2010年09月01日

本人の意思不明での脳死臓器移植、5例目へ。

本人意思不明で5例目の臓器提供 40代女性

 1日未明、本人の書面による意思がない40代の女性が脳死と判定されました。家族の承諾による脳死判定は5例目です。

 日本臓器移植ネットワーク:「日ごろからとても人に優しい人だったので、臓器提供は本人らしい」

 脳死判定を受けたのは、九州北部の病院に入院していた40代の女性です。臓器の摘出手術は2日未明から始まり、心臓が国立循環器病センターで20代の男性に移殖されるほか、肺は東北大学病院、腎臓は名古屋大学医学部附属病院に運ばれて移殖されます。

 臓器移植ネットワークによると、女性は書面での意思表示をしていませんでしたが、以前から家族に「万が一の場合は臓器提供したい」と話していたということです。家族の承諾による脳死判定は、改正臓器移植法が施行されてから5例目です。



 ご冥福をお祈り申し上げます。同時に、承諾してくださった家族に感謝です。
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2010年08月20日

法改正後の脳死臓器移植2例目、家族の同意のみで実施

本人意思不明で脳死判定 「体の一部生きていればうれしい」

 日本臓器移植ネットワークは19日、近畿地方の病院で脳死状態になった18歳以上の男性について、家族が脳死判定と提供を承諾し、法的に脳死と判定されたと発表した。男性は文書による臓器提供の意思表示をしておらず、家族は「臓器提供について本人と話をしたことはない」と説明しているという。7月の改正臓器移植法施行以降、同法に基づく家族承諾による脳死判定は、今月9日に関東地方の病院で判定された20代の男性に次ぎ2例目。

 移植ネットによると、男性の家族は「もう助からないのであれば、どこか体の一部が生きていればうれしい。元気な体なので、たくさんの人の役に立ってほしい」と話していたという。男性の年代や、死因、提供病院などについては家族の希望で公表されていない。

 男性が提供を拒否していないことについて、移植ネットは、意思表示カードを持っていないこと、健康保険証、運転免許証に記載がないことなどで確認したとしている。

 移植ネットによると、男性の家族は17日夜に臓器移植について移植コーディネーターの説明を受けることに同意。18日昼ごろ、脳死判定と臓器摘出の承諾書にサインをした。

 1回目の法的脳死判定は18日午後7時40分に始まり、同9時4分に終了。2回目は19日午前3時4分に始まり、同4時24分に終了した。臓器摘出手術は同日午後2時50分ごろに始まる予定。

 移植ネットは登録された待機患者の中から優先度の高い患者を選定する。心臓は東京大病院で40代男性に、両肺は大阪大病院で20代男性に、肝臓は京都大病院で40代男性に、一方の腎臓は神戸大病院で60代男性に、もう一方の腎臓と膵臓は名古屋第二赤十字病院で30代女性に移植する方向で調整している。家族はほかに眼球と小腸の提供を承諾していたが、小腸は医学的理由で移植が断念された。



 早くも2例目。法改正による脳死臓器移植が当たり前のものとなって、ニュースで取り上げられるほどではない「当たり前の医療」になる日もそう遠くはないか?

 それにしても家族の英断には感銘を受けます。まだ2例目だというのに、誰かのためになるのなら、と決断して下さった。ありがたいです。ご冥福をお祈りすると共に感謝の意をレシピエントに代わって申し上げます。
posted by さじ at 14:01 | Comment(2) | TrackBack(0) | 移植

iPS細胞、ミオシンの影響で「死の舞」を踊る。

ヒト万能細胞、たんぱく異常で「死の舞」 理研が解明

 ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)などヒトの万能細胞は、一つずつにばらして培養すると99%が死ぬ。この「細胞死」の仕組みを、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターが解明した。細胞の形を保つたんぱく質が過剰に働き、細胞が踊るように動く「死の舞」をして死滅した

 細胞死については特定の酵素の働きを抑えると細胞死を3割程度に減らせることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。

 理研の研究チームがヒトES細胞を観察したところ、ばらした直後、細胞の周りが膨らんだりしぼんだりしながら激しく動き、数時間後に破裂して死んだ。「死の舞」は、細胞の形を保つたんぱく質「ミオシン」が過剰に働くことが原因。細胞をばらすと酵素が働き、ミオシンが過剰に活性化され「死の舞」が現れ、細胞死するという

 一方、「死の舞」をしない細胞は腫瘍になる確率が5倍程度高かった。「死の舞」は正常な細胞に備わっている特徴という。笹井芳樹・器官発生研究グループディレクターは「安全な細胞を選ぶ目安になる」と話す。6日付の米科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。



 さすが理化研。

 iPS細胞も、細かいところまで判明してきましたね。

 臨床的に使うには、やはり安全性が確保されていないといけませんし、こういう研究はホント大事だと思います。
posted by さじ at 13:09 | Comment(1) | TrackBack(0) | 移植

