[NEWS]の記事一覧

2008年11月28日

病院に寄贈したカリヨンに癒し効果がある。

カリヨンの音色に癒やし効果

 病院や福祉施設などで、時を告げるカリヨン(組み鐘)の活用が広がってきた。軽やかな音色が心身に安らぎをもたらすのでは、と注目されている。

 カリヨンは中世のヨーロッパで生まれた。複数の鐘をハンマーで打って、メロディーを奏でる。最近のものは、コンピューターで制御され、設定された時間に、自動演奏される仕組み。現在、日本には、数百のカリヨンがあるという。

 高度専門医療を行う長野県安曇野市の県立こども病院は、昨年11月、オランダ製のブロンズ鐘16個を時計台に設置した。朝夕は作曲家・三善晃さんの曲「母子のための音楽」が流れ、昼は、季節ごとに民謡などの曲が演奏される。NPO法人「いのちと平和の森」(同県松本市)が「子どもたちを元気づけたい」と寄付を募ってカリヨンを購入、寄贈した。病院には約140人が入院しており、演奏は子どもたちに好評という。

 滋賀県甲賀市の水口病院には12月中旬、筒状のベルを並べるチューブラー・カリヨンが設置される。鐘形のものより音量が小さく、優しい音色を奏でる。病院敷地の中央に位置する介護老人保健施設の壁に設置される。筒状のベル12本で約20曲を演奏する。「やすらぎを与える音楽を提供できれば」と同病院。

 カリヨンの輸入販売を行っているカリヨン・センター(東京)の田村紘三さんは「カリヨンはこれまで、商業施設や公園、駅前広場で主に時報のために使われていた。病院などでの設置が増えてきたのは、鐘の音色の癒やし効果が期待されているからだろう」と話している。



 こう、医療のことを色々取り上げていますけれど、こうやってみてみると、病院に寄贈したり寄付したりして、陰ながら患者さんを支えている人たちが結構いることを、嬉しく思います。

 病院ボランティアとして、病院内でボランティアを行う方々もおります。医療従事者では出来ないようなことをやってくれているので、病院としても大助かりですし、患者さんにとっても需要のあることをやってくれているので、ボランティアをしてくれている人は凄いな、と。活動といっても催しものなどといったものではなく、例えば病棟に貸本を届る活動ですとか、患者さんと一緒に散歩に行ったり、色々なものがあります。興味のある方、一度やってみてはいかがでしょうか。大きな病院なら結構あると思いますよ。

 って全然関係ないコメントになってしまいました。すみません。

  /l、
 (゚、 。 7   
  l、~ ヽ      
  じし' )ノ 

外来患者さんへの援助

・玄関案内 受付案内 
・車椅子介助
・外国語・手話通訳
 
入院患者さんへの援助

・入院案内 小児科病棟での遊び相手 学習指導
・配茶 配膳 洗濯 買い物  
・ベッド周りの整理整頓 お花の手入れ
・話し相手 散歩の付き添い

手仕事ボランティア

・縫製 修理 
・衛生材料作り
・介護用品の手作り

地域医療連携サービス

・紹介患者さんの案内 
・医療情報コーナーでの患者図書の貸し出し
・パソコン・ビデオの視聴援助

イベントボランティア

・ひな祭り お花見 七夕会 夏祭り お月見 
・クリスマス会 音楽会 など
・各種行事の企画・運営・お手伝い

グリーンボランティア

・患者さんの心なごむハーブ園 花壇を育てる
・院内各所に飾る切花を育てる
 
その他の活動

・地域で介護用品など製作、バザーの開催などにより、院内で活動するボランティアに資金援助をする。


参考:日本病院ボランティア協会

病院ボランティア募集の検索結果

関連:心の病を研究してきたアメリカのベノア医師が初来日
posted by さじ at 23:05 | Comment(1) | TrackBack(0) | NEWS

麻生首相の度重なる医師医療関連失言について。

麻生首相:「医師常識欠落」発言 県保険医協会が抗議 /広島

 県保険医協会(長谷憲理事長)は21日、全国都道府県知事会で麻生太郎首相が「(医師は)社会的常識がかなり欠落している」などと発言したことを受け、抗議文を内閣総理大臣あてに提出した。

 麻生首相は、19日に開かれた知事会で地方の医師不足への対応を問われ、「お医者さんを『減らせ、減らせ』と言ったのはどなたでしたか」などと医師側に責任があるかのような発言をした。抗議文は、発言について「公の場における客観的な根拠に基づかない自らの経験と記憶だけの発言は、その影響力から考えても首相としての資質が問われる。断じて許すことはできない」と批判。医療費抑制策を根本から見直し、医療費を適正に増やすよう早急な政策転換を求めた。



 麻生首相発言に医師団体から批判の声

 麻生太郎首相の「医師は社会常識がかなり欠落している人が多い」という発言に関連して、医師の団体からは批判や反発の声が相次いだ。

 病院勤務医を中心に約800人が加盟する「全国医師連盟」の黒川衛代表は「驚いた。一国の首相の言葉とは思えない配慮のない発言で残念だ」とした上で、「一生懸命働いている医療者のことを真剣に考え、社会全体で医師不足対策を考えてほしい」と注文を付けた。

 また開業医が多い全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は「日本の医療費が低水準にある中で、地域医療を守っている医師の気持ちを全く理解していない」と切り捨て、「二階俊博経産相が、相次ぐ妊婦の受け入れ拒否は『医師のモラルの問題』と発言したのを撤回したばかり。医師不足に関する麻生内閣の認識はどうなっているのか」と批判した。

 定例記者会見中に首相発言が舞い込んだ日本医師会の中川俊男常任理事は「信じられない。これから確認したい」と述べ、あぜんとした表情を見せた。



「何もしない人の分何で私が払う」 高齢者医療に首相不満?

 「私の方が税金は払っている。たらたら飲んで食べて(健康維持に)何もしない人の分の金を何で私が払うんだ」。麻生太郎首相が社会保障を議論した20日の経済財政諮問会議で医療サービスを受ける高齢者にこう言及していたことが、内閣府が26日に公開した議事要旨で明らかになった。

 首相は「67歳、68歳になって同窓会に行くとヨボヨボして、医者にやたらかかっている者がいる」と指摘。「彼らは学生時代はとても元気だったが、今になるとこちらの方がはるかに医療費がかかっていない。それは毎朝歩いたり何かしているからだ」とも語った。



 首相失言問題。まぁ野党みたいに、寒いあげ足とり合戦みたいなことをするのは恥ずかしい限りというか、ちゃんと仕事しろといいたいほどですが。

 でも医師って、何だかんだ言っても育ちの良い人が多かったり、勉強も出来る人が多いと思うんですよね。職業別に並べたら、医師は常識人ばかりなのではないですかね、とマジレスを。常識ないと患者さんとのコミュニケーションも務まりませんし。

 勿論医師にもそうではない人はいます。いますし、そういう人は問題を起こしますけれど、一国の首相が医師全体を一括りにして「常識がない」と言ってしまうのは、短絡的というか、表現が安易すぎるよなぁと。

 言いたいことを言ってしまう、というのはどうでもいいんですけれど、その時に表現が適切であればあるほど、カリスマ性のある首相になれるんじゃないですかね。ボキャブラリー的に成長してほしいかなと思います。

 3つめのやつは、失言ではないと思うんですよね。健康な人が思っている本音みたいなものでしょう。でも病気ってちゃんとした生活をしていてもなる人もいるので、配慮がないといえばそれまでですが。実際に不摂生で病気になって、病院にかかっている人は大勢いますし。そういう人たちへの「予防医療」の意味も込めて、発言したまで、では。こちらも表現の問題で、「何で私が払うんだ」とぶっちゃけ過ぎなんですよね。笑
posted by さじ at 00:34 | Comment(2) | TrackBack(0) | NEWS

