[精神]の記事一覧

2009年07月12日

統合失調症はグリア細胞のわずかな変質でも発症する

統合失調症グリア細胞のわずかな異常も一因

 統合失調症の主要な症状の一つである認知障害は、グリア細胞と呼ばれる神経細胞を取り巻く細胞のわずかな構造的な異常によってもたらされていることを、自然科学研究機構生理学研究所の研究チームが突き止めた。

 同機構の池中一裕教授(副所長)、田中謙二助教、宮川剛・客員教授らは、グリア細胞の一つの遺伝子にのみ異常のあるモデルマウスを使い、神経細胞間を電気信号が伝わる速さに異常がないかどうか調べた。この結果、信号の伝わるスピードは半減しており、電子顕微鏡で観察したところグリア細胞の構造にわずかな異常が見られることを発見した。わずかな異常というのは、神経細胞の突起に巻き付いているグリア細胞の端がきちんと閉じていないため一部がはみ出している状態になっていることだった

「神経細胞そのものではなく、グリア細胞のわずかな異常が統合失調症患者に見られるような異常行動(認知障害)にかかわっているというのは驚くべき結果だ」と研究チームは言っている。

 統合失調症は人口の1%程度に見られる代表的な精神疾患で、陽性症状(妄想や幻覚)、陰性症状(社交性の欠落)に加え、今回の研究にかかわる認知障害(作業記憶、空間学習、感覚統合の障害)が、3つの大きな症状と言われている。このうち妄想や幻覚などの症状は脳内の神経伝達物質ドーパミンの過剰分泌による可能性が高い、という研究結果を最近、放射線医学総合研究所の研究者が発表している。



 劇的に脳の大まかな部分が変貌しているわけではなく、グリア細胞のほんのちょっとした違いによってああいう症状が起こるのだとすると、病因解明の大きな一歩か。

 ですが統合失調症は治療薬で治る病気でもありますので、やはりここは一般の方にも統合失調症の正しい知識を持っていただいて、そういう症状の人がいたら病院に連れて行く、治療中、治療後も偏見を持たないことが大切だと思います。

関連
医学処:統合失調症は、海馬の歯状回が未成熟で機能していない。
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2009年07月07日

ビールを飲むとホッとするのはIGF−1が高まるため。

ビールとストレス

 ビールを飲んだ時になぜ「ホッ」とした気分になるのか。そのメカニズムを名古屋市立大大学院医学研究科の岡嶋研二教授、原田直明准教授のグループが明らかにした。

 グループは、細胞増殖や神経機能を活性化させる働きがあり、脳で増加すると不安をやわらげたり気分を静める効果があるタンパク質「IGF−1」に着目した。

 マウスに1日1回0・2ミリリットルのビールを1カ月間飲ませた結果、IGF−1が脳を含む全身で2倍に増加。一方で、胃や腸の知覚神経を調べると、神経が刺激され、神経伝達物質が放出されていたことが分かった。

 アルコールに加えて、ビールに含まれるホップの香り成分や炭酸も知覚神経を刺激することから、これらの成分による胃や腸での刺激が脳の内部にある海馬や、リラックスさせる副交感神経を刺激し、脳を含む全身のIGF−1が増加したと考えられるという。

 岡嶋教授は「ビールを毎日飲むことで、ストレス解消につながる。その心地よさが『とりあえずビール』となる理由でしょう。とはいえ飲みすぎは良くない」と話している。



 アルコールの作用だけじゃなかったんですね。

 ホップ、そして炭酸も。全てよし。ビールはまぁ飲みすぎなければアルコール濃度もそこまででもないんで、いいんじゃないでしょうか。適量が一番ですけどね。適量守れないのならば最初から飲むべきではありません。

 ああこんな時間だというのにビールのみたくなってきた。明日もあるんで飲まないで寝ますけど。笑

関連
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2009年07月05日

自閉症の染色体異常を再現したマウスの作成に成功する。

“自閉症マウス”を作製 人の障害解明に期待

 自閉症の人の一部でみられる染色体異常を再現した遺伝子操作マウスをつくるのに、広島大の内匠透教授(神経科学)らのチームが成功し、26日付の米医学誌セルに発表した。

 実験で通常のマウスとは少し違った行動を示すのを確認。内匠教授は「まだ初歩段階だが、人の自閉症の仕組みを解明するための“動物モデル”として役立ちそうだ。原因遺伝子を調べたり、自閉症の行動を検証したりできる」としている。

 自閉症は脳の発達障害の一種で、社会性や対人関係に問題が出るのが特徴。複数の遺伝子が関係するとみられるが、まだ未解明な点が多い。

 チームは、自閉症の人でみられる遺伝子異常で数%と最も頻度が高い15番染色体の一部領域の重複に着目。同種の染色体重複を持つマウスを作製し、通常のマウスとの行動の違いを調べた。

 その結果、父親から染色体異常を受け継いだマウスは、近くにいる別のマウスに対する反応が少し鈍い一方で、学習した反復行動を繰り返すなどの違いがみられた。内匠教授は「自閉症の特徴と似ている」としている。母親から受け継いだ場合は差がなかった。



 自閉症も精神科で診てはいますけれど、最近になって精神科の疾患といっても脳の器質的・機能的な異常であることが分かりました。

 自閉症の画像診断なども進んでいますし、このように自閉症マウスを作ることもできるようになりました。もしかすると近いうちに、自閉症の治療法も確立されるかもしれません。今後大きく伸びる分野ではあると想います。

関連
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2009年06月17日

ハーバード大学が同性愛・トランスジェンダー学を新設する

「同性愛」学の教授職を新設へ、ハーバード大

 米名門のハーバード大学(Harvard University)が、同性愛やトランスジェンダー学の教授職を新設することになった。関係者が3日明らかにした。

 同大のゲイ・レズビアン連盟によると、教授職の新設にかかる150万ドル(約1億4500万円)の費用は同連盟のメンバーならびに支援者が提供し、同性愛研究の分野で著名な学者を定期的に招聘したいとしている。

 初代教授は2010年の秋学期に向けて任命され、文理学部で女性学委員会の協力のもと、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー、セクシャリティについての授業を行う。

 また、教授職には、1920年代後半から亡くなる1950年まで同大教授を務めたF.O.マシーセン(F.O. Matthiessen)氏にちなんだ名称が付けられる予定という。マシーセン氏は、ボストンのホテルで投身自殺したが、同性の恋人であった芸術家ラッセル・チェイニー(Russell Cheney)氏の死を悲観してのものだったと考えられている。



