今年から、医学部医学科の四年生は全員、CBTという試験を受けることになります。これはいわばセンター試験の医学バージョン。医学生全体の模擬試験のようなものです。(去年まではお試し期間)
どういったメリットがあるのか?といえば、一番大きいのは「
研修医先に面接に行く時のマッチングに使える」という点でしょう。マッチング制度により、医学生が病院を選ぶことができるようになりましたが、病院側が雇うかどうかを判断する基準の1つとしてCBTの結果が用いられるわけです。「貴方は4年生の段階で、全国の医学生のうち何番でした」というデータが提示されるので、CBTで良い点だった人は高評価、悪い点だった人はそれなりに、と明確に示すことができるわけです。
点数至上主義というわけではありませんが、CBTの点数というのはその人を表すことができるといっても過言ではないでしょう。自分で進んだ大学という専門分野の道で、しっかり勉強することができていたのなら、それは大いに評価されて然るべきです。大学名なんかよりもよっぽど有用な指標となると思います。(受験勉強を頑張った人と医学の勉強を頑張った人のどちらが医者に向いているか、言わずもがなですね)
と、いうことを前提として置いているため、学生は自分でしっかり勉強するでしょう。そこが狙いなんですよね、結局のところ。6年でしか勉強せずに国試ギリギリで受かる人など欲しておらんということです。要するに4年も大学へ通ってダレ始める医学生の、
モチベーション向上のための試験。
試験内容ですが、コンピューターによる選択式の試験です。筆記ではありません。ついでに言うと、
問題も全員ばらばらです。1万ほどある問題のうち、数百問がランダムで提示されます。ここがCBTのミソです。
まずこのメリットは、カンニング防止。医学生たるものカンニングなど…という理想論に基づかないのもまた、学生。プロ意識もへったくれもないので本当に勉強していない人はカンニングという手段に出るでしょう。ですがCBTは隣の人と問題が違うため、カンニングはできません。
次に、日程を統一する必要がないこと。センター試験を思い浮かべていただければ分かりますように、試験というものを全国規模で行おうと思うとその日程や時間など、事細かに決めなければなりません。ですがCBTは問題がランダムなので、そこまで日程を統一する必要がありません。例えば大学によっては1学年分のパソコンを用意することができないでしょう。そういう時は2日に分けて実施します。それでもいいんです。問題が違うんですから。
問題内容は、多岐に渡ります。4年生の段階でCBTを受けて皆が苦しむ分野、それが「
基礎医学」です。勿論、臨床科目もありますが、生理学、生化学、解剖学などの医学の根底となる分野の問題が多く出るのもCBTの特徴でしょう。基礎を確認する意味でもCBTを義務付けることに大きな意味があると思いますが、まぁーここの分野はとにかく暗記暗記なので、厳しいといえば厳しい。
本屋の医学書コーナーにはCBT対策の問題集などが沢山出てきているので閲覧してみると良いでしょう。CBTで点数が取れなかったら、言い訳できませんからね。
参考:
社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構 臨床実習開始前の共用試験目的:学生の能力と適性についての一定水準を確保するために実施する全国共通の標準評価試験。
運用: 参加大学が(社)医療系大学間共用試験実施評価機構を設立し、全国共同利用施設「医歯学教育システム研究センター(MDセンター)と協力して運営・実施する。
内容: 基礎・臨床の知識の総合的理解と問題解決能力をコンピュータを用いた客観試験(CBT)で評価する。 態度・臨床技能を客観的臨床能力試験(OSCE)で評価する。
利用: 標準評価試験としての共用試験(CBT、OSCE)の成績を、各大学固有の成績と併せて総合的な臨床実習開始前の成績評価・進級判定等の指標として利用する。共用試験成績の評価基準は、各大学の臨床実習の在り方に基づき、各大学が責任をもって設定する。
Computer Based Testing (CBT)について1. CBTは、臨床実習開始前までに修得しておくべき
必要不可欠な医学的知識を総合的に理解しているかどうかを評価する試験です。
2. CBTの試験問題はモデル・コア・カリキュラムの項目と内容に準拠して出題されます。各大学のカリキュラムの関係で臨床実習開始前に履修していないコア・カリキュラム中項目等がある場合の採点については個別に対応する予定です。
3. CBTは、コンピューターを用いて問題プールから受験生ごとに異なる問題がランダムに出題されます。ランダムに出題されても
受験生ごとの平均難易度に差がないように調整されます。平均難易度については、既に受験生ごとの出題問題セット間の差が極めて小さいことが明らかとなっており、さらに出題問題の組合せ段階で難易度に差がないよう調整される。また、統計処理法(項目反応理論 Item response theory IRT)に基づいて難易度の検討を行い、不公平がないように調整されます。
4. CBTは、
単純5肢択一問題(約240設問)および症例が提示された課題についての5肢択一問題の
順次解答連問と多肢選択連問(合計約80設問)からなります。試験時間は合計約6時間です。
5. 正式実施時には、CBTのトライアルにより各試験問題(設問)の正答率・識別指数・難易度等について、適切な問題としての評価を受けて蓄積された試験問題 (プール問題)について採点されます。
トライアル期間中は、主に適切な問題の蓄積のために新作問題が出題されます。正式実施においても、さらに適切な問題の蓄積を図るため、一部新作問題を出題しますが、これは採点対象とせず、試験実施後の評価によって適切なプール問題として蓄積します。
6. CBTは
各大学ごとに実施されます。大学の設備設置状況によっては2〜3日間に亘って実施されることがあります。
7. 共用試験(CBT・OSCE)は、臨床実習開始時期に合せて、年2回実施されます。学年の前期から実習開始の場合は、その前(前年の12月〜当該年の3月までの期間内)学年の後期から実習開始の場合は、その前(当該年の6月〜9月までの期間内)に実施されます。
8. CBTの成績は各大学からのデータ収集後約10日以内に各大学に返却されます。
9. CBTでは追試・再試が可能です。ただし、同一の試験実施期間内に限り、追試・再試とも1回に限り受験できます。追試は病気など正当な理由で本試験を受験できなかった場合に追加的に行われる試験です。再試は、受験したが成績不良等の理由で再度受験の機会を与える試験です。
10. 共用試験CBT試験問題の特徴
従来の講座・学科目単位の試験では評価が困難であった「
基礎と臨床の医学的知識を有機的に統合的して理解している」ことを評価することに主眼をおいています。モデル・コア・カリキュラムに準拠し、臨床に必要不可欠な病態発生にかかわる基礎的に重要な原理と知識、症状・症候発生の鑑別診断およびその病態生理、病態時の正常機能と構造の破綻状況などについて出題されます。症例提示順次解答2〜4連問や多選択肢2〜4連問のみならず単純5肢択一問題においてもこの基本方針に基づいて問題が作成されています。
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医学部4年生のためのCBT対策室