2008年11月25日

先端医療に活用できる画期的蛍光剤を島根大学が開発する。

蛍光ナノ粒子:島根大が開発…先端医療に応用可能

 島根大は18日、がん細胞の早期発見など先端医療に応用できる蛍光剤「酸化亜鉛ナノ粒子」を開発したと発表した。医療分野では今年のノーベル化学賞の受賞対象となった「緑色蛍光たんぱく質」(GFP)が広く活用されているが、酸化亜鉛ナノ粒子はGFPより安全で、蛍光が安定しているという。10年度中に臨床試験をする。

 酸化亜鉛は、ベビーパウダーなどに使われる毒性のない無機物。同大学の中村守彦・産学連携センター教授と佐藤守之・総合理工学部教授らの研究チームは超微細加工技術(ナノテクノロジー)を使い、がん抗体などのたんぱく質と結合できるようアミノ基を持った粒子に加工した。

 中村教授によると、ナノ粒子は24時間以上蛍光が持続する安定性を持ち、製造コストもGFPの100分の1以下。無機物なため、拒絶反応がないとみられるなど人体に対する安全性が高い。

 今月上旬には蛍光剤を付着したたんぱく質がマウスの細胞に取り込まれ、光る様子の動画撮影に成功。製法などの特許を申請している。



 検査のために人体に何かを入れるときには、アレルギーなどに気をつけないといけませんが、安全性の高い技術ということはそれが無くなるのでしょうかね。そうだとすればかなり素晴らしい。

関連
医学処:受精卵に蛍光灯などの光を当てると出生確率が下がる。
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2008年11月24日

「或る病院の一生」から、病院というものについて考える

『或る病院の一生』がネットで反響 病院の内情を克明に

 現在ネット上で「或る病院の一生」という文章が小さな話題を呼んでいる。

 この文章はもともと或るブログ上に「病院のライフサイクル」という題名で2005年4月にアップされたものに加筆修正を加えたもののようだ。

 文章の書き出しは、新しい病院への需要が高まり200床ほどの小さな病院が開業するところから始まる。最初は診療科を増やしどんどん患者数を増やしていくこの病院だが、徐々に患者が高齢化し経営の雲行きが怪しくなっていく。そうした病院業務の流れをまるで実際の病院関係者が書き記したように克明に記している内容となっている。

 現代の病院経営への問題提起をしているこうした記事に対し、個人のブログでは、「儲からない患者はヨソへ、おいしい患者だけウチで。と病院は患者を平気で病院を選別する」、「本当かどうかは分からないが、充分有り得る話だ」などの感想が書かれ、興味深く読まれたようだ。



 或る病院の一生。去年ぐらいに話題になって読んだことがあります。かなり凄い文章です。

 この話は、なんだか実際にあった話を元にしているような気がしてなりません。それほどまでにリアルで、病院というものに対する問題が密集している、そんな文章です。

 是非一度、みなさんに読んでいただきたい。そんな思いで、今回取り上げてみました。以下が「或る病院の一生」の全文です。


或る病院の一生

救急を取る病院がまだまだ少なかった頃。

地域の基幹病院は県立病院。救急車で30分。救急対応も今ひとつ。

地域に「住民のための」新しい病院への欲求が高まった頃、200床程度の規模でその病院は開院した。

何もない開院したての病院。外来の棚の中は空っぽ。買ったばかりの備品は全てダンボールの中。事務も看護もみんな初対面。場所によっては、誰かが梱包をあけて棚に備品を並べてくれていたりするけれど、どれもビニールがかかったまま。洗面台の水は妙にシンナー臭い。

新しい病院を立ち上げる仕事は楽しい。医師の派遣元にも十分な人手はいないので、みんな交代で出張。

新しい病院。新しい町。医局の引継ぎノートには、新しく作った約束処方、備品のありか、地元に詳しい事務の名前や電場番号、近所のコンビニの場所などが記載されていく。遊びに行くにもどこにいっていいのか分からないから、医局の冷蔵庫には魚肉ソーセージと酒の瓶。毎晩野郎ばっかりの飲み会。

立ち上げ当初は、食事も宿泊も全て病院内。3食病院食は、2週間もすると飽きてくる。もっと身体に悪いものが食べたくなって、医局に周辺の出前リストがそろう頃には、外来にもだんだんと患者さんが増えてくる。

まず集まるのは、「主訴:腰痛」の整形外科の患者さん。理学療法室の常連を徐々に増やして、高血圧の人、咳のひどい人などを外科に紹介して、外来の人数はだんだんと増えていく。

そのうち、軽症の交通外傷の患者さんが救急車でやってくる。病院にも、若い患者さんが増える。もともとの設立の動機は「地元のための」病院。病棟はきれいで、居丈高な公立病院を反面教師に、時間外でも笑顔で診察。

開院2年目。待合室には若い人が増え、活気を帯びてくる。外科、内科とも常勤のドクターが増える。スタッフの数が充実すると、皆もっと高度なことがやりたくなる。

「24時間救急を取ろう」「研修医を育てよう」スタッフが若ければ、気合だけで施設が充実する。病院で行えることはだんだんと高度になって、救急車の数も増えていく。

「あの病院はよくやってくれる」。地域の信頼が集まると、もっと若い患者さんが通院するようになる。

病院は忙しくなる。患者さんの年齢層が変化して、皮膚科や耳鼻科といった、若い患者さんが得意な科も充実してくる。

眼科が入ると、病院の経営は一気に好転する。白内障の手術の得意な眼科医は、内科医3人分の収益を一人で稼ぎ出す。黒字科が増えることで、病院にはもっと大規模な設備が導入される。

「カテ室を作ろう」。開院8年目。常勤できてくれる循環器のドクターも決まり、循環器外来が始まる。患者さんの数はますます増え、救急外来にも救急車の音が毎日鳴り響く。

病院は、名実共に地域の基幹病院になっていく。

雲行きが怪しくなるのは10年目頃。10年もすると、町にも高齢者の数は増えてくる。救急外来に来る患者さんも、外傷や脳出血、急性腹症といった年齢層の若い救急患者だけでなく、転倒による大腿骨骨折、近所の老健からの誤嚥性肺炎の紹介といった人が目立つ。

病棟の業務は変わる。夜間に不隠になる患者さんが増え、重症患者のための個室は、いつのまにか不隠部屋に。重症の患者さんは大部屋。徘徊老人は個室。不隠の強い高齢者はなかなか退院しないから、若い患者さんの個室への移動希望はかなわなくなる。

「あの病院はうるさい」「いつも廊下で叫び声が聞こえる」。病院へのクレームが増える。

「四肢抑制」「不隠時セレネース静注」、今までは書かれることのなかった指示が指示簿に当たり前のように記載されるようになった頃、日中のナースルームは不隠の強い高齢者であふれ返り、医者は叫んで暴れる年寄りの相手をしながらカルテを書く。かつてラクテックがぶら下がっていた点滴台には、経管栄養のバッグが目立つ。PNツインもまだ棚に置いてあるけれど、滅菌期限寸前でほこりをかぶったまま。中心静脈栄養なんて、もう半年ぐらい処方してない。

病院が止めを刺されたのは、近所に新しい老健が出来てから。「○○病院がすぐそば」を宣伝文句にして人を集めたその施設は、嘱託の医者が帰る5時以降になると患者をどんどん連れてくる。少しでも熱が上がると、「うちでは見られません」「入院させてください」の一点張り。

もともと「24時間、患者さんを断ることはしません」との宣言を出していた施設。開院して12年、それでも気合で守ってきたそんな宣言は、病院とは縁もゆかりもない業者に美味しく利用される。外来には車椅子に拘束衣で来院する年寄りが増え、以前から通院していた若い人は外来からいなくなる。

地元の評判は、「あの汚い病院」にいつのまにか変わっていた。

夜中によく来る喘息のお姉さんに「今度、午前中の私の外来に来てください」とお願いしたことがある。「私は○○病院にかかっているので、ここはちょっと…」と、マスコミによく出る施設の名前を出された。