2010年08月16日

東大&慶應大でサルでの子宮移植に成功する。

子宮移植、サルで成功 人への応用視野 東大・慶大など

 東京大や慶応大などの研究チームが、サルの子宮をいったん体外に出した後、移植し、再び体内で働かせることに成功した。28日、横浜市で開かれた日本受精着床学会学術講演会で発表した。サルで実験を重ね、将来は先天的に子宮がない女性や、がんで子宮摘出した女性も出産できるよう人での子宮移植を目指す

 研究チームの三原誠東京大助教らは、今年1〜2月、カニクイザル2匹を開腹して子宮を取りだし、約2時間後に元のサルにそれぞれ移植した。1匹は現在も元気で、移植後すでに2回、月経があり、子宮が機能していることが確認できた。もう1匹は移植の翌日、死んだ。

 カニクイザルは体重3.5キロと小さいため、子宮周辺の細い血管を結合する手術が難しかったが、最近開発された髪の毛の50分の1〜30分の1の細い手術針を使い、血管の結合に成功した。今後、子宮を移植したサルに体外受精させて胎児が育つか検討するほか、他のサルの子宮を移植できるかどうかなども調べる。

 人の子宮移植は、サウジアラビアで2002年に例があるが、血管の結合部に血栓ができ移植した子宮が機能しなくなったという

 三原さんは「初めて霊長類で成功したことで、人間への応用の可能性がでてきた」としている。



 先天的に子宮がない人というのは案外います。欠損していることもあれば、遺伝子的に子宮が出来ていない人、などなど。

 もしくは後天的に疾患によって子宮を取らざるをえない人もいるでしょう。

 しかしやはり子どもを生みたい、という方は多い。それを可能にする子宮移植。難しい技術ですが、可能になる日も近いかもしれません。
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2010年08月10日

交通事故の20代男性、初の改正脳死臓器移植が行われる。

【口頭意思で臓器移植】「大事なのは家族の納得」

 「万が一の時は臓器提供して」。改正臓器移植法で初の脳死臓器移植が実施される見通しとなった。交通事故で脳死となった20代の男性は、家族に臓器提供の意思を伝えていた。本人の書面による意思表示がなく、家族の承諾だけで行われた脳死判定。日本臓器移植ネットワークが提供に至る説明を控える一方、医療機関は「失敗は許されない」と緊張した様子で準備を進めた。家族の心理的負担が心配される中、移植医療は新たな一歩を踏み出した。

 男性は臓器移植の意思を家族に口頭で表明していたというが、会見した移植ネットの小中節子医療本部長は、その時期や家族の誰に意思表示をしたのかなど詳細は明らかにしなかった。

 石川県の臓器移植コーディネーター、山口裕美子さんは「大事なのは、家族の方が納得できるような結論を出すこと。家族は本人が意思表示カードを持っていたとしても、『本当に提供の意思があったんだろうか』という気持ちになる場合がある」と語る。

 家族が後に苦しまないようにするためにも、提供を拒否する意思を見落とさないことが重要だという。

 家族の臓器を提供した経験を持つドナー家族の思いは複雑だ。平成9年に長女、朝子さん=当時(24)=を交通事故で亡くし、ドナー家族となった間沢容子さん(64)は「娘の強い意思があったから提供を決断できたが、もし娘の意思が確認できていなかったら提供しなかったかもしれない」と話す。朝子さんは交通事故に遭う前から、手紙や電話で「移植でしか助からない人がいる。私にもしものことがあれば提供してほしい」と両親に意思を伝え、ドナー登録もしていたことが背中を押したのだという。

 一方、今回、男性が提供する臓器を受け入れる医療機関では緊張感が高まっている。

 肺移植を予定している岡山大病院の執刀予定の大藤剛宏講師(呼吸器外科)は「家族が大きな判断をした。移植を成功させ、次につなげたい」と意気込みを話した。



 今日の朝ぐらいに、臓器がレシピエントのもとへ到着する見込みです。今頃はレシピエント側の手術をしているのではないでしょうか。

 法律改正により、脳死臓器移植はどう動いていくのか。日本人の精神がより高みへいくことを、切に願ってやみません。命を繋いで下さい。
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2010年07月23日

iPS細胞に、もとの細胞の性質が残る可能性もある。

材料の性質が残る場合も=iPS細胞、マウスで確認−米チーム

 増殖能力が高く、身体のあらゆる細胞に変わる万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」は、血液細胞から作った場合は血液に変えやすいなど、材料の体細胞の性質が残る場合があることがマウスの実験で確認された。米ハーバード大などの研究チームが20日、英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 特定の細胞に変えて再生医療や新薬開発試験に使う場合、この傾向は便利だが、さまざまな種類の細胞に変えて幅広く利用する場合は、材料の体細胞の性質をほぼ完全になくす工夫が必要という。

 iPS細胞は、血液や皮膚、神経、内臓など多様な体細胞が材料となる。山中伸弥京都大教授らが開発した3、4種類の遺伝子をウイルスなどを使って導入すると、細胞が特定の役割を果たすように遺伝子群を制御していた「メチル化」という作用が解除され、受精卵に近い状態に初期化されると考えられてきた。



 iPS細胞の定義というか、存在意義にも抵触しかねん研究結果です。

 これを無くさないことには使えない・・・とまではいきませんけれどね。むしろ早期の臨床応用のためにはこの研究結果を踏まえた上で、iPS細胞を作る場所を選択するべきか。
posted by さじ at 18:45 | Comment(1) | TrackBack(0) | 移植

