「自立支援まで手が回らない」「疲労困憊で、もう限界」。生活保護の申請急増で、自治体の現場から悲鳴が上がっている。読売新聞のアンケート調査でも、財政難などを背景に、職員(ケースワーカー)の補充が追い付かないという自治体が多い。家庭訪問など自立を後押しする取り組みが十分にできないという声も目立った。
関東地方の自治体でケースワーカーをしている女性は昨秋、忘れられない体験をした。
「最近、あの人見ないけど大丈夫?」。担当する60歳代の男性の住むアパートの大家から電話があった。
1か月前に会った時、確かに顔色が悪く、「病院に行こうか」と尋ねたら、「自分で行くから大丈夫」と気丈に答えていた。
アパートに行くと、男性は亡くなっていた。死後約3週間。身内はいない。警察が遺体を運んだ後、大家から「後片づけお願いね」と当然のように言われた。3時間かけて部屋を整理したが、警察官にも言われた。「なぜ病院に連れていかなかったの。ダメじゃない」
自分がいけなかったのか、でも何ができたのか、と苦しんだ。
それでも落ち込んでばかりいられない。担当になってまだ2年目なのに受け持ちは100世帯以上で、国の標準の80世帯を大きく超える。保護費の計算など事務量も膨大で、家庭訪問が手薄になる。精神障害者、独り暮らしの高齢者、元ホームレス……。対応が難しい受給者が増え、休日に「ATMの使い方がわからない」と連絡を受けて駆けつけることも。
「相談に乗ってあげれば、自立できる人もいるのに手が回らない」。女性はこう話すと、「疲れた。1人で抱えるには限界を超えている」と訴えた。
読売新聞が全国の政令17市と東京23区の計40自治体に、生活保護のケースワーカーが足りているかどうか尋ねたところ、「足りない」は7割の28市区に上った。「足りている」は8市区で、無回答は4市区。
国が示すケースワーカー1人当たりの標準受け持ち世帯数は80世帯だが、昨年12月時点の受け持ち数を聞いたところ、90世帯以上という自治体が25市区。このうち6市区は100世帯以上で、最も多いのは台東区の111世帯。80世帯以下は2市区だけだった。
この1年で受給世帯が1500以上増え、約2万3300世帯になった名古屋市。16か所の福祉事務所にケースワーカーが計216人(昨年12月時点)おり、1人平均で105世帯を受け持つ。市の担当者は「毎年10人程度増員しているが、全く足りない。現状では70人程度不足しており、各家庭を訪問する時間がない」と嘆く。
1人109世帯を担当する東京都墨田区も「業務が追いつかず、ストレスから健康を害する職員もいる」。
対応が難しい保護世帯の増加も負担を重くしている。東京都足立区は「多重債務や家庭内暴力、精神疾患などの問題を抱えるケースが増えており、ストレスから体調を崩す職員もいる」としている。
難しい問題ですね。こういうところに労力を割けるほどお金もないんでしょうけれど…。ケースワーカーや介護福祉士といった「福祉」に関してまだまだ発展途上なところが日本の悪いところか。
いや必要と分かっていてもお金をかけないという日本特有の風習がそうさせるんでしょうかね。社会のために、とはいいつつも結局は自分ひとりのお金さえ増えればいい、という感じで。それなのに麻生さんを叩きまくってるのもおかしい気はしますけどね。結局国民の意識の問題なのに。
ケースワーカー
主に自治体の福祉事務所に勤務し、生活保護や福祉などの分野で援護や育成を担う職員の通称。生活保護の場合、資産の有無や環境などを調べ、どのような保護が必要かを判断するほか、生活指導や自立支援も担う。民間施設などで入所者らの相談に乗る人を指すこともある。
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