時間余り。南田さんは21日朝、静かに旅立った。東京・浜町の明治座で川中美幸主演の舞台「幸せの行方 お鳥見女房」に出演中の長門はこの日も昼夜に公演があり、最期をみとることはなかった。

 南田さんは約4年前から認知症の症状がみられ、06年に撮影された映画「ひいろ」(07年公開)を最後に女優業を休止。昨秋に長門からテレビ番組で病が公表され、反響を呼んだ。長門の献身的な介護を受けていたものの、17日夜に都内の自宅でくも膜下出血に倒れ、都内の病院で緊急手術。人工呼吸器をつけての植物状態が続いていた。

 長門は夜、明治座のけいこ場で連日の会見。公演後、憔悴しきった表情で「僕を信じて待っていてくれた、ただ一人の女性。この4年間本当に楽しかった」と号泣した。

 愛妻が亡くなったのは、舞台の開演4分前。悲報は昼の部終演後に届いたが、午後4時からの夜の部も悲しみをこらえ、ステージに立った。4年間、一生懸命介護を続けたが、「(なぜ、亡くなったのが)『今日なのかい』って向こう(天国)に行ったら聞いてみたい」。しかし、すでに「一生分のキス」をしており、「後悔はしていない」と声を絞り出した

 17日夜、意識を失う直前には力の入らない右手で、長門の指2本を「白くなるほど」握ったという南田さん。48年連れ添った女房の突然の行為に「あれが最後の意思表示だったのかな」。

 22日はつかの間の休演日。「明日はゆっくりお別れできると思うんでうれしい」と2人だけの時間をゆっくりと過ごす。



 日本のおしどり夫婦の代名詞とも言われたあの夫婦。南田洋子さん、くも膜下出血でお亡くなりになってしまいました。ご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

 今の日本では、離婚率も増加していますし、認知症という日常生活に関わる疾患によって、思うように平穏な老後をおくることが出来ない、というのが現状です。

 しかしこのご夫妻のように、ゆったり流れる時間の中で、心の平穏を保ち続ける生き方も、できるんです。

 認知症という病を克服するのではなく、受け入れること。病気と一緒に相手を受け入れることが大事なんじゃないかなと思います。

 できれば、長門裕之さんと南田洋子さんのような素敵な夫婦のような老後を送りたいです。

 そういえば私の好きなabsorbも、このご夫妻の愛をテーマにした曲を作っていました。

absorb、長門裕之さん1人に捧げるコンサート

 昨年11月、初音ミクをフィーチャーしたネット発卒業ソング「桜ノ雨」でデビューした3人組absorb。4月15日に発売した2枚目のシングル「愛ノ詩」のジャケットに、長門裕之・南田洋子夫妻が主演した映画『太陽の季節』のスチール写真を起用したことで話題を呼んでいるが、本日都内スタジオに長門裕之さん本人を迎え、1人のためのコンサートを開催した。

 「愛ノ詩」は、長門裕之・南田洋子夫妻の献身的な愛のあり方をテレビのドキュメンタリー番組で知り感銘を受けたabsorbが、若い男女のラヴ・ソングを「未来永劫あなたを愛す」というテーマで制作しなおした新曲。番組内で長門さんが語った「洋子よりも先には死ねないんだ」という言葉から、「一日でも長く生きるんだ ひとりじゃいやでしょ」という歌詞も生まれたとのこと。コンサートではその「愛ノ詩」をふくむ3曲が披露された。

 absorbリーダーの森晴義は「歌いながら長門さんを見ていて、ちゃんと僕たちの思いが伝わっているなと感じた。とても嬉しい。洋子さんにも届くように歌いました」とコメント。長門さんも「素晴らしいプレゼントをありがとう。この感動を洋子にも伝えますよ。それにしても、absorbの歌は本当にやさしい。涙をこらえるので精一杯でした。心からの励ましありがとう」と感謝の気持ちをのべた。

 なお、妻の南田洋子さんも「愛ノ詩」を何度も聴いているとのこと。両者にとって忘れられないコンサートになったようだ。




 若かりしころのお二人の写真を用いた愛ノ詩ジャケットはこちら

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2009年10月07日

神経活動の記録から、脳内イメージを再現することに成功

神経活動を分析して「見ていたものの再現」に成功

 科学者たちは、人の精神を読むことで、その人がそれまで見ていたものを知ることに一歩近づいた。脳のなかでイメージがどのように表されているかをモデル化することで、神経活動パターンの記録を、被験者が見ていた写真と結びつけることに成功したのだ

