[呼吸]の記事一覧

2014年03月02日

人の肺を再生医療で形作ることに成功する。

米研究チームが世界初のヒト肺の作製に成功

 米テキサス大学医学部ガルベストン校の研究チームが、世界初となるヒト肺の作製に成功した。

 UTMBの研究員ジョアン・ニコルズ氏によると、研究チームはまず、外傷により死亡した2人の子どもの肺から始めたという。この子供たちの肺は損傷が大きすぎて移植は無理だったが、健全な組織が多少残っていた。
彼らは2つの肺の1つからほぼすべての組織を取り除き、コラーゲンとエラスチンの足場だけを残した。

 そして、もう1つの肺から細胞を取り出し、それをその足場に付着させた。こうして作製した構造体を大きなチャンバーに入った「粉末フルーツジュースに似た」液体に浸し、細胞はその液体から栄養分を吸収して成長した。そして約4週間後、ついに人工ヒト肺が完成した。

 ニコルズ氏によると、この人工ヒト肺は本物に比べ、ピンク色がやや濃く、柔らかめで、密度が低いが、見た目はそっくりだという。ただ同氏は、これらの肺の移植を試す準備が整うまでにさらに12年を要するとの見方を示した。同研究チームは、この人工ヒト肺をまず豚で試すとしている。



 まだまだ時間はかかりそうですが、いずれは可能なのでしょうね。十数年前から人工気管支などの軟骨再生は可能のようですが、肺胞等となるとなかなか。いろんな分泌物も出してるし、そのあたり難しそうだなぁ。

 しかし人工臓器というと機械のほうが先にできるイメージでしたけれど、肺はどうなんでしょうかね。
posted by さじ at 09:35 | Comment(0) | 呼吸

2013年09月22日

熊本大学病院の肺がん取り違え事件から学ぶ

<熊大付属病院>検体取り違え手術 50代女性の肺一部摘出

 熊本大学医学部付属病院(熊本市中央区)は20日、50代の女性の肺から採取した検体を肺がんの80代男性患者の検体と取り違え、手術する必要がなかった女性を肺がんと誤認し、右肺の約3分の1を摘出していたと発表した。取り違えられた80代男性は肺がんだったが「悪性細胞なし」と診断していた。

 付属病院によると、女性は呼吸機能が低下する可能性があるが、日常生活に支障はないという。病院は医師や弁護士を含む調査委員会を設置し、詳しい経緯を調べる一方、2人に事情を説明して謝罪したという。谷原秀信病院長は「調査委員会の結論が出たら速やかに2人に説明したい」と述べたが、2人の対応については「控えたい」と明らかにしなかった。

 病院によると、2人は肺がんの疑いがあったため、6月下旬の同じ日に付属病院で肺の組織検査を受けた。病理部の技師が2人から採取した肺の組織を固めてブロックにし、一部を薄く切ってスライドガラスに貼り標本を作製したが、その際、男性の検体を貼るスライドガラスに女性の検体を、女性の検体を貼るスライドガラスに男性の検体を貼ったとみられるという。

 他の技師や医師もミスに気付かず、後日の検査で女性を肺がん、男性を「がんなし」と診断した。

 病院は8月中旬、女性の右肺の約3分の1を摘出。摘出部位からがん細胞が見つからなかったため、標本と残りのブロックを照合し、9月10日に取り違えていたことに気付いた。

 男性はミス発覚後の再検査で肺がんと診断された。病院はその時点で「検査時の6月からがんの進行はなかった」としている。男性は治療を受けているという。



 かなり衝撃的なニュースです。肺生検をやったということは、女性のほうもそれなりの疑いのある病変があったと思うのですが、良性だったのでしょう。逆に80代のほうもショックですよね、年齢がある程度ご高齢で、癌の進行がなかったというのが救いか。

 ミスを糾弾するだけでなく、全国の病院で、実際にこういうことが起こるのだ、と念頭に置いて、徹底する必要があります。
posted by さじ at 09:55 | Comment(0) | 呼吸

2013年03月28日

COPDの増悪に寛容するたんぱく質Singlec-14を理研が発見する。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪に関与するタンパク質を同定

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、別名「肺の生活習慣病」と呼ばれる呼吸困難を伴う疾患です。喫煙など外的要因と遺伝的要因によって発症するといわれています。細菌やウイルス感染により症状が急激に悪化(増悪)することがありますが、増悪時の治療法は現在のところ吸入ステロイド剤などに限られ、新しい治療法の開発が待たれています。

 理研と日本医科大学の共同研究グループは、自然免疫細胞で作られる糖鎖を認識するタンパク質「Singlec-14」がCOPD増悪に関わる細菌と結びつくことや、Singlec-14タンパク質をコードするSIGLEC14遺伝子には2種類の型があり、祖先型は Singlec-14タンパク質を作り、欠損型は作らないことに着目しました。

 これが COPD患者の「増悪しやすさ」に影響するかどうかを検討するため、COPD患者135人についてSIGLEC14の遺伝子型を解析し、1年間の増悪の回数を調べました。

 その結果、 Singlec-14タンパク質を持たない欠損型患者は、このタンパク質を持つ祖先型患者に比べ年平均の増悪頻度が4分の1以下であると分かりました。また、Singlec-14タンパク質を持つ自然免疫細胞と持たない自然免疫細胞のモデルを作りウイルスで刺激したところ、持つ細胞は持たない細胞より強い炎症性反応を示しました。