 進んでるなぁ。名門中の名門、ハーバード大で同性愛学を学べるとは。

 同性愛の学問って要するに社会との折り合いについてとかですかね。心理学的な側面になるんでしょうか。日本のように同性愛がほとんど受け入れられていない国にこそ、こういう学問は需要がありそうですけれどね。同性愛者の社会からの抑圧は、おそらく尋常ではないでしょう。それをサポートするためのカウンセリングなどが必要だとは思うのですが、なかなか難しいですね。

関連
医学処:ゲイやバイの男性の14%が自殺未遂を経験している。
医学処:異性愛者でも1割は同性とのセックス経験がある
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2009年06月07日

躁鬱病の原因となる遺伝子を名古屋大学が特定する。

マウスの「そううつ」、遺伝子を特定=精神疾患の原因究明に有用か−名古屋大

 人間のそううつ症状と関連があるとされるマウスの状態を制御する遺伝子の一つを、名古屋大大学院の海老原史樹文教授らのグループが特定。研究結果を25日付の科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」電子版に発表した。この状態のマウスは抗うつ薬の試験に使われており、研究成果が精神疾患の原因究明や薬の開発などにつながる可能性もあるという。

 海老原教授によると、マウスの状態は「行動的絶望」といい、人間のうつ状態に近く、強いストレスが原因であきらめたように動かなくなる。

 同教授らは、逃げ場のない水槽内を泳がす「強制水泳テスト」などをマウスに実施、ストレスを与える実験を重ねたところ、通常陥るはずの行動的絶望にならず、そう状態に近くなるマウスがいることが分かった

 分析の結果、これらのマウスは「Usp46」という遺伝子が欠損していたことが判明。正常なUsp46を導入したところ、そう状態から行動的絶望に変わったといい、この遺伝子が関係していることが特定されたという。



 結局のところ鬱病や躁病は脳の分泌物質の異常によるものです。ストレスが原因というわけではなく、ストレスが「誘引」という認識が正しいと思います。

 マウスによる研究の結果、それらの原因とされる遺伝子が特定されたのは、精神医療において大きな一歩だと思います。

 日本ではまだまだ偏見が根強い。どう研究が発達しても、やはり精神の異常というのを受け入れられないものなのかもしれません。ならば原因の特定と、より確実な治療法の確立で少しでも鬱病に対して偏見が取り除かれれば、生きにくい社会も徐々に改善してくるのではないかと思います。
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2009年05月31日

不眠症の克服にはトークセラピーが有効である。

不眠症の克服にトークセラピーが有効=研究

 不眠症の人が眠れるようにするには、依存リスクのある睡眠薬を継続的に使用するよりも、トークセラピーが効果的であることが19日に発表された研究で分かった。

 カナダ・ケベック州のラバル大学の研究チームが、慢性的な不眠症と診断されている大人160人を対象に、トークセラピーを受けた場合と睡眠薬を服用した場合を比較した。

 最初の6週間は、毎週グループセラピーを受けたグループと毎晩薬を服用したグループの両方に効果がみられ、およそ6割の人が早く寝付けたうえ、長く眠れたと、研究者のチャールズ・モリン氏は記している。

 その後の6カ月間では、セラピーを受けたグループのほうが、必要に応じて薬を服用したグループよりも眠ることが出来たという。最も効果的だったのは、患者が不眠の原因となっている問題を話すことが出来る、個別に行った隔月のトークセラピーだった。

 このセラピーでは、患者はベッドでは睡眠だけに集中し、読書やテレビの視聴、悩んだりするのは避けるよう指導された。もし20分経っても眠れないときは、いったん起きて、眠くなった場合にだけベッドに戻るようにし、毎朝同じ時間に起きるようにとも言われた



 不眠の原因は何だったのか、というところでしょうか。

 脳の伝達物質の不具合によるものなのか、それとも一日のリズムの乱れによるものなのか。多くの場合、生活リズムが不安定で不眠に陥ったというケースが考えられます。また、ストレスによるもの、ということも考えられます。

 トークセラピーによって睡眠を促す生活習慣を心がけること、毎朝同じ時間に起きてリズムを整えることで不眠が改善されたのではないかな、と。日本ではなかなかここまでやってくれるところはないですけれど、理論的には自分で出来ることだと思うので、眠れなくて困っている方はやってみてはいかが。

参考:GIGAZINE 不眠症になる10の原因

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医学処:魚も不眠症になる。
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医学処:5人に1人が、眠るために酒や薬を使っている。
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2009年05月24日

かかりつけ医に、うつ病の早期発見のための研修を行う。

かかりつけ医のうつ病研修、県が初実施へ

 自殺との関連が指摘されている「うつ病」の早期発見・治療を目指し、県は初めて、「かかりつけ医」を対象に研修を開く。県健康づくり支援課は「身近な医師に安心して相談できる態勢をつくり、自殺防止につなげたい」としている。

 研修は、県内の全診療科の勤務医、開業医が対象。自殺の現状やうつ病の治療法、精神科医との連携のあり方などについて学ぶ。研修修了者には修了証書を渡し、県ホームページでも公表する予定だ。

 県警によると、昨年の自殺者数は3年ぶりに増え、自殺した598人のうち、うつ病が原因とみられるのは142人だった。

 うつ病は、頭痛やめまい、肩こりなどの身体症状が先に出ることも多い。日本医師会の「自殺予防マニュアル」によると、「抑うつ症状」の人が最初にかかる診療科は、約6割が内科で、精神科・心療内科は1割に過ぎず、「自殺予防で医師一般が果たす役割は極めて大きい」とする。

 研修は、8月8日に県松本合同庁舎、10月31日に千曲市更埴文化会館である。先着で各150人。県ホームページの健康づくり支援課のページから申し込める。



 たとえ内科医であっても、正しい知識さえあればうつ病の可能性を見出すことができます。そのための専門的な知識を精神科医などと共有することで、多くの潜在的なうつ病の方に正しい治療を施すことができるでしょう。

 それこそまさに地域に密着した開業医の役割です。一番発見しやすいであろう場所で見過ごしてしまうと、その人の病状が悪化して自殺に繋がりかねません。

 こういう試みは素晴らしいと思います。是非多くの方に学んでもらいたいですね。

関連
医学処:自殺の原因となる鬱病の「不眠」を見逃さないことが大切
医学処:政治家こそうつ病を受け入れて偏見を無くすべきである。
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2009年05月12日

