顔面移植のフランス人女性患者の経過は良好 世界初の顔面部分移植手術を受けた38歳のフランス人女性についての経過報告が、米医学誌「New England Journal of Medicine」12月13日号に掲載された。
術後18カ月が経過した今、女性には笑顔もみられるようになったという。
患者のIsabelle Dinoireさんは、2005年5月に飼い犬に襲われ鼻、上下の唇、顎および両頬の一部を失い、2005年11月27日、フランス、アミアンの病院で医師Jean-Micheal Dubenard氏らのチームにより、血液型が同じで脳死した46歳女性からの鼻、唇および顎の移植を受けた。
患者は、手術から48時間後、唇を動かして口を閉じる運動などの理学療法を開始したほか、心理学的サポートを受けた。術後1週間で、ほぼ通常通り飲食ができるようになり、口からの漏れも年内には解消されたという。軽い触覚および熱さや冷たさの感覚も回復。運動機能の回復には時間を要したものの、術後12週で上唇の一部を動かすことができ、4カ月目には下唇も動かせるようになった。さらに、術後10カ月で完全に口を閉じることができ、単語を発音する能力も改善した。術後10カ月ではまだほほ笑みにゆがみがみられたが、18カ月目には正常になったという。拒絶反応や感染性合併症もみられたが、
いずれも回復した。
報告によると、術後4カ月目には、患者は外の世界に顔を向けることができるようになり、徐々に通常の社会生活を再開。現在では、外出やパーティーなどで人に会うことも怖くなくなり、審美的にも機能的にも十分に満足していると話しているという。
しかし、この手術は当初からさまざまな物議も醸した。犬にかまれた日、患者は過剰服薬により自殺を図っていたとする情報もあるほか、医師Dubernard氏についても、チェーンスモーカーで有力政治家としての面もあり、過去に実施した移植では批判も報じられた人物である。
米マイアミ大学助教授のDavid Arnold博士は、この患者には将来的に皮膚癌などの問題が生じるリスクが高いだろうと指摘。同大学のSeth Thaller博士は、こういった先駆的な取り組みでは、常にどこまでやるのかという問題がつきまとうが、その答えは時間が経過しなければわからないと述べている。
この手術のほかに、すでに2例の顔面移植術(2006年中国、2007年フランス)が実施されているというが、
症例に関する情報は得られていない。米クリーブランド・クリニックでは、顔面全面移植術の許可を得ているが、現在は患者の選抜、拒絶反応に対する治療の研究およびドナー探しに取り組んでいる段階だという。
患者のQOLを高めるためには必要な手術でしたし、実際に成功して様々な機能が回復したことは非常に喜ばしいことだとは思います。
しかしまぁこの手術については、患者側にも医師側にも、色々なスキャンダルのようなものが飛び交いました。日本だったらここまでおおっぴらにはならなかったのではないでしょうか。結果的に患者も医師も色々報じられてしまったようですが、まぁ仕方ないといえば仕方のないことです。それだけ顔面移植というものにはインパクトがついてまわるものだ、と…。
でも自分の顔がなくなったら、そりゃやりますよね。この患者さんも、色素的に少し違和感はありますが、綺麗に治っています。それだけの技術があるわけですから、その人の「人生」を考えたら、、、ねぇ
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