「脳死を一律死にしないで」=慎重な議論求める−移植法A案反対の遺族ら 臓器移植法改正でA案が衆院で可決されたことについて、反対する遺族や市民団体が18日午後、衆院議員会館で記者会見し、「脳死を一律に人の死としないで」などと訴え、参院での慎重な議論や廃案を求めた。
「わたしは死体と寄り添っていたの?」。中村暁美さん(45)は本会議場で、長女有里ちゃんの写真を忍ばせ見守った。有里ちゃんは3年半前、原因不明の急性脳症に襲われ、医師から「脳死」を宣告された。しかし、「温かい体があり、成長する体がある」と、2007年9月に4歳8カ月で他界するまでの約1年9カ月にわたり付き添った。
「心臓が動かなくなり、体が冷たくなって初めて家族は今旅立ったんだと感じた。脳死は死の宣告ではなかった」と語った。
議員にも実体験を通じて理解を求めたが、「直前まで『迷っている』と言っていた議員が堂々とA案に投じていた」といい、「むなしさがこみ上げてきた。この瞬間から娘は無になってしまうのか」と涙ぐんだ。
感情面で言えば体温もあるから死んでない、のでしょうけれど、脳死は死だと思います。遺族感情からすれば心臓が止まっていることというのは最重要条件なのでしょうけれども、うーん。こういう問題はうやむやにされるべき?だからこそ「臓器移植の時だけ脳死を死とする」と曖昧な表現にすべき?
臓器移植法改正案:野党、参院に対案提出 参院の野党議員有志は23日、衆院を18日に通過した臓器移植法改正案(A案)の対案を参院に提出した。脳死の定義など骨格は現行法を踏襲し、子供の臓器移植について検討する「臨時子ども脳死・臓器移植調査会」(子どもの脳死臨調)を設置するのが柱。
提出者は民主党の千葉景子氏ら9人、賛同者43人。提出者と賛同者の所属は民主、共産、社民、国民新、新党日本、無所属。
A案が脳死を一般に人の死とし、本人が拒否しなければ家族の同意で0歳児から臓器摘出が可能となるのに対し、対案は、脳死の定義を現行法と同様に臓器摘出時に限って人の死とする▽子供からの臓器摘出の課題を検討する「子どもの脳死臨調」を内閣府に設置する。子どもの脳死臨調で検討するのは(1)子供の脳死判定基準(2)本人の意思確認や家族の関与(3)虐待された児童からの臓器摘出防止策−−など。
こちらはどちらかというと妥協案。脳死を死とするのではなく、臓器摘出の時だけ死とする案です。結局脳死臓器移植を行う点は変わらないのですが、脳死臓器移植反対派の家族に配慮した法律か。
でもこれって、どうなんですかね。このほうが通りやすいんでしょうけれど、じゃあ脳死は死じゃないのか、といわれれば死ですからねぇ。法律ってそんな曖昧なものでいいんですかね?臓器摘出の時に限って死とする、って、死をただの言葉遊びで規定してるだけにすぎないのでは。
コメントで記してくださったかたもおられるように、この国には無関心な人が多すぎる。以前から臓器移植に「賛成か反対か」の立場わけをさせるためには、「臓器移植に反対という意思を表明しなければならない」と訴えてきましたけれど、ここでA案が採択されたら、拒否のドナーカードをもった人が増えるんでしょうね。それは大変良いことだと思います。
そして、こういう国会での審議がなかったら、おそらく政治家の大半が「脳死は死か死ではないか」を議論してこなかったんでしょう。特に今回時期尚早とか言って反対していた政治家の方々、それは今までこの問題を軽視してきた証拠ではないですか。
脳死臓器移植は絶対に必要なものなのですから、全面的に賛成して、むしろ一般の、反対派の人たちを保護するための政策作りなどを行うべきではないでしょうか。臓器移植に同意しなくても差別されないような工夫を。
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