意欲に関連する脳内たんぱく質「X11L」を発見する。

葛藤を処理する脳基盤の発達に脳内タンパク質「X11L」が関与

 彼女(彼)と友達になりたい、だけど恥ずかしくて声をかけづらい。相反する感情そのものである葛藤は、日々の生活の中でさまざまな行動を生み出します。この葛藤を処理する脳のメカニズムは、まだ十分に分かっていません。

 そもそも感情がどのように生まれるのか?葛藤はどのように処理されるのか?その結果どういう行動を決定するのか?などといった疑問の解明は、脳科学の大きな挑戦の一つです。これまで作製された、感情制御に異常を引き起こすモデル動物の多くは、「不安・恐怖心が強く、うつの性格を示し、社会行動が低下、自発的な行動量も下がる」といった具合に、複数の感情異常が混同し、ある特定の感情に限定した研究ができませんでした。

 脳科学総合研究センター行動遺伝学技術開発チームは北海道大学薬学研究院の研究グループと協力し、遺伝子欠損マウスを用いて、新たな行動試験を含めさまざまな試験を行いました。その結果、タンパク質「X11L」が、葛藤を処理する脳基盤の発達で大きな役割を担っていることを発見しました。このタンパク質が欠損すると、葛藤下では消極性は変わらず、積極性だけが低下することが明らかとなりました。例えばこのマウスは、自分の縄張りに入ってくる侵入者を探索する行動が少なくなり、競争に負けやすくなりました。X11Lを欠損させた脳に、遺伝学的手法を使って発達期にX11Lを補ってやると、失った積極性や社会性の低下が回復し、X11Lが葛藤処理をする神経機構の発達にかかわっていることが裏づけられました。

 意欲や社会性を制御する脳機構の解明に新たな道筋を与えると期待されるとともに、自閉症や統合失調症などによる社会行動の低下や興味の喪失に対する治療戦略の探索に有効と注目されます。



 おおおおお。これはなんて面白い研究。

 人間のモチベーションや性格も、やはり突き詰めれば脳の物質の伝達の問題なのでしょうねぇ。そこまで分かるとかなり何でも出来てしまいそうです。極端な性格の違いや意欲の変異というものは精神科領域で病気として扱われますが、それらの治療法にも結びつくかもしれません。もっといえば病気とまではいかなくても人格障害の克服などにも結びつくかも。さすが理研というニュースでした。
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2009年05月11日

自閉症を持つ子供は、脳内の扁桃体が大きくなっている。

自閉症の兆候、扁桃体の大きさで判別可能か 米研究

 脳機能障害のひとつ「自閉症」を持つ子供の脳内では、「扁桃体」と呼ばれる部分が通常より大きくなっていると、米ノースカロライナ大学の研究者が発表した。自閉症の兆候を、乳幼児期の扁桃体の大きさを調べることで判別できるのではないかとしている。

 自閉症は脳機能の障害により生じる、発達障害の一種。他者とのコミュニケーション能力が低いといった特徴がある。子供150人に1人の割合で見られるとされ、米国では近年、1日あたり67人が新たに判明するなど、増加傾向にある。

 ノースカロライナ大学のジョゼフ・ピーベン博士はMRI(磁気共鳴断層撮影)を用いて、自閉症の子供50人と、通常の子供33人の脳を2歳時と4歳時で調査。その結果、自閉症児は平均して、扁桃体が13%、肥大していた

 扁桃体が大きくなり始める時期がわかれば早い段階で対応できるとして、扁桃体の大きさを調べることで自閉症の兆候が判断できるのではないかと指摘。現在は保護者が扁桃体の大きさを調べることはできないが、将来的には診療判断の有効手段になりえるとしている。



 自閉症の画像診断。早期に出来ればより対応も早く出来ますからね。児童精神医学の画像診断も今後伸びていく分野だと思います。

 あとは何故扁桃体が大きくなるのかを考察できれば、治療法確立に向けて一歩踏み出せるかも。

関連
医学処:自閉症児に対する理解を求めるシンボルマーク
医学処:自閉症の発症原因はニューロリジンの突然変異にあった
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2009年05月10日

消防士のほうが高所恐怖を感じやすい。

消防士も高〜い所が怖〜い 「恐怖度」調査

 屈強な消防士も実は高い所が苦手―。東北大大学院文学研究科の仁平義明教授(心理学)と大学院生の佐藤拓さん(29)が、こんな調査結果をまとめた。

 調査は2007年、宮城県の男性ベテラン消防士(平均年齢46.5歳)105人と、仙台市内の大学生男女289人を対象に実施。恐怖の対象として84項目を挙げ、恐怖をどの程度感じるかを5段階で記入してもらった。

 調査結果によると、「傷口を見る」「うじゃうじゃいる虫」「無視される」といった精神的な恐怖は、消防士の方が大学生よりも低い度合いを示した。だが、「高い場所」「高いビルから下を見下ろすこと」との項目だけは消防士が上回った

 仁平教授は「高所恐怖は、女性より男性の方が高いことは心理学で知られていたが、大学生と比べ消防士の方が高いとは新鮮だった。恐怖感情は安全弁。高所の危険を知っている消防士だからこそ、高い指数を示したのだろう」と分析する。

 経験を積むごとに視野が広がり、危険察知能力も高くなる傾向があるようだ。仙台市青葉消防署の大町正人消防司令補(42)は「職務に就いて10年たった30歳すぎに、あらゆる危険を想定できるようになり、高所を怖いと思うことも確かにあった」と振り返る。

 仁平教授は「たくましいイメージを持たれる消防士は『弱い自分』を出しにくくなり、精神的に追い込まれることもある。自分の内なる恐怖と闘いながらも業務に当たっていることが調査で分かった」と話している。



 恐怖というものは、人間が生きるために必要な感情です。人生を総括的に考えて、恐怖を感じやすい人と感じにくい人では感じやすい人のほうが長生きする気がします。危機意識が高いということは安全な行動をするわけです。

 消防士も、高いところの危険を知っているからこそ、高い場所に恐怖感情を抱くのでしょう。弱い、とかそういうのではなく、自身の恐怖感情をあるがままに受け入れるからこそ、立派な消防士になれるのでしょうね。
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2009年05月07日

治療抵抗性統合失調症治療薬「クロザリル」を承認へ。

ノバルティス、治療抵抗性統合失調症治療薬「クロザリル」の製造販売承認を取得

 ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:三谷宏幸)は、4月22日、治療抵抗性統合失調症の治療薬として、「クロザリル(R)錠25mg/100mg」(一般名:クロザピン)の製造販売承認を取得しましたのでお知らせします。

