魚鱗癬 進学や就職で差別 患者・家族ら「難病指定を」 「ぎょりんせん」という病気を知っていますか−−。難治性の皮膚疾患である魚鱗癬(ぎょりんせん)の患者と家族が「魚鱗癬の会」を作り、病気に対する理解を全国に広めようと活動している。
全身の肌が赤くただれた状態になるため、進学や就職で差別を受けるケースも少なくない。決定的な治療法が確立されておらず、同会は治療費の公費助成を受けられる「特定疾患」(難病)への指定を目指している。
会の代表を務める北九州市の梅本千鶴さん(49)が、長男遼(りょう)君(11)と初めて対面したのは出産後3日目だった。集中治療室の中の遼君は、全身が真っ赤な状態。地元で何の病気か分からず、慶応大学病院(東京都新宿区)で遺伝子などを検査し、ようやく重症の魚鱗癬の一つ「水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症」と診断された。
遼君の体には水膨れができ、常に皮膚がはがれて痛みを伴う。感染症にかかる恐れがあることから包帯が欠かせず、
幼いころはほぼ全身を包帯で巻いていた。自宅では保湿剤を塗る対症療法を施すしかないのが現状だ。
他人に移る病気ではないにもかかわらず、世間の偏見にもさらされる。遼君は三つの公立保育園に入園を断られ、ようやく理解のある私立幼稚園に入ることができた。小学校の入学も難しく養護学校に通う。
毎日の生活にも大きな支障がある。体に水膨れができると激しい痛みがあり、遼君が1時間以上泣き続けることもあるという。症状がひどい場合は、自宅から約100キロ離れた久留米大病院(福岡県久留米市)まで行き、ウミを取り除いてもらわなければならない。汗をかけない皮膚のため体温調節が難しく、梅雨など季節の変わり目には症状が重くなる。「寝付いてくれるまでは安心できない」と千鶴さん。親子ともども眠れない夜も多いという。
同会は98年に魚鱗癬の患者と家族が悩みを相談し合おうと発足し、九州を中心に活動してきた。現在の会員は34人。「患者が差別を受けるのは病気がよく知られていないのが大きな要因」として、同会は今年1月に手引書を作り、大学病院や教育委員会に送るなど全国的な展開を強め始めた。
厚生労働省に対する同会の働きかけが実り、先天性の魚鱗癬が昨年4月から「小児慢性特定疾患」の対象になった。魚鱗癬の患者は1回の受診につき5000〜1万円ほどの自己負担が生じるとされるが、自己負担分の補助が受けられるようになった。しかし、対象が18歳未満(20歳まで延長可)まで。
会員には成人も多く、同会は年齢制限のない「特定疾患」の認定を目標に掲げる。
梅本さんは「みんなから分かってもらえる病名になり、病気の子どもたちが普通に暮らせるようにしたい」と話している。同会への問い合わせは梅本さん(093・962・8319)。
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こう、表面に出てしまう病気っていうのは、たとえ難病指定されても辛いものがありますね。自己負担以前に、世間の理解が必要とされるわけですから。生まれたときからこのように世間の目に晒されて、子供たちに及ぼす影響は甚大だと思います。まず世間の理解を得るためにも、特定疾患として承認、そしてマスコミなどの力を借りて世間に向けてメッセージを発信する必要がありますね。
魚鱗癬 皮膚の表面が硬くなり、うろこのようにひび割れてはがれる遺伝性疾患。軽症から重症までさまざまな種類があり、代表的なものは▽尋常性魚鱗癬(発症頻度は200人に1人)▽伴性遺伝性魚鱗癬(同6000人に1人)▽水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(同10万人に1人)▽非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(同30〜50万人に1人)の四つ。重症の患者は全国に約100人いるとみられるが、全体の患者数は分かっていない。遺伝子の異常によって発症することが解明されてきており、将来的には遺伝子治療の開発が期待される。
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