2008年06月23日

チンパンジーはハグとキスでストレスを軽減させている

ハグとキスで仲間を慰め、チンパンジーで確認と 英研究

 チンパンジーが仲間に「ハグ」と「キス」することで、仲間の嫌な気分に共感して慰め、ストレスを軽減させていると、英国の研究者が17日付の米科学誌米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。人間と同様の行動で、サルの仲間ではチンパンジーにしか見られないとしている。

 ある個体が怒って別の個体をかんだり、叩いたり、押したり、手荒く扱った際には、「第3者」の個体が「被害」を受けて落ち込んでいる個体を抱きかかえたり、キスしたりして慰めたという。この結果、「被害」を受けた個体のストレスが減少したという。

 ハグは両腕で抱きかかえるような仕草で、キスは口を開けて背中や頭に接する仕草だという。この「慰め」は、すでに深い関係が築かれている個体間で見られた。

 これまでの研究では、脳が大きな鳥類やイヌでも同様の行動が見られているが、この行動により、これらの動物でストレス・レベルが低下したかどうかははっきりしていない。

 米アトランタのエモリー大学の研究者、フランス・デ・ワール博士は、ハグやキスでチンパンジーでストレスの低下が確認できたのは注目できる点だと指摘。

 人間の小さな子供たちが、落ち込んでいる家族に触れたり抱きついたりする行動と、同様なのではないかと話している。



 お互いの口を使って慰めるという点は、フロイト的思考に基づく解釈なんでしょうかね。正直キスっていう行為が何故動物にあるのか分かりません。粘膜と粘膜の接触で気持ちいいから?

 人と身体を密着させるということは攻撃に対するガードを必要としない状態なわけで、それは動物でも人間でもリラックスしている状態なんでしょうね。

 うつ病にも使えないかなコレ。

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2008年06月22日

医学ちょっといい話2

うつと生きる女将の決意

 神奈川県湯河原町の温泉旅館「旅荘 船越」の玄関で、女将の平野洋子さん(45)が笑顔で宿泊客を出迎える。

 親が創業した旅館を27歳の若さで継ぎ、テレビや雑誌でも紹介されてきた名物女将が、実は抗うつ薬や抗不安薬を手放せないことに気づく客は少ない。だが、地元の人たちは彼女の病気を知っている。

 国家公務員の夫(44)を持つ平野さんは、経営と接客を一人で切り回してきた。

 朝6時から旅館で働き、歩いて2分の自宅に帰れるのは日付が変わるころ。そんな生活を繰り返して迎えた2002年5月のある朝、急に胸が苦しくなった。息がしづらく心臓の鼓動が激しい。うつ病とパニック障害の併発と診断された。39歳だった。

 休養を勧められたが、自分がいなければ旅館は回らないという自負があった。夫と支配人以外には病気を隠し通そうと心に決めた。

 客室で苦しくなると、作り笑いを浮かべてその場を離れる。厨房で発作が起きれば、料理人に気づかれないよう控室に駆け込んだ。

 家から旅館に続く坂道を歩くのがつらくなり、やがて自分には生きる価値がないと考えるようになった。

 首をつろうとしたことがある。04年秋。夫と親友に電話し、「今までありがとう」と告げた。次に覚えているのは、親友に抱えられて泣いていた自分の姿だ。

 湯河原町主催の文学賞があるのを知ったのは翌05年秋。「湯河原を題材にした作品大歓迎」という広報紙の文句に胸が高鳴った。

 早春の梅、初夏のサツキ、秋の紅葉……。季節ごとに姿を変える湯河原が好きだ。その美しさを描いてみたい。素直にそう思った。

 ひと月かけて構想を練った。うつ病の女将が周囲に支えられ、湯河原の自然の中で回復していく物語。自分と同じ境遇の主人公に、地元の美しさを語らせた。

 06年2月、湯河原文学賞の最優秀賞受賞の知らせが届いた時の夫の言葉は忘れられない。「すごい。君は無価値な人間じゃないよ」

 地元で祝賀会を開くという話が持ち上がった時、ある考えが頭に浮かんだ。

 旅館の女将が登場するとは言え、知人の多くは完全なフィクションと受け止めている。これは私がモデルだと言ってしまえば、隠し通すことのつらさから解放されるのではないか

 当日こうあいさつした。「この小説は限りなくノンフィクションに近いフィクションです」

 数日後、商店街で見知らぬ人に話しかけられた。「私もうつ病を告白したら楽になりました。ありがとう」。同じ病気に苦しむ人を私は励ますことができる。そう知ったのはこの時だ。

 作品の出版を決意。同年6月に「梅一夜」(祥伝社)が出ると、「勇気づけられた」「自殺をやめた」などとつづった便りが続々と届いた。「君は自信をもっていい」。夫の言葉が一層素直に受け止められた。

 今も誰にも会いたくない時がある。ただ前のように無理はせず自宅で過ごす。病状が劇的に改善されたわけではないが、作り笑いと死にたい気持ちは消えた。

 新しい目標もできた。「心を病んだ人が癒やされるような宿にしたい」

 そのためにはどうしたらいいか。思いを巡らせながら旅館までの坂道を歩く。(野口博文



 いい話。

 しかもこの元記事の文章もうまいですね。

 人間だれしも、鬱の感情は抱くものですが、うつ病やパニック障害のように「病気」になってしまうと、それは本当に苦しい上に、なかなか理解されづらく、偏見もある。

 この方のように、うつ病を周囲に理解されたら、どんなに楽なことか、と思います。日本ではそれがなかなか出来ないのが難しい。むしろ、うつ病と単なる鬱の感情をごっちゃにされて、「根性がない」とすら言われてしまうのが現状です。

 どうすればいいか、と考えても、なかなか難しいですよね。人となりを医療者が全部ケアできるかというとそういうわけでもないですし。トゥルーマンショー級の作られた世界というものがあれば、うつ病による自殺率は減るのかもしれませんけれど。

 自分のことを本当に生きている価値がない存在だと思い込んでいる人がいて、そのまわりに環境があって、人がいて、今にも死のうとしている人を現世に残すことができる因子って、限られてしまいますよね。そこからは精神科医の限界か。それとも

関連:医学ちょっといい話
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2008年06月10日

山形県立鶴岡病院が子供のうつ病治療の専門病棟を設置する

鶴岡病院:12年度に移転、再出発 子供のうつ病治療へ専門病棟

 精神科専門の県立鶴岡病院は、12年度に鶴岡市茅原に移転し「県立こころの医療センター(仮称)」として新たにスタートする。県の計画では、救急病棟を充実し、県内初の子供の精神疾患やうつ病を治療する専門病棟を設置する。一方、慢性期病棟の100床削減も盛り込んでいる。