臓器移植法改正。そして施行へ。

改正移植法施行 家族で事前の意思確認を

 ドナー(臓器提供者)を増やすために改正された臓器移植法が施行された。世界的なドナー不足のなか、この改正移植法を有効に活用し、臓器移植でしか命が助からない患者を一人でも多く救っていきたい。

 13年前に施行された旧移植法は、家族の同意に加え、ドナー本人の生前の意思が確認できないと、脳死下での心臓や肝臓、肺などの臓器が提供されないという厳しい条件が付いていた。その結果、脳死移植は年間平均7件ほどしか実施されてこなかった。

 改正移植法では欧米と同様、ドナー本人の意思が不明な場合や提供を拒否していないときは、家族の同意があれば提供できるようになった。提供の意思が表示されたドナーカードを持っていなくとも提供者になれるわけだが、その分、家族の負担が重くなった。

 だからこそ、脳死についてどう考え、臓器提供をするのか、それともしないのか、自分の意思を伝えるなど日ごろから家族みんなで話し合っておく必要がある。日本臓器移植ネットワークの移植コーディネーターから説明を受け、臓器提供の判断で家族を悩ませないようにしたい。家族は、突然の悲報に冷静な判断が難しい状況に置かれがちであるからだ。

 これまでのように自らの意思をドナーカードに示したり、運転免許証や健康保険証に新たに設けられる欄に記入したりしておくことも忘れないようにしたい。家族の判断で提供できるとはいえ、本人の意思がはっきりしていればそれにこしたことはない。

 日本は子供への移植を欧米ドナーに頼ってきたが、家族の同意で提供が可能になった結果、15歳未満の子供からの臓器提供ができるようになった。これは改正移植法のもうひとつの大きな柱だ。

 ただ、大人のドナー以上に家族は判断に悩むことになろう。十分な配慮が求められる。厚生労働省は子供の脳死判定や虐待の問題に対して指針をまとめているが、きちんとした運用が必須だ。

 今年4月、日本移植学会などが全国の男女1000人に実施したアンケートによると、改正について「内容を含めて知っている」と回答したのは、わずか3・8%だった。厚労省や移植ネットによる周知が不足しているためだ。ドナーを増やす法改正を意味あるものにするため、啓蒙活動に力を入れてほしい。



 日本に変わってほしいです。

 そもそも本来、臓器移植に対する募金やらで多くの人が協力している日本で、自分や家族の臓器提供に関してあまり話されていないのが疑問です。

 普通は家族でどうするか話し合いますよね。私の家族が臓器をどうするかという意思確認はもう10年以上も前に話したものですけどね。

 すぐそこにある現実に対して、家族で話し合うぐらいの良識とハイソサイエティな環境で子供を育てたいものです。
posted by さじ at 18:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 移植

2010年07月06日

小児心臓移植に3施設が認定される。

小児心臓移植に3施設認定 17日施行の法改正に向け

 脳死者から提供された臓器の移植実施施設を決める移植関係学会合同委員会(世話人・高久史麿日本医学会会長)は5日、15歳未満の小児の心臓移植施設として東京大、大阪大、国立循環器病研究センター(大阪)の3施設を正式に認定した。大阪大と国立循環器病研究センターは、心肺同時移植施設にも選ばれた。

 17日の改正臓器移植法施行で、小児の心臓移植が可能になることに向けた対応。

 15歳以上の心臓移植施設は、新たに北海道大、埼玉医大国際医療センター、岡山大を認定。計9施設となった。

 肝臓移植施設は自治医大(栃木)、国立成育医療研究センター(東京)、順天堂大(東京)、金沢大、三重大、京都府立医大、神戸大、熊本大の8施設を新たに認定し計21施設。自治医大と国立成育医療研究センターは、過去の実績から18歳未満の患者に限定した。

 膵臓移植は、独協医大(栃木)と京都大が新たに認定され、計18施設。



 最近映画化した「孤高のメス」は、原作が小説ですが、その小説は、10年以上前の漫画「メスよ輝け」の原案を小説化したものです。

 「メスよ輝け」における医療者のスタンスとしての醍醐味は「中堅の市中病院でも能力と設備があれば肝臓移植を行える」というもの。確かに移植において、大学病院などの大規模病院に制限することが全てにおいて得策かというとそういうわけではないでしょう。難しいところではありますが。

 臓器移植の認定施設が増えるのはいいことです。技術的にはおそらくもっと色々な病院で出来るんでしょうけれどね。脳死臓器移植法改正に伴って、認定施設も今後増えつつあると思われます。小児心臓移植が3施設だけ、というのも難しい問題ですね。逆に言うと3施設だけで十分事足りるほどしか脳死臓器移植が増えない、ということなんでしょうか。なんか残念ですねぇ、考え方が。
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2010年06月13日