 これらの結果から、Singlec-14タンパク質を持つ患者は炎症性の反応が強く、増悪の頻度が高くなることが分かりました。つまり、SIGLEC14の遺伝子の型を調べれば憎悪の起こりやすさを特定できることを示しています。これにより、医療の個別化(オーダーメイド医療)を実現できます。また、Singlec-14 を起点とした炎症性の反応経路を遮断すれば、増悪の治療や予防につながると考えられます。



 和田アキ子も煙草をやめ、COPDの理解の普及につとめているようですが

 煙草を吸うことでの害として肺がんは周知されていますが、このCOPDの辛さというものは。呼吸が苦しいって、生きて行く上で代え難いほどしんどいらしいです。予防を徹底するのが重要ですが、発症した場合の治療法の確立に一役かいそうなニュース。
posted by さじ at 01:24 | Comment(0) | 呼吸

2013年01月30日

40歳までに禁煙すればまだ間に合うらしい。

禁煙まだ間に合う?40歳までなら余命正常化 米誌に研究結果

 米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」電子版は24日、40歳前後までに禁煙に成功した人は、喫煙により縮んだ平均余命を、非喫煙者並みに取り戻せるとする米国やカナダの専門家による研究結果を掲載した。

 喫煙者の平均余命は、喫煙したことがない人に比べて10年以上短くなるが、34歳以下で禁煙に成功した人は喫煙を続ける人より平均余命が10年長くなり、まったくたばこを吸ったことがない人とほとんど同じ生存確率を示したという。

 禁煙に成功した年齢が35〜44歳の場合でも喫煙を続ける人より平均余命が9年長くなる。45〜54歳の場合でも6年、55〜64歳でも4年、平均余命を取り戻せるという。

 しかし、肺がんなどのリスクは禁煙後も長期間続くことになるため、分析に当たった専門家は米紙に「40歳までなら吸っても大丈夫」などと安心するべきではないとくぎを刺している。



 寿命取り戻せるんだったらやる価値ありそうじゃないですか?

 やめちゃえば、全く吸わなかった人と同じ寿命になるっつーことですもんね。

 このニュースが出たのも、良い巡り合わせとして受け入れるのも1つの方法かなーと。
posted by さじ at 01:03 | Comment(0) | 呼吸

2012年12月19日

妊娠中の喫煙で、子だけでなく孫にも喘息のリスクが生じる

妊娠中の喫煙が孫にまで悪影響、米動物実験

 妊娠中の喫煙は胎児にさまざまな影響を与えると報告されており、ぜんそくなどの呼吸器の病気もその一つとされている。ところがこの影響は、胎児だけでなくさらに次の世代まで引き継がれる可能性があることが分かった。米ロサンゼルス生物医学研究所のVirender K. Rehan氏らが英医学誌「BMC Medicine」に発表した論文によると、母ラットが摂取したニコチンによるぜんそくへの影響は胎児ばかりでなく、胎児の将来の子、つまり母ラットの孫にまで同様の影響を与えるという。もちろん、子ラットが親になるまでに一切ニコチンを摂取していなくても。

 近年、著しい増加傾向にある小児ぜんそくの原因の一つとして、妊娠中の母親の喫煙が挙げられる。米国人女性の12%は妊娠中も喫煙を続け、その結果、少なくとも年間40万人の新生児が母体内でニコチンにさらされていると考えられている

 さらに、2005年に南カリフォルニアで行われた疫学研究では、母体内でニコチンにさらされた新生児は、出生後から親になるまで一切喫煙歴がなくても、その子供が小児喘息になりやすい傾向があると報告された(「Chest」 2005; 127: 1232-1241)。つまり、妊娠中に喫煙した母親の影響は、その子供ばかりではなく、孫にまで影響を及ぼす可能性が示唆されたのだ

 今回の報告では、子ラットにはニコチンを投与していないにもかかわらず、孫ラットにも同様の症状が有意に生じること、孫ラットの症状も孫ラットを妊娠中の子ラット(孫ラットの母ラット)へのロシグリタゾン投与で抑制できることが示された。

 さらにRehan氏らは、ニコチンがぜんそく症状を引き起こすメカニズムを探る目的で、母ラットに投与したニコチンが、子ラットに後天的な遺伝子変異であるエピジェネティック変異を起こすかどうかを調べた。その結果、肺でのDNAメチル化には変化がなかったものの、DNAに結合するタンパク質「ヒストン」を見てみると、ヒストンH3のアセチル化は上昇、ヒストンH4のアセチル化は減少していた。

 ニコチンと同時にロシグリタゾンを投与することで、肺におけるヒストンH3のアセチル化上昇のみが抑えられたことから、ニコチンの作用はヒストンH3のアセチル化を介したものであることが示唆された。もちろん、ロシグリタゾンだけの投与では、どのエピジェネティック変異も起きることはなかった。



 しかしアメリカ人女性の、妊娠中に12%もの人が喫煙続けているって、凄いよね。凄くない?日本人でそんな人まわりでみたことないけれども。

 子供のことを考えたらすえませんよねー。喘息はホントつらいんでね、親になる人だったらやめて当然でしょうし、やめられないなら親になるの、よしましょうや。
posted by さじ at 03:59 | Comment(0) | 呼吸