市民のための病院。市民に見放された病院。ここはいつのまにか賎民のための病院に変わっていた。

病棟はもはや、行き場のない高齢者でいっぱい。若い人の肺炎や喘息といった病気は外来で何とか診るしかない。病棟業務は連日の転院先探し。患者さんもご家族も、「一生ここにいさせてください」と願う人がほとんど。やっとの思いで転院させても、2週間もすると37度の発熱で救急車で帰ってくる。もう二度と転院に応じるものか、という決意を持って。

手術の症例も減った。病棟ナースにも離職者が相次ぐ頃、引き上げた医師にも後任が決まらなくなり、病院は慢性期疾患を細々と診るだけの施設へと変貌した。

地域の若い人たちはもっと新しい病院へ。

「あの病院に行くと死ぬ」。こんな評判が地元に立つ頃、病院は死に体になった。

間違ったことはしていないつもりだった。より高度な医療サービス。より簡単なアクセス。地域の医療需要に応えつづけた結果、病院は地域から見放された。

病院組織は、自己進化の果てに崩壊する。

より広い需要に応えたい。より高度な医療をしたい。患者さんのための医療をしたい。力をつけようと努力し、進化を続けた結果、「強い」病院にはより弱い立場の患者、慢性疾患の末期の人、行き場のない高齢者が集中するようになった。

90年代に救急外来を一生懸命やっていた民間病院の大半は老人病院化し、急性期疾患を搬送する救急車は、以前は急患を断っていた市立病院や日赤病院に集まるようになった。そして現在、そうした病院すらもだんだんとベッドが回らなくなり、一昔前なら救急車が素通りしていた大学病院にも、寝たきりの高齢者が搬送されるようになっている。

恐竜絶滅寸前の時代。爬虫類全盛期、さまざまな大きさの恐竜が覇を競い合った後、気候の変化とともに体の大きな恐竜しか生き残れなくなった状況。市中病院が高機能化し、救急外来を充実させて「恐竜」化する一方、「恐竜」化した大手市中病院は、進化の果てに絶滅しそう。

その影で数を増やしているのは、小さな哺乳動物。小規模病院。老健業者。元気がなくなる恐竜達を尻目に、誕生したばかりの哺乳類はきれいな施設、専門特化した医療技術を武器にその勢力を増している。

時代は変わる。恐竜が闊歩していた時代は去ったあとは、小型ですばしこい哺乳動物の時代が来る。医療の無駄は減り、効率のいい医療、効率のいい経営が実現できるようになる。

問題なのは「恐竜」クラスの力がないとどうしようもない患者さんはいつの時代にも存在することで、哺乳動物を目指した施設は、最初からそうした人を相手にする意思は無い。

主役の交代は、すでに小児科、産科の領域では確実に進行している。産科のいない市は、もはや珍しくなくなった。

恐竜だって絶滅したくて進化したわけじゃない。医者だって絶滅する恐竜と心中したくはない。結果として哺乳類が生まれ、「食べられない」患者は見捨てられる。

病院。患者。マスコミ。みんな死にたくないから頑張ってる。

誰かが悪くてこうなったというわけではないと思う。
posted by さじ at 04:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | NEWS

2008年11月16日

妊婦受け入れ拒否問題での二階経産相の失言について

妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え

 東京都内で相次いで明らかになった、妊婦の受け入れ拒否。三鷹市の杏林病院から受け入れを拒否された妊婦の夫がインタビューにこたえ、「二度とこうしたことが起きてはならない」と訴えました。

 先週金曜日。東京の都立墨東病院には、意識不明となっている妻を見舞う男性の姿がありました。

 「心配ですし、会いたいので来てるんですけど。『うん』とか言ってくれればうれしいが、(返事は)まだない・・・」(搬送拒否された妊婦の夫)

 出産を間近に控えた男性の妻(32)が、異変を訴えたのは9月23日午前0時過ぎ。突然、嘔吐や右半身が動かなくなるなどの症状が出たといいます。

 「(妻の体の)右側が全部、動かないような感じになってきていた。(医師は)脳の障害の可能性があると言っていた」(搬送拒否された妊婦の夫)

 入院していた調布市の飯野病院の医師は脳出血の疑いがあると判断、午前3時ごろ、三鷹市の杏林大学病院に救急搬送を要請しました。

 しかし、杏林大学病院は産科医が手術中だったことなどを理由に、受け入れを拒否。女性はその後、都内の5つの病院からも受け入れを断られ、4時間後、ようやくおよそ25キロも離れた都立墨東病院に搬送されました。

 「(救急車の中では)早く着いてくれ、早く着いてくれと。体がなんとかもってくれと思っているだけでした。とにかく長く感じました。(病院に)着くまでは」(搬送拒否された妊婦の夫)

 妻は病院で男の子を出産、その後、脳の手術を受けましたが、現在も意識が戻っていません。

 「(妻に)一番最初に(息子を)抱かせてやりたかった。頑張った本人にはね」(搬送拒否された妊婦の夫)

 今回のケースでは、最初に搬送を断った杏林大学病院側が「切迫感が伝わってこなかった」としているのに対し、飯野病院側は「脳障害であることは伝えており、切迫感は伝わっていた」と病院間での言い分が食い違っています。

 また先月4日、墨東病院など都内の8つの病院に搬送を断られた36歳の妊婦が死亡したケースでも、病院の間で言い分が食い違っています。

 病院同士の主張が食い違う今回の問題。舛添大臣はコミュニケーションがうまくいかない現状を、IT技術を駆使して解決できないかと、二階経済産業大臣と急遽、会談しました。

 「お医者さん同士のコミュニケーションがうまくいっていない。IT技術を活用した形で、両省で協力しながら国民のためになる仕事をしたい」(舛添要一厚労相)

 「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」(二階俊博経産相



二階経産相も失言 「医者のモラルの問題」発言撤回

 東京都内で脳内出血の妊婦が相次いで救急搬送を拒否された問題で、二階俊博経済産業相が「医者のモラルの問題」と発言したことから、医師などの団体から抗議が相次いだ。二階経産相は13日、謝罪した上で発言を撤回した。

 発言は10日、二階経産相が舛添要一厚生労働相とともに、病院の情報伝達システム開発を両省で強力して行うことを表明した際に飛び出した。

 二階経産相は搬送拒否の問題に触れ、「医者のモラルの問題だ。相当の決意を持ってなったのだろうから、忙しいだの、人が足りないだのということは言い訳に過ぎない」と、発言した。

 これに対し、全国医師連盟が「産科救急の問題は、基本的に人員や施設の不足に起因」とした上で、「発言でモチベーションが下がり、さらに離職する産科医が増える」と抗議声明を発表。他にも2つの市民団体から抗議の声が挙がった。

 13日の参院厚労委員会でも足立信也議員(民主)が発言の真意を質問したところ、二階経産相は「発言が医療に携わるみなさまに誤解を与えたことをおわび申し上げ、発言を撤回する」という回答を寄せた。



経産相発言は「責任転嫁」―日医

 日本医師会の中川俊男常任理事は11月12日の定例記者会見で、二階俊博経済産業相が救急医療機関で妊婦の受け入れができない事例が相次いで明らかになっているのを受けて、「医者のモラルの問題」などと発言したとされる問題について、「システム上の問題を医師のモラルの問題に責任転嫁するのは大問題だ」と非難した。

 この中で、中川氏は「過酷な医療現場で疲弊している医師に対して、石を投げるようなもの。あまりにも現場を見ていないと言わざるを得ない」と経産相を厳しく批判。

 救急医療機関で妊婦の受け入れができない事例が相次いでいることについては、「小泉政権下から特に強まった医療費抑制政策の結果というシステム上の問題」との見方を示した。