小腸と大腸の移植術で治療費高額化

募金で渡米・腸移植の女児、再募金へ 目標6000万円 容体安定せず治療費高額化

 米コロンビア大学プレスビテリアン病院で小腸と大腸の手術を受ける直前の古谷美香子ちゃん=平成22年4月(「美香子ちゃんを救う会」提供) 生まれつき腸が機能しない難病「ヒルシュスプルング病」を患い、募金により米国で小腸と大腸の移植を受けた古谷美香子ちゃん(1)=東京都渋谷区=の容体が安定せず、治療費が足りなくなったとして、「美香子ちゃんを救う会」は7日、都内で会見を開き、6千万円を目標額として、再度募金活動を行うことを明らかにした。

 救う会によると、美香子ちゃんは手術に必要とされた費用約1億1千万円が募金で集まったため、2月に渡米。4月に米コロンビア大学プレスビテリアン病院で小腸と大腸の移植手術を受け成功した。しかし、その後容体が安定せず肝機能も低下。2カ月にわたって集中治療室(ICU)から出られない状況が続き、治療費が想定以上に高額となった。

 その結果、すでに支払っていた保証金100万ドル(約9500万円)では治療費が足りなくなり、病院からは今月19日までに追加保証金など75万ドル(約7100万円)を支払うよう請求されたという。

 日本では来月に改正臓器移植法が施行され、15歳未満の子供からの移植が可能になるが、美香子ちゃんは法施行まで待てる状態になかったので、海外での移植手術を選択せざるを得なかった。美香子ちゃんの父、信一さん(33)は「術後の回復が思わしくないが、今、娘はICUで懸命に戦っている。再度のお願いとなり、皆様に申し訳ない思いでいっぱいだが、何とぞよろしくお願いします」と話した。

 募金の振り込みは三菱東京UFJ銀行西新宿支店・普通口座0028111「ミカコチャンヲスクウカイ」など。問い合わせは救う会事務局(電)03・3374・1108。



 1億以上募金で集まるということは、募金している人は臓器移植法改正に賛成ということですよね。

 法律改正以降、脳死臓器移植が増えなければおかしいような気もします。今後に期待ですかね。
posted by さじ at 01:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | 移植

2010年03月25日

幹細胞移植と抗てんかん薬で脊髄損傷のマウスが歩くことに成功

脊髄損傷マウス歩く…奈良先端大、幹細胞移植と抗てんかん薬で

 脊髄損傷の症状を、神経幹細胞の移植と抗てんかん薬の併用によって大きく改善させることに、奈良先端科学技術大学院大の中島欽一教授、あべ松昌彦研究員らがマウスの実験で成功した。後ろ脚のマヒしたマウスの7割が歩けるようになった。18日に広島市で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 神経幹細胞は、信号を伝えるニューロン(神経細胞)、そこに栄養を供給する細胞、神経を包むさやなどのもとになるが、脳や脊髄の損傷部では大半が栄養供給細胞になり、新たなニューロンはほとんど作られない。

 グループはこれまでに、抗てんかん薬として使われているバルプロ酸が、神経幹細胞のニューロンへの変化を促すことを発見した

 今回、脊髄の傷ついたマウスの損傷部に、遺伝的に同系の胎児マウスから採った神経幹細胞を移植し、バルプロ酸を注射すると、6週間後には21匹中、15匹が後ろ脚を使って歩けるまで回復した。幹細胞の移植だけでは後ろ脚は少し動くものの体重を支えられず、バルプロ酸だけでは、ほとんど動かないままだった。

 詳しく調べると、神経幹細胞を移植してニューロンに変化するのは1%以下だが、バルプロ酸を併用すると約20%まで向上。断裂した神経回路を、新たな複数のニューロンがリレーするように再建していた。



 幹細胞を移植するだけでなく抗てんかん薬を併用することで、ニューロンを変化させ、ここまで劇的に変わるものなんですねぇ。

 iPS細胞ジャンルの研究としても、今後大きく発展しそうな領域です。事故による脊髄損傷の治療法の確立として。
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2010年03月10日

臓器を提供したくなければカードを所持しましょう

提供したい臓器に○→したくない臓器に× カード変更へ

 7月に本格施行される改正臓器移植法の運用を検討する厚生労働省の臓器移植委員会(委員長・永井良三東京大教授)は8日、臓器提供についての意思表示カードを持つ人が、提供を希望する臓器ごとに「○」をつける現在の記載方法を変更し、「×」をつけられた臓器以外は提供に同意したと判断することにした

 改正法では、本人の意思が不明な場合、家族の同意だけで臓器を提供できるようになる。現在は、本人が提供の意思を意思表示カードなどの書面に残していることが必要だが、書面は必ずしも必要でなくなる。記載方法を改める背景には、法改正の趣旨を踏まえ、提供を拒む意思を明らかにした人以外は、すべての臓器の提供に同意していると見なす考えがある。