 「クロザリル」は、日本で初めて「治療抵抗性統合失調症」の適応症を認められた抗精神病薬です。本剤は、2種類以上の抗精神病薬を十分な量、十分な期間投与されたにも関わらず、十分な効果が得られない患者さんに対する治療薬として、すでに世界97カ国で承認されています。なお、日本においては統合失調症の入院患者さんのうち9%の患者さんが、本剤の適応となる治療抵抗性であると考えられます。

 クロザリルは、1969年にオーストリアで最初に抗精神病薬として承認を取得した後に、1975年フィンランドで、発売後6カ月間で8名の死亡を含む16名の無顆粒球症の発現が報告されたため、各国で販売中止や開発中止の措置がとられ、日本での開発も中止されました。しかし、その後、本剤は、既存の抗精神病薬で効果がない患者さんに対して有効性があることが示され、治療抵抗性の統合失調症に対し、血液検査を義務付けて使用されています。さらに、アメリカ、イギリスなどでは、血液検査の確実な実施と処方の判断を支援する「クロザリル患者モニタリングサービス」(Clozaril Patient Monitoring Service、以下CPMS、アメリカでの呼称はClozaril National Registry )を導入しています。クロザリルは、このような厳しい安全管理のもと、1975年に発売されて以来、世界で380万患者・年の患者さんに使われています。

 ノバルティス ファーマは、日本においても、無顆粒球症、好中球減少症などの早期発見・早期対処を目的としたCPMSの導入により、厳重な安全管理のもとに本剤が使用されるように推進していきます。

 今回の承認にあたっては、CPMSに登録された医療機関、医師、および保険薬局においてのみ、登録された患者さんに処方がなされるよう、承認条件により義務付けられております。このため、適正使用の推進とCPMSの適切な運用を行えるよう有識者(医師、薬剤師、法律・倫理の専門家等)からなる第三者委員会を設置することになりました。

 クロザリルは、国内臨床試験において、治療抵抗性統合失調症の患者さんにおいて57〜67%に改善が認められました。また、5年近くの長期投与においても、精神症状のコントロールが可能であることが認められています。副作用は無顆粒球症、好中球減少症、耐糖能異常、てんかん、悪性症候群、痙攣、腸閉塞などの重大な副作用を含めて、ほぼすべての患者さんに発現しています(77例中76例)。

 今回の承認取得に際し、代表取締役社長 三谷宏幸は以下のように述べています。

 「クロザリルは、治療抵抗性の統合失調症に苦しむ患者さんやご家族から発売を待ち望まれてきました。このような患者さんに真に役立つ治療薬を医療の現場に届けられることを大変うれしく思います。本剤に関しては、安全性を中心とした情報提供を最優先に行うことが重要であると考えており、委員会の先生方や、医療関係者、当局の方々のご指導とご協力を得て、徹底した安全管理を図り、患者さんの治療に貢献していきたいと考えています」

 ノバルティス ファーマは、CPMSの適切な運用を通じ、今まで治療が困難であった治療抵抗性の統合失調症の患者さんが、クロザリルによって安全に治療できるよう、適正使用の推進に努めていきます。



 クロザリル、副作用もあるようですが知識のある人が適切に使えば、治療抵抗性のある統合失調症の患者さんにも有効とのことです。

 精神科領域の薬で新薬が承認されるのはいいことですね。使う人さえ間違えなければより多くの人の症状を緩和することができますし

関連
医学処:統合失調症ってどんな病気?原因・症状・治療について。
医学処:統合失調症は、海馬の歯状回が未成熟で機能していない。
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2009年04月21日

ADHDの小児新薬「ストラテラ」が承認される見通し

ADHD新薬承認へ 市民側、副作用・依存性を懸念

 ADHDの小児新薬「ストラテラ」が承認される見通しになった。2008年に承認された日本初のADHD治療薬「コンサータ」(塩酸メチルフェニデート)は、アメリカなどでも問題となった「リタリン」と同じ主成分。すでに「コンサータ」は08年で482万錠が出荷されているが、「ストラテラ」が承認されれば、「コンサータ」に代わり、ADHD治療薬として主流になることが予想されている。

 ストラテラは「アトモキセチン塩酸塩」の商品名。2007年6月に日本イーライリリー社が承認申請を行なっていた。抗うつ剤においては「パキシル」や「ルボックス」などのSSRIと呼ばれる薬が主流だが、新たに「ミルナシプラン」などSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれる新薬群が登場している。ストラテラはNRI(ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれており、抗うつ剤SNRIに類似している

 懸念されているのは副作用と依存性の問題。日本イーライリリー社は、リタリンなどの中枢神経刺激薬と異なり、不眠、覚醒・興奮、薬物依存・乱用、運動障害(チックなど)などの発現頻度が低い、と主張。厚労省が行なった国内臨床試験では、頭痛、嘔吐、肝機能異常、幻覚などの副作用が確認されている。また、カナダでは41件の「自殺企図」が報告された。こうした状況を踏まえ、厚労省は医師、患者、家族、教師を対象にした適正使用/薬品ガイドなどを作成し、ADHDに対する理解と薬のリスクを周知することを前提に、承認する方針だ。

 しかし、1999年にSSRIが承認された当初も、副作用や依存性の問題は「ほとんどない」と言われていた。ところが、副作用・依存性の問題がここ数年、とくに指摘されている。昨年1月には、すべての抗うつ剤によって24歳未満の自殺リスクが高まることが添付文書に加えられた。また先月にはSSRIを服用した患者のなかで暴力をふるうなどの他害行為についても厚労省に報告されている。報告があったのは2004年〜08年にかけての計42件(10代の他害行為は3件)。42件のうち5件は薬剤との因果関係が「確実」と報告された。

 ストラテラの依存性については、厚労省、日本イーライリリー社ともに、「依存性は低い」との見解を示している。しかし、薬自体の依存性が低くても、薬をやめる・減らすことで離脱症状などが出るため「やめたくてもやめられない」というケースがあり、今回の新薬承認について懸念する声もあがっている。



 副作用など心配な面はありますけれど、治療薬として多くのものが認可されると治療の選択肢に幅が出ますからね。

■メモ「ADHD」

 「ADHD」とは1980年に米国精神医学会で診断基準が確立された「注意欠陥多動性障害」のこと。日本では90年代以降、注目され、03年には文科省が米国精神医学会によるDSMーWを参考に定義と判断基準を示した。