 9月24日付け『Neuron』誌に発表された今回の研究では、脳の視覚中枢をより総合的に見た成果を使っている。その結果、「画像を識別する」というよりは「再構築する」と言ってもよい成果があがった。

 Gallant氏の言い回しによれば、最初の実験は、「観客が選んだ1枚のトランプを言い当てる、手品師のトリックと同じだ。手品師は、客が目にする可能性のあるカードをすべて知っている」。しかし今回の研究では、「カードは、大学内にあるどんなものの写真になるかわからない。手品師は、実際に見ることなく言い当てなければならない」という。

 モデルを構築するため、研究者たちは、脳の血流を測定する機能的磁気共鳴画像(fMRI)装置を使って、3人の被験者が日常的なもろもろを視覚的にとらえる場合の神経活動を追跡した。

 以前に発表された研究と同様、研究者たちが注目したのは、物体の形を認識するのに結びつく脳の部位だ。前回と違うのは、例えば「建物」や「少人数の集団」のような、「共通概念による分類」と相関する神経活動の部位に着目した点だ。

 神経パターンのモデルが構築された段階で、被験者は一連の別の写真を見た。その結果得られた神経パターンを解析したのち、プログラムは、600万枚の画像データベースの中から、対応する画像を判別することに成功した

 この研究で使ったfMRIデータは、何百万というニューロンのアウトプットをまとめて、単一のアウトプット・ブロックにしている。「より細かいレベルを分析するとすれば、非常に大量の情報になる。頭蓋骨を開いて直接アクセスでもしないことには、それを引き出す方法はない」とTong氏は言う。

 Gallant氏は、レーザースキャナーや脳波図(EEG)のデータのような、別の手法での測定から解釈する手法も開発したいと考えている。

 同氏は、可能性のある応用例として、医療用の意思伝達装置をあげている。また、脳から直接連結するCAD-CAMシステムや『Photoshop』といった、「視覚的思考」を可能にするコンピューター・プログラムにも言及した。



 これ成功したら、頭に浮かべたことをそのまま画像として表示することも可能、ということはですよ、言語的にコミュニケーション取れなくても、ある程度分かってしまう、ということですかね。

 医療的にも、ロックドイン症候群の人などの、意思伝達が難しい人に使えそうですけど、やはり社会的に用いるのが一番有益そう。

関連
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2009年09月25日

海馬形成に必要な遺伝子「ガーディン」を発見する。

「海馬」形成の遺伝子を特定 神経疾患治療に道

 記憶や学習をつかさどる大脳の「海馬」形成に重要な役割を果たす遺伝子を、名古屋大大学院医学系研究科の高橋雅英教授(分子病理学)らが特定、24日付の米科学誌ニューロンに発表した。

 高橋教授らは「統合失調症やてんかんなど、海馬の形成異常との関連が疑われる神経・精神疾患の発症メカニズム解明や新たな治療法につなげたい」としている。

 高橋教授らは、血管やがんなどの細胞を活発化させる「ガーディン」という遺伝子に着目。この遺伝子がないマウスを作成したところ、周りの新しい環境に興味を示さないなど、神経症のような症状が現れた。

 脳内を調べると、新たな神経細胞の成長が阻害され、海馬の「歯状回」と呼ばれる構造が正常に形成されていないことが分かった。

 統合失調症は「DISC1」という別の遺伝子の異常が関連していることが既に判明しているが、高橋教授らは、正常な海馬の形成にはこの遺伝子とガーディンがともに機能する必要があることも突き止めた。



 脳も遺伝子も未知数領域。1つずつ解明されることで、劇的に進歩する可能性を秘めてます。

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2009年09月24日

電気刺激療法が、脳梗塞の治療にも効果がある。

電気刺激療法が脳梗塞抑制に効果 岡山大大学院グループがラットで確認

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の伊達勲教授(脳神経外科学)と馬場胤典研究員らのグループは、パーキンソン病治療などで行われている脳への電気刺激療法が、脳梗塞治療にも一定の効果があることをラットの実験で確かめ、19日から2日間の日程で岡山市で始まった日本分子脳神経外科学会で発表した。

