大学における歯学教育の今後のあり方などを検討する文部科学省の「歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」(座長=江藤一洋・東京医科歯科大名誉教授)は1月30日、歯学教育改善の方策を提言する「第1次報告書」をまとめ、同省側に提出した。報告書では、歯科医師が過剰な地域がある現状などを踏まえ、学生の臨床実習に必要な患者数の確保が困難な大学や、歯科医師国家試験の合格率が低迷する大学などに対し、入学定員の「見直し」の検討を提言している。
報告書は、(1)歯科医師として必要な臨床能力の確保(2)優れた歯科医師を養成する体系的な歯学教育の実施(3)歯科医師の社会的需要を見据えた優れた入学者の確保(4)未来の歯科医療を拓く研究者の養成―の4項目。
(1)では、大学側に対し、臨床実習の到達目標を明確にした上で、各科目の成績評価基準の明示を徹底すると同時に、臨床実習終了時の「OSCE(客観的臨床能力試験)」の実施などで、歯科医師として必要な臨床能力を評価するよう求めた。
また、その評価の際、国は全国的な標準評価項目を提示するとともに、国家試験での臨床能力評価についての検討に努めるよう提言した。さらに、診療参加型の臨床実習を行う学生の能力や適性を担保する観点から、国と「共用試験実施評価機構」は各大学の協力の下で、共用試験の統一的な合格基準の設定や、合格者に対する証明書発行を検討する必要があるとした。
(2)では、基礎と臨床、座学と実習が有機的に結び付いた体系的な教育課程の編成を徹底させ、成績評価や進級判定を厳格化することを大学側に求めた。さらに、その実現のため、講座や専門分野の枠を超えた、歯学教育全体にかかわる体系的な教育課程を編成する専門の教員の配置を進めるとともに、教員の意識改革や相互の共通理解などを図るべきだとした。
体系的な教育課程の全学的な実施を促すため、国は歯学教育の「モデル・コア・カリキュラム」を見直す必要があるとした。また、優れた歯科医師を養成する歯学教育の質を保証するため、第三者評価の仕組みの導入を検討するよう提言した。
(3)では、「成績が不振な者」に対し、大学側は、きめ細かな履修指導や学習支援を行った上で、歯科医師としての適性などに欠ける学生には、比較的早い時期に進路変更を勧めるなどの適切な指導を行う必要があるとした。さらに、▽入学試験の選抜機能が低下し、優れた入学者の確保が困難▽国家試験の合格率が低迷▽臨床実習に必要な患者数の確保が困難▽留年する学生が多数―などの大学は、「安易な入学者数の確保を優先するのではなく、歯科医師の社会的需要を見据え、学生が将来歯科医師として活躍し得るかなどの将来性を考え、入学定員の見直しを検討する」ことを求めた。
(4)では、歯学系大学院について、基礎や臨床を問わず、「未来の歯科医療を拓く研究者の養成と、臨床の発展を目指す研究能力を備えた歯科医師の養成」という目的のため、ビジョンと教育内容を明確化し、組織的で体系的な魅力ある教育を提供すべきだとした。
文科省は、近く全国の国公私立大学に報告書の内容を通知し、改善計画の策定などを求めていく方針だ。
歯科学生にとっては厳しい現状ですもんね。
まあ一般の人としては、歯学部で落第するようなレベルの人に診てもらいたくないというのはあるでしょう。もちろん歯学部時代の成績がそのまま良医に反映されるわけではありませんが、歯学部時代に怠けていた人より、常に頑張り続ける人のほうが優秀であることに違いありません。
歯科医になっても腕がなければ夜逃げ同然になってしまう現状では、歯科医の適性がない人には早めの進路変更の考慮も必要だと思います。酷ではありますが。
その根本的な策として、入学定員数の見直しも考えなければならないでしょうねぇ。今のまま毎年何千人も送り出していても。。。
関連
医学処:昔と違って「まったく痛くない」歯医者が増えている。
医学処:良い歯科医を患者の立場から紹介する相談所。
医学処:歯科の4割で、患者が減少している現状。