 これによると、ADHDの定義は「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力及び、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」となっている。具体的には「不注意」(気持ちが集中しずらい/気が散りやすい)「多動性」(過度に走りまわる/過度にしゃべる)「衝動性」(順番を待つのが難しい)などの状態が継続的に複数回、見受けられる状態を指す。

 ただし、診断が医師の主観によるところが大きい、などの指摘がある。

関連
医学処:ADHDの治療薬「コンサータ」、いよいよ発売へ。
医学処:広汎性発達障害児は療育法によって能力の伸びに差が出る。
医学処:ADHDの治療に関して、親と医者の間で認識の差がある。
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2009年04月20日

ブッシュ政権が容認した10種類のCIA尋問方法

ブッシュ前米政権が容認した10種類のCIA尋問手法

 16日公表された、米中央情報局(Central Intelligence Agency、CIA)が2002年に国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)幹部のアブ・ズベイダ(Abu Zubaydah)容疑者に対して行おうとしていた10種類の過酷な尋問手法。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前米政権下の司法省がCIAに対して、2002年8月1日付けの覚書で、容認できる手法として示したもの。

・attention grasp
 尋問官が容疑者の襟首を、両手でつかむと同時に素早く手前に引き寄せる。

・facial hold
 柔軟性のある仮設の壁を作り、かかとがその壁についた状態で容疑者を立たせる。尋問官は、容疑者を手前に引っ張った後、壁に押しつける。疑者は肩甲骨を壁に打ちつけることになる。むちうちを避けるため、容疑者の頭部と首は頭巾かタオルで固定する。仮設の壁は、容疑者にショックを与えるため、ぶつかった時に大きな音が出るようにする。

・facial hold
 容疑者の頭の両側を手で固定して、頭を動かせないようにする。

・facial slap(insult slap)
 容疑者のあごの先から耳たぶまでの間を、指を少しだけ開いた手で平手打ちをし、ショックや驚き、さらに屈辱を与える。

・cramped confinement
 容疑者を体の自由が利かないような狭く、暗い部屋に監禁するもの。部屋の広さはさまざまで、監禁時間は立ったり座ったりできる部屋ならば最大で18時間まで、座ることしかできない狭い部屋なら2時間程度までとする。

・wall standing
 肉体的に疲れさせることが目的。容疑者を壁から約1.2-1.5メートル離れた場所に、足を肩幅の広さに開かせて立たせる。腕はまっすぐ前方の壁に伸ばし、指先だけで全体重を支えるようにする。動いたり手や指の場所を移動するのは禁じる。

・stress positions
(1)容疑者を足を伸ばした状態で座らせ、肩の高さで腕を上げ続けさせる。
(2)容疑者を床にひざまずかせ、上半身を45度の角度で後ろに反らさせる。

・insects placed in a confinement box
 狭い箱の中に、テロ容疑者と昆虫を閉じこめるもの。昆虫は害のない種類とする。(アブ・ズベイダ容疑者が昆虫が苦手だとの情報に基づく)

・睡眠遮断

・水責め

 覚書は、これらの尋問手法は「精神的・肉体的に激しい痛みを与えるものではない」ため、拷問ではないとしている。



 精神的にダメージを与える拷問ばかりですね。肉体的にはさほどではないにしろ、どれもこれも嫌なものばかり。

 最近はメディア等で簡単に報道されてしまうため、尋問といってもこういう肉体に残らないものが多いのでしょう。

 昔はむしろ肉体にダメージを与えるような尋問と拷問の中間のようなものばかりだったんでしょうけどね。

 本当かどうか知りませんけれど、十年以上前に読んだ落合信彦の小説の1シーンが印象的です。

 相手の手足を椅子に拘束し、目隠しをして、その周りを拷問者がゆっくりと歩き、数分ごとにフォークなどの鈍い刃のもので身体を刺す。口を割るまでそれを繰り返し、徐々に刺す間隔を短くしていくというもの。いつどこで痛みを与えられるか分からないという精神的ダメージを与えるとともに、瞬間的に激痛を加えられる。書いているだけでその恐ろしさが体感できそうなぐらいです。
posted by さじ at 01:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神

2009年04月16日

政治家こそうつ病を受け入れて偏見を無くすべきである。

精神科医、国際医療福祉大学教授・和田秀樹

 自民党幹部が大分市で行われた党の県連大会で、「うつ病で休業している先生はたくさんいる。国会議員には一人もいない。そんなに気が弱かったら務まらない」と発言したそうだ。

 この発言は精神科医として看過できない。日本の自殺は年間3万3000人。先進国では自殺率はトップである。さらに44歳までの成人の死因の1位でもある。欧米の調査では、その7、8割がうつ病がからんでいるとされる。

 もちろん、精神科にかかっていてもうつ病で自殺する人はいるが、助けられる命はかなりの数に上るはずだ。

 そして、うつ病というのは、気が弱いからかかる病気ではない。それまで活躍していた政治家や経営者をも襲う誰もがなり得る病である。もしそのような偏見のために精神科の門を叩けない人がいるなら、むしろその誤解を解くのが為政者の役割ともいえる。

 ただ、怒っていても始まらないことにも気づいた。

 一般の人より情報が豊富なはずの政治家でさえ、この病気を正しく理解していないのであれば、むしろ彼らにそれを理解してもらうことのほうが、自殺する人を減らせるし、国益にもかなうはずだからだ。

 自殺予防に最も有効とされるのは、地域の人たちに精神疾患に対する正しい知識を提供し、その偏見を取り除くこと、そして、援助を求めることへの抵抗を減らすとともに、どこに援助を求めたらよいかを伝える啓蒙活動、自殺予防教育とされる。

 実際、この対策でフィンランドは、現在の日本の自殺率より高い状況であったのを改善し、3割以上も自殺者数を減らすことに成功した。新潟県の旧東頸城郡では、メンタルヘルスに対する正しい知識を提供するとともに、高齢者のうつ病を早期に、集中的に治療するなどの対策を行ったところ、約10年の間に高齢者の自殺率がなんと7割以上も減った。

 国会議員にうつ病が一人もいないという発言を前述したが、実は、うつ病というのは、かなりありふれた病気である。アメリカの統計では、生涯のうちにかかる率は男性で5〜12%、女性では10〜25%におよび、WHOの推計では現時点でうつ病になっている人は3%に上る。

 実際に、涙目になったり、空虚感、体重減少、不眠、疲れやすさ、思考力や集中力の減退などの症状のうち5つ以上が2週間以上続けば、うつ病と診断される。

 テレビの記者会見で涙目になっていた上に、体重減少や不眠を報道されるなど診断基準にあてはまると思える政治家は最近でも複数いた。おそらく、同様の状態に現時点で陥っている政治家もいるだろう。現実に、過去には、何人も自殺した政治家がいた。

