米国の研究チームは23日、怒りなどの激しい感情が、一部の人々にとって死につながるケースもある心拍リズムの異常を引き起こす可能性があると発表した。
コネティカット州にあるエール大のレイチェル・ランパート博士率いるチームが心臓病患者62人を対象に研究を行い、心臓病に関する米専門誌「Journal of the American College of Cardiology」にその結果が掲載された。
ランパート博士は、少なくとも影響を受けやすい一部の人々にとっては、怒りが死につながる可能性もあるとしている。
地震や戦争、サッカーのワールドカップ(W杯)での敗戦といった出来事が心停止による死亡率を増加させる可能性については、従来の研究でも示唆されている。
論文要旨
目的:この研究は、実験室で設定した「怒り」によって引き起こされる交互性T波(TWA)が、植込み型除細動器(ICDs)植え込み患者の将来的な心室性不整脈に繋がるのかどうかを調べたものである。
背景:怒りは自発的な心室性頻脈や心室細動を促進し、TWAを増加させる。しかし、怒りによって引き起こされたTWAが将来の不整脈に繋がるのかは不明である。
手段:埋め込み手術後3ヶ月経過した62人のICDs植え込み患者から、精神的なストレス下での心電図を記録した。TWAは時間ドメイン法で解析した。一年以上のフォローアップ期間内に、ICDに保存されたデータを元にして、ICDが阻止した心室性頻脈や心室細動が増加しているかどうかを調べた。
結果:フォローアップ期間内にICDが不整脈を阻止した患者(10人)は、怒りによってTWAの高い増加を示していた。(13.2 μV(四分位範囲9.3〜16 μV)、不整脈のなかった患者は9.3 μV(四分位範囲7.5〜11.5 μV, p < 0.01)怒りによって増加したTWAが最も高い四分位に当てはまった患者(>11.9 μV、15人)は、最も低い四分位の患者に比べ、1年以内に不整脈を経験する割合が高く(33% vs. 4%)、その後の延長期間でも同じ傾向だった。(40% vs.9%, p < 0.01 for both) 心駆出率、以前の不整脈や幅の広いQRSなどを操作した多変量回帰分析では、怒りによって増加したTWAが、最も高い四分位範囲ではそれ以外の患者に対して10.8倍の開きを持つ、不整脈の有意なプレディクターとして残った。(95%信頼空間:1.6〜113, p < 0.05)
結論:怒りによって誘発されたTWAがICD植え込み患者の将来の不整脈に繋がるということは、感情によって誘発された再分極の不安定性が突然死やストレスに繋がる一つのメカニズムかも知れない、ということを示唆している。怒りによって引き起こされたTWAに対する臨床的機能があるかどうかは、さらなる研究が必要だ。
怒りの感情も心臓へのストレスにつながる、という研究です。確かに怒っているときは心臓へ負担かかりそうですもんね。私はあまり怒らないタイプなのでなんともいえませんが、心臓に疾患のある方は穏やかな生活を。
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