 まぁ失言を謝罪し、撤回したことに対して何か言うのもアレですけれど。

 今回の失言は、まさにトップが、現場の医療を全く理解していないがために出てしまったものですよね。大学病院や大きな病院で働いている医師の多くは、二階経産相のおっしゃるとおり、「相当の決意をもってなった」でしょうし、自身の限界の限りを尽くしてやっています。

 しかしですね、何事も限界はあるのです。その人が出しつくせるだけの全てを出して患者に向き合ったとしても、向き合えるのはただ一人だけで。二階経産相は、医師が忙しいということはご存知なのかもしれませんけれど、その「忙しい」というのは自分の忙しさと同等のように捉えているのかもしれませんね。人間、同じ形容詞を使っていても、その人その人によってニュアンスが異なりますから。

 ただ、この杏林大の先生の「忙しい」は、日本の中でもトップクラスの忙しさであっただろうことは、想像に難くありません。
posted by さじ at 23:32 | Comment(1) | TrackBack(0) | NEWS

2008年11月12日

13歳の少女が心臓移植を拒否して尊厳死の権利を勝ち取る

13歳の少女に尊厳死 心臓移植拒否認める

 11日付の英紙デーリー・テレグラフは、重い白血病を患い、抗がん剤治療で心臓移植が必要になった英国の13歳の少女が、病院の移植の勧めを拒否し、「尊厳死」の権利を勝ち取ったと報じた。

 病院側は裁判で争って少女に心臓移植を受けさせようとしたが、手術が成功する保証はなく、成功しても免疫機能が低下して白血病が再発する恐れもあることから、少女は専門家に相談して移植を拒否。病院側が、余生を家族と過ごすことを認めたという。

 少女は5歳のときに白血病と診断。家族は、少女が今年のクリスマスまで生きてくれることを願っているという。



 これもひとつの選択です。

 正常な思考力をもって、自身で考えた結果、こういう選択を選ぶのは「ひとつの人生を全うする」という意味で非常に良いのではないでしょうか。

 日本では尊厳死、安楽死ともに、法律的に曖昧な形です。合法か否かと言われれば、合法ではない。違法でもない。といった感じでしょうか。東海大安楽死事件で裁判側が提示した安楽死の4項目を満たせば、「違法性が阻却される」ということで、殺人罪に問われることはない、ということですが・・・よくわからんですよね。本来なら法律化すべきことだと思います。そういうのをナァナァにしておくのが日本の悪いところでもありますけど。

 尊厳死において何より大事なのは「延命しない」という意思を生前に表明しておく、リビングウィルという概念です。

 「本人の意思」を「生前」に明確なものにしておくことの大切さを13歳の少女から学んだ気がします。

関連
医学処:安楽死を合法化しようとする運動がフランスで活性化している
医学処:尊厳死を認めようと「尊厳死法制化を考える議員連盟」が案件を公表
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2008年11月06日

手術室にヒットマンが銃を手に押し入り患者に発砲する。

2人組のヒットマン、手術中の患者にとどめを刺す メキシコ

 メキシコ北部の米国との国境の町シウダーフアレスの病院で3日、銃撃を受け手術中だった男性(25)の手術室に2人組の男がなだれ込み、この男性を射殺するという事件が起こった。地元警察が明らかにした。

 地元警察関係者は「医師と看護師が手術室でこの男性の手当てを行っていたところ、顔をマスクで覆った2人組の男が重火器を手にやってきて、医師らに対し出て行くよう命じた後に男性に向けて3発発砲した」と語った。この男性は前夜、この病院の近くで銃撃を受け搬送されていたという。

 メキシコでは、麻薬組織同士が対米密輸ルートをめぐって対立を続ける国境地帯を中心に、犯罪組織によるものとみられる殺人事件で今年だけで約4000人が犠牲になっている。



 ブラックジャックで似たような話(銃をもって手術室を占拠)がありましたが。

 でも日本でも安心できないですよね。案外手術室って簡単に出入りできたりしますし。医療従事者っぽい格好とネームプレート、堂々とした姿、手術室までの手順(着替えとか)が完璧なら案外いけてしまうのでは・・・。

 そうならないように今後はセキュリティ対策が必要ですね。
posted by さじ at 01:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | NEWS

2008年11月02日

ヘモグロビンの低い女性から献血→数値を改ざんして製剤化

基準満たさぬ女性から献血、書類改ざんし製剤化

 長野県赤十字血液センター(長野市)で、血液成分が採血基準に満たない献血者から今年8月に誤って採った血液が製剤化され、医療機関で輸血に使われたことが29日明らかになった。

 誤採血に気付いたセンターの職員が書類を改ざんしており、日本赤十字社は関係者の処分を検討している。

 日赤によると、献血したのは同県内の30代女性。事前検査で血中のヘモグロビン値が基準を下回っていたが、複数の職員の確認ミスで200ミリ・リットル採血した。

 同僚の指摘で気付いた検査担当の看護師が、数値を書き換えた。血液は埼玉県の血液センターで製剤化され、先月、同県内の医療機関で乳児に輸血された。

 ヘモグロビンの比重が低いと、献血者が重い貧血になる恐れがあるため、採血できる基準値が定められている。日赤は献血した女性に謝罪し、健康被害がないことを確認した。乳児側から、健康被害があったとの報告も届いていない。



 そんなことをしなければならないほど血液が不足していたんでしょうか・・・?分かっていたのなら廃棄してしまえばよかったのでは

 ちなみに、一般の方が思う貧血というのは「血液の量が減っている状態」ですが、医学的な貧血というのは「血液中の赤血球が減っている状態」を指します。

関連
医学処:貧血治療薬エポエチン、ダーベポエチンに心臓病リスク
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医学処:ヘモグロビンを分解し貧血を引き起こすバベシア症について。
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2008年10月31日

手書き文書よりメールのほうが1.5倍ちかく嘘をつかれている。

心当たりある?電子メール、ウソ確率は手書きの1.5倍

 電子メールを使った場合、手書きの文書に比べてうそをつく傾向が約1・5倍になり、9割にのぼったことが米リーハイ大(ペンシルベニア州)などのチームの実験でわかった。うそがばれた場合、手書きの文書は責任が問われやすいなどと感じるためらしい。米経営管理学会で発表した。

 ネット社会は実社会に比べ相互不信などが起きやすいとされる。こうした現象を探るため、チームはこんな実験をした。

 経営学大学院のクラスで、院生48人に「賞金」としてそれぞれ89ドル(約9千円)を渡したことにし、これを別の人と2分割するように指示。院生には「相手は、あなたがもらった額は5ドルから100ドルの間ということしか知らない」と伝えた。

 院生は「私は何ドルもらったので、あなたの分け前は何ドル」という内容の連絡を電子メールまたはペンと紙で行った。仮想的なお金であるにもかかわらず賞金の分け方でうそをつく院生は多く、特に電子メールの場合の確率は92%。ペンと紙の場合の64%を大きく上回った

 また、前者が「自分がもらった」とする金額の平均は56ドルで、相手に渡すことにした金額は平均29ドル。後者の同67ドル、同34ドルに比べて「過少申告のずるさ」が目立つ結果だった。

 チームのリューバ・ベルキン助教は「電子メールはうそをつきやすくなるだけでなく、うそのつき方がひどくなる傾向もある。職場での電子メールによるコミュニケーションでは、仲間同士の信頼関係が大事だ」と指摘する。



 ものすごい実験。笑

 まぁそりゃ信頼関係のない同士でやったら、嘘ばかりになるでしょうねぇ。

 私は小心者なので、バレたら嫌だから嘘はつきませんけど。

 メールって、調子のいいことを書きやすいですからねぇ。そういうのが続くと、影で「あいつは調子のいいやつだ」とか言われかねないので、注意が必要です。相手を持ち上げる時は、「ここぞ」というところだけにしたほうが無難っちゃ無難。
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2008年10月28日