 しかし、自民党幹部の発言を聞く限り、自分がうつ病だと告白している政治家はいないということなのだろううつ病とわかっていて、隠さないといけないと思っているなら、政界にはまだまだうつ病に対する偏見が強く残っていることを意味する

 逆に、こういう状態になっても単なるストレスだなどと思って、医者にかからないとすれば、これは自殺やうつ病に対する知識の不足を意味する。ここで、無理をすることで、自殺のリスクが高まるなど、本人のメンタルヘルスにはさまざまな悪影響がある。

 それだけでなく、うつ病になると、ものの見方が悲観的になったり、いろいろな可能性が想定できなくなったりする。また思考力や集中力も衰える。このような形で判断力に影響を与えるとされるから、病気のまま政治家を続けるのは、好ましいことではない

 もちろん、病気が治れば、普段通りの判断や思考ができるのであるから、むしろうつ病である期間は、休養していたほうが誤った判断をしなくてすむのである。

 だから、堂々とうつ病を告白して、休養してもらったほうが国益にかなうのだ。

 10年ほど前に、ノルウェーのボンデビック首相(当時)がうつ病を告白して、首相職を1カ月ほど休職したことがある。これが、素直に認められて、復職をした際には、喝采をもって受け入れられたそうだ

 ひいてはこのことが、国民のうつ病に対する偏見を大幅に緩和したとされる。うつ病は治る病気であり、治れば、以前どおりのすばらしい能力を発揮できることを国民に示したからだ。

 ノルウェーも以前は自殺の多い国だったが、現在の自殺率は日本の半分程度となっている。政治家自身が、うつ病について正しい知識をもち、堂々と告白できるくらいに偏見を捨てることが、自らのメンタルヘルスや判断力に好影響をもたらすだけでなく、国民のメンタルヘルスを守り、自殺を減らすのだ。

 政治家に、正しい自殺予防教育を受ける機会を設けることを切に望みたい。



 おおー、これは良い正論。

 日本の自殺率が高いのは、有識者とされる人たちにこそ偏見があるから、ですかね。苦しんでいるのは一般人も有識者も同じかもしれませんけれど、うつ病でない有識者によるアンチうつ病(我々はうつ病になるはずがない)という誤った考え方によって、ろくな対策もとられていないのかもしれません。

 政治家だって役人だって、うつ病と診断されたら治療すればいいんです。正直言って政治家なんてただの人、うつ病にだってなりましょう。誰も政治家が強いなんて思っちゃいないですし。

 逆に政治家がうつ病を認めないなら、政治家として選出した意味がない。北欧はそこらへんが進んでるなぁという気がします。政治家が変わったから、国民も変わったんでしょうね。日本は民主主義を戦後に急に導入したせいか、どうも政治家が何か勘違いしている傾向にあるような気がします。当たり前のことを当たり前のようにやればいいだけです。
posted by さじ at 23:47 | Comment(3) | TrackBack(0) | 精神

2009年04月14日

凹んだ顔を凸面の顔として知覚してしまうホロウマスク錯視。

仮面の裏側が見える人・見えない人:「ホロウマスク錯視」

 お面の裏側に存在する凹んだ顔を、普通の凸面の顔として知覚する、「ホロウマスク錯視」と呼ばれる錯視がある[Hollow face錯視、凹面顔錯視とも呼ばれる]。

 動画でこの錯視を経験することができるが、それが目の錯覚だと分かっていても、凹面の顔を凹面と見ることができず、脳が凹面を凸面ととらえてしまう。

 この錯視は、人間の脳が視覚世界を解釈する際の戦略によって起こる。それは、実際に目に見えるものと、過去の経験に基づいて見えると予想されるものを組み合わせて判断するという戦略だ。

 「トップダウン処理では、ストック写真のモデルのように記憶が蓄積されている」。『NeuroImage』誌に掲載された今回紹介する論文の執筆者の1人で、ドイツのハノーバー医科大学に所属するDanai Dima氏は説明する。「脳内のモデルでは、すべて顔が凸面になっているため、どんな顔を見ても、当然凸面のはずだと考えてしまう

 この予想の影響力が強いせいで、顔が反転していることを示す視覚的な手がかり、たとえば影や奥行きといった情報は無視されてしまうのだ。

 この錯視は、顔を使った場合にはよく成功するが、他の物体ではそうでもなく、顔を逆さにしただけでも効果が下がる。これはおそらく、人間が顔に対して持っている特別な関係性によるものと考えられる。神経科学者の多くは、人間の脳には顔を専門に処理する領域があると考えており、そのため、脳の損傷の仕方によっては、視覚や他の記憶には何の影響もないのに、顔の認識だけができないということも起こり得るという。

 興味深いことに、統合失調症の患者はこの錯視を起こさない。彼らは凹んだ顔を凹んだ顔として知覚する。米国では1000人中7人ほどが患っている統合失調症は、幻覚や妄想、計画能力の低下などを特徴とする疾患だ。このような現実からの解離は、ボトムアップ処理とトップダウン処理のバランスが取れていないことが原因ではないかと、一部の心理学者は考えている。この仮説をテストするべく、ホロウマスク錯視を使った研究が行なわれた。

 Dima氏と、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のJonathan Roiser氏は、統合失調症患者がなぜこの錯視にだまされないのか突き止めようと考えた。そこで、統合失調症患者13人と、比較対照群として健常者16人を被験者に、fMRI(脳スキャン)を使って脳の活動を測定し、凹面と凸面の顔の三次元画像を見せた。結果は予想通りで、統合失調症患者は凹面の顔を凹面と知覚したのに対し、健常者は誰も知覚できなかった。

 Dima氏とRoiser氏は、動的因果性モデリング(DCM)という比較的新しい技術を用いてfMRIのデータを分析した。この技術によって、被験者がタスクを実行中に、脳の領域間での結びつきに違いがあったことが突き止められた。健常者が凹面の顔を見ているときには、トップダウン処理に関与する前頭頭頂ネットワークと、目から情報を受け取る脳の視覚野との間で結びつきが強くなった。一方、統合失調症患者にはそのような結びつきの強化はみられなかった。

 錯視において健常者の脳は、この結びつきを強めることで自らの予想する視覚(通常の凸面の顔)が優勢になるように処理し、それによって、実際には見えているが自らの想定には存在しない視覚情報を圧倒するのだと、Dima氏は考えている。一方、統合失調症患者の場合は、このような脳の経路をうまく調整できず、その結果、凹面の顔を現実として受け入れている可能性があるという