 提供を拒否したい人は従来と同様、拒む意思をカードで表明できる。約1億2千万枚配布された現行カードは改正法施行後も原則的に有効になる見通し。ただ、心臓が止まった後の臓器提供だけ同意している人が脳死になった場合などの扱いを今後検討する。

 厚労省は新しいカードの記載について3月中旬からホームページ上で意見を募る。

 一方、改正法施行で可能になる15歳未満からの臓器提供について検討している厚労省研究班長の貫井英明・山梨大名誉教授は、子どもが虐待を受けていたかどうか確認するため、脳死判定や臓器の摘出をする病院に虐待防止委員会を設置することが必要だと述べた。研究班は虐待を受けた子からの提供を防ぐマニュアルを作成中で、4月の委員会に提出する予定。



 何年も前から私が言っていたことが実現するようです。

 要するに「提供したくない意思を表示するためにもカードを所持しろ」ということ。

 まあ当然ですよね。

 むしろ今までも、提供したくなければカードを所持すべきなんですけども、何かこう、日本人は他人事というか、そ知らぬ顔してカードも所持していませんでしたし。

 これでカード所持率も増えるんでしょうかねぇ。
posted by さじ at 05:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 移植

2010年01月03日

万波医師と徳洲会、病気腎移植を再開する。

病腎移植再開 万波医師が記者会見 「捨てる腎臓の再利用であり、いいことだ」

 約3年半ぶりの病腎移植手術から一夜明けた31日、執刀医の宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師は記者会見でこう語り、病腎移植への決意を改めて示した。

 平成18年10月、臓器移植法違反容疑で愛媛県警に逮捕された患者の腎臓移植手術の執刀が発覚したことを契機に、学会などから医学的妥当性を否定され続けた万波医師。この日の記者会見には白衣姿で臨み、臨床研究第1例目となる病腎移植手術を実施したことを公表し、「患者の容体は問題ありません」などと移植の意義を強調した。

 病院によると、移植手術を受けた40代の男性患者は術後の経過は良好で、すでに集中治療室から一般病棟へと移り、早ければ3〜4週間で退院できるという。

 約3年半ぶりの病腎移植再開について、医療法人「徳洲会」の能宗克行事務総長は「修復腎移植で救われる患者さんがいる以上、今後もグループを挙げて全力で取り組む」と述べた。

 臨床研究は保険適用から除外されるが、今回の手術費用計約600万円は徳洲会が負担する。能宗事務総長は「修復腎移植に使える腎臓は年間2000件あるとも言われている。患者のため、(保険適用に向けて)移植関連学会も推進してほしい」と呼びかけた。



 病院側が費用を持つのか・・・。

 色々な場所から反対されて、しかし腎臓移植を望む人からは支持されて。信念を曲げず、研究として実行していく姿勢は立派です。

 結果的に転移がなかったとか、問題がないことを確認しないと日本全体では動けないんですかね?それまでの間の費用を病院に任せるというのは国として医療として何か違う気もしますけれど。

 散々叩かれても、患者のために頑張っている万波医師と徳洲会を応援します。
posted by さじ at 05:28 | Comment(2) | TrackBack(0) | 移植

2009年12月16日

タカラバイオ株式会社、iPS細胞の作成サービスを開始

タカラバイオ、ヒトiPS細胞作製受託サービス事業を開始

 タカラバイオ 株式会社は、研究者よりヒト細胞の提供を受け、当社がその細胞からiPS細胞を作製して研究者に提供するという、iPS細胞作製受託サービスを12月15日より開始します。

 当社が、研究者より提供を受けたヒト皮膚線維芽細胞に、iPS細胞誘導用レトロウイルスベクターとレトロネクチン(R)を用いて、iPS細胞誘導に必要な遺伝子を高効率に導入し、iPS細胞を誘導します。その後、2ヶ月程度かけ、1種類の細胞につき数個のiPS細胞クローンを取得し、ユーザーに有償提供します。後述の当社の新製品「Human iPS Cell Generation(R)All−in−One Vector」(以下「All−in−One Vector」)等を用いて作製したレトロウイルスベクター及びレトロネクチン(R)を利用することで、様々なヒト由来の皮膚線維芽細胞よりiPS細胞の作製を効率良く行うことができると考えています。

 iPS細胞は、創薬のスクリーニングや再生医療への応用が期待されていますが、作製されたiPS細胞には様々な「個性」があることが明らかとなっています。iPS細胞とES細胞との違いを含めたiPS細胞の特徴や性質に関する研究は、将来のiPS細胞の応用のための品質管理という観点からも、その重要性が増しています。これらの研究には、当社が平成18年から研究受託サービスを行っている高速シーケンサーが威力を発揮します。高速シーケンサーは、次世代シーケンサーとも呼ばれており、例えば1日当たり数億もの塩基配列情報が得られる強力な研究ツールです。

 当社では、京都大学 iPS細胞研究センター 山中伸弥教授から提供を受けたiPS細胞由来試料を用いてのChIP seq解析やマイクロRNA解析を試験的に実施して、iPS細胞の特徴解析に有効な方法であることを確認し、iPS細胞作製受託に加え、iPS細胞解析(キャラクタライゼーション)受託サービスの体制も整えました。