 統合失調症などで症状が急変した救急患者を受け入れるスーパー救急病棟(48床)は、従来1人だった地域復帰を支援する精神保健福祉士を、専任の2人に増やす。「子ども・ストレス病棟」は、自閉症や引きこもりの子どもを受け入れる子どもユニット(15床)と、うつ病の治療に当たるストレスユニット(33床)を設ける。

 一方、病床数は、350床から220床と大幅に減らす。150床ある慢性期病床の削減が中心で、入院患者に社会復帰の訓練を行い、退院を促す。10年以上入院する患者もおり、受け入れ先が懸念されるが、病院は「地域でケアする体制を整え、どこに行ってもらえばいいか、しっかり検討する」としている。

 また、殺人などの重大事件を起こしながら心神喪失状態で罪に問えない患者の治療に当たる「医療観察法病棟」を15床設ける。岩手県の国立花巻病院に次ぎ東北で2例目だ。



 素晴らしい病院。

 特に子供のうつ病や引きこもりなどに対応した「病院」としてもかなりの高ポイントではないだろうか。

 やっぱりね、ヤレ根性だとか、バカなことを言うまえに、心をケア
できる良い精神科医と、苦しんだときに来ることのできる専門病院ってのは、必要ですね。

 あとは患者の親になりうる一般人の「理解」だけ。

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2008年06月09日

うつ病の復職の原則は、「もとの職場に」。

うつ50話:第11話 うつ病と人事異動

 うつ病で休んでいた人が復職する時、職場の人たちはどのような配慮をしたらよいのでしょうか。

 病気になった原因が職場にあるのではないかと思うと、復職時には別の職場に異動させたほうが心機一転して働きやすいのではないか。しかし、簡単に異動はできない。このように人事担当者は悩む場合もあります。復職してくる人も「異動したほうが頑張れるのでは」と考える人も少なくありません。

 しかし、復職の原則は「もとの職場に」です。新しい職場では、これまでと異なる仕事をし、人間関係も新たにつくる必要があり、うつ病から回復してくる人には、多大なストレスになります。

 さらに、新しい職場の人たちがどのように声をかけたらいいのか、接したらいいのか戸惑うこともあるでしょう。もとの職場では互いに分かり合っていることもあるので、人間関係に費やすエネルギーは少なくて済むでしょう。もとの職場に戻り、一定の期間、通勤して仕事に慣れた後、定期異動にあわせて職場を変わるほうがいいようです

 しかし、仕事の内容が努力の範囲を超え、「自分には無理」と感じる仕事や、人間関係の問題で顔もみたくない上司や同僚がいる場合は例外となるかもしれません。働きやすく、自分の能力を最大限発揮できる職場への異動は、本人はもちろん、会社にとってもプラスになります。



 難しいですよねぇ、社会復帰も。どんなことであれストレスになってしまいますからね。

 同情するとか気を使うとかしないで、ただ単に「受け入れる」ことが出来る職場ならば、復職も楽なんでしょうけれどね。なかなかうまくいかないもんです。
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2008年06月05日

2007年度の全国県別自殺率・自殺者数表。

景気が影響!?福田無策で暗い影…全国自殺率ランク

 内閣府がまとめた昨年1−11月の自殺者数は2万8542人で、通年では2年ぶりに3万人を超えることが確実になった。都道府県別の自殺死亡率では秋田が13年連続で全国ワースト1を更新しそうだが、秋田は自殺の減少率でも全国3位と状況を改善しつつある。反対に、増加率で西日本が高い傾向が顕著になった。増加数では大都市部が目立ったが、「不況の影響も感じる」という自治体関係者も多く、ここでも福田無策が暗い影を落としている。

 秋田は人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率が35.4と、今年も全国最悪となりそうだ。だが、減少率も13.1%と全国で3番目に高かった。

 秋田などの東北地方では元来、自殺率が高い傾向にある高齢化や求人の少なさといった経済的な問題、冬場の日照量や活動の不足、社会的支援や医療資源の不足−などの要素が複合しているとみられ、特に自殺を誘う「うつ」になりやすい環境ともいわれる。

 秋田の好転について、自殺対策の専門家として知られる秋田大医学部の本橋豊教授は「対策の効果が出た」と分析する。

 全国の都道府県が、足並みを揃えて自殺対策に本腰を入れ始めたのは、2006年の自殺対策基本法の施行以後だが、秋田では00年ころから産官学民の枠を超えた連携を積極的に進めるなどの取り組みが続く。特にうつ対策では全国のモデルケースとなっている。同様に早くから対策を進めてきた山形も、今回の減少率は13.7%と全国2位の高さで、対策の効果が出ているという話もうなずける。

 反対に増加率のワースト上位を見ると、(1)岡山(2)京都(3)高知(4)大阪(5)東京(6)宮崎−と、6位までに西日本の5県が入っている。

 大阪府の自殺対策担当者は「詳細なデータがなく、詳しい検証は難しい」としながら、「現場の皮膚感覚では、景気の影響が大きいという感じはしています」と話す。京都府の担当者も「『京都いのちの電話』のスタッフから、経済的な問題が原因で相談をする人が多いといった話は聞いています」と証言する。

 一方、増加率が17.4%とワースト1になった岡山の担当者は、「母数が小さいので、少し増えると比率が大きく変わってしまう…。それくらいしか理由が思いつかない」と戸惑い気味だった。自殺死亡率が38位と危機感も薄いためか、関係各所に自殺対策のパンフレットを配り始めたばかりで、後手というイメージはぬぐえない

 昨年、東国原知事の登場で注目度の高まった宮崎だが、増加率は急増し、自殺死亡率で全国ワースト2位に浮上した。県の担当者は首をひねるが、「県民所得が低い」という経済的な問題のほか、「県の西南部から鹿児島にかけて、何か不平不満があっても『議を言うな』という気質。いわば『黙ってがんばれ』という気質があり、それが影響しているという説もあります」とも説明する。

 本橋教授は、西日本や大都市部で自殺の増加率が高くなったのは、「経済的に厳しいことや、対策をしていないことが原因と推察される」と指摘。景気の先行きに不透明感が広がるなか、今後は自殺の理由に経済的な要素が占める比重が高くなってきそうだ。



 全国の自殺率です。パーセント表示は「人口10万人あたり」のものです。その右側は、自殺者数となっております。

1位 秋田県 35.4% 397人
2位 宮崎県 32.1% 367人
3位 青森県 30.5% 429人
4位 岩手県 29.6% 403人
5位 島根県 29.5% 216人
6位 新潟県 29.2% 703人
7位 高知県 28.3% 224人
8位 鹿児島県 27.8% 481人
9位 福島県 26.4% 546人
10位 愛媛県 25.4% 369人