 凹面の顔が凹面として見えるのは、統合失調症患者だけではない。酒に酔っている人や、ドラッグでハイになっている人も、この錯視には引っかからない。この場合もやはり、脳が見ているものと、見えると予想されるものとがうまく結びつかない状態が、アルコールやドラッグによって引き起こされている可能性がある。



 有名な首振りドラゴンはこちら

 私はこれ完全に錯視になるんですよねぇ。これ考えた人はホント凄いと思います。錯視極まりない。

 でも錯視っていうのは脳の情報保管能力みたいなものなんで。むしろ統合失調症だと錯視が起こらないという事実が非常に面白いですね。
posted by さじ at 02:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神

2009年04月13日

アラキドン酸が脳の神経細胞の生成を促す。

アラキドン酸:心の病に予防効果?…卵・海藻含有の栄養素

 卵や海藻に多く含まれる栄養素「アラキドン酸」が脳の神経細胞の生成を促すことを、東北大などが動物実験で突き止めた。神経細胞の生成の減少は精神疾患に関係しているとの説があり、食品が精神疾患の予防や治療に役立つ可能性を示した成果という。7日付の米科学誌プロス・ワンに発表した。

 アラキドン酸は脳の発生に重要な役割を担う脂肪酸の一種。全脂肪酸中に4%のアラキドン酸を含む餌を与えた母ラットの母乳を、生後直後の子ラットに飲ませると、神経細胞の生成数は、アラキドン酸なしの場合に比べ30%増えた。生まれつき神経生成が少ないラットに同じ餌を与えると、それまで見られた不要な音に反応しやすい状態が改善した。この状態は統合失調症患者らに見られる

 アラキドン酸は体内で合成できない。大隅典子・東北大教授(神経発生学)は「脳の発生期に適切な栄養を取ることで、心の病を予防できる可能性がある」と話す。



 アラキドン酸は、不飽和脂肪酸のひとつ。4つの二重結合を含む20個の炭素鎖からなるカルボン酸。

 細胞膜中のリン脂質として存在し、なかでも脳に多く含まれる。 アラキドン酸はホスホリパーゼA2によってリン脂質から遊離し、ここから プロスタグランジン・トロンボキサン・ロイコトリエンなど、一連のエイコサノイドがつくられ、また細胞間のシグナル伝達におけるセカンドメッセンジャーとして働く。これらの生合成過程や体内での作用はアラキドン酸カスケードと呼ばれる。

 遊離アラキドン酸は、アラキドン酸カスケードと呼ばれる代謝経路でシクロオキシゲナーゼ(COX、cyclooxygenase)により代謝され、PGG2を経て、発痛物質であるPGE2などが合成される。また、LT(ロイコトリエン)合成系で、炎症促進作用(気管支平滑筋や血管透過性亢進作用など)があるLTが合成される。
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自殺を図る若い男性は、8歳の時点で情緒的問題が現れる

自殺を図る若い男性の大半、8歳で兆候=研究

 自殺を図る若い男性の多くは、8歳の時点で重度の情緒的問題が現れることが、6日発表されたフィンランドの研究で明らかになった。自殺を図る女性の多くは、問題が出てくるのは思春期以降だという

 研究を指揮したフィンランドのトゥルク大学病院のAndre Sourander医師は「青年期や成人早期に真剣に自殺を図る人でも、男性と女性では異なる過程をたどることが分かった」と結論付けている。 

 医学誌「Archives of General Psychiatry」に掲載された同研究は、1981年に生まれた5302人を対象に追跡調査。男性27人と女性27人が24歳までに自殺を図り、そのうち男性13人と女性2人が実際に亡くなったいう。

  研究グループは、女性は服毒による自殺を試みることが多いが、男性はより致死性の高い方法で自殺を図る傾向があるとしている

 また自殺を図る人々がたどる過程として、男性の78%は8歳の時に、破壊的な気質や、攻撃性、他者への残酷さなど、教師や親にも分かる問題を示すという。 一方で、女性にはこのような傾向が見られず、情緒的問題が出てくるのは思春期以降だった。

 研究グループは、効果的な方法で兆候を示す子どもたちを見つけ出して治療し、自殺率を下げるようにすべきだとしている。



 なんででしょうか。遺伝的要因や環境的要因による、鬱病などのため?

 女性はどちらかというと感情的な「うつ状態」という感じなんでしょうか。思春期以降にそういう問題が出てくるという点からもちょっと男女の差がありすぎる気がしますね。

 子供の段階から何らかの兆候が現れているのなら社会的に何らかの対策を講じないといけないでしょうね。
posted by さじ at 02:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神

2009年04月06日

不登校の子供たちに、箱庭療法を行う医師。

不登校の子に寄り添う箱庭療法に取り組む医師 紫英人さん

 福井県鯖江市にある小児科・内科「ともだち診療所」。院長の紫英人さん(38)は、風邪や痛みなど一般診療のほかに、不登校の子どものために「箱庭療法」を手がけている。同時に診療所そばの真宗大谷派円立寺の住職。「ともだち」の名前は「倶会一処」の倶が「とも」と読めることから名付けた。「ありのままの自分を大切にして一緒に生きていこう」との願いを込めた診療所を訪れた。

 JR北陸線鯖江駅からタクシーで十五分。カウンセリング室にはいろいろなおもちゃが置かれ、ほっとする雰囲気があった。

 紫さんは「箱庭療法は、砂遊びを通して子どもの心を開放し、自分で自分を癒やす力を掘り起こしていくのが目的」と話す。何らかの理由で心と体の調子を崩し、学校に行けなくなった小中高生たちが、主に学校の先生の紹介で訪れる。

 原因不明の腹痛を訴えた十二歳の中学生。最初の箱庭作りの時、兵士や戦車の模型を砂箱に雑然と置いた。本人は「戦いをしているんだ」と言う。その生徒が付けた作品名は「紛争」。二回目では人形の配置が二つのグループに整理される。タイトルは「挟み撃ち」。

 三回目になると、自分たちの墓を守る日本軍が、アメリカ軍と戦う―というストーリーが生まれる。少年はぽつりと言った。「英語塾の先生がアメリカ人だけど、その先生の言っている英語がさっぱり分からない」