術後の大量内出血を見落とし死亡させた外科医を書類送検

止血怠り患者死亡 外科医書類送検へ

 神奈川県相模原市の渕野辺総合病院で2004年2月、急性胆のう炎の手術を受けた女性患者が死亡する医療事故があり、県警捜査1課と相模原署は22日にも、病院に勤務していた男性外科医(44)を業務上過失致死容疑で横浜地検に書類送検する。

 捜査関係者によると、外科医は、60歳代の女性に、腹腔鏡を使って胆のうを摘出する手術を行った。術後、女性は大量に内出血したが、外科医は気付かず、開腹して止血するなどの適切な処置を怠り、女性を死亡させた疑い。調べに対し、容疑を認めているという。

 病院は今年9月、調査委員会を設置。術後の処置に問題があったとして懲戒処分し、外科医は退職した。

 病院の柿沼憲一事務長は「すぐ内出血を止めていれば助かったかもしれない」と話している。



 これは・・・。

 油断、の2文字で片付けられるほどのものではありませんが。手術後の経過観察を、ルーチンワークとして行わず、常に細心の注意を払う必要がありますね。そのことを、例え外科歴3,40年になっても、忘れてはなりません。
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手で揉むと子宮筋腫が治ると無資格医業を行った男女を逮捕

「子宮筋腫、手で治療」 無資格医業容疑で4人逮捕

 「手でもむと子宮筋腫が治る」とうたい、無資格で診断したとして、警視庁は15日、千葉県市川市市川南1丁目の「東洋理学治療センターK理学院」名誉院長K(67)=同県船橋市=、同県船橋市本中山1丁目の「T理学整体院」院長(49)=同=の両容疑者ら4人を医師法違反(無資格医業)の疑いで逮捕したと発表した。

 生活環境課と亀有署などによると、両容疑者らは医師でないのに昨年6月〜12月、子宮筋腫の女性(23)ら患者9人に問診や触診などを行い、計約230万円を受け取った疑いがある。K容疑者は98年に開業。二つの診療所で少なくとも300人の患者を無資格診断したと同課はみている。

 K容疑者は「東洋理学治療創始者」を自称。「特殊な手技によりツボや急所を刺激し体の調子を矯正する」と言って、子宮筋腫などの患者を無資格で診断していた。

 また、「東洋理学K式理学整体実技認定」と称する認定証を10万円で発行していた。他県にも「東洋理学治療」「K式治療」を名乗る無資格診療所がある。K容疑者は8冊の著作があり、患者の多くは著作を見て訪れていたという。



 なんかすごい不思議なんですけど、何で子宮筋腫と診断されていて手で揉んで治るもんだと思うんでしょうか?

 実際この人たち、治らなかったんでしょうねぇ。哀しい話です。

 あのー、ふと思ったんですよ。何で病院とか薬って「信用されてない」のかって。

 おそらくアレです、医者は、薬の副作用についてちゃんと説明します。たとえ100万人に1人の確率で起こるものであろうと、きちんと説明します。ですが、サプリメントとか健康食品の類って、メリットばかり強調してデメリットは書かないんですよね。だから、中国産のわけのわからない健康食品とか飲んで、ものすごい副作用が出たりする。

 決してお近くの医者は言わないでしょうから、私がこの場で正直に言わせてもらいますけれど、ただのアホですよ、それは。ちょっと考えたら、病院にかかってきちんと薬飲んでるほうがいいですもん。副作用なんてそうそう起こるものではないのに、「説明しているから」、怖気づくんでしょうか。情報を多く得たほど不安になる、それは分かります。失敗のリスクを聞かされているようなものですから。ただ、だからといって、「曖昧なものにすがりつく」ってのが、個人的には(というか多くの良識ある人からしてみれば)理解できないことです。何故その効果も曖昧なものだ、と思わないのでしょうか?情報に惑わされすぎです。

 それと同じで、手で揉んだら子宮筋腫が治るとか、わけのわからない民間療法に騙されて十万〜百万近く払う人がいますけれど、何故なんでしょうか。病院で治療しましょうよ。

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筑波メディカルセンター病院の医療過誤事件で患者側が勝訴

手術ミス賠償訴訟、患者側が勝訴 茨城・つくばの病院

 茨城県つくば市の筑波メディカルセンター病院で99年に受けた直腸がん手術で後遺症が残ったとして、患者だった同市の男性が病院側を相手取り、慰謝料など約3515万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、水戸地裁土浦支部であった。中野信也裁判長は「手術に使う器具で腸管を損傷させた可能性がある」と手術ミスを認め、病院を運営する財団法人筑波メディカルセンターに約1367万円の支払いを命じた。

 訴えていたのは冨田善弘さん(死亡当時69)。冨田さんは06年10月、同病院の前で焼身自殺し、訴訟は遺族が承継人原告として引き継いだ。

 判決などによると、同病院は99年6月、腹部に数カ所の穴を開ける「腹腔鏡手術」と呼ばれる手法で、冨田さんの直腸がんを切除した。しかし、冨田さんは翌日に腹膜炎を起こし、緊急の開腹手術を受けた。一時危篤状態になり、回復後も1日に10回もトイレに行かなければならない排便障害が残った

 争点になったのは、術後に腸に見つかった直径6〜7ミリの穴。病院側は「患部を切除後、腸管をつなぐ際の、偶発的な縫合不全の可能性が高い」と、過失はないと主張したが、中野裁判長は「腸管を持ち上げるか、つかんだ際に、主治医以外の医師2人のどちらかが誤って腸管を損傷させた可能性がある」と判断した。ただ「だれの過失か特定できない」とし、担当医への請求は棄却した。



 あーこの事件か。

 ニュースをみるだけだと、単なる医療事故かどうかで争っているだけに見えますけれど、実際はあれです、医療事故の後の対応なども問題視されていますし、何より冨田善弘さんが焼身自殺をしたのも、排便障害云々ではなく、病院側(医師側)の対応に尋常ならぬ怒りを感じての行動なのではないでしょうか。

6年におよぶ医療訴訟の果ての決断

 10月5日昼前、高齢の男性が焼身自殺を図った。場所は、筑波メディカルセンター病院(茨城県つくば市)の玄関正面の遊歩道。 男性はガソリンを体にかけ、遊歩道にあるコンクリートでできたいすに腰掛け、自ら火を付けた。瞬く間に全身が炎に包まれ、周囲は騒然となった。

 周囲の人が急いで消火器で火を消し止め、男性は直ちに同病院の救命救急センターに担ぎ込まれた。連絡を受けて駆け付けた男性の長男はこう語る。 「顔は真っ黒に焦げ、耳たぶは焼け落ち、まぶたは焼け付いて開くことはできない状態で、見た瞬間にもうだめだなと思いました」

 0月6日午前2時過ぎ、男性は息を引き取った。後に遺族が警察署の鑑識課職員から聞いたところによると、男性は、 自身の体が火に焼かれながらも暴れることなく、消火されるまで筑波メディカルセンター病院の玄関をにらむように座っていたという。 この男性は、同市内に住む冨田善弘氏(当時69歳)。筑波メディカルセンター病院を医療事故で訴えていた、元患者だ。

 彼はなぜ訴訟を起こしたのか、炎に焼かれてまで訴えたかったことはいったい何だったのだろうか。


最先端医療の闇 筑波メディカルセンター病院の医療過誤訴訟

 こちらは原告側の運営しているサイトですが、もしこれが全て事実ならば、慈恵医大青戸病院事件と同じくらいの酷い医療です。手術中にミスがあったかどうかを問う以前に、医師が適切なインフォームドコンセントを行ったのか、患者を中心に考えていたのか、アフターケアをきちんと行ったのか、といった医師として当たり前の姿勢を問うべきではないでしょうか。

 いやー怖いですね。筑波メディカルセンター病院。もし過失があったのなら、反省して、謝罪して、二度とこういうことが起こらないようにすべきです。医師はミスをしてはいけない、これは当然ですが、ミスがあったら二度とそのミスが起こらないように対策を講じないと。