11位 山形県 25.2% 302人
12位 山口県 25.1% 370人
13位 鳥取県 25.0% 150人
14位 栃木県 24.4% 491人
15位 群馬県 24.3% 489人
16位 北海道 24.2% 1357人
17位 宮城県 24.0% 564人
18位 茨城県 23.8% 707人
19位 熊本県 23.7% 434人
19位 和歌山県 23.7% 242人

21位 山梨県 23.5% 206人
22位 大阪府 23.2% 2044人
23位 大分県 23.2% 279人
24位 長崎県 23.1% 336人
25位 福岡県 22.8% 1154人
26位 佐賀県 22.7% 195人
27位 富山県 22.3% 246人
28位 広島県 22.2% 639人
29位 兵庫県 22.1% 1235人
30位 香川県 21.4% 215人

31位 沖縄県 21.2% 291人
32位 京都府 20.9% 551人
33位 長野県 20.7% 452人
34位 埼玉県 20.5% 1455人
35位 東京都 20.3% 2605人
36位 石川県 20.1% 235人
36位 福井県 20.1% 164人
38位 岐阜県 20.0% 420人
38位 岡山県 20.0% 391人
40位 静岡県 19.9% 755人

41位 千葉県 19.5% 1193人
42位 滋賀県 19.4% 271人
43位 徳島県 19.3% 154人
44位 神奈川県 18.9% 1683人
45位 三重県 18.0% 336人
46位 愛知県 17.9% 1317人
47位 奈良県 16.6% 234人

 これを見ると、やはり経済状況とかより、「日光」との関係も深いのかなぁって気もしてきます。日の光をあまり浴びられない地方のほうが、自殺率は高いのではないか、と。

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posted by さじ at 22:21 | Comment(7) | TrackBack(0) | 精神

2008年06月04日

果たしてうつ病にブログ療法は効くのか?

ブロガーがうつの"駆け込み寺” ネットでリアルに助け合い

 元うつ患者の野口敬さんが立ち上げた「“うつ”に悩む方々のためのブログ」は、24時間いつでも駆け込める「心の避難所」だ。2006年8月に開設、これまで延べ6万人が避難してきた。ここでは自分のブログ内に苦しみを書き込むと、ほかの誰かがそれに対してコメントを書き込む――という相互の書き込みをすることで、書き込む皆が苦しみを共有し、最終的には自立していくことを目指している

 野口さんはこれを「ブログ療法」と呼ぶ。ネット上のブログは「バーチャルな避難所」だが、定期的にオフ会を開いたり、重い症状や切迫している人には協力者などの「リアルな避難所」に避難させる場合もある。

 野口さんは、うつを「心の地震」と捉えている。そして、症状の軽重を7つにレベル分けする「心の震度階」という基準表を作った。これは医師が「ペインスケール」という表を使い、患者の痛みをレベル分けするのと同じだ。こうして症状を客観的に把握しておくことで、症状の見解差による治療の差異を避けることにつながる。誰もが同じスケールを元に、標準化した治療を患者にすべきだと考えているのだ。

 「普通は震度4〜5ぐらいで気付きます。3までは気が付かないから普通に日常生活を送ってますね」。ブログに集まってくる人たちも震度4〜5の人が多いという。一生懸命頑張っても上司から叱責され、部下から文句を言われる中間管理職の人、家庭内暴力に悩む人、失恋や離婚の痛手から立ち直れない人――など発症する原因はさまざま。性別を問わず多くの人たちが逃げてくる。

 彼らは避難所に逃げてきて、どうやって立ち直っていくのだろうか。

 心の避難所には診療時間というものがないから、急に不安になったり落ち込んだりしたら、いつでも駆け込める。実際は夜中に来る人が多いという。まずやることは、「心の苦しみを吐き尽くす」こと。すると「誰かが必ず読んでくれ」て、読んだ人たちが苦しみに共感し、皆で苦しみを共有する。「分かるよ、辛かったんだね」など優しい言葉をかけてもらうと、苦しみが和らぐ。具体的な解決策の意見交換もされる。そうするうち、徐々に自分から立ち上がろうという気力がわいてくるのだ。

 「ブログ療法」では心情を吐き出すからカウンセラーに話を聞いてもらうことも兼ねているし、自分で書いた文章は、最も詳しいカルテになる。

 病院に行く勇気や時間、気力や体力がない患者の命綱になる時もある。例えばブログ内で積極的にアドバイスする人たちが、新しく駆け込んできたある患者に対して、「このまま家にいたら、もっと心が追い詰められてしまう」と判断したとする。こうした場合は、野口さんと一緒に実際に患者がいる場所まで行き、「リアルな避難所」に泊めることもあるからだ。彼らは、自らのうつ病の貴重な体験を生かして、苦しむ患者にアドバイスをしている人たちだ。

 リアルな避難所とは、アドバイスする人の家や患者の親戚などの家。追い詰められてしまうのは、家族の理解が得られずに孤独と絶望に陥り、うつがどんどん悪化して震度6あたりまで行っている人たちだ。症状にもよるが、こうした重度の患者には、短くて1週間、長くて3カ月間をリアルな避難所で過ごしてもらう。ビジネスパーソンの場合は、症状が軽くなってきた場合はこの避難所から通勤するのだ。

 野口さんによると、うつになる原因は4つある。孤独、絶望、不安、そして、「自分はなんて情けないんだ。自分がすべて悪いんだ」と自分を責めることだ。特にこの「自責がうつ病発症の強い引き金になる」という。「孤独には優しさや仲間を、絶望は希望と支えを、不安には安心と支えを、自責には、仲間からのいたわりが必要。これら全部をグループで実践できるのが、ブログ療法なんですよ」

 患者が相談してくるのは夜中。対応する野口さんは完全に夜型の生活になってしまっている。還暦間近で自分の健康だって気になるはずの野口さんは、なぜそこまでしてうつの人に手を差し伸べるのだろう。

 現在、「意識構造/社会構造アナリスト」という肩書きで活動中の野口さん。これまで専門誌の編集や人材派遣、システム開発などに従事してきた。激しいうつに襲われたのは20年以上前。子どもが生まれたばかりで働き盛りの32歳だった。ある日突然、「激しい心の揺れ」に襲われて倒れる。当日も直前まで普通に働いていたが、急遽入院、休職、退職して療養したという。「まさか自分がうつになるなんて全く思わなかったですね。俺の頭はどうなっちゃったんだろう、これは自分じゃないってパニックになりました」