 研究用ですが、iPS細胞の作成を行ってくれるそうで。今年はiPS細胞ニュースに沸き起こりましたが、来年は更なる応用が期待できそうです。
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2009年12月12日

iPS細胞から精子や卵子を作る研究を解禁する

iPS細胞からの精子・卵子作製を解禁へ 文科省専門委が指針案

 さまざまな組織になる能力があるヒトの万能細胞「iPS細胞」や胚性幹細胞(ES細胞)などから、精子や卵子などの生殖細胞を作る研究を解禁する一方、そうして作った生殖細胞を受精させ、胚を作ることは引き続き禁止することを定めた指針案を、文部科学省の専門委員会が10日、まとめた。

 作った生殖細胞を受精させると個体を作ることにもつながり、倫理的問題が起きる恐れがあるとして、平成13年に策定された指針で禁止された。

 だが、不妊のメカニズムを解明する研究などには生殖細胞作製が有用と判断し、今年2月に文科省の部会が解禁の方針を打ち出していた。

 指針は一般からの意見募集や総合科学技術会議への諮問を経て正式に決まる見通し。



 研究として、これを解禁したのは賞賛すべきことです。使い方さえ誤らなければ、今後の医療の発展に大きく寄与することでしょう。
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2009年11月11日

人工的に免疫寛容を起こし、免疫抑制剤なしで臓器移植をする。

腎移植、拒絶反応抑える新手法 免疫抑制剤4分の1

 東京女子医科大と順天堂大が新しい手法の生体腎移植を実施したところ、移植後の拒絶反応を抑えるために患者が飲み続けなければならない免疫抑制剤が通常の4分の1の量に減らせ、近く使う量をゼロにできる見込みであることがわかった。免疫抑制剤の副作用が避けられる治療法として期待される。

 この治療法は、東京女子医科大の寺岡慧教授(腎臓外科)と順天堂大の奥村康教授(免疫学)らが大学の倫理委員会の承認を受け、昨年8月以降、20代から50代の希望者男女計9人に実施した。

 移植手術の前日に、患者と臓器提供者の双方から採血し、それぞれの血液から、免疫に関するリンパ球「T細胞」を抽出。両者を特殊な抗体とともに混ぜ、2週間培養してから、移植を受けた患者の体内に戻した。

 その後、患者の様子を見ながら免疫抑制剤を減らしていくと、早いケースでは、免疫抑制剤が通常必要な量の半分から4分の1にまで減らせた。このうち1人は合併症が出たため減量を中断したが、継続中の8人に拒絶反応は起きていない。免疫抑制剤を使うと出やすい特有のウイルス感染症も確認されていない。

 副作用は一時的な脱毛だけで、このうち1人は11月中にも免疫抑制剤を中止できる見込みという。臓器提供者が親子やきょうだいのほか、配偶者のケースでも、免疫抑制剤の減量は可能だった。国内で生体腎移植は年間1037件(07年)行われており、実用化できれば影響は大きい。

 臓器移植では、本来は細菌やウイルスから体を守る免疫が、移植された他人の臓器を「異物」とみなして攻撃する拒絶反応が起きる。これを抑えるのが免疫抑制剤だが、糖尿病や腎障害などの副作用がある。

 これまで、移植後にまれに免疫抑制剤が不要になる「免疫寛容」という現象が自然に起きることも知られていたが、しくみは不明だった。新治療法では人工的に免疫寛容を起こせると期待される。新手法は肝臓移植などにも応用が可能と考えられる。



 免疫トレランスを人工的に起こすことで、相手の臓器が自身の体、そして相手のリンパ球などが「馴染む」ようにできるようです。

 これが出来れば脳死臓器移植においても免疫抑制剤をあまり用いずに済むんでしょうか。大きなメリットを抱えたこの研究、全国で実用化されることを願っています。
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2009年11月07日

親族への臓器提供優先、心臓は除外するよう要望書を提出

親族優先提供、心臓は除外を―循環器学会が要望書

 日本循環器学会(理事長=小川聡・国際医療福祉大三田病院長)はこのほど、来年1月に施行される改正臓器移植法の「親族への優先提供」規定について、心臓移植を同規定の対象から除外するよう求める要望書を厚生労働省の「厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会」の永井良三委員長(東大大学院医学系研究科教授)にあてて提出した。

 要望書では、心臓は生体移植が不可能で、心臓の提供はドナーの死亡を前提にしていると指摘。親族への優先提供規定が施行された場合、自殺や自殺関与、同意殺人などを招く恐れがあると懸念している

 今年7月に公布された改正臓器移植法では、ドナーが書面で意思表示している場合、親族に対して臓器を優先的に提供できるとの規定が盛り込まれており、来年1月17日に施行される。

 法施行に向け、臓器移植委員会が親族の範囲や具体的な意思表示の方法などを検討している。心臓移植についても今後、同委員会の作業班の会合が開かれ、レシピエントやドナーの基準などについて議論が進められる見通し。