2012年12月01日

日本人を60年以上調査したところ喫煙で寿命が10年縮まっていた。

喫煙で寿命10年縮まる 日英、日本人を60年以上調査

 たばこを吸うと寿命が8〜10年縮まることが、放射線影響研究所(広島市)や英オックスフォード大による調査でわかった。日本人約6万8千人を分析した。未成年でたばこを吸い始め、吸う本数が多い人ほど死亡リスクは高かった。25日付の英医学誌電子版に発表した。

 研究チームは、被爆者の健康影響を調べるために放影研が60年以上続けている「寿命調査」の対象者のうち、喫煙の有無が判明している人を分析した。被爆していない人も含まれる。

 未成年でたばこを吸い始めた男性(1920〜45年生まれ)の72%は70歳まで生きた。一方、同じ年代でたばこを吸わない男性の72%は78歳まで生きた。たばこで寿命が8年縮まったことになる。女性は、寿命が10年縮まっていた。



 昔の喫煙データと、最近のデータを比較すると結構面白いかもしれないですね。しかしタバコを吸わない健康志向の人のほうが寿命が長いというのはそりゃ当然ですが、まさか8年も違うとはねー。人生の10分の1じゃないですか。タバコ、この機会にやめましょ。
posted by さじ at 14:00 | Comment(0) | 呼吸

2012年10月09日

延髄のグリア細胞が呼吸の動きに繋がることを発見する。

呼吸のリズムは脳の細胞がコントロールしている。

 呼吸のリズムをコントロールしている脳の細胞群を突き止めることに、国立病院機構村山医療センター(東京都)や東京大などのグループが動物実験で成功した。睡眠時無呼吸症候群などの治療法開発につながると期待される。英国の生理学専門誌で1日発表した。

 同センターの岡田泰昌室長らは、後頭部の下方にある延髄のうち、呼吸との関連が指摘されている領域に注目。ラットの延髄を切り出して、この領域と呼吸リズムとの関連を分析。その結果、延髄にある特殊な細胞(グリア細胞)の一部が、呼吸の吸い込み動作に連動する神経細胞などに、1秒弱さきがけて活動することを発見。さらに、光が当たるとグリア細胞が活動するよう遺伝子改変したマウスで、延髄に光をあててみると、呼吸と連動する神経細胞が活動した。

 研究チームは、グリア細胞の一部にペースメーカーのような役割があり、その細胞が活動すると神経細胞に信号が送られ、呼吸の動きにつながると結論づけた。



 延髄に呼吸中枢があるのは知られていますが。このペースメーカーの役割を活性化することが出来ればSASももっと良くなるのかも。今はC-PAPなどで対症療法的に治しているのが主体ですしね。
posted by さじ at 09:00 | Comment(0) | 呼吸

2012年09月05日

やっぱりというか何というか、水タバコは身体によくない。

水タバコはやはり呼吸器によくない=イラン大学の研究

 イランのマシュハド医科大学はこのほど、煙を水にくぐらせる「水タバコ」はたばこの煙を深く吸い込む喫煙と同じくらい呼吸器疾患を引き起こすとした研究結果を明らかにした。

 中東で何世紀もの歴史がある水タバコは近年、欧米の若者、特に女性の間ではやっている。しかし今回の研究結果は、水タバコはたばこの有害物を取り除くから安全だと主張する擁護者らに科学の面から新たな打撃を与えるものだ。

 研究チームは水タバコの喫煙者57人、たばこの煙を深く吸い込む喫煙者30人、通常の喫煙者51人、非喫煙者44人の肺機能を2年続けて3カ月ずつ調査。その結果、呼吸時にゼーゼー音が出る喘鳴が起きたのはそれぞれ23%、30%、21.6%、9.1%、せきが出たのは21%、36.7%、19.6%、6.8%、たんができたのは14%、10%、3.9%、6.8%だった。

 研究チームのリーダーは「水タバコが肺機能に与える影響はたばこの煙を深く吸い込む喫煙者に見られるものと似ている。通常の喫煙も、水タバコより影響は少ないものの、十分に呼吸器疾患の原因となる」と指摘した。
 2005年の世界保健機関(WHO)の調査によると、水タバコの煙には高濃度の一酸化炭素、発がん物質、ニコチンなどが含まれている。また、たばこの喫煙者は5〜7分に8〜12回ほど吸い、吸い込む煙の総量は0.5〜0.6リットルだが、水ギセルの場合は20〜80分間に50〜200回吸い、1回当たりの吸い込む煙の量も0.15〜1リットルに上る。つまり、水ギセルの喫煙者は吸い始めから吸い終わりまでに、たばこの喫煙者が100本以上を吸うのと同じ量の煙を吸っている可能性があるとされた



 まぁ身体にいいわけがないですわな。そして水たばこだとアレなんでしょうね、フレーバーとかでごまかされてるところとか、あるんでしょう。あとは何といっても、煙吸ってる感じが少ないから、深く大きく吸い込んでしまうとか。

 日本でも中東系料理屋とかで手軽に体験できますけれども、あれより本場はもっとキツいんだとしたら結構な勢いではありますね。
posted by さじ at 01:25 | Comment(0) | 呼吸

