iPS細胞関連、注目すべき発表が相次ぐ…国際幹細胞研究学会 国際幹細胞研究学会が11〜14日、米フィラデルフィアで開かれた。
京都大の山中伸弥教授らが人の新型万能細胞(iPS細胞)の作製を報告してから半年、iPS細胞関連を中心に注目すべき研究発表が相次いだ。
「今年は、シンヤマニア(伸弥に熱狂)の大会だ」。山中教授らiPS細胞作製に成功した5グループの代表が出席した公開パネル討論。進行役を務めた学会長のジョージ・デイリー米ハーバード大准教授はこうおどけてみせた。
実際、学会では、iPS細胞の効率的な作製法、病気の仕組み解明の研究が目立った。独ボン大のグループは、山中教授らのiPS細胞の弱点とされるがん化を防ぐため、染色体の損傷をなくす方法に迫り、発表者を研究者が何重にも取り囲んだ。
米カリフォルニア大サンディエゴ校やボストン小児病院のグループなどは、医療応用を目指し、パーキンソン病などの患者の細胞からiPS細胞を作製したと発表した。
山中教授とともにiPS細胞を研究する高橋和利・京都大助教は「
日本では患者の細胞でこれから研究を始める段階なのに、こんなに新しい研究が出ているとは」と、激化する競争に厳しい表情を浮かべた。
iPS細胞が幹細胞の主役に躍り出たのは、iPS細胞作製法が、遺伝子治療など他分野へも大きな衝撃を与えたからだ。
成熟し分化しきった細胞を受精卵に近い状態に戻す「リプログラミング」(初期化)は、かつては卵細胞へ核移植するクローン技術しかないと考えられていた。この説を覆したのが、iPS細胞の成功。わずか3〜4遺伝子を入れるだけで可能なことを証明した。
遺伝子の組み合わせを変えて初期化を導く研究も進むが、今回、最も話題を集めたのは、米ハーバード大の研究だ。
3種類の遺伝子で膵臓の外分泌細胞を、インスリンを分泌するベータ細胞に変えることに成功。胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞も使わず、体細胞を初期化した成果は、
直接神経や肝臓などの細胞を作れる可能性を示した。
スタンフォード大のアービン・ワイスマン教授は「細胞そのものを狙い通りに作り変える『ダイレクト・リプログラミング』」と評価した上で「このアイデアをもたらしたiPS細胞は我々が長い間探し求めていた最も大切な発見」と山中教授も絶賛した。
研究の進歩を上回る期待が世界中に広まる反面、
治療を目指す臨床研究が進まないことに戸惑いの声も上がった。学会の作業部会では、研究方法や動物実験の評価法などを定めたガイドラインを年内にも策定して公表する方針だ。
「
あまりに研究の進歩が速くてまとめが追いつかない。考えてみて下さい。2年前にはiPS細胞もなかったのだから」。作業部会のジュリオ・コッス伊サンラファエレ科学研究所ディレクターがこう漏らすように、まさに世界中の研究は加速している。
iPS細胞の研究をしている全世界の研究者は、今まさに時間すらも惜しいほどの絶頂期でしょうね。ホント、エキサイトしながら仕事してそうです。年齢的にも世間では中年と呼ばれているような年代でしょうけれど、それでも人生を最高に楽しく生きている。羨ましい限りです。
全世界で白熱した研究合戦が繰り広げられているのですから、それをまとめるのも至難の業ですね。しかし確実に一歩一歩進んでいますので、あと2,3年もすれば医療もガラリと変わる、かもしれません。
我々は彼らを暖かく見守りつつ、期待して待つとしましょう。
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