 野口さんの知る限り、薬を処方する医師は体の症状には対応するが心はケアしてくれない。かといって心をケアするカウンセラーは、話はよく聞いてくれるものの、具体的な解決策を提案してくれない。もどかしさを感じた。

 そこで「具体的な解決ツールが必要だ」と思い立った野口さんは、自分の実体験などを元にうつ病を客観的に分析。その結果、「ブログ療法」というツールが効果的なのでは、と思うようになった。

 もともと自分が強い人間だという自覚はあった。「うつでもっと強くなりましたね。うつの苦しみに比べたら、ほかの苦しみなんてどうってことないですよ」。そんな野口さんでも、いまだに症状が出ることがある。「年2〜3回。震度3くらいかな。でも日常はちゃんとこなせますから大丈夫です」

 今後は北海道や沖縄など全国7〜8カ所に、誰かの家ではない正式な避難所を作る予定だ。「だって自然の中にいたら、気持ちが晴れるしょう? 全国に7〜8カ所作りたいですね。もし協賛できる方がいたらぜひご連絡ください」。その後はどうするのだろう。「あとは後進の人たちに任せるかもしれません……まだ未定です」。ブログ開設から3年。バーチャル、リアルの避難所を作り、治療の仕方を標準化し、人材を育成する――そんなうつ病全面サポート体制を実現するために奔走する日々は、しばらく続きそうだ。

 パートナーや家族などが回りにいなかったり、いても「甘えてる」などと言われてしまい、理解が得られない人、孤独な人には、バーチャルな「ブログ療法」が、リアルな救いの手になるかもしれない。



 う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・

 実際これ、どうなんでしょう。小規模なら成功するかもしれないけれど、大規模になると確実に失敗する気がします。

 うつの苦しみを他のうつで悩む人に吐き出したところで、自身の症状が落ち着くかというと、まぁ落ち着かないだろうなというのが正直なところです。それならば、うつ病ではない人に吐き出したほうが良い。うつ病患者が10人集まって話し合ったら、みんな元気になるどころか、症状が悪化しかねないのでは?

 苦しかったね、辛かったね、とその人を「認める」ことは、同じ病気の人であればできるでしょうけれど、良いことばかりではないですよね。「その医者の処方はおかしい。○○という薬には××な副作用もある。私は変えてもらった」とか「容量が多いから少し減らしてみたら?」とか、すごく自分勝手な意見を安易に提供できてしまうのが、ネットの怖いところです。本人は意識していなくても、医者不信に繋がり、それによって治療も滞ることも。

 このブログ療法最大の欠点は、専門家がいないということと、ブログ療法を行う人、閲覧する人のほとんどがうつ病で不安定であるという点です。

 野口さんのように、うつから立ち直った人がボランティアでカウンセラー的役割を果たしていれば、うまく行くのかもしれませんけれど、ブログを書く人がうつ、見る人・アドバイスする人がうつで、どうして症状が軽快できましょう。

 いわゆる「集団認知行動療法」のようなもので、患者間でディスカッションすることで、出来事や状況に対する認知の仕方を少しずつ修正していこうとするような療法はありますが、これも進行は精神科医やカウンセラーなどの、正しい認知が出来る人、ですよね。

 まぁでも、孤独感とかはブログ療法のほうが改善できる、のかな。集団自殺のように、悪い方向へ働かないといいんですけれど。

 今まで何度も言ってきましたけれど、何と言っても、「薬を処方する医師は体の症状には対応するが心はケアしてくれない」、これですよね、問題は。やはり精神科医全体のレベルの向上が求められていると感じます。
posted by さじ at 23:14 | Comment(10) | TrackBack(0) | 精神

2008年06月03日

総合病院の精神科病棟が緊急事態に。

精神科医、総合病院離れ 病床2割減、閉鎖も相次ぐ

 地域の中核病院などの総合病院で、医師不足から精神科病棟の閉鎖が相次いでいる。02年から4年間で、精神病床がある病院数は1割、病床数は2割近く減った。総合病院の精神科は、通常の治療だけでなく、自殺未遂者やがん患者の心のケアなど役割が広がっている。事態を重く見た関係学会や厚生労働省は現状把握の調査を検討している。   

 日本総合病院精神医学会の調査によると、02年に272あった精神病床を持つ総合病院は06年末に244に、病床数も2万1732床から1万7924床に減った。調査後も休止したり診療をやめたりする病院が続いている。

 廃止になっているのは主に地方の公立病院だ。自殺率が12年連続全国1位で自殺予防に取り組む秋田県でも、精神病床がある八つの総合病院のうち、3カ所が入院病棟を閉鎖中。非常勤で維持してきた外来診療も、大学医局の医師引き揚げで厳しい状況にあるという。宮崎県では、四つの県立病院に十数人いた精神科医が昨年末に3人になった。

 精神科専門の医師数は微増傾向だが、厚労省調査では、この10年で診療所と精神科病院に勤める医師数は増加したのに対し、総合病院などは1割減。夜間休日の救急対応などの忙しさから敬遠されたとみられる。また、他科より診療報酬収入が少なく、経営側に負担感が大きいという。

 厚労省は、精神障害者が入院中心から脱して地域で生活できるよう単科精神科の病床数削減の方針を打ち出した。一方、自殺未遂で入院した患者を精神科医が診察すると診療報酬が加算されたり、がん対策基本法で緩和ケアチームに精神科医の関与が求められたりと、総合病院での精神科医の役割は増している。

 水野雅文・東邦大医学部教授(精神医学)は「イタリアは精神科病院を全廃し、代わりに全総合病院に精神病床を置いた。日本は、精神科病院の病床削減は進まず、総合病院の病床が減るという正反対のことが起きている。総合病院の精神科医療の診療報酬を手厚くするなどの対策が必要だ」と話す。



 要するにアレですよね。こうストレートに言ってしまっていいのかは分からないんですけど、「ただ投薬だけしてろくに診察もしないクソみたいな精神科開業医が増えすぎたせいで総合病院の精神科は廃れるし精神疾患を抱えた患者は治らず自殺に繋がる」と。

 まぁ実際うつ病とかは、まずは「良い精神科医を見つけること」から、なんて言われます。ただうつ病だから「抗うつ剤出しときますねー」とかではなくて、長期的スパンで薬の量を調節したり患者と向き合うことを当たり前のように行える精神科医が少ない。

 由々しき問題です。本来ならどの病院に行っても、同じように良い医師であるべきなんですが、残念ながら金儲けに走る開業精神科がかなりありますからね。適当に薬出しといてあとは素知らぬ顔、なんてね。恐ろしいわ。