2012年08月22日

1回の注射で禁煙出来るワクチンを開発中。

注射1回で禁煙できる? 米の大学、マウスで成功

 一度注射すれば、長期間の効果が期待できる「禁煙ワクチン」を米コーネル大学の研究グループが開発し、マウスの実験で効果を確かめた。ニコチンは脳に作用して満足感をもたらすが、新開発のワクチンは血中のニコチンに結びついて脳に届かないようにさせる。

 実験では、ワクチンを注射されたマウスは、ニコチンを投与されても、脳内のニコチン量が注射を受けていないマウスの6分の1に抑えられていた。少なくとも18週間はワクチンの効果があったという。

 禁煙薬は、ニコチンを含むガムや貼り薬が実用化されているが、グループは「今後、安全性などの研究を重ねれば、どんな方法を試しても禁煙できない人に希望をもたらす」と話している。



 副作用ないなら凄い治療ですけどもねー。どうなんでしょう。大丈夫なら画期的か。

 なかなか、やめらんない人ってのは、ホント精神力じゃどうしようもないぐらいぐらいですからねー。意志云々じゃなくてやめられるような治療法というと、これが一番現実的か。
posted by さじ at 17:09 | Comment(0) | 呼吸

2012年04月28日

喫煙によってCOPDになるメカニズムにFut8へテロ欠損が関与している

喫煙によって慢性閉塞性肺気腫の発症が早まるメカニズムを解明

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、喫煙によりコアフコース糖鎖の修飾が阻害されることで肺胞壁が破壊され、慢性閉塞性肺気腫(COPD)の発症が早まることを明らかにしました。これは、理研基幹研究所(玉尾皓平所長)ケミカルバイオロジー領域 疾患糖鎖研究チーム/阪大産研−理研アライアンスラボの谷口直之チームリーダー、高叢笑研究員と、群馬大学医学部附属病院呼吸器・アレルギー内科の前野敏孝講師との共同研究による成果です。

 COPDは、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞が破壊される肺気腫と慢性気管支炎の総称で、気道閉塞による呼吸困難を引き起こします。ウイルスや細菌に感染すると急激に症状が悪化し、死亡率が非常に高くなります。わが国を含め世界的に患者数が多く、その治療法の開発が喫緊の課題となっています。COPD発症には喫煙などの外的要因とさまざまな遺伝的要因が関係していると考えられています。これまでに研究グループは、コアフコース糖鎖を欠損したマウスを用いた実験で、コアフコース糖鎖の減少がCOPD発症の要因の1つであることを見いだしていましたが、喫煙との関係については不明でした。

 研究グループは、喫煙とコアフコース糖鎖の減少の関係を明らかにするために、Fut8ヘテロ欠損マウスに喫煙させ、経過を観察しました。その結果、正常なマウスに比べて2倍早くCOPDを発症することを見いだしました。さらに、喫煙によりこのマウスの肺組織ではコアフコース糖鎖が減少し、それがタンパク質を分解する酵素のMMPを異常に活性化して、肺胞壁を破壊していることが分かりました。

 これらのことは、喫煙によってコアフコース糖鎖の合成阻害が進み、COPD発症を早めて症状を悪化させていることを示しています。今後、Fut8ヘテロ欠損マウスを用いて喫煙によって発症するCOPDの病態を調べることで、ヒトに対するCOPDの予防、早期診断、治療薬の開発につながるものとして期待できます。



 喫煙の恐いところは時限爆弾みたいなもので、数十年後にCOPDになるかもしれんということですね。

 このCOPDというのがやっかいで、特に近いところにCOPD患者のいる人はその恐ろしさが分かると思いますが、最終的には普通の空気を呼吸して取り込んでも酸素が身体に行き渡らなくなります。ですので最終的に、「常に酸素を携帯し肺に酸素を取り込まなければならなくなる」状態になり、どこへ行くにも酸素ボンベの携帯が必要となってしまいます。

 そのメカニズムを解明したのが今回の研究ということです。まだメカニズムがわかっただけなので、治療がすぐ出来る訳ではないですが、大きな一歩であることに違いません。しかしやはり予防のための禁煙が一番なのでしょうな。
posted by さじ at 20:47 | Comment(0) | 呼吸

2012年03月27日

慶應大病院呼吸器外科、患者に無断で肋骨の骨髄液を採取。

教授ら、無断で骨髄液採取=肺がん研究で患者31人から−慶大病院

 慶応大は19日記者会見し、同大病院の呼吸器外科の50代男性教授ら2人が、少なくとも31人の入院患者から同意を得ずに手術中に肋骨の骨髄液を採取していたと発表した。

 健康被害の報告はこれまでないが、教授らは肺がんの臨床研究目的で行ったとしており、厚生労働省が定める倫理指針に抵触する行為。末松誠医学部長は「誠に申し訳なく、深くおわびする」と謝罪した。

 同大によると、無断採取していたのは教授と40代の男性専任講師。昨年10月24日から今年1月11日にかけ、事前の説明や同意を経ず、肺がん患者26人の手術中に骨髄液を採取した。また肺がん患者との比較を行うため、肺がんではない患者5人からも無断で採っていた。

 同大の調査に、教授らは「患者に有益な情報を届けたかった」と臨床研究に利用した理由を説明しているという。



 慶應に手術しにきてるぐらいだから、ちゃんとお願いすればみんな同意してくれたんじゃないですかね?何でこんな事態になってしまったんだろう。
posted by さじ at 02:44 | Comment(3) | 呼吸