 まぁ何度も言いますけれど、今回の件は、医師の患者への対応がありえないものだったのではないですかね?人格に問題のある医師は患者を診るべきではないですよ。見れたり切ったりは出来ても、「診る」ことは出来ないです。

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2008年10月24日

ショッカーまでもが献血への協力を呼びかける。

献血しよっかぁ 悪役ショッカーが協力呼び掛け

 「無関心を打倒する!」を合言葉に、悪役・ショッカーたちが献血への協力を呼び掛ける活動が十三日、大阪・キタのヨドバシカメラ前などで行われた。学生団体の「関西ユースフェデレーション」と、日本赤十字社の共催。

 会場ではテレビ番組「仮面ライダー」シリーズの敵役・ショッカーに扮した大学生らが「イーッ、イーッ」と連呼しながら勧誘のチラシを配布し、雑踏の注目を浴びていた。

 呼び掛けが功を奏し、「(並んで)待ってもらって申し訳ないぐらい」と代表の山田幸人さん(23)からはうれしい悲鳴。今後も“草の根運動”として取り組んでいくつもりで、次は「投票率が低い選挙に、若者が参加するきっかけづくりをしたい」と意欲を見せていた。

 「関西」は「学生の成長と社会貢献をつなぐ」をモットーに、野宿生活者の啓発活動や環境教育キャンプなどの企画を通じて、社会貢献活動に取り組んでいる。



 いい活動ですね。

 こういう地道な活動で献血が増え、その後習慣化してくれれば。まず最初の一回目で躊躇している人が多いと思います。全然痛くないので是非どうぞ。

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2008年10月19日

世界最年少でクローンマウスの作製に成功した近畿大の21歳女性

21歳女子大生、クローンマウス“世界最年少”で成功

 日本人の相次ぐノーベル賞受賞が話題の科学界で、また快挙があった。近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)の21歳の女子学生が、体細胞クローンマウスの作製に国内最年少で成功した。しかも生まれたマウスは「三つ子」だった。

 体細胞クローンマウスの“生みの親”は、遺伝子工学科4年の西山有依さん(21)。4月に研究に着手し、6月26日に1度の出産でメス3匹が誕生。9月末までにそれぞれが7〜10匹(計25匹)の子供を出産し、正常な生殖能力の保持が証明されたことから15日、大阪市内で発表した。

 このクローン技術は、指導に当たった三谷匡准教授が「熟練した技術者でも、1匹を産む成功率は2%ほど」という困難さという。

 西山さんは、研究中は朝7時から実験に没頭。講義やテニス部の活動からも遠ざかり、「合コン? 全然、行ったこともないですよ」と研究一筋の生活を送ったと笑った。

 三谷准教授は「クローンマウス作製で最年少である可能性がきわめて高く、ギネスブックに申請できないか検討している」という。



 凄いですね。生活も研究者って感じです。

 若いからといって偉大な成功をしないかというと、そういうわけでもないです。医学的な発見は、若者でも出来ます。独創性や着眼点の違いなんですかね。

 少年老い易く学成り難し
 一寸の光陰軽んずべからず

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2008年10月17日

がん化する危険のない、新世代iPS細胞誕生。

ウイルス使わず「安全iPS細胞」…山中教授ら成功

 様々な細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)を、発がんなどの危険性があるウイルスを使わずに作ることに、京都大の山中伸弥教授らのグループがマウスで成功した。

 10日付の米科学誌サイエンスに掲載される。

 山中教授らは、これまで皮膚の細胞に3〜4種類の遺伝子を組み込んだレトロウイルスを感染させる方法でiPS細胞を作っていた。しかし、このウイルスは細胞の染色体を傷つけ、がんを起こす恐れがあった。

 研究グループは、染色体を傷つけず、細胞内で2〜3日で分解されるプラスミドと呼ばれる環状のDNAに注目。4遺伝子のうち三つと、一つを別々のプラスミドに組み込み、マウスの胎児の皮膚細胞に導入、iPS細胞を作ることに成功した。山中教授は「新世代のiPS細胞といえる」と話している。



 山中教授はもはや100%ノーベル賞を受賞しますねってレベルにいますな。まさに至高。

 iPS細胞による新医療時代の幕開けはもうすぐそこまで来ているのかもしれません。いざ臨床応用の世界へ。

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2008年10月13日

医療用麻薬を自分に注射して急性循環不全で死亡した医師

麻薬使用改ざんか 患者に投与装う  死亡麻酔医 書類送検

 さいたま市見沼区の「東大宮総合病院」に勤務していた男性麻酔科医(5月に死亡、当時42歳)が、院内で医療用麻薬を自身に注射したとして、麻薬及び向精神薬取締法違反容疑で書類送検された。麻酔医は、自分で使った麻薬と同じ量の別の液体を麻薬と偽って病院に戻したり、麻酔記録を改ざんするなどの「偽装工作」を重ねていたとみられる。医療用麻薬の管理体制のあり方も問われそうだ。

 県警薬物銃器対策課の発表によると、麻酔医は5月12日、医療用麻薬のフェンタニルとレミフェンタニルを手術室のトイレで自分に注射した疑い。その直後、トイレ内で急性循環不全のため死亡した。

 麻酔医が死亡直前に担当した手術では、生理食塩水で希釈するなどしたフェンタニル4ミリ・リットルと、レミフェンタニル40ミリ・リットルが用意された。麻酔医が記した記録によると、フェンタニルは3ミリ・リットル、レミフェンタニルはすべて使ったことになっていた。

 しかし、手術室にあった「フェンタニル」のラベルが張られた注射器内の液体1ミリ・リットルを調べたところ、液体はフェンタニルではないことが判明。一方、倒れた麻酔医のそばに落ちていた使用済みの注射器内には、レミフェンタニルが残っていた。

 県警は、麻酔医がフェンタニル1ミリ・リットルを自らに投与した後、別の液体を注射器に入れて手術室に戻した上、レミフェンタニルを一部投与しながら、すべて患者に投与したように記録を改ざんした可能性が高いとみている。

 捜査幹部によると、麻酔医の両ひじにあった複数の注射跡は一部が硬化しており、長期間にわたり、常習的に麻薬を注射していた可能性があるという。麻酔医の自宅を捜索した結果、未使用の注射針5本が見つかった。

 同病院を含めほとんどの病院では、薬剤部が医療用麻薬を保管しているが、使用する麻薬量の帳簿上の管理は、麻酔医の自己申告に基づく。書類送検された麻酔医は2007年4月から同病院に勤務。鴻巣保健所(鴻巣市)は同年10月、同病院を立ち入り検査し、麻薬の保管状態や使用記録を調べたが、問題は見つからなかったという。

 麻酔医が医療用麻薬を持ち出して自ら使った例は、宇都宮市や大阪府吹田市の医療機関でもあった。日本麻酔科学会では「医療用麻薬の管理体制に不備がある」とし、麻酔医だけでなく、看護師や薬剤師なども監視できるダブルチェックを推進しているという。

 今回の事件では、医師が死亡するまで、行政や病院は実態を把握できなかった。麻酔医の自己申告で麻薬の使用量が管理される現行のシステムでは、この種の犯罪を未然に防ぐことは難しいと言える。

 東大宮総合病院を立ち入り検査した鴻巣保健所の検査担当者は「(麻薬使用量を記した)書類だけで医師の不正を見抜くのは難しい」と話す。県警の捜査員も「患者にどれだけ麻薬を使ったかは、麻酔医しか分からない。高い信頼関係に基づく管理システムで、他は誰もチェックできない」と指摘する。

 薬物依存の医師がほかにもいるとすれば、最も不利益を被るのは治療を受ける患者だ。「医師個人のモラル違反」では済まされない。医師や病院、行政が協力し、複数のチェックの目が入る仕組みを早急に構築すべきだろう。