 確かに。心臓は1個ですからね。生体肝移植や生体腎移植と違って、死者から提供してもらうしか方法はない。

 そういう移植において、更に脳死の場合、親族に優先される、としてしまっては、確かに弊害も多いでしょうねぇ。親族優先システムそのものがちょっとメリットを決定しづらいんでなんともいえませんね。
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2009年10月17日

脳死臓器移植の親族への優先提供は認められるのか。

特定の親族への優先提供は認められるか―改正臓器移植法で議論

 改正臓器移植法の「親族への優先提供」規定の施行に向け、厚生労働省は10月16日、「臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班」(班長=新美育文・明大法学部教授)の第2回会合を開いた。この日の議論では、特定の親族に対する臓器提供の意思が示された場合に、その意思をどう扱うかが焦点となった

 前回の会合で「親族への優先提供」規定について示された検討課題は、▽表示方法▽表示内容▽親族の範囲▽親族の確認方法―の4点。このうち、表示内容と親族の範囲について意見交換が行われた。

 表示内容については、主に特定の親族に提供するとの意思が示された場合の取り扱いについて議論が行われた。神戸大大学院法学研究科教授の丸山英二班員は、ドナー本人の意思を生かすために、「特定の人が名指しされていたら、その人を優先すべき」と主張。一方で、上智大法学研究科教授の町野朔班員は、特定の親族が指定されていた場合、「一般的な親族優先提供の意思表示」があったと解釈すべきと述べた。また、東北大大学院法学研究科教授の水野紀子班員は、「死者の意思」は「偽造」が行われる可能性があるとして、特定の人の名指しを行うべきでないと強調した。

 このほか、優先提供が認められる親族の範囲については、国会審議で改正法の提出者が答弁した「親子と配偶者」に限定すべきとの意見が多数を占めたが、兄弟姉妹に対する優先提供が認められない点については合理的な理由が必要との指摘もあり、結論は次回以降に持ち越しとなった。

 次回の会合では、親族の確認方法についての議論が進められるほか、これまでの検討内容を踏まえた論点整理などを行う予定。



 いまいちこの親族優先という案の存在が分からないんですが。これってこういう案を設けておけば、今よりは楽に脳死臓器移植を受け入れられるだろうっていうことなんですかね?

 あまり実用性のなさそうなアレではあるような気がしますけれども…。

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2009年09月16日

iPS細胞の作成で、山中教授にラスカー賞が授与される。

山中教授にラスカー賞=iPS細胞作成に成功

 増殖能力が高く、身体のあらゆる細胞に変わることのできる万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」の作成に世界で初めて成功した山中伸弥京都大教授(47)に、医学分野で権威のある米ラスカー賞が授与されることが決まったと、14日京大が発表した。授賞式は10月2日(現地時間)、ニューヨークで行われる。日本人受賞者は6人目。

 京大によると、山中教授は分化した細胞を未分化な状態に戻す「細胞核のリプログラミング(初期化)」の過程についての研究を行い、新たな細胞研究の道を開いたことが受賞の理由。英ケンブリッジ大学のジョン・ガードン卿も同時に受賞した。

 山中教授は、「この分野の父であるガードン卿との共同受賞で大変光栄。これまで何十人、何百人という人たちの研究成果があって今の私がある。そういう気持ちを忘れずに今後も取り組んでいきたい」と話した。 



 山中教授、かっこよすぎです。

 世界的に見ても偉大すぎる業績を残しながら、謙虚な姿勢でいるというのは本当にかっこいい。こういう人が、優れた科学者として歴史に名を残すんでしょうね。

 次はノーベル賞か。

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2009年08月02日

パキスタンの貧困層の間で、腎臓を売る人々が後を絶たない。

売るのは子どもか、腎臓か パキスタン貧困層の苦悩

 借金を返すために、子どもを売るか自分の腎臓を売るか――パキスタン農村部の貧困層の間で、経済的に追い込まれ、厳しい選択を迫られる人々が後を絶たない。同国では最近、臓器売買を禁止する法律が成立したが、腎臓移植は法の抜け穴をくぐって続けられている

 モハメド・イクバルさん(50)は地主から借金の返済を迫られ、腎臓の提供を決意したばかりだ。すでに手術に備えた検査も済ませた。これで10―15万円を工面することができる。

 農場で働くラブ・ナワスさんは、約1年前に腎臓の摘出手術を受けた。結婚式の費用から妻と子ども6人の医療費まで、地主から借金を重ねた結果、「妻子を売るか、腎臓を売るか」の選択を強いられたという。

 「子どもたちを売り飛ばすくらいなら、腎臓を売るほうがましだった。金を返すためにはほかに道がなかった」と、ナワスさんは振り返る。腹部から背中にかけて、30センチほどの傷跡が残った。体力が落ち、手術前と同じ働き方はできなくなった。農場周辺の村には同じような傷跡を持つ人々がいくらでもいると、ナワスさんは語る。