 電気刺激療法はパーキンソン病の体の震えやこわばりを抑える効果が認められているが、脳梗塞では一部の医療機関でリハビリの一環として行われているだけ。実験では発症後、早期の電気刺激によって細胞死が減ることを確認、重症化を防ぐ新たな治療に向けた研究として注目される。

 馬場研究員らはラットの中大脳動脈を1時間半ふさいで半身まひの状態にし、1時間後に頭蓋骨の内側にある硬膜を電気で刺激。周波数と電流値を複数組み合わせて1週間流し続けた。

 その結果、細胞死した脳梗塞部分は電気刺激無しのラットに比べて最大で約半分に抑えられた



 脳の血管が詰まって、梗塞が起こって、そうすると脳の細胞に血液がいかず壊死してしまい、機能が回復しなくなってしまいます。

 そのときに電気で刺激してやると、ある程度、壊死を抑えてやるということですね。効果があるのでしたら、全国の施設の救急でやってもらいたいですね。できるだけ早く治療しないと効果なさそうですし。
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2009年09月20日

きまぐれオレンジロードの作者まつもと泉さん、脳脊髄液減少症だった

病と生きる 漫画家・まつもと泉さん(50)

 80年代に一世風靡した漫画「きまぐれオレンジ★ロード」の作者、まつもと泉さん(50)は新連載を控えた平成11年、頭痛や吐き気などの症状を訴え、仕事をストップした。5年後に「脳脊髄液減少症」だったことが分かるが、病名が分かるまでの道のりは険しかった。病気を克服した今、患者への理解を深めてもらおうと自らの闘病をテーマにした漫画の制作を進めている。

 10年前、新連載を始めようというときに体調が悪くなり、首とか頭、上半身がギューンと締め付けられるような痛みがやってきました。

 整形外科、心療内科、歯科などを転々としました。僕は歯の噛み合わせが原因だと思っていたし、家族は精神的なものというわけですよ。体力をつけようと、ジョギングをして動き回ったことも。健康になると思ったのに、頭痛で立っていられない状態になりました。入院もしたんですが、退院するまで3日間くらい眠れなかった。あまりに体調が悪いんで、連載は無期限延長になりました。

 1、2年後には、通院もあきらめた。疲れ果て、家の中で引きこもり状態に。テレビを見ても、家族が笑っているのに僕は全然笑えなくて。

 今はこうして笑って言えるんですけど、そのころは人に会うのも辛かった。でも、自分のサイトの掲示板でファンの方が心配してくれ、励ましの言葉を書いてくれた。こちらは辛くて書き込めないんだけれど、それが本当に救いで、自分と外の人をつなげる唯一のツールでした。

 16年、姉が「脳脊髄液減少症」を紹介した新聞記事を僕に見せてくれた。あまりにおどろおどろしい病名で、自分の症状とは結びつかなくて。でも書かれていた症状は自分と同じだった。ダメもとで山王病院(東京都港区)の脳神経外科に行ったんです。

 検査を受けたら、髄液漏れが見つかりました。僕は4歳のころ、交通事故に遭った。患者の過半数は交通事故が原因でなるといわれています。もともと体調は崩しやすかったんですけれど、過労や年齢で症状が出てきたんでしょう。

 治療はブラッドパッチといって、静脈から抜いた自分の血を髄液が漏れている個所に注入し、血のりで穴をふさぐ。血はやがて吸収されるんですが、体が血に反応して組織を再生させていくんです。

 1回で治る人もいれば、何度やっても治らない人もいます。僕は4回で、ほぼ病気になる前の状態に戻りました。ウロコが剥がれていくように苦痛の皮が剥がれていって、そういえばあそこもここも気にならなくなってきたな、という具合です。

 死に至る病気ではないんですが、死んだ方がマシと思わせる。変な病名を付けられ、膨大なお金や時間を使う人もいます。加害者や保険会社からは、ゆすっているとか怠けていると思われる。病気の苦痛と病気を理解してもらえない苦痛。今は検査で分かりますが、前は理解してもらえないことが一番苦しかったのではと思います。