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2008年06月01日

リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンは脳神経の再生を促す

そううつ病の薬、脳神経再生促す効果・生理研が発見

 自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県岡崎市)の等誠司准教授らの研究グループは27日、そううつ病の薬に脳神経の再生を促進する働きがあることを世界で初めて見つけたと発表した。脳の万能細胞である神経幹細胞の働きを薬が活発にする。新型万能細胞(iPS細胞)が注目される一方、体内の万能細胞を薬で活性化する新たな再生医療としての可能性が出てきた。

 神経再生の働きを見つけたのは、そううつ病患者の感情の起伏を安定させる薬として広く使われているリチウムバルプロ酸カルバマゼピンの3種類の薬。患者に投与するのに相当する量をマウスに3週間与え、変化を調べた。これまでの同様の研究に比べ、薬の投与量を10分の1程度に抑えて微細な変化を観察した。

 薬を飲ませ続けると、神経幹細胞の働きを活発にする特殊なたんぱく質が増えて増殖が盛んになる。これにより幹細胞が5割程度増え、細胞全体の数も増える



 ほう。この発見は大きいのでは。

 今までうつ病に効いていた薬。しかしその効果は、予想以上に優れていた。

 ということは薬を飲み続けなくても、治すことは可能、ということでしょうかね。細胞全体がストレスなどで減少しているところに、薬を長期間投与して活性化してやることで、元の働きを取り戻すことも可能、か?現実的には難しいかもしれませんけれど、将来このメカニズムを使って治療することもできるかもしれません。
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社会不安障害と行為障害、人格障害の名称を変更する。

社会不安障害を「社交不安障害」に…精神神経学会が用語改定

 日本精神神経学会は、社会不安障害を「社交不安障害」、行為障害を「素行障害」に変えるなど、誤解や偏見を招きやすい用語の改定を決めた。

 人格障害は「パーソナリティ障害」、外傷後ストレス障害(PTSD)は「心的外傷後ストレス障害」とする。31日の総会に報告し、約20年ぶりに改定した「精神科用語集第6版」を近く発行する。

 社会不安障害は人前で緊張しすぎるケースだが、引きこもりなどと誤解されやすい。行為障害は青少年期に窃盗や暴力などの問題行動を繰り返すことを指すが、不器用で動作がうまくいかないことと勘違いされやすい。外傷後ストレス障害は身体のけがの後の心理症状ととられることがある。

 人格障害は性格の極端な偏りを指すが、人格否定の印象があり、変更した。

 同学会は2002年8月に精神分裂病を「統合失調症」に変更。行政主導で変更された認知症(痴呆)も取り入れ、これらを踏まえた新しい用語集にする。



 精神分裂病を統合失調症と言い換えたり、痴呆を認知症と言い換えたりするのは、結果的にみればかなり成功した部類だと思います。その人の人格に関わってくる以上、ナイーブな単語は変えたほうがいいですからね。

 人格障害なども、今ではかなりメジャーな精神疾患となってきました。そのため、人格障害という名前よりはパーソナリティ障害のほうが、確かに「しっくりくる」かなという気がします。精神科のようなナイーブな科だからこそ、疾患名の変更を余儀なくされるのは仕方ないことだと思います。

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2008年05月28日

パニック障害はうつ病に移行しやすい。

パニック障害の発作は病気の始まり、パニック発作が治まってからの治療が大切

 パニック障害は、うつに移行しやすいのが問題。薬物治療に頼るだけでなく、運動や睡眠など生活改善に努めることが大切ということ、知っていますか?

 ◇検証1 パニック障害の原因は不明だが、脳機能障害が疑われる

 ある日突然、不意に激しい動悸が生じ、冷や汗が出て、呼吸も苦しくなる。このままでは死んでしまうのではないかと強い不安に襲われ、救急車を呼ぶ。ところが、病院に着く頃には症状はおさまり、検査を受けても異常所見はない……。

 こんな発作から始まる病気が、パニック障害です。日本では100人中3.5人は経験するとされるポピュラーな病気で、不安障害に分類されます。パニック障害に詳しい赤坂クリニック理事長の貝谷久宣さんによると、この病気の特徴は、パニック発作は病気の始まりに過ぎないことだそうです。

「パニック発作を繰り返しているうちに、また発作が来るのではと恐れる状態になります。これを予期不安といい、パニック障害の特徴的な症状です。そうなると、発作を起こした場所でまた発作が起こるのではないかという不安が発作を誘発し、その場所に行くと常に発作が起きるようになってしまいます。これがさらに進むと広場恐怖症です。乗り物や人ごみで発作が起こるのではないかと不安になり、外出を避けるようになってしまうこともあるのです」

 パニック障害は精神的に追いつめられた状況で発症することが多く、ストレスが誘因の一つと考えられています。原因はまだ不明ですが、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が効くことから、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質の機能異常が関係しているのではと推測されています。

 ◇検証2 中等度から重症例ではパニック障害特有のうつに移行しやすい

 パニック障害のもう一つの問題点は、比較的重症の人ではパニック発作の前後から、うつ病が発症することです。しかも、通常のうつ病(定型うつ病)とはかなり症状の出方が異なります。

「一般的には、うつは朝起きられないことが多いのですが、パニック障害にともなう非定型うつ病の特徴は朝元気でも夕方になると落ち込むことです。よい出来事があれば気分がよくなり、悪い出来事に対しては極端に落ち込むといった気分の反応性も見られます。また、不眠や食欲不振を訴える定型うつ病とは逆に、過食や過眠、手足に鉛がついたような激しい疲労感が現れます

「うつになったら、薬だけで治そうとしても無理です。パニック発作を早期に治めれば、うつに移行しないという報告もありますから、生活改善でなるべく発作を起こさないようにすることも大事です」

 ◇結論 薬物治療だけでなく、生活改善も必要。脳トレも役立つ?