 パキスタンはこれまで、臓器売買が横行する「臓器の市場」として知られていた。年間2000件の移植手術が行われ、このうち1500件は受け手が外国人。手術を目的に同国を訪れる患者は、「移植客」とも呼ばれた。07年には臓器売買が法律で禁止されたものの、実態に大きな変化はない。ナワスさんが手術を受けたのも、禁止法の施行後だった。

 ナワスさんは、手術を受けたラワルピンディ市内の病院にCNN取材班を案内。医師に手術記録の開示を求めたが、「記録は患者が退院したら破棄することになっている」と断られた。病院側はCNNの取材に、「法律には従っている。当院は腎臓提供者と移植を受ける患者との仲介には一切かかわっていない」と繰り返すばかりだった。



 法改正してもこうなるとは・・・。

 これは他人事ではなく、臓器移植法改正を今まで無視してきて、移植数を伸ばそうとしなかった日本のせいでもあるわけです。

 結局お金で臓器を買う、という悲劇に繋がってしまいました。このようなことがおきないよう、脳死臓器移植などを行って、逆に海外での移植は取り締まるべきです。

 まあしかし、そうなると今度は子供を売らなければならなくなってしまうのか・・・。難しい問題だなぁ。
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2009年06月24日

「人の死とは?」脳死臓器移植法A案の波紋。

「脳死を一律死にしないで」=慎重な議論求める−移植法A案反対の遺族ら

 臓器移植法改正でA案が衆院で可決されたことについて、反対する遺族や市民団体が18日午後、衆院議員会館で記者会見し、「脳死を一律に人の死としないで」などと訴え、参院での慎重な議論や廃案を求めた。

 「わたしは死体と寄り添っていたの?」。中村暁美さん(45)は本会議場で、長女有里ちゃんの写真を忍ばせ見守った。有里ちゃんは3年半前、原因不明の急性脳症に襲われ、医師から「脳死」を宣告された。しかし、「温かい体があり、成長する体がある」と、2007年9月に4歳8カ月で他界するまでの約1年9カ月にわたり付き添った。

 「心臓が動かなくなり、体が冷たくなって初めて家族は今旅立ったんだと感じた。脳死は死の宣告ではなかった」と語った。

 議員にも実体験を通じて理解を求めたが、「直前まで『迷っている』と言っていた議員が堂々とA案に投じていた」といい、「むなしさがこみ上げてきた。この瞬間から娘は無になってしまうのか」と涙ぐんだ。



 感情面で言えば体温もあるから死んでない、のでしょうけれど、脳死は死だと思います。遺族感情からすれば心臓が止まっていることというのは最重要条件なのでしょうけれども、うーん。こういう問題はうやむやにされるべき?だからこそ「臓器移植の時だけ脳死を死とする」と曖昧な表現にすべき?



臓器移植法改正案:野党、参院に対案提出

 参院の野党議員有志は23日、衆院を18日に通過した臓器移植法改正案(A案)の対案を参院に提出した。脳死の定義など骨格は現行法を踏襲し、子供の臓器移植について検討する「臨時子ども脳死・臓器移植調査会」(子どもの脳死臨調)を設置するのが柱。

 提出者は民主党の千葉景子氏ら9人、賛同者43人。提出者と賛同者の所属は民主、共産、社民、国民新、新党日本、無所属。

 A案が脳死を一般に人の死とし、本人が拒否しなければ家族の同意で0歳児から臓器摘出が可能となるのに対し、対案は、脳死の定義を現行法と同様に臓器摘出時に限って人の死とする▽子供からの臓器摘出の課題を検討する「子どもの脳死臨調」を内閣府に設置する。子どもの脳死臨調で検討するのは(1)子供の脳死判定基準(2)本人の意思確認や家族の関与(3)虐待された児童からの臓器摘出防止策−−など。



 こちらはどちらかというと妥協案。脳死を死とするのではなく、臓器摘出の時だけ死とする案です。結局脳死臓器移植を行う点は変わらないのですが、脳死臓器移植反対派の家族に配慮した法律か。

 でもこれって、どうなんですかね。このほうが通りやすいんでしょうけれど、じゃあ脳死は死じゃないのか、といわれれば死ですからねぇ。法律ってそんな曖昧なものでいいんですかね?臓器摘出の時に限って死とする、って、死をただの言葉遊びで規定してるだけにすぎないのでは。

 コメントで記してくださったかたもおられるように、この国には無関心な人が多すぎる。以前から臓器移植に「賛成か反対か」の立場わけをさせるためには、「臓器移植に反対という意思を表明しなければならない」と訴えてきましたけれど、ここでA案が採択されたら、拒否のドナーカードをもった人が増えるんでしょうね。それは大変良いことだと思います。

 そして、こういう国会での審議がなかったら、おそらく政治家の大半が「脳死は死か死ではないか」を議論してこなかったんでしょう。特に今回時期尚早とか言って反対していた政治家の方々、それは今までこの問題を軽視してきた証拠ではないですか。

 脳死臓器移植は絶対に必要なものなのですから、全面的に賛成して、むしろ一般の、反対派の人たちを保護するための政策作りなどを行うべきではないでしょうか。臓器移植に同意しなくても差別されないような工夫を。

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