人間を含むほとんどの哺乳類の目と耳は、物体を立体的にとらえている。
一方、ごく一部の哺乳類には、においを立体的に把握する能力がある。各鼻孔が互いに独立して機能し、脳に異なる信号を送信。脳内で信号が処理され、においの方向が決定されるというメカニズムだ。
ラットを使用した過去の研究では、訓練すればにおいが左側と右側のどちらから来たか判断できるようになると証明されている。今回のモグラによる研究は、哺乳類がこの能力を通常の捕食活動で利用していることを初めて示した。
生物学者のケネス・カターニア(Kenneth Catania)氏はトウブモグラを調査。各鼻孔に入ったにおいの強さのわずかな違いを区別できる能力を活用し、エサを見つけていると明らかにした。
カターニア氏は実験の1つで、円形のケースを利用。半円状にエサ用のくぼみが並んでおり、刻んだミミズを毎回異なるくぼみに入れた。モグラがにおいを嗅ぐ際の気圧変化を検出できるよう、ケースは一時的に密封した。
部屋に入れられたモグラはまず空気を嗅ぎ、5秒と経たないうちにミミズが入っているくぼみに狙いを定めた。「鼻を小刻みに動かすと、一直線にエサへと向かった」と同氏は振り返る。
インド、バンガロールにある国立生命科学研究センターのウピンダー・バーラ(Upinder Bhalla)氏によると、立体的な嗅覚能力は、迅速な意思決定が求められる動物に有用という。
「2回ではなく1回嗅ぐだけでネコのいる方向を特定できれば、生き延びる確率は高くなる」と同氏はメールでコメントしている。
このような嗅覚能力は、私たちを含め、哺乳類の間では非常に一般的であるとバーラ氏は推測している。例えば、カリフォルニア大学バークレー校の神経科学者ノーム・ソベル(Noam Sobel)氏が2010年に実施した研究では、人間も両方の鼻孔を使用してにおいの発生源を特定すると示唆されている。ただし人間の場合、この能力を使えるのは実験などで用意された特殊な環境のみのようだ。
ほーーなるほど。
つか思いもよらなかったですけど、確かに目や耳と同じように鼻腔が2つある以上、匂いをどちらからか距離感をもって捉えることは出来なくもない・・・いや、でも人間はクンカクンカと繰り返さないと特定できないあたり、やはり匂いを立体的に捉えることは出来ていないのでしょう。
どの動物も、鼻腔の位置は近接しているのでしょうけれど、それでも立体的に捉えられるあたり、生きのびるための能力としては凄まじいものがありますね。鼻の能力も、立体的という言葉に置き換えるとより分かりやすい概念か。