 貝谷さんによると、パニック発作の引き金になる「4悪」は、過労、睡眠不足、風邪、二日酔い。これらを避け、規則正しい生活を送ることが生活改善の第一歩となります。また、カフェインが発作を誘発することも。コーヒーを飲むとドキドキしたり不安感を感じたりする人は控えるようにしましょう。アルコールやタバコも摂取時は抗不安作用がありますが、その作用は短く、摂取後リバウンドが来て症状が悪化するので控えたほうがよいそうです。

 一方、パニック障害の治療に役立つのが運動です。パニック障害は、乳酸が蓄積すると悪化することがわかってきました。「乳酸がたまらないようにするには、ジョギングなどの有酸素運動が一番」と貝谷さんも勧めます。

 さらに興味深いのは、認知症予防として人気の脳トレが、うつの回復期にも有効だということ。

「パニック発作を起こすと、脳の前頭葉の血流が低下します。うつなどの症状がとれても、脳機能は回復していないことも多いのです。脳トレは脳機能を改善するので、うつの回復にも役立つのですよ」

 パニック障害というと、精神面だけの問題と思われがちですが、ふだんの生活習慣も大きく影響していることを知っておきたいものです。



 こういう見方もあるのですねぇ。

 要するにストレスを溜めないようにするにはどうすればいいのか、ということと似ている気がします。

 とすればうつ病とも関連性はあるか…。こういう病気って、良い精神科医と出会えるかどうかな気もしますね。相性などもありますから難しいですけど。

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休職した人を職場復帰させるプログラムを病院内で行う。

心の病気、病院内で「模擬出勤」職場復帰へプログラム

 心の病気で休職した人をどうスムーズに職場に復帰させるか。こういった治療後のケアに取り組む病院も増えている。

 東京都新宿区の財団法人神経研究所付属晴和病院の一室。スーツ姿の男性4人が黙々とパソコンに向かっていた。見積書を作る人、入門書を見ながらキーボードをたたく人など、作業の内容は人それぞれだ。

 同病院は2003年に職場復帰を目的とした「リワークプログラム」を始めた。病院で「回復した」と診断されても、職場に戻って再発するケースがあったのがきっかけだった。職場は病気の原因となった場所。生活面では回復しても、職場復帰にはさらに高い壁が立ちはだかっていることは珍しくない。

 同病院のプログラムの参加者は、毎朝午前9時30分に「模擬出勤」。新聞を読むことから始め、3分間スピーチやパソコン作業など、職場に近い雰囲気を体験する。集中し過ぎないように、ストレッチやラジオ体操など体を動かす時間が入っているのが特徴だ。

 同病院の橋本光則診療部長は「初めのころは新聞を読むだけでぐったりしてしまう人もいる。慣れていくと、自分に自信がつき、職場復帰のきっかけをつかんでいくようだ」と話している。

 これまでに71人が参加し、うち67人が職場復帰を果たしたという。



 これって保険適用?じゃないですよねぇ。国も本気で精神疾患や自殺などを心配してるなら、こういう行動療法も保険適用してほしいですけどね。

 病院と社会とを連結する治療としては「デイケア」などもあります。料理したりスポーツしたりというものですけれど、この記事の活動は、職場復帰希望の社会人が対象です。

 実際にこういうことをやっている病院ならば、職場復帰も円滑にいくんでしょうけれど、これは病院の役割というよりは国がそれ専門の施設を作って、ボランティアか何かで運営して、うつ病治療を終えた人は最終的にそこに紹介されるようにするのが一番じゃないでしょうか。
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2008年04月29日

島根県隠岐病院の精神科常勤医が不在となる。

隠岐病院の精神科医確保めど立たず

 島根県隠岐の島町の隠岐病院で七月以降、常勤医が不在となり、精神科病棟が一時閉鎖される可能性が高まっている問題で、隠岐四町村や県、病院などでつくる第一回精神科医療対策会議が二十八日、同町内で開かれた。常勤医確保に向け、県や隠岐の島町がこれまでに計八人の医師に赴任を打診したが、確保のめどが依然立っていない厳しい状況が説明された。

 また会議では、医療体制が手薄になり患者へのケア不足が懸念されることから、患者を支援する地域ネットワーク組織「精神保健・医療・福祉関係者連絡会(仮称)」を設置することを決めた。連絡会は隠岐四町村、保健所、医療機関などでつくり、五月に第一回会合を開催。情報交換を進め、患者の支援に当たる。

 隠岐病院では、県立こころの医療センター(出雲市)からの派遣医師が六月末で引き揚げることことから、精神科の常勤医が不在になる。同対策会議は引き続き医師確保に当たる一方、確保に至らず、病棟の一次閉鎖になった場合の入院患者の本土転院の進め方についても細部を詰める。



 よく小児科医や産婦人科医の不足が言われていますが、今回は精神科医の不足。とはいえアレですよね、地方の病院ともなると、どの科の医者も不足している、というのが現状でしょう。

 精神科医は、肉体的疲労というより、精神的なプレッシャーやストレスが尋常ではないと思います。ただ薬だけ出してホイホイと適当に診て、自分の利益を優先するような開業医は別ですけれど、患者に親身にあたる人であればあるほど、その精神的疲労はとてつもないものではないでしょうか。アメリカの精神科医の自殺率は常人の8倍とも言われているようです。

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学者の5人に1人が、リタリンなどを服用していた。

学者もドーピング? 「集中力高める」2割が服用と英誌

 「薬漬け」は大リーガーだけでなく学者もだった――そんなアンケート結果を、10日発行の英科学誌ネイチャーが発表した。精神を集中させるため、学者の5人に1人が、リタリンなど認識力を増強するとされる薬を服用していた

 アンケートは今年1月、ネイチャーの読者を対象にインターネット経由で行われ、世界60カ国1400人余りの技術者・生物学者・教師らから回答があった。ただ、回答の70%は米国からだった

 その結果、「リタリンなど3種の薬のいずれかを集中力や記憶を高める目的で使ったことがあるか」との問いに、20%が「ある」と回答。最も多く使われていたのはリタリンだった。

 79%は「健康ならこの種の薬を飲むことは許されるべきだ」。また52%は「医師の処方によって入手した」としているが、34%は「インターネット」と答えている。

 ただし、16歳未満の子どもについては86%の回答者が「この種の薬を飲ませることは制限すべきだ」と答えた。

 リタリンは、米国では注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療などに使われている。日本では、うつ病の治療などに使われてきたが、依存性の高さが問題になり、規制が強められている。現在の適応症は、睡眠障害のナルコレプシーに限定されている。



 そりゃそういう薬である以上、それ目的で使われることはあるんでしょうけれど…実際はやっちゃいけないことですよね。日本の医者も、馬鹿な睡眠薬の自己投与みたいのが昔はあったみたいですけれど。

 薬を安易に入手できるからこそ、医者はお互いに注意深く見ていなくてはいけません。まぁ今日本でリタリンや精神疾患に使われる薬を不正に流そうものなら、医師免許剥奪は免れないでしょうけれどね。

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2008年04月28日

褒めて褒めて褒めまくれ。

褒められること、脳にとっては現金もらうのと同じ効果

 自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の定藤規弘教授の研究チームが23日、他人から褒められると、ヒトの脳は現金を受け取った場合と同じ部位が活性化するという研究結果を発表した。