2012年01月15日

温泉の囲炉裏で食事→一酸化炭素中毒で病院へ。

囲炉裏で一酸化炭素中毒?…乳頭温泉で3人搬送

 7日午後11時20分頃、秋田県仙北市の乳頭温泉郷にある温泉で、「宿泊客3人が頭痛や吐き気を訴えている」と、従業員から119番があった。

 症状を訴えたのは、同じ部屋に泊まっていた東京都の女性2人(40歳、30歳)と神奈川県の女性(25)。3人は市内の病院に運ばれたが、軽症で翌8日昼に退院した。

 仙北署の発表によると、3人は7日午後6時頃、客室の囲炉裏で魚を焼くなどして食事をとった。その後、1人が頭痛を訴えて部屋で休み、温泉に入っていた2人も部屋に戻ると、頭痛や吐き気を催したという。同署では、一酸化炭素中毒の可能性もあるとみて調べている。

 温泉は「外に雪が積もっていたために換気扇からの換気が十分でなかった可能性もある。口頭で換気の注意を促すとともに、改善したい」と話した。



 確かに一酸化炭素が出やすい場所ではありますけれどもねー。こういう事故って頻繁にあるんですかね?ただ換気不十分だっただけ?今までなかったのに起こってしまったということを分析して、こういうことがないように全国で徹底してほしいですね。もし分析結果が出たらまたニュースとしてやっていただきたいところ。
posted by さじ at 23:06 | Comment(0) | 呼吸

2012年01月08日

一酸化炭素を吸うとストレスを軽減する効果がある、のか?

都市生活も意外に悪くない?一酸化炭素にストレス軽減効果 イスラエル研究

 都市部の道路で車から吐き出される一酸化炭素ガス(CO)は、都市生活のストレスを軽減してくれているのかもしれない。イスラエルのテルアビブ大の研究チームが、このような論文を同大のウェブサイト「American Friends of Tel Aviv University」に発表した。

 イツァク・シュネル教授のチームは、健康な成人36人にテルアビブ市内の歩道を歩いてもらったあと、バスに乗って市場に買い物に行ってもらい、この間に吸ったCOの量を測定した。COはにおいも色もない有毒ガスで、高濃度の場合は人を死に至らしめることがある。

 その結果、30分ごとの吸引量は約1〜15ppmと、予想をはるかに下回っていた。さらに、被験者は街の騒音や人ごみによりストレスレベルが上がったものの、COにこうしたストレスを和らげる麻酔効果があるらしいことが分かった

 論文は、以上の結果から、「都市生活は研究者が予想していたほどには健康に悪くないかもしれない」と述べている。ただし、COに長時間さらされるとストレス軽減効果は弱くなっていったという。



 いや体には悪いでしょう。笑

 アラブ系ジョークみたいな医療ニュースでした。
posted by さじ at 04:12 | Comment(0) | 呼吸

2011年05月13日

元ヘビースモーカー和田アキ子、COPD広報大使に就任。

COPD広報大使に和田アキ子さん−日本ベーリンガー、ファイザー

 日本ベーリンガーインゲルハイムとファイザーが展開する慢性閉塞性肺疾患(COPD)の啓発活動の広報大使に、歌手でタレントの和田アキ子さんが就任し、記念イベントが5月11日、都内で開かれた。COPDの一種である肺気腫と診断された経験のある和田さんは、「自分の体験を話すことで、一人でも多くの人にCOPDを知ってもらい、早期発見につながってほしい」と語った。

 COPDは、喫煙などが原因で発症し、呼吸機能が低下していく病気。慢性のせきやたん、息切れなどが主な症状で、COPDによる死亡率は増加傾向にある。国内の推計では、患者数は約500万人に上るのに対し、治療を受けているのは約17万人にとどまる。

 イベントでは、和田さんと結核予防会複十字病院の工藤翔二院長が対談した。ヘビースモーカーだった和田さんは、2008年に軽度の肺気腫と診断されたのを機に禁煙したことで、息切れが治まるようになったといい、早期発見・治療の大切さを強調。工藤院長は、COPD発見のチェックポイントとして、▽40歳以上でたばこを吸っている、または吸っていた▽せき、たんがしつこく続くことがある▽階段を上ると息切れする―の3つを挙げた。

 和田さんは、「COPDは怖い病気なのに、外見からは分からないのが厄介なところ」とし、「こうした症状があったら、年齢のせいにせず、早めにかかりつけ医を受診して」と呼び掛けた。



 和田さん禁煙続いてるのか・・・。凄いなぁ。

 かなりのヘビースモーカーだと思ったんですけど、やめようと思えばやめられる・・・どころかCOPD広報大使に・・・
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2011年04月17日

被災地では粉塵が原因とみられる肺炎が増加している。

粉じん 被災地苦悩 震災後、肺炎3〜5倍

 東日本大震災の被災地で、津波によるヘドロやがれきから飛び散った粉じんが原因とみられる感染症が増加している。粉じんには病原性物質や有害物質が含まれている恐れがある。被災地は、復興作業と健康被害防止の両立という難題とも格闘している。