 応援してくれたファンや患者さん、出版社に恩返しをするため、今、闘病記を描いています。今までは読者を楽しませるということでしか漫画を作ってこなかったんですけれど、今度は自分に起きたことを描く。僕はたまたま漫画家だったので、漫画で訴えるべきだと思ったんです。

 苦しんでいる患者に少しでも光になればいいし、この病気のことを多くの人に知ってもらいたい。特にドライバーにはうかつに事故を起こしてもらいたくない。やがては治るかもしれないけれど、その人の大事な時間やいろんなものを奪ってしまうわけですから。事故を起こさないことがこの病気に対する何よりの治療なんです。



 名作、きまぐれオレンジロードの作者が脳脊髄液減少症だったとは。

 最近になって、脳脊髄液減少症も結構取り上げられるようになり、一般的に認知されはじめました。硬膜外ブラッドパッチも有効な治療法として知られ始めましたから、診断さえつけば治療もできるようになりました。

 交通事故などの後でこのような症状が出た人、お近くの病院へ。

関連
医学処:交通事故の衝撃で髄液が減ると脳脊髄液減少症になる。
医学処:子供の脳脊髄液減少症に対する知識と理解を身につける
医学処:脳脊髄液減少症の研究が加速。適正治療法解明なるか
医学処:脳脊髄液減少症の、診断と治療のガイドラインが作成される
医学処:脳脊髄液減少症の診断基準などを厚生労働省がまとめる。
医学処:脳脊髄液減少症の治療や研究促進を求める声について
医学処:脳脊髄液減少症の治療可能な病院名をリストアップ
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2009年09月16日

新日本科学が偏頭痛薬ゾルミトリプタンの経鼻投与剤を開発

新日本科学が続伸・偏頭痛薬の経鼻投与剤を開発

 新日本科学(2395)が続伸。

 前臨床試験受託の最大手だが、経鼻インフルエンザワクチン研究に着手していることから新型インフルエンザ関連として8月28日まで7日続伸のなか4日連続のストップ高、21日、9月1日は連続ストップ安となったものの、前日から反騰。

 偏頭痛薬ゾルミトリプタンの経鼻投与剤を開発したと3日に発表したことから再度買いを集めている。



新日本科学(2395)、偏頭痛薬「ゾルミトリプタン」の経鼻剤開発に着手

 新日本科学 <2395>はこのほど、薬剤の確実な投与や効率のよい吸収を目的とする、独自の製剤技術(μco(TM) system;ミューコ システム)と医療用具(デバイス)を完成させ、偏頭痛治療薬「ゾルミトリプタン」の経鼻剤開発に着手した

 同社によると、偏頭痛は働き盛りの20歳〜40歳代の若い年齢層に多いのが特徴で、米国における調査では、偏頭痛による欠勤や生産率低下で、労働力の損失が毎年1兆円以上にも上ると報告されている。

 偏頭痛治療薬の世界市場は、約3500億円規模に上ると見られており、同社は、独自の製剤技術システムとデバイスを活用し、携帯性に優れ、投与の簡便な、より速やかな薬効が安定的に得られる製剤の研究、開発を目指すという



 ほー。経鼻で投与することもできるようになったんですね。

 偏頭痛はかなり多くの人が悩んでいる症状の1つです。頭が痛くなる、と簡単に言えますけど、偏頭痛の痛さは個人差はあれど、人によっては日常生活すら困難になるほどのものです。こういう何気ない疾患に対しても理解していきたいところですね。

ゾルミトリプタンとエルゴタミン製剤、急性片頭痛治療ではゾルミが好結果

 急性期の片頭痛治療において、ゾルミトリプタンとエルゴタミン製剤(カフェルゴット)の比較対照試験を実施したところ、鎮痛作用の切れ味、副作用、QOL向上などの点でゾルミトリプタンの方が優れていた。西沢クリニックの西澤芳男氏が23日、日本頭痛学会総会の一般口演で報告した。

 西澤氏らは、約20施設において、片頭痛の確定診断が得られた659人の通院患者に対する性・年齢構成、重症度などをほぼ一致させた2群に分ける多施設ランダマイズ比較試験を行った。