 難しいですねぇ。麻薬を自在に使える環境にいる人に邪まな考えがあった場合、それをチェックするにはダブルチェック・トリプルチェックするしかないですからね。

 しかしまぁ、麻酔科の重労働をみれば、麻薬にすがりたくなる気持ちも分からんでもない・・・ってこんなこと口が裂けても言っちゃいけませんね。

 しかし麻酔科医本人よりも、重大な問題として、麻酔を受ける患者さんに対することがあります。医師が患者さんに使う薬から少量抜いて使っているわけですから、手術を受けたあとの患者さんの術後疼痛が増えたりとか、そういう問題も懸念されるわけです。普通患者さんのことを考えたら、麻酔を減らして自分に使うなんて考えないと思うんですけどねぇ。。。医者の良心に期待したいところです。

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2008年10月09日

女性産科医の過半数は、妊娠をしても当直は減らず。

女性産科医:過半数、妊娠中も当直減らず 育休制度4割なし

 産婦人科で働く女性医師の3分の1は妊娠・育児中であるにもかかわらず、病院が子育て支援のために当直を減らしたり、院内保育所を設けているケースが半数以下であることが、日本産婦人科医会の実態調査で分かった。法律で義務付けられた育児休暇制度も約4割の分娩施設が「ない」と答えており、医会は「女性医師は医師不足にあえぐ産科の貴重な戦力なのに、管理者の意識が低すぎる」と嘆いている。

 産婦人科の女性医師の割合は2割を超え、一般の診療科(約15%)よりも高いが、免許取得後10年で半数が分娩から離れており、職場の育児環境整備が急務になっている。今回、全国853カ所の分娩施設から回答を得た調査では、女性医師の33%が妊娠・育児中で、リスクが高い妊娠を扱う大学病院や日赤病院でも3割を超えていた。

 こうした女性医師に配慮し、当直回数を減らしている施設は、妊娠で46%、育児で41%と、いずれも半数以下。特に国公立病院は、育児中でも6割以上が通常の当直を余儀なくされていた。代わりの医師を手当てする制度がある施設も13%だけだった。

 院内保育所を設けている分娩施設は47%で、日本医師会調査による全病院平均(31%)よりは対応が進んでいる。ただし病児保育や24時間保育があるのは1割程度しかなく、利用者は約4割にとどまっていた。また育児休暇については、38%の施設が育児休業法に反して「ない」と回答しており、実際に3割の女性医師が休暇を取れていなかった。



 24時間の病院内保育所か・・・。

 いや問題解決は簡単な話、国がちゃんと労働対価を支払えばいいんですよ、産婦人科医に。医師不足でどれだけ勤務医が働いているのか分かってるのかって話です。お金さえちゃんと出してくれれば、保育所は容易いと思うのですが。

 まぁ医師になった時点で、休暇などは諦めざるをえないような境遇ですからねぇ。それが医師の運命、と物分り良く分かってしまっている現状がおかしいのであって、それを変えるためには国がちゃんと動いて医療従事者を尊重してくれないと・・・。
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2008年10月07日

2008年度の慶應医学賞に京都大学の坂口志文教授ら

慶応医学賞に坂口教授ら

 慶応大学は2日、医学・生命科学分野で優れた業績をあげた研究者に贈る「慶応医学賞」の今年の受賞者に、京都大学の坂口志文教授(57)と、米ソーク研究所のフレッド・ゲージ教授(57)の2人を選んだと発表した。

 それぞれに賞金2000万円が贈られる。

 坂口教授は、免疫系が自分自身の体を攻撃するのを抑制する「制御性T細胞」を発見、機能を解明した。

 ゲージ教授は、これまで再生しないと考えられていた哺乳類の脳の特定部位で、生涯にわたって神経細胞が新たに生み出されていることを発見した。



 おめでとうございます!

 本当は慶應大学という表記なのに、何故慶応医学賞なのか、という疑問はありましたが、実際は「慶應医学賞」が正しいようです。そりゃそうか。

 坂口志文教授とフレッド・ゲージ教授の受賞内容は下記のとおり。

坂口志文教授 授賞研究テーマ :制御性T細胞の発見と免疫疾患における意義の解明

 正常な免疫系は外来異物に反応しますが、正常な自己組織には反応しません。この自己と非自己を識別する免疫自己寛容の維持機構の解明は、免疫学、医学生物学の重要課題です。特に、免疫抑制機能に特化したT 細胞が存在するか否かについては長年議論がありました。

 坂口志文博士は、1980年代に、正常動物から特定のT 細胞を除去すると自己免疫疾患が発症することを示し、その機序の解明に取り組んだ結果、自己免疫を抑制する特異なT細胞を発見されました。この細胞は、のちに制御性T細胞(Regulatory T cell)として確立され、免疫自己寛容の維持に重要な役割を果たすことが明らかになりました。

 坂口博士は、制御性T細胞の発見に続き、自己免疫病・アレルギーを特徴とするヒト遺伝性免疫疾患IPEX症候群の原因遺伝子であるFoxP3が制御性T細胞のマスター調節遺伝子であることを発見されました。

 さらに制御性T細胞による免疫抑制の分子機構の解明および自己免疫疾患・移植・がんなどの免疫関連疾患における制御性T細胞の意義の解明に一貫して多大な貢献をされました。現在、制御性T細胞は、免疫制御の新しい標的として、世界中で活発な研究が行われています。


フレッド・ゲージ教授 授賞研究テーマ :哺乳類の成体脳におけるニューロン新生の生理的役割の解明

 中枢神経系の疾患や傷害は根治が難しく、成体哺乳動物においては、中枢神経系が一度損傷を受けると二度と再生しないと信じられてきました。ニューロン自体に分裂能がないことに加え、成体脳内にはニューロンを新しく産み出す幹細胞が存在しないためと長らく考えられてきたからです。

 ゲージ博士は、ヒトを含む哺乳類の成熟脳の特定部位では生涯にわたってニューロン新生が起こっていることを発見されました。空間認識や記憶の中枢である海馬の歯状回には、持続的に分裂し、ニューロンやグリア細胞を生む神経幹細胞が存在し、恒常的に新しい脳細胞を生み出していることが示されました。

 ゲージ博士の研究により、成体脳におけるニューロン新生が脳の構造と機能にとって重要な役割をしている事が明らかになるとともに、豊かな環境での生活や身体的運動によって成体脳ニューロン新生が活性化することも示されました。これらの研究は、神経系の再生医療実現への基礎となり、脳や脊髄の傷害および疾患に対する新しい治療戦略の確立に貢献すると期待されています。

 
参考:慶應医学賞

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医学処:熊本大学の満屋裕明教授らに、慶応医学賞。
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2008年度のノーベル医学生理学賞は「HIV&HPV」

ノーベル医学生理学賞にウイルス発見の独仏研究者ら

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、子宮頸(けい)がんを引き起こすウイルスを発見したドイツのハラルド・ツアハウゼン氏と、エイズウイルスを発見したフランスのリュック・モンタニエ氏ら2人に対し、2008年のノーベル医学生理学賞を授与すると発表した。



仏独3氏にノーベル医学賞=エイズ、子宮頸がんウイルス発見

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2008年のノーベル医学・生理学賞を、エイズウイルス(HIV)を発見した世界エイズ研究予防財団(本部パリ)のリュック・モンタニエ名誉教授(76)と仏パスツール研究所の女性研究者フランソワーズ・バレシヌシ教授(61)、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)を発見したドイツがん研究センターのハラルド・ツア・ハウゼン名誉教授(72)の3人に授与すると発表した。

 授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億4400万円)はハウゼン氏に半分、モンタニエ氏ら他の2人に4分の1ずつ贈られる。