 石巻市中心部は、津波で旧北上川があふれ出し広範囲が水没した。路地が入り組む飲食店街には大量の泥水が流れ込み、数十センチがヘドロ化して堆積した。同市中央2丁目で飲食店を経営する小野寺光雄さん(49)は、店のそばにあるヘドロを横目に「従業員がのどを痛めて病院に行った。こんな衛生状態だと再開は見込めない」と心配そうに話した。ヘドロは当初、黒く粘り気のある粘土状だったが、気温の上昇で乾燥し、いまは白みを帯びた状態になりつつある。ヘドロには廃棄物や有機物、微生物が含まれ、乾くと細かい粒子となって風などで飛び散る。

 石巻赤十字病院では、ヘドロを手作業で片付けた人が化学性の炎症や急性湿疹などの症状で受診するケースが目立つ。矢内勝呼吸器内科部長は「ヘドロは低酸素状態にあり、嫌気性菌が繁殖する。それが誤嚥性肺炎の原因となる恐れもある」と指摘する。病院によると、肺炎は震災後、通常の3〜5倍の発症率となっている。気管支が実を付けたように膨らむ珍しい肺炎症状もあったという。有害物質や菌の粒子の付着が原因とみている。

 損壊した船舶、自動車からは油が流れ出したり、家屋の建材や断熱材などからはアスベストが飛散したりする可能性がある。これらは粉じんとともに飛散する。石巻赤十字病院が3月下旬、市内の避難所で1万人を対象に実施した健康調査では、せきの症状を訴えた人が約1100人に上り、下痢・嘔吐の約200人、高熱の約120人などに比べ格段に多かった。粉じんはせきの主要因の一つとなる。

 矢内部長は「外出時はもちろん、屋内でも土足で出入りしているような場所はほこりが立ちやすいので、マスクをしてほしい。ゴーグルの着用や、肌の露出をできるだけ避けることも有効だ」と語る。

 粉じんが媒介した菌が作業で負った傷口から入り、破傷風を引き起こしたとみられる例も報告されている。

 ボランティアで石巻市内の清掃活動をしている神奈川県鎌倉市の建設会社経営山田信和さん(56)は、現地入りする前に破傷風のワクチンを接種してきたという。「粉じんに神経質になると作業が進まないが、マスクと手袋は外さないようにしている」と話した。



 アスベストや、昔炭坑で働いていた人などは、肺から粉塵を吸い込むことで、肺に沈着し、発癌に影響してしまったりします。

 今回は粉塵による急性期の問題、つまり肺炎が焦点となっているようです。

 まずマスクを徹底することで予防しましょう。
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2011年04月09日

東日本大震災の影響で酸素吸入器が停止し死亡。

停電…医療事故、酸素吸入器停止で女性死亡

 宮城県で震度6強を観測した東日本大震災の余震で、酸素吸入器を使用して自宅治療していた山形県尾花沢市の女性(63)が死亡していたことが8日、確認された。県警などによると、女性の酸素吸入器は、地震による停電のために使えなくなっていたとみられる。「震災や計画停電などで医療機器トラブルや深刻な医療事故が起こらないか」。こうした危惧は以前から医療関係者から指摘され、警鐘が鳴らされていた。厚生労働省も詳しい実態調査に乗り出すなど、事態の重さを物語っているといえそうだ。

 女性は8日早朝、自宅の寝室ベッドで亡くなっているのを家族に発見された。県や県警などによると、女性は気管支炎を患っており、24時間の酸素吸入が必要な状態だったが地震後、吸入器は停止していた。現在、県警で検死を行い、死因を詳しく調べているが、尾花沢市で地震直後から停電したことが影響した可能性は高い。

 酸素吸入器は、呼吸するのが困難な患者が、空気中の酸素を濃縮して吸飲する器具。一般家庭の電源で使用できるため、この機器を使用して自宅で治療を続ける患者は多く、厚労省によると、東北と関東地方で7万〜8万人に上る。

 しかし、震災後、被災地では停電が続いており、首都圏では計画停電が行われている。多くの患者や病院関係者は「もし、停電で酸素吸入器が止まったら…」という不安を抱いてきた。それだけに、女性の死亡の衝撃は大きく、細川律夫厚生労働相は8日の記者会見で、「地震による停電と患者さんが亡くなったことの因果関係を調査する」と強調。厚労省も情報収集を始めた。

 酸素吸入器が停電で止まった場合、事前に携帯用酸素ボンベを準備しておけば一命を取り留めることができる。実際に多くの患者はボンベを用意しているが、酸素吸入器を使う、こうした患者は、体が不自由なケースが多い。突然の停電で暗闇になった際に、素早く酸素ボンベを取り出し、口や鼻に当てるのは容易な作業ではない。

 計画停電の際に、酸素ボンベを準備しておくように指導して回った東京都武蔵野市の武蔵野ホームケアクリニック院長、東郷清児医師(48)は、こう問題点を指摘する。

 「私が知っているだけでも、病気で本人の体があまり動かず、1人ではボンベから吸うのは難しい患者もいた。事前に分かっている計画停電のときは、看護師に張り付いてもらったが、急な停電では、そういうわけにもいかない」

 酸素吸入器メーカーも、各患者に注意を配るが、停電の際に、全員のところに駆けつけて、確認するのは不可能だ。しかも、酸素ボンベは数時間で酸素がなくなるのが普通で、停電が長引けば、病院に行かなければならない。数分間もボンベなしでは呼吸できない患者には、一刻の余裕もない。

