頭・腹部の水虫、初期治療でまん延防止 汗ばむ季節になると症状が出てくるのが水虫だ。一般に水虫は、足の指の間などに感染することが多いが、2000年ごろに欧米から日本に持ち込まれた新しいタイプの水虫は、おなかなどの胴体や頭部に症状が出るやっかいな病気。現在でも静かに広がりつつあり、これ以上のまん延を防ぐためには、初期症状に注目して適切な治療を受けてほしいと専門家は訴えている。
水虫は、白癬菌というカビの仲間が皮膚表面(角質層)にあるケラチンというタンパク質を栄養にして寄生することで起こる病気だ。新しいタイプの水虫は、白癬菌の一種である「トリコフィトン・トンズランス」と呼ばれる菌によって起こる。トンズランスはもともと中米に見られる菌であったが、1960年代に米国に持ち込まれ、90年代にはヨーロッパにも広まったと考えられている。
皮膚真菌症に詳しい順天堂大学練馬病院(東京都練馬区)の比留間政太郎教授は「トンズランスの特徴は、日本に以前からある白癬菌と比較して感染力が強いこと。そのため
肌と肌をこすり合わせただけで、その部分の皮膚表面に赤い乾燥した湿疹が広がる」と話す。しかも、トンズランスは頭髪の根元(毛根部)を好んで寄生する。顔や胴体にできた湿疹を放っておくと、やがて頭髪部にすみ着き、頭部のかゆみ、ふけ、抜け毛などを引き起こす。
トンズランスは、肌がふれあうことで感染するという特徴により、柔道やレスリングなど格闘技をする人の間で広まることが多い。日本では
2001年に国際試合に参加するような柔道やレスリングの強豪校などで集団感染が報告されはじめ、06〜08年に国内試合での感染が急に広まり大きな問題となった。
天理よろづ相談所病院(奈良県天理市)皮膚科の森田和政部長は「このときは競技団体の啓蒙活動もあり、患者の急拡大はなんとか食い止められた。しかし、トンズランス感染自体は止まっていない。現在でもこの病気で受診する人の数は少なくない」と話す。
患者がなくならない理由について比留間教授は「トンズランスのもう一つの特徴は、強い感染力に比較して症状はマイルドであること。そのため、本人が感染に気づかず毛根部に定着し無症候性キャリア(保菌者)となり、新たな患者を増やしていると考えられる」と話す。実際、比留間教授は大学の柔道部員などを対象に調査を行っているが、現在でも06年当時と変わらず10人に1人の割合で保菌者が見つかり、潜在的な患者数はあまり減っていないと感じている。
森田部長は「格闘技を行っている学生はトンズランスに関する知識があるので、感染に気づいて受診する割合も高いが、そうでない人では気づかずに症状で悩み続けることもある」と話す。一般の人への感染を増やさないためには、トンズランス特有の症状に気づき早めに治療を受けること。
診断方法について比留間教授は「水虫は見た目だけでは診断できない。乾燥した湿疹の表面を粘着テープで採取したり、ブラシで集めた頭髪のふけに含まれる菌を培養したりすることでトンズランスの感染を確認する」と話す。
治療には、従来の水虫と同様、抗真菌薬が用いられる。顔や胴体の湿疹の場合、足の水虫と塗りぐすりを1カ月ほど使用すると完治する。市販薬を用いる場合は抗真菌作用の強い新しいタイプの製品が勧められる。
そして、トンズランスの寄生が毛根部に進んだ場合は治りにくくなる。毛髪の検査で、菌の量が少ない場合は抗真菌薬を含有した市販のシャンプー(コラージュフルフルシャンプー)を3カ月間使い続けることで完治する場合もあるが、菌量が多い場合には爪水虫の治療にも用いられる内服薬を1〜2カ月服用すると効果が高い。
ふけや頭のかゆみは身近な症状だが、なかなか治らない場合は、一度トンズランス感染症を疑ってみることも必要だ。
水虫輸入。
そしてこの湿疹、結構いますね、多分。
コンタクト系スポーツをやっている方はどうぞご注意を。
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