 その結果、鎮痛効果についてはゾルミトリプタンが投与2時間後に68.4%、4時間後に75.3%に改善がみられたのに対し、カフェルゴットでは2時間後に45.1%、4時間後でも47.1%だった。2〜24時間後に再発し追加投薬を要した比率も36.8%対62.9%とゾルミトリプタンが大幅に低かった。片頭痛の随伴症状の改善についても、嘔吐では有意差がみられなかったが、吐き気(投与4時間後で23.0%対55.2%)や光過敏(投与4時間後で33.9%対56.3%などではゾルミトリプタンが優れていた


関連
医学処:偏頭痛治療薬イミグランの高い有効性と安全性が実証される
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2009年09月14日

切断されたヤモリの尻尾から、脊髄損傷の解明のヒントに。

ヤモリの切断しっぽは「環境に応じて複雑に反応」

 高速度撮影のビデオと筋電図を使った研究により、ヤモリの尻尾は、切断された後でも複雑な振る舞いを示すことが明らかになった。切断された尻尾は、周囲の環境からの刺激に反応しているようにすら見えるという。

 「われわれは、ヤモリの尻尾がしばらく規則的に動き、時間がたつにつれ動きは弱まるだろうと予測していた」と、カナダのカルガリー大学のAnthony Russell教授(生物学)は語る。Russell教授は、今月9日(現地時間)付で『Biology Letters』に発表された論文の共著者の1人だ。

 「ところが実際に目にしたのはこんな姿だ――尻尾はしばらく、左、右、左、右とばたついたかと思うと、一旦ジャンプし、向きを変え、またばたついたりする」

 ヤモリの跳ね回る尻尾を制御しているものが何なのかを突き止めることで、脊髄損傷の患者の麻痺した筋肉が、時に突発的な収縮を起こす理由を解明する手がかりを得られるかもしれず、そうすればいつの日か、こうした動きをある程度制御できるような治療も実現するかもしれない、と研究チームは述べている。

 研究チームは、ヤモリの一種であるヒョウモントカゲモドキの成体4匹の尻尾に電極を取り付けた後、これらのヤモリを軽くつねって、自分から尻尾を切り落とすように仕向けた。ヤモリが危険を感じるとすぐに、その尻尾は引きつったような動きを始め、やがて体の他の部分から完全に切り離された。驚くべき離れ業で、ほとんど血も出ない。自切と呼ばれる行動で、節足動物やトカゲなどに見られる。自切を行うトカゲ類の尾は、脊椎に自切面という節目があり切れやすい構造になっている。人為的にハサミ等で無作為に尾を切断しても、同様の反応が見られるわけではない

 ヤモリの尻尾は、短時間の爆発的な動きでエネルギーを使い果たしてしまうようなことはしなかった。むしろ筋肉の動きを制御してエネルギーを温存し、その振る舞いをできる限り予測不能にしようとしているようだったという。また尻尾は、ぶつかったものに応じて方向と速度を変えている。このことは、尻尾が単独で環境を探知し反応できる可能性を示している。

 「ヒョウモントカゲモドキは尻尾に脂肪を蓄えており、栄養分の多くもそこに詰まっている。尻尾は非常に遠くまで移動して、敵から逃げおおせることがあるが、その場合、ヤモリは戻ってきて自分の尻尾を食べ、栄養分の一部を取り戻すことができる」と、Russell教授は語る。

 研究者たちは、尻尾の複雑な動き方を制御している仕組みについては理解できていない。この仕組みを解明すれば、人間の脊髄損傷についても理解できるのではないか、と研究者たちは期待している。

 脊髄損傷患者の場合、損傷後の数日〜数週間にわたって、麻痺した筋肉が突発的で制御不能な、爆発的な活動を起こすことが頻繁に見られる。「なぜこれが起こるのかはよく分かっていない。中枢神経系の制御のない状態で、何が突発的な筋肉の収縮を起こさせているのだろうか」と、Russell教授は語る。

 これまで、中枢パターン発生器(CPG)と呼ばれる神経回路網が、脳の制御なしに規則的な動きを示すことは知られていた。しかしこれらの神経回路網がどのように機能するのか、正確なところは専門家にも分かっていない。



 おおー。不思議。ヤモリ凄いですね。敵から逃げるために尻尾を切り離すというのは知っていましたが、その尻尾も出来るだけ動くような仕組みになっているとは。

 神経学的な領域はまだまだ未知ですが、ヤモリの尻尾から新しい着眼点が生まれる可能性もあります。こういう発想から人類への恩恵が生まれるかもしれない、と考えるだけでワクワクしてきませんか。