 より重篤なケースでは、自宅で人工呼吸器やたん吸引機を使う患者もいる。停電時に長時間利用できるバッテリーもあるが、不安は伴う。すぐに助けてくれる家族がいない場合も少なくなく東郷医師は「結局はケース・バイ・ケースで対応を考えるしかない」と話す。

 今回の停電は、在宅の患者だけではなく、病院にも混乱を招いた。宮城県によると、県内の災害拠点病院14カ所のうち、石巻赤十字病院など5カ所で自家発電に切り替えたが、今後、停電の頻発や長期化によって発電自体が滞る可能性もある。

 東京電力は計画停電について“終了宣言”を出したが、地震や電力不足は今後も予想される。東北大病院災害対策本部の辺見敦総務課長補佐は「やはり停電は診療への影響が大きい」と話した。



 やはりというかなんと言うか。。。起きてしまうものですね。

 最悪の事態を予想できる、ということは、実際におこることも当然というか。。。何とも傷ましい話です。

 やはり今回のことを顧みると、自家発電の方法というのを考えて医療を提供しないといけないなと思います。
posted by さじ at 01:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | 呼吸

2010年12月23日

桃井はるこさんがカラオケで喘息を克服する

シンガー・ソングライター・桃井はるこさん カラオケでぜんそく克服

 秋葉原発のタレントがメディアをにぎわせているが、彼女はいわば「元祖アキバ系女王」。アキバでの路上ライブを振り出しにメジャーデビューし、声優に歌手、作詞、作曲、ラジオ出演にライター稼業とマルチな仕事をこなしている。

 ショルダーキーボードを肩に、歌って踊る今の姿からは想像し難いが、幼少時は強いぜんそく持ちの虚弱児。小学校4年のころ、歌好きの彼女に父親がレーザーディスクのカラオケセットを買ってくれた。最初は苦しくて一曲も歌えなかったが、歌い続けるうちにだんだん何曲でも続けて歌えるようになり、気がついたらぜんそくを克服していた。

 食べ物アレルギーもあって、ケーキがダメ。スイーツを食べながらの女子会の会話にあこがれたが、その輪の中には入れなかった。「なんで自分だけ人と違うの」。人に言えないそんなコンプレックスを、受け入れてくれた場所がアキバだった。

 最近は海外で開かれるアニメコンベンションに、よく招かれる。海外のオタクに会うと必ず言われるのが「一生に一度でいいからアキバに行ってみたい」。

 メキシコでは、メード服姿の女の子が、彼女が作った曲「ワンダーモモーイ」を、日本語で歌って踊ってみせてくれた。「好きなアニメの題名を言うだけで、すぐに世界中の人と仲良くなれる。オタクは、本当に世界の共通言語なんです」



 私も水泳で喘息を克服したタイプですけれど、幼少期なら鍛えられるんですかね。気管の狭窄を補うような、肺活量を身に付けると、症状は緩和されるでしょうし。成長期だったのも相まっているのかもしれませんけれども。

 桃井はるこさんといえば、医療系ソングとして「愛のメディスン」がありますね。
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2010年07月05日

冷却保存した自分の肺を再度戻すことに成功する

冷却保存し肺自家移植、 岡山大 世界初、がん切除治療法を拡大

 岡山大病院は2日、肺がん患者の片肺をすべて摘出し冷却保存した状態で患部と周辺を切除後、肺を体内に戻す「自家移植」手術に成功したと発表した

 肺を戻すことで、術後の呼吸機能の低下を抑えられる。冷却保存は、摘出した肺の機能を一時的に保持し、より安全な治療につなげるのが目的。執刀した呼吸器外科の大藤剛宏講師によると、肺の自家移植成功は国内で初めてで、冷却保存したケースは世界初という。

 国立がん研究センターのデータ(08年)では、肺がんで年間約6万6千人が亡くなっており、がんの中で、男女合わせて死亡者が最多。

 今回の手法は、肺の全摘に耐えられず手術をあきらめていた進行がん患者に役立ち、治療の選択肢を広げると期待される。

 患者は広島県の60代男性。右肺中枢部や気管支、肺動脈でがんが進行し、がん病巣のみの切除は難しく、右肺の全摘が必要と診断された。右肺は肺活量の55%を担うため、摘出すると息切れするなど生活の質(QOL)が低下するのが特に問題だった。



片肺摘出→がん切除→体内へ 岡山大病院「自家移植」手術に成功

 岡山大病院は2日、肺がん患者の片肺を全摘後、患部を切除した上で体内に戻す「自家移植」手術に成功したと発表した。

 摘出した肺は機能保持のため、一般の肺移植手術の際に用いる冷却保存技術を応用しており、同病院によると、こうした手法による肺がん治療は世界で初めてという。呼吸不全を防ぎ、術後の患者の生活の質(QOL)向上が期待できる。

 病院によると、患者は広島県在住の60代男性で、右肺中枢部や気管支、肺動脈でがんが進行していた。

 6月中旬の手術では、右肺の全摘後、移植用の保存液を注入して冷却保存。患部を切除し、がん細胞がないことを確かめた上で肺の下部を体内に戻した。

 男性は術後16日で歩いて退院。約70%の肺活量を確保し、趣味のゴルフなどの運動もできるという。



 凄い技術。肺を切除するときに、片方の肺を全部取るとか、肺葉ごとに取るとか、そういう大きなくくりでしか出来ないときがあります。そういったときに、冷却保存して癌だけを取り除き、体内に戻す手法です。術後の生活の質も大幅に向上することでしょう。
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2009年12月26日