 同チームでは、19人の健康な男女を対象に、カードゲームで勝って賞金を得たときと他人から褒められたときの脳の反応を、それぞれ特殊な磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影して比較した。

 チームでは、今回の研究結果は、賞賛はヒトに精神的な励みを与えるという長年の仮説を科学的に裏付けるものだとしている。



 褒められると、嬉しいもんです。なかなか褒める機会ってないですけど、それでも褒めてもらえると、次も頑張ろうとか思うもんです。叱られたりして伸びる人も確かにいますけれど、最終的にはやはり褒めないとね。

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2008年04月27日

うつ病の4人に1人が治療を勝手に中断してしまう。

うつ病治療、4人に1人が中断

 うつ病や関連の疾患で受診した経験がある人のうち、症状が治まっていないにもかかわらず、治療を中断するケースが少なくないことが、ファイザーの調査で分かった。精神医療の専門家は「患者が疾患を理解し、安心して治療に専念できる環境を創出できるよう、医師側の意識をさらに高めていく必要がある」と指摘している。

 調査は、うつ病とその関連疾患で受診経験がある12歳以上の1、000人を対象に実施した。

 「治療を中断したことがあるか」との質問では、ほぼ4分の1に当たる252人が「ある」と回答。その際の症状については、「治まっていなかった」が104人(41%)で、「治まっていた」の76人(30%)を上回った。
中断の理由としては、「通院が面倒」「通院するほどの病気や症状ではないと思った」「症状が良くならなかった」が多かった。

 治療の満足度に関しては、「医師の説明」や「薬剤の効果」を重視する人が多かったが、専門医の場合には特に「医療施設の雰囲気、受診のしやすさ」が重視されていた。

 通院に当たっては、約半数が「普段、病気の際に利用している身近な医療機関」を最初に受診しており、ファイザーでは「うつ病を日ごろの診療の際にできるだけ早く発見して治療するには、かかりつけ医の役割が重要になる」と指摘している。

 調査結果について、鳥取大医学部の中込和幸教授(精神行動医学)は「せっかく受診したのに、治療や通院を中断してしまうという、うつ病医療に関する課題が示された」と指摘。「患者が最初に受診する可能性が高い、かかりつけ医による病気についての詳細な説明や診断、薬剤の正しい服用方法の指導などが患者の満足度を高める。かかりつけ医と専門医の連携が重要」と話している。



 精神科医のレベルにばらつきがあることがまず問題として挙げられます。適当に薬を渡して、はいオッケーとしてしまう医師がいては、治るものもなおりません。

 第二に薬の情報が出回ったこと。この薬はこの副作用がある、だから飲まない、というようになってしまいます。

 そしてネットの存在。気軽に同じ病気の人と知り合え、「誤った情報や価値観」を入手する格好のルートとなります。ワケのわからない薬指導や、わざと医師に対して悪意を持たせるような稚拙な会話がなされているのが現状です。

 疾患が疾患なだけに、その人にあった薬を、その人にあった容量で、落ち着いた後もぶり返さないように薬を減らしていくような計画を練らないといけません。医師がいくら熱意を込めても、「治ったようだ」として途中でやめてしまっては、元も子もありません。

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喫煙者は抑うつ気分になりやすい。

Smokers have a 41% higher risk of suffering depression, according to research from the University of Navarra

 喫煙者は、非喫煙者よりもうつで苦しむリスクを41%も抱えているという。

 これは、Navarra大学の科学者によって、8556人の参加者を対象として行われた研究による結論である。煙草の使用とうつ病についての直接的な関係を先駆的な方法で立証した。



 脳にも当然ニコチンは作用するわけで、作用するということは脳も何らかの対処をしているわけですよね。そこらへんで、抑うつ気分を味わうことになり、慢性的になるとうつ病になってしまうのでしょうか。謎ばかりですけれど、煙草を吸ってハイになることってあまり聞きませんからねぇ。まずは禁煙から、始めてみてはいかがでしょうか。
 
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2008年04月17日

米国の女子大生「日本で桜を見れたら命を絶てる」

「日本でサクラ見られたら命絶てる」 米国の女子大生、北海道で行方不明

 行方不明になっているスカイ・バドニックさん 米国コネティカット州サディントンの大学生、スカイ・リン・バドニックさん(21)が旅行先の北海道で行方不明になっている。来日した母親のスーザンさん(54)らが15日、札幌市内で記者会見し、「早く家族に連絡して」と訴えた。

 スーザンさんらによると、スカイ・リンさんは今月1日、サディントンの自宅に「友達の家に泊まります」との書き置きを残したまま行方不明になり、家族が4日、地元警察に捜索願を出した。パソコンの記録などから、800ドルを引き出し、ワシントン、成田経由で2日夜、新千歳空港に着く航空券を買ったことがわかった。

 大学で日本文化史などを専攻しており、以前、「日本に行き、サクラを見ることができたら満足で、命を絶てる」などと話していたという。鬱的症状があることから、家族は「所持金が尽きたら自殺の恐れがある」と来日し、北海道警千歳署に捜索願を出した。

 スカイ・リンさんは身長168センチ、体重81.6キロ。白人で、ブルー・グレーの瞳、髪は茶色だという。米国を出たときはジーパンに黒っぽいティーシャツ、龍の柄のスウェットシャツなどを着ていたのではないかとみられている。

 「何か情報があれば、在札幌米国総領事館((電)011・641・1115)に知らせてほしい」という。



 なんとも・・・。

 普通は逆じゃないですかね。日本人なら、桜を見たら生きる気力がわいてくるような気がします。それくらい、桜という花は美しいです。

 スカイさんも、もしかしたらどこかで、桜を目にして、死ぬのをやめてくれたかもしれません。
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2008年04月13日

神戸いのちの電話の役割と活躍について。

頑張ってます:社会福祉法人 神戸いのちの電話 /兵庫

 電話に出た相手に名前を伝える必要はなく、相手も名乗ることはない。それでも、自らが抱える心の悩みや、誰かに聞いてもらいたい思いを、電話の向こうでしっかりと受け止めてくれる。「こちらに寄せられる1本1本の電話が、まさに『一期一会』の出会いになるんです」。事務局長の中道京子さん(48)は話す。

 「いのちの電話」は1953年に英国ロンドンで始まり、今では世界70カ国に500以上の電話センターがある。日本では71年に東京で初めて開設され、現在、全国49のセンターで相談を受けている。

 神戸は国内で12番目に開設。専門の研修を受けた無償ボランティアの相談員が、複数人ずつ交代で待機する。95年の阪神大震災では施設が全壊する被害を受けたが、約2カ月後に活動を再開した。01年から365日無休の相談受け付けを開始。05年には、土曜夜から日曜の夕方まで夜通しの受け付けも始めた。