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2009年09月10日

大阪市立大学が「滑脳症」を薬剤投与で改善させることに成功。

難病「滑脳症」、薬剤で症状改善 大阪市大が動物実験

 大阪市立大学の広常真治教授と山田雅己講師らは、脳の「しわ」がなくなり重い知的障害などを起こす「滑脳症」の症状を、薬剤投与で改善する動物実験に成功した。有効な治療法のない同症の治療に将来結びつく成果で、米医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に7日掲載された。

 滑脳症の多くは神経細胞の移動に関係する「LIS1」というたんぱく質が健常者の半分しかなく発症する。遺伝性の疾患で、LIS1を作る遺伝子がうまく働かないのが原因。国内では新生児約1万5000人に1人の割合で発症する。



滑脳症:知能障害、てんかん伴う病気 酵素の働き抑える薬で、治療に光明

 遺伝子が欠けていることで起きる先天性の病気「滑脳症」について、大阪市立大の広常真治教授(分子生物学)と山田雅己講師らが、関係する酵素を発見し、この酵素の働きを抑える薬で症状を緩和できることをマウスの実験で確認した。治療法につながる成果という。米科学誌「ネイチャーメディシン」に7日、論文が掲載される。

 滑脳症は「LIS1」という遺伝子が欠けていることによって起き、発症は新生児1万5000人に1人程度。この遺伝子が作り出すたんぱく質が不足することで脳の神経細胞がうまく発達できず、通常6層の脳構造が4層になり、表面のしわができない。知能障害やてんかん、まひを伴い、治療法はない。

 広常教授らは、「カルパイン」と呼ばれる酵素が、この遺伝子が作るたんぱく質を分解することを確認。遺伝子操作で滑脳症にしたマウスの胎児に、母親の腹腔を通してカルパインの働きを抑える薬剤を注射で投与。すると胎児の脳構造が回復し、運動能力も通常のマウス並みになった



 胎児の段階から薬剤を注射すれば、脳機能が正常になると。先天性の異常であっても、このように早期から治療を行えばほぼ正常に育つケースは多くみられます。今まで治療不可能だった疾患の治療法を確立するというのは並大抵のことではありません。新生児1万五千人に一人というと、結構な頻度ですからね。

滑脳症

 滑脳症(lissencephaly)は、脳の表面に脳回がなく平滑であることを特徴とする発達障害疾患。2つの遺伝的タイプにわかれ、17番染色体上のLIS1遺伝子に異常を有する常染色体優性遺伝病とLISX 遺伝子に異常を有するX連鎖劣性遺伝病がある。前者はLIS1遺伝子領域を含む染色体領域が欠失していることが多く、その場合特有な顔貌を呈するため、Miller-Dieker症候群(MDS)と言われる。欠失は染色体FISH法で迅速に診断できる。突然変異による散発例が多く、次子に遺伝する可能性がほとんどないため、出生前診断を必要とすることはまずない。

 表面に脳回がなく平滑というモ滑脳モ所見は、通常MRIやCT検査で明らかにされる。MDS特有の顔貌所見とは、小頭、前額突出、前額性中部の背員上の隆起の陥凹(啼泣時に顕著となる)。精神遅滞は重度で、難治性のけいれんもほぼ必発。筋緊張ははじめ低下しているがのち亢進する.生命予後は不良。臨床症状は2つの遺伝的タイプ間でちがいはそれほどないが、脳回の平滑化領域は、LIS1が後頭部を中心に、LISXが前頭部を中心に見られる。

 病理学的所見としては、当初より、正常6層である灰白質が本症患者では4層しかみられず、発生の段階で脳室部から外側に向けて行われる神経細胞の遊走に異常があると推定されていた。微小欠失領域に存在し、転座例の切断点にも一致した遺伝子LIS1において複数の滑脳症患者が変異を有することが判明し、この遺伝子が本症の責任遺伝子であると確定した。

 本症患者はこの遺伝子領域の欠失もしくは変異で、正常産物が半量 しかつくられていない。したがって、正常な脳の発達には半量では不十分であることが明らかとなった。この機序として、LIS1蛋白がG蛋白のベータユニットをコードすることから、LIS1の異常によりG蛋白の多量 体構成に異常が生じるためと考えられている。
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2009年09月07日