人工呼吸器着脱事件に関して、医療と法律に齟齬が生じる。

「延命」時代 すれ違う医と法

 交通事故で、7歳の子どもが心肺停止となって運ばれてきた。救命のため人工呼吸器を装着した。徹夜の治療で心臓は再び動き始めたが、意識は戻らない。両親と連日、治療方法を話し合った。

 7日目の朝。ベッドわきで両親が、言葉を絞り出した。「先生、もう結構です」

 日ごとに血色を失う、わが子の指先。1週間かけた決断。その間、人工呼吸器の役割は、当初の「救命」から「延命」に変わっていた。治療を最小限にとどめ、家族とともに小さな命を見送った。「ずっと生きてほしい。そう思い、医師は救命の努力をする。家族と気持ちは重なるんです。なのに延命をやめ、みとるというのは……」。20年近い年月が過ぎても、子どもと両親の顔や名前は、鮮明に覚えている。

 延命治療の中止に臨む救急医は、どう考えているだろう。会田薫子特任研究員ら東大研究チームは08〜09年、全国の勤務医にアンケートし、意識を調べて分析した。

 約930人の回答のうち、臓器提供と関係なく患者の状態を把握するために脳死診断をしている医師は、47%。そのうち人工呼吸器の「中止を選択肢にしている」のは、わずか4%だった。

 07年に公表された日本救急医学会のガイドラインでは、一定の条件を満たせば人工呼吸器の取り外しを認めている。だが医師がちゅうちょするのは、なぜか。

 その理由は、調査結果によると、刑事責任の追及といった「法的問題」(83%)と同時に、心理的な抵抗感を挙げる意見が目立った

 「自分の手で行うことへの嫌悪感」(60%)、「手を下した感じの回避」(56%)、「短時間で心停止に至るのを見ることに苦痛を感じる」(48%)と続いた。

 アンケートと別に、会田さんが救急医35人に行ったインタビュー調査では、医師が苦しい胸の内を明かした。

 「自分で死に追いやったんだと思う」「右の手で助けようとしていたのを、左の手でやめるのはすごく苦痛。医師としての本能に反する」

 射水市民病院事件を捜査した富山地検の幹部は、罪かどうかの線引きに悩んだ。「そもそも殺人なのか」「罪に問うべきものか」

 結局、呼吸器の装着も取り外しも、延命治療のための行為と考え、殺人罪に問わないという結論を出した

 問題発覚から4年弱。この間、延命治療中止に関するガイドラインが医療者側から相次いで発表された。それは、延命治療を中止するための手続きの理想像は示す。だが刑事責任の免責まで法律的に保障するものではない

 検察幹部も「ガイドラインに沿った医療行為でも、刑事責任を完全に免れるというわけではない」とくぎを刺す。 法律を根拠に判断する警察官や検察官にとって、延命治療中止を捜査する「宿命」から逃れられない現実は、変わっていない。



 法律で曖昧な部分を、早急に煮詰めないで、医師にだけ責任を置くというのはなんか違う気がしますけれどね。

 医師を裁く前にやるべきことがある、にもかかわらず、ただ棚に上げているだけではないでしょうか。

 それで医師の人生が変わってしまうわけでもありますし。尊厳死・安楽死に関しても、いざ何か起こってどうこう論議する前に、今から、法律として整備すべきでは?
posted by さじ at 03:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 呼吸

2009年12月12日

延命中止事件で最高裁が医師の殺人罪とする判決を下す。

延命中止で最高裁が初判断、医師の殺人罪成立

 川崎協同病院(川崎市)で入院中の男性患者(当時58歳)から気管内チューブを抜き、筋弛緩剤を投与して死亡させたとして、殺人罪に問われた医師の上告審で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は被告の上告を棄却する決定をした。

 決定は7日付。懲役1年6月、執行猶予3年とした2審・東京高裁判決が確定する。

 尊厳死などの延命治療の中止を巡って医師が殺人罪に問われたケースで、最高裁が判断を示したのは初めて。

 被告側は上告審で、「男性の家族の強い要請でチューブを抜いた。尊厳死にあたり、違法性はなかった」として無罪を主張したが、同小法廷は、「脳波などの検査をしておらず、余命について的確な判断を下せる状況にはなかった。チューブを抜いた行為も被害者の推定的意思に基づくとは言えない」として、法律上許される治療中止には当たらないとの判断を示した。

 1、2審判決によると、被告は1998年11月、ぜんそく発作で意識不明となった男性患者の治療を担当したが、入院から15日目に気管内チューブを抜き、准看護師に指示して筋弛緩剤を投与して死亡させた。

 1審・横浜地裁は2005年3月、被告が治療を尽くさず、家族の依頼がないのにチューブを抜いたなどとして殺人罪の成立を認め、懲役3年、執行猶予5年の有罪を言い渡した。

 これに対し2審は07年2月、「家族からチューブを抜くよう要請されて決断したもので、その決断を事後的に非難するのは酷な面がある」と述べて刑を軽減した。



 まあ・・・うーん

 筋弛緩剤を投与している時点で、尊厳死とはほど遠いような気もしますからね。

 患者さんのことを思っていても、それを判断する医師の責任ですし、安易にやっていいことではないのも確か。
posted by さじ at 02:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 呼吸