 現在、相談員は計約160人。うち8割強を女性が占め、年代別では50〜60代が多いという。年間約1万3000件の相談に応じている。

 近年は、DV(ドメスティックバイオレンス)や、うつ病をはじめ精神面での問題に関する相談などが増え、加えて介護や引きこもりの問題など、相談内容は多様化している。相談時間に制限はなく、中には1人で1時間以上に及ぶこともある。

 それでも「元気が出ました。ありがとう」「これで仕事に出かけられます」といった感謝の言葉が、相談員にとっても励みになる。「相手の気持ちになり、耳や心を傾け話を聞くことで、相談員も価値観を広げることができています」と中道さんは言う。

 活動費(年間約1000万円)の大半を、維持会員(個人)と賛助会員(法人・団体)からの会費や、一般からの寄付に頼っている。運営は決して楽ではない。「社会的ニーズとして、1人でも多くの声を聞けたらいいし、そのためには人的パワーがさらに必要です。でも基本的には、相談を受ける質の高さを維持することが、まず大切だと思います」(中道さん)。

 今月から、新たに相談員になることを希望した24人の研修が始まった。来年2月まで続く計約30回の講座を通じ、「傾聴」「受容」「共感」といった相談員としての基本姿勢を学ぶ。

 「人は一人では生きていけない。誰かに支えられてこそ、生きていけるのだと思います。相談を受けることで、『あなたは一人じゃないんだ』というメッセージを伝え続けていきたい」。中道さんが語った。

 維持・賛助会員への加入や一般寄付も常時受け付けている。事務局は電話078・371・4405(兼ファクス)。



 こういう、社会的に役立つボランティア活動をされている方、ほんとお疲れ様です。そして、ありがとうございます。

 電話というコミュニケーションツール1つで、今まで何人の人を救ってきたのか、想像もつきません。

 国が補助金を出してでも、より拡大して活動してもらいたいところです。日本はボランティア概念がなかなか根付きませんけれど、頑張って下さい。

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2008年04月10日

ギャンブル依存症は、心の病か

「ギャンブル依存症は心の病」 法律家らが対策会議設立へ

 パチンコやスロットをせずにはいられない、その元手に消費者金融やヤミ金から借金を重ねる。こんな「ギャンブル依存症」を心の病として治療することで借金苦を減らそうと、多重債務問題に取り組む法律家や市民団体のメンバーらが近く「依存症問題対策全国会議」を発足させる。

 秋田県仙北市で5日に開かれた「全国クレジット・サラ金問題対策協議会」が、「多重債務の原因としてのギャンブル依存問題に取り組む宣言」を決議。その中で「依存問題へ対処せずに債務整理だけしても、再びギャンブルが始まる。その結果、ヤミ金に手を出したり犯罪に走ったり命を絶ったりするなど深刻な事態になりかねない」として新組織の立ち上げを決めた。

 「依存者」は、国内に200万人はいるとみられ、厚労省もすでに調査に乗り出しているが、新組織では「ギャンブル依存症」を精神障害と認めて保険診療の対象とするよう同省に働きかける。

 メンバーの一人で、ギャンブル依存症専門のリハビリ施設「ワンデーポート」(横浜市)を運営するNPO法人理事長の稲村厚さん(48)は、00年の開設からこれまでに約260人の「病的ギャンブラー」を受け入れてきた。開店から閉店までパチンコ店に入り浸り、その後深夜までポーカーなど賭博。その元手は日雇い労働で稼ぎ、寝床はカプセルホテルやネットカフェ。それでもギャンブルをやめられない――そんな状態だった人も少なくないという。

 施設では、アルコールや薬物の依存症と同じ社会復帰プログラムを使い、集団生活でお互いの体験を語り合いながら、約1年かけてギャンブル依存症を回復していくが、稲村さんは「ギャンブルをやめられない本人の罪悪感は深い。病気だから治療、回復できるとわかれば、社会復帰への一歩をつかめる」と話している。



 うーむ。

 アルコールや薬物、たばこなどの物質による依存は確かに病気というか、病態が存在するものだとは思いますが、ギャンブルねー。

 つまりこう、自身のお金をかけることで、勝負の感覚をリアルに味わい、その結果としてお手軽にスリル体験ができるんでしょうけれど、それを果たして病気としていいものかどうか。

 「ギャンブルは儲からん」という当たり前の概念が分かっていれば、そこまでのめりこむことはないと思うんですけれど、それでものめりこんでしまうあたりが、病的なのかな・・・。
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2008年04月09日

国家公務員の長期病欠の63%はうつ病や統合失調症など。

長期病欠の63%は心の病 国家公務員実態調査

 2006年度に病気やけがで1カ月以上休んだ国家公務員は6105人に上り、このうち63%はうつ病や統合失調症など「心の病」が原因だったことが9日、人事院の実態調査で分かった。

 長期病欠の理由で心の病が占める割合は、01年度の前回調査(34%)に比べ大幅増となった。人事院は「国会対応などによる恒常的な長時間勤務や職場でのストレスの増加が主な要因」とみて、同日までに各府省に対し、超過勤務の縮減など職場環境の改善を求める通知を出した。

 06年度に病気やけがで1カ月以上休んだ職員は、全体の2%に当たる6105人(男性4702人、女性1403人)。前回に比べ割合はわずかに高くなっているが、全体の職員数が前回調査より少ないため486人減った。

 原因別では、心の病が前回に比べ1631人増の3849人。次いで「がんなどの腫瘍や白血病」が604人、「心筋梗塞など循環器系疾患」が317人などで、心の病のほかはいずれも減少した。



 国家公務員、いえ、公務員も、大変なところは大変でしょうねぇ…。

 一部のバカな、私腹を肥やす系の公務員のせいでイメージは最悪に近いものになっていますけれど。

 国家公務員の給料(給料とは言わないですけど)、上げてもいいと思うんですよね。ただし、天下りやら、不正やらはなくして、クリーンな方向で。タクシー券問題とか、わけのわからん保養施設とかやめるかわりに、給料をアップするのは構わないと思います。

 でも実際はいかにしてお金もらうかとか考えてる人がいるので、難しいんでしょうけれど。公務員ももっともっと内部告発とかして、今の医療関係者みたいにクリーン路線にもっていけばいいのに。そしたら誰も叩きませんよ。

 おそらくこのニュースも、「詐病だろ」とか「心の病なんぞ甘え」とかいう意見が一般の方から吹き出ると思うんですけど、そういうわけではないと思いますので。イメージって本当に大事。
posted by さじ at 22:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神