雰囲気に流されやすい人は、右脳の部位の働きが弱い

流されやすい人は、右脳の働きが弱いようだ

 常識や雰囲気に流されやすい人は、論理的に考える際に活発になる右脳の部位の働きが弱いことが、慶応大の辻井岳雄准教授(認知神経科学)らの研究で分かった。

 研究チームは、大学生ら48人を対象に、「鯨は哺乳類。哺乳類は歩ける。よって鯨は歩ける」のように、常識ではありえないが、三段論法では正解となる問題を50問出題。同時に、右脳前部の「下前頭回」と呼ばれる論理的思考をつかさどる部位の働きを調べた。

 その結果、三段論法の問題の正答率が高いほど下前頭回の働きが強い傾向があり、100点だった人は、20点ほどの人に比べ、下前頭回が4倍近く活発に働いていた。

 研究チームは「下前頭回の活動の弱い人は、論理的な思考より、常識や雰囲気に流されやすい傾向がある」と分析している。



 色々な人と接していると、何でそんな考え方なの?という方が多くおられます。その人にとっては普通なことでしょうけれど、やはり思考力の差というか、考え方の違いでコミュニケーションにも齟齬が出てくる、というケースは多いのではないかなと。

 それも、脳の機能的な問題が解決すれば、もしかすると解決するのかもしれませんね。いや、解決する必要がないのか。そういう違いがあるんだということを意識しながら生活するのが一番得策なのかも。
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2009年09月03日

音痴は脳神経の回路の異常が原因で起こる。

音痴は脳神経の回線が理由〜最新調査から

 脳神経回路の問題が音痴の原因であることが、最新調査で明らかになった。

 USAトゥデイによると、ハーバード医科大学で音楽と脳を研究するサイキ・ルーイ氏らが調査を実施、「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」誌上で報告した。

 音痴とは、聴覚や会話には問題がないが、音程がわからない人々を指す。音痴は遺伝し、全人口の4〜17%存在するとされる

 ルーイ氏らがボストンで、10人の音痴の人を含む20人を対象に脳スキャンを行ったところ、特定部分の神経回路に違いがあることがわかった。音痴の人の場合、音声の受信や発信に関連する、脳の前頭部と側頭部を結ぶ神経回路が、音痴でない人に比べ少なかった。なかには神経回路がまったく見つからない人もいた。

 ルーイ氏はこれを、脳内の2つの島を結ぶ高速道路にたとえて、音痴の人の場合「高速道路の交通量が少ない」と表現している。

 今回調べた神経回路は、言語能力に関係することが以前から知られている。ルーイ氏は調査をさらに進めることで、音痴の人や、言語能力に障害がある人々の一助になる可能性があると見る。



 音痴ってやっぱり聴覚を通して情報処理してるところがおかしいんですね。情報は入っても言葉としてうまく表せない失語に似ているかも。

 でもたしか改善する方法はあったような?

 ピアノやってる人は絶対音感が身につくらしいですけど、すごくピアノうまい人でも音痴な人がいるというのは、鍵盤を叩くことと歌うことは違うから、らしいですわ。

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2009年07月19日

脊髄損傷部位に青い光を当てると回復する。

青い光当て脊髄損傷回復 名古屋市大が発見

 損傷したラットの脊髄神経細胞に青い光を当てると、細胞の成長を促すタンパク質が増えて損傷部分が回復することを、名古屋市立大大学院医学研究科の岡嶋研二教授と原田直明准教授(ともに血液学)が発見した。

 「運動まひや認知症などの治療への応用が期待できる」(岡嶋教授)という。9月に名古屋市で開かれる日本神経科学大会で発表する。

 ラット10匹の脊髄を傷付け、うち5匹に波長470ナノメートル(ナノは10億分の1)の青い光を毎日20分間、3週間にわたり当て続けたところ、歩行可能なレベルまで回復。光を当てなかった残る5匹はまひしたままだった。

 何もしないラットに比べ、光を当てたラットの神経細胞はサイズが大きくなっており、細胞を分析すると、成長を促すタンパク質「インスリン様成長因子1(IGF1)」が約1・7倍増えていることが判明。

 岡嶋教授らは、青い光の刺激でIGF1が増えたため細胞死が抑制された一方、幹細胞の分化や若い細胞の成長が促されたと結論付けた。

 岡嶋教授は、体の一部としてもともとある細胞の成長を促す今回の方法は「移植より安全な治療法につながる可能性がある」としている。



 青色LED。

 光刺激だけで神経が成長するというのは何とも不思議な感じ。これは実際直接あてないと効果ないんでしょうかね。そこらへんの難しさはあるか。

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2009年07月08日

脳や脊髄の神経が切れるのを防ぐ遺伝子を発見する。

神経切断防ぐ遺伝子、アルツハイマー防げる?

