昨年10月に脳梗塞の特効薬として承認された薬剤「tPA」について、この1年間に48人が脳出血など副作用が疑われる症状を起こして死亡し、うち5人は使用基準で使ってはいけない状態だったことが、製薬会社2社の集計で分かった。
tPAは血管に詰まった血の塊を溶かす血栓溶解剤。救命救急のぎりぎりの状態の患者に使われ、発症3時間以内の脳梗塞に有効性が認められている。ただ、出血しやすくなる副作用があり、使用基準は厳しく定められている。
昨年10月の承認後、今年10月10日までに3200人に使用されたと見られているが、488人で脳出血など副作用とみられる有害事象の報告があった。亡くなった48人では、脳出血が29人で最も多く、次いで脳浮腫が5人だった。いずれも厚生労働省に報告している。
血圧が高く使用基準に合わないなど、本来は使ってはいけなかった事例での有害事象が41件あり、そのうちでは5人が亡くなっていたという。
同省安全対策課は「慎重に使ってもらうため、従来から適正な使用を推進している。異常な事態とは見ていないが、引き続き努力する」としている。
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薬による副作用でしょうね。tPAは効果的な薬でして、一年前に保険適用となりました。欧米に比べて10年も遅かったようです。元々この薬の副作用は分かっていたんですが、それをないがしろにして多用してしまったことが問題の根底にありそうですね。専門的知識を持たずに「脳梗塞にはtPA」という形で投与してしまうと、脳出血などに繋がりますので、正しく使いましょう。
参考:脳梗塞に新薬 tPA
まず使用量の1割を静脈注射で急速に投与した後、残る9割を点滴で1時間かけてゆっくりと投与する。米国の脳梗塞治療の指針は、発症後3時間以内(超急性期)に、この方法を最優先すべき治療法として勧めているほか、世界約40か国で認められている。
日本でも1990年代初めに臨床試験(治験)が始まったが、薬の特許を巡って日米企業間で訴訟紛争が起きて中止。そのあおりで、日本は世界の流れから取り残されていた。この薬は心筋梗塞治療としては既に承認されていたが、今回ようやく脳梗塞についても追加承認された。欧米に約10年遅れだった。
国内の治験では、脳梗塞の発症後3時間以内にtPA治療を行うと、3か月後に、ほとんど後遺症なく社会復帰できた割合は37%だった。米国での治験もほぼ同じで、社会復帰の割合は処置しない場合より5割高かった。
全員に効果があるわけではないうえ、副作用もある。tPAの早期承認を訴えてきた日本脳卒中学会理事で札幌医大名誉教授の端和夫さんも「血栓を溶かすtPAは、脳出血を起こしやすくする。使用の際、医師は細心の注意が必要だ」と指摘する。
発症から長時間たった後にこの薬を使うと、脳出血の恐れが高まり、効果も乏しくなる。そこで、治療の対象は▽発症後3時間以内▽CT(コンピューター断層撮影)検査で、脳出血の危険性が低いことを確認――などの場合に限られている。
患者・家族にとって重要なのは「脳梗塞を起こしたら、3時間以内に病院で治療を受ける」ことだ。だが、国立循環器病センターの調べでは、発症後3時間以内に受診した患者は19%しかいない。脳梗塞と気づくのが遅れた、救急車を呼ばず自力で来院した、などが原因だった。
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