 このころから学校に行くようになった。腹痛があると保健室で休むなど痛みと上手に付き合うようになった

 四回目は「終戦」。その後、一時、不登校になったが、最後に作った作品は「救出」だった。「学校でのごたごたや塾での葛藤などを自分から語りながら心の混乱に整理をつける。それでもやはりいやなことはあるけれど、自分で自分を救出する、ということを知ったのだろう

 その中学生のように箱庭作りに自発的に取り組むのは、訪れた子どもの三、四割。関心を示さない場合は対応が難しい。紫さんはいきなり家族構成を聞くことはせず、とにかく一緒に遊ぶことを心掛けている。将棋、人生ゲーム…。「子どもと心が通い合うのは何か方法論があるのではなく、たまたまぴたっと合うものが見つかった時にそうなる」

 紫さんは円立寺で生まれ、十二歳で得度。福井大医学部を卒業し心臓血管外科医になったが、激務が続き疲れ果てた。二〇〇〇年、医師をやめるつもりで京都市にある大谷派の教学施設「大谷専修学院」に入学した。

 そこに講師として訪れた小児科医の梶原敬一さんとの出会いが転機になった。梶原医師も僧侶。精神科の領域とみられていた箱庭療法にあえて挑戦する姿に心を揺さぶられた。医師はこうあるべきだという思い込みにしばられていた。やりたい医療は自分でつくればいいんだ―。

 それまでの経験を全部捨てて、一からやり直すつもりで梶原医師が働く病院に勤めた。福井県敦賀市の国立福井病院(現在の国立病院機構福井病院)を経て、昨年十月に郷里の鯖江市で開業。父の順英さん(66)から住職を任され、寺の仕事と診療のやりくりに悩むが、ジレンマを感じることで学べることもある。

 「浄土は、あの世のことと考えられているが、私は生きているこの世こそ浄土にならないといけないと思う。誰もが気安く集まれる公民館のような診療所でありたい」

倶会一処

 多くの人が一つの場所で集うという意味。阿弥陀経は阿弥陀仏の浄土に往生すれば上善人(宗教的善を身に付けた人)と会うことができると説く。

箱庭療法

 砂箱と模型玩具を使って一つのまとまった世界を表現する心理技法。スイスのユング派心理療法家カルフによって開発され、日本では1965年、故河合隼雄さんが紹介した。砂箱は縦57センチ、横72センチ、高さ7センチ(規格サイズ)。治療者は箱庭を作る子どもの横で静かに見守るのが原則。子どものさまざまな表現を受け止めることで自己治癒力を促進していく。



 うーむ、素晴らしい医師です。自身の中で葛藤があったからこそここまで善い医師になれたんでしょう。

 今の社会、子供たちは当然のように学校にいき、大学まで行かされます。(行くのではなく、行かされている場合のほうが多いと思います)

 そんな中で子供たちを個別にサポートする学校や家庭などの環境に不備があったりすると、子供たちもどうしていいのかわからなくなってしまうでしょう。周囲から押し付けることが当たり前の社会ですからね。

 不登校になった子供の心を開いていく、途方もないほど難しいことにあえて挑戦し、会得した医師ほど、子供たちにとって心強い味方はいません。

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京大「一人でパソコンをするより仲間とマージャンを」

1人でパソコンより、仲間とマージャンを

 コンピューターのひとり遊びより、みんなでマージャン卓を囲もう――。京都大工学部の大嶌幸一郎学部長は2日、入学式を控えた新入生ら約千人を前に、遊びから人間関係を築く大切さを説いた。人付き合いが苦手な学生は就職活動でも苦戦するとも語り、「大学にいる間に克服して」と呼びかけた

 「30、40年前と違い、京大に入ることが就職のパスポートには全くならない」。大嶌氏はやや厳しい言葉であいさつを始めた。

 ものづくりの世界でも様々な分野の人と協力する協調性が重視されていると説明。「クラブ活動でも、マージャンをするのでもいい。自分の輪を広げてほしい。絶対に下宿でコンピューターとだけ遊んでいることはやめて」と語りかけた。就職活動で苦戦する学生が多いことにも触れて「集団討論でしゃべれない学生が多い」と、友達との会話で社会性を磨くことを勧めた

 建築学科に入学する男性(18)は「コミュニケーション能力が就職するには大切と、大学4年の兄からも聞いた。学部長の話はその通りと思った」と話した。



 いい演説。

 コミュニケーションが出来ない大学生は、往々にして自分の世界を「正しいものだ」と思って閉鎖的になりがちです。まず相手の意見を聞くこと。それを正しいかどうか吟味すること。こういったプロセスを最初から拒否している場合が結構ありますね。

 まぁ大学生になってしまうと人格というものはなかなか変化しにくいものですが、最初から諦めずに自分をより良い人間にしようという努力が必要なのだと思います。

 特に京大のように優秀な学生が揃っている場というのは、コミュニケーションが非常に出来る人と、勉強ばかりしてきていてコミュニケーションが全くとれない人と両極端です。身近にいる人を参考にして少しずつ変わっていってほしいですね。

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2009年03月20日

躁鬱病の傾向のある人は社会的成功や名声に強い願望を持つ

双極性障害の人は成功や名声に強い願望 米研究

 双極性障害(そううつ病)の傾向がある人は、社会的成功やお金と名声を得ることに対し、そうでない人よりも強い願望をもっている――。こうした調査結果が、英国の臨床心理学の専門誌「British Journal of Clinical Psychology」で2日、発表された。

 双極性障害とは、ヒトの気分や気力、能力などが、通常とは異なるしばしば劇的な変化をみせる脳の障害で、気分の高揚や思考過程が非常に速まること、多弁などの特徴がある。研究者らは、この双極性障害患者27人を含む103人を対象に調査を行った。

 調査対象者は、心に最も強く抱いている人生の目標を調べるために作製されたアンケートへの記入を求められた。このアンケートは、例えば「定期的にテレビ番組に出演する」や「2000万ドル(約19億円)以上を稼ぎ出す」など、自身に起り得るある出来事の実現の可能性を評価するものだという。

 調査を行った米カリフォルニア大学(University of California)のSheri L. Johnson教授によると、調査の結果、双極性障害は成功を重要視する信念に関連していることが明らかになったという。

 さらに同教授は、「今回の調査結果は、うつの人はそうでない人に比べ、より高い目標を設定する傾向があることを示している」と語った。



 要するに人より生きる願望が強すぎるためにかえって症状として出てしまうということでしょうかね。

 でもそれって鬱病というより鬱状態になりやすい人、という気もします。社会的に思い通りにいかないことでストレスが生じて、というメカニズム的に。

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