 脳や脊髄の神経が切れるのを防ぐ遺伝子を東京大学と理化学研究所、九州大学の共同研究チームが発見した。

 パーキンソン病などの治療に応用できると期待される。成果は29日付の科学誌ネイチャー・ニューロサイエンスに掲載される。

 人間の脳は、1000億個以上の神経細胞が結びつき、複雑な回路を構成している。赤ちゃんのころはいろいろな細胞同士が結合しているが、情報伝達の効率を上げるため、不要なつながりは切断されていく。

 だが、必要な神経まで切れてしまうと、パーキンソン病やアルツハイマー病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの発症につながる場合があるとされる

 同研究所の林悠研究員らは、モデル動物の線虫を用いて実験。「Wnt」と呼ばれる遺伝子が、必要な神経を切断から守っていることを突き止めた。



 この遺伝子に対する治療法がみつかれば、難病とされている神経疾患が劇的に治る可能性も。まさに夢のような発見です。

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2009年07月01日

脳内の長期記憶のメカニズムを映像撮影することに成功

◇国際研究チーム、脳内の「記憶」の映像撮影に成功

 脳内の「記憶」を映像として撮影することに成功していたことが18日、カナダにあるモントリオール神経学研究所(MontrealNeurological Institute)の発表により明らかとなった。

 モントリオール神経学研究所研究を中心とするグループは、脳内の神経シナプスで記憶が形成される際に新しいタンパク質が形成され、それによってシナプス同士の結合が強化され記憶が形成されることに注目。

 その上で蛍光タンパク質(fluorescent protein)を使い、神経シナプス内の新しいタンパク質の形成を映像化する試みに着手し、見事に成功した

 研究グループでは、脳内の長期記憶を映像として撮影することができたのは今回の実験が史上初、とした上で、長期記憶の形成過程を映像としてトラッキングしていくことにより、長期記憶が脳内でどのように形成されるか、より詳細に把握することができるようになるだろうと述べている。



 形成過程を映像化。記憶を映像化するわけではありませんけれど、これでも十分凄いことです。

 どんな人であれ、記憶力は良くなりたいと願っています。しかし人によって記憶の仕方が違うという謎もありますからね。映像記憶、画像記憶などの特殊能力もありますし(羨ましい限りです)

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2009年06月26日

人の上皮幹細胞で、脊髄損傷のラットを回復させることに成功

聖マリアンナ医大、人間の上皮幹細胞用い脊髄損傷したラットの歩行回復

 聖マリアンナ医科大学の井上肇准教授、武永美津子准教授らは、人間の上皮幹細胞を用い、脊髄を損傷したラットを歩行できるまで回復させることに成功した。脊髄を傷つけてから8日後に、培養した上皮幹細胞を損傷個所に投与したところ、投与後約1週間でおぼつかないながらも歩けるようになった。今回の成果により、中枢神経再生への新たなアプローチが切り開かれた。

 脊髄を傷つけたラット5匹に対し、細胞数を調整した溶剤を投与した。その2日後から運動機能の改善を確認。さらに、投与してから1週間後には、何も治療をしなかったラットと比べ、5匹すべてにおいて有意に運動機能の回復が見られた。



 おおお。理論的にはなんとなくイメージできていたことですけれど、実際に成功するとなると話が違いますね。損傷箇所に投与することで中枢神経も再生可能に。

 人間でも出来るとは思いますが、やはり臨床応用はあと1年ぐらいかかるんでしょうか。損傷してすぐのほうが効きやすい気はしますけれど、実際はどうなのか。1年ぐらい経ってからでも中枢神経の再生が出来るとなれば社会的にも救われる人は大勢いるでしょう。
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