ノーベル医学・生理学賞 エイズウイルス発見などの3氏に

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2008年のノーベル医学・生理学賞を、エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)の病原体であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を発見した世界エイズ研究予防財団のリュック・モンタニエ氏(76)とフランスのパスツール研究所の女性研究者、フランソワーズ・バレシヌシ氏(61)、子宮頸(けい)がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)を発見したドイツがん研究センターのハラルド・ハウゼン氏(72)の3人に授与すると発表した。

 モンタニエ氏ら2人の授賞理由について同研究所は「エイズが1981年に報告されたあと病原体をいち早く発見し、世界的な疫病の拡大を抑制した意義は大きい」と説明。ハウゼン氏には、「世界中のがんの5%を引き起こしていたウイルスを見つけ、がん予防に貢献した」と評価した。

 モンタニエ氏ら2人は83年、エイズ患者からレトロウイルスの単離に成功。86年にはエイズの病原体であるHIVと特定。HIVに感染しているかを調べる血液検査が可能になった。病気の進行を抑制する3剤混合薬も開発され、“死の宣告”同然だったエイズが管理できるようになった。

 フランス通信(AFP)によると、HIV発見25年を記念して今年5月にパリで開かれた国際シンポジウムでモンタニエ氏は「HIVの形状は多様で、われわれが考えていたよりも複雑だ。人類は完全には理解していない」と語っていた。

 一方、子宮頸がんの発生は昔から性行為が関係しているとされてきた。だが、ハウゼン氏は83年、がん組織の中からHPVの1つを発見。このウイルスとがん発生の関係を証明した。



 まさかの、ウイルス受賞。しかもダブル。

 今や一般人でも知っている性行為感染症の二台巨頭、HIVとHPVです。

 しかし・・・このウイルスは発見されてから二十数年経っても、未だに根治できるような代物ではありません。症状を半永久的に抑えることはできるようになりましたが。

 まぁ、大発見ですからね。妥当なところではないかな、と。。。山中教授のiPS細胞も、いつかは受賞するんでしょうけれど、何十年後になるかは分かりません。

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2008年10月05日

雄が求愛の歌を歌っている時は報酬系神経回路が活性化している。

独立行政法人 理化学研究所

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、オスのトリがメスに求愛の歌を(恋歌)歌っている時、オスの脳内の報酬系神経回路が活性化していることを発見しました。理研脳科学総合研究センター(田中啓治センター長代理)発声行動機構研究チームのへスラー・ニール(Hessler A. Neal)チームリーダーとフワァン・ヤ・チュン(Huang Ya-chun)研究員の成果です。

 コミュニケーションを含むヒトの社会性は、日常生活を快適に送るとともに、精神の健康を維持するために重要な行動です。研究チームは、社会性行動をつかさどる脳機能を研究するため、鳴き鳥(Songbird)の1つ、キンカチョウを研究しています。キンカチョウは、高度な社会性を有し、オスはメスへの求愛のために恋歌を歌い、この歌が、種の存続に必須となっています。

 研究チームは、オスのキンカチョウがメスに対して恋歌を歌っている時、報酬にかかわる脳部位(報酬系神経回路)の活動が著しく上昇することを明らかにしました。特に、ドーパミンという神経伝達物質を含んだ細胞(ドーパミン作動性神経細胞)の活動が高まることを観察しました。

 一方、オスが、自分だけで歌を歌っている、ただ単なるさえずりの時には、この活動上昇は観察できませんでした。このことは、従来から考えられていた、報酬系神経回路の活動はドーパミン作動性神経細胞がかかわっている、という説を実証し、キンカチョウの重要な社会性行動である恋歌が、オスのトリの脳では報酬として認識されていることを明らかにしました。

 一方、アンフェタミンやコカインといった麻薬により、哺乳動物における脳内の報酬系神経回路のドーパミン作動性神経細胞が活発になることが知られています。今回、麻薬によって活性化される神経回路が、自然な社会性行動(恋歌)に伴った脳内報酬によっても、同様に活性化されることが明らかになりした。社会性行動によってもたらされる、脳内報酬に導かれたヒトの行動への理解や、ゲームなどによる習慣性や麻薬の依存性の脳機能および行動への影響を知る上で、このキンカチョウのオスの求愛行動と脳内の報酬系神経回路のさらなる研究がヒントを与えると期待できます。



 理化研ニュース。最近、記事にしたいような理化研ニュースが多いです。しかし理化研ってホントに色々なことをやってるんですねぇ。

 鳥の求愛行動から、報酬系神経回路の解明に至るところなど、目の付け所が素晴らしいほどシャープです。

 報酬系回路については↓の文章が詳しく書かれているかなと思ったので転載。



快感の生物学的意義とは、「学習結果に基づいて接近行動を選択させ、より価値の高い結果を獲得するための内的報酬」ということになると思います。

このような「満足感・幸福感」といいますのは、我々の脳内では「中脳・腹側皮蓋野A10DA含有核―大脳皮質・前頭前野」という「DA(ドーパミン)投射経路」の働きが亢進されることによって発生すると考えられています。

この投射経路は俗に「報酬系回路(幸福回路)」などと呼ばれており、何らかの報酬刺激の入力がありますと「腹側皮蓋野A10」から「皮質・前頭前野」に対する「DAの一斉投射」が行われ、我々の脳内には幸福感が発生します。そして、この回路を活性化させるメカニズムはふたつ発見されており、ひとつは「大脳辺縁系の情動反応」、もうひとつは「β―エンドルフィン」の脳内分泌がこの回路の脱抑制機能を持つとされています。

大脳辺縁系の情動反応とは知覚入力に対して発生するものです。ここでその知覚入力が「報酬刺激」と判定され、「快情動」が発生しますと、その信号が腹側皮蓋野A10に送られることによって前頭前野に対するDAの投射が開始されるというものであり、これが報酬系の基本回路となります。これに対しまして「β―エンドルフィン」といいますのは脳及び身体の自律的な生理状態に基づいて「視床下部」や「下垂体」などから分泌され、報酬回路の抑制機能に脱抑制と掛けることによってその働きを活性化させます。

では、大脳辺縁系の情動反応といいますのは知覚入力に対して発生するものです。ですから、この場合は何らかの情報が自分にとっての利益と判定されているわけですから、我々の脳はそれに対して幸福感を発生させているわけですね。これに対しまして、「β―エンドルフィン」といいますのは環境からの入力に対して分泌されるものではなく、身体の自律作用として発生するものです。従いまして、こちらの場合は身体が何らかの理由でそれを要求するならば、具体的な報酬が与えられなくとも我々の脳内には自然と幸福感が発生してしまうことになります。このため、「β―エンドルフィン」は「脳内麻薬」などと呼ばれています。

我々動物は、環境からの知覚情報を基に「利益・不利益の価値判断」を行い、「報酬刺激(接近刺激)」の判定に対して「報酬行動(接近行動)」を選択します。この「利益・不利益の価値判断」は中枢系に獲得された「反応基準」に基づいて行われ、知覚情報として入力された環境の変化に対応する適切な行動を選択し、生命活動をより有利に実現するためにあります。

我々高等動物の脳内には、このような知覚入力に対して価値判断を下し、行動選択を行うための中枢が全部で三系統ありますが、この内「本能行動」を司る「生命中枢」の価値判断といいますのは遺伝的にプログラムされた反応規準に従う「無条件反射」でありますから、その結果は全人類に共通であり、生涯に渡って絶対に変更することはできません。では、この系統ではその動物にとって何が報酬であるかは生まれながらにして定められていることですので、「利益」と判定されるものには無条件で確実な接近行動を選択することが可能になるわけですが、その利益獲得の結果を学習し、次の行動に再び役立てるということができません。これに対しまして、学習機能を持つ「大脳辺縁系」や「大脳皮質」の価値判断規準といいますのは生後環境から学習体験に基づいて獲得されるものであるため、次々と新たな経験を積み重ねてゆくならば様々なチャンスを物にすることができるようになりますし、失敗例もちゃんと学習されます。

我々動物は「報酬刺激」に対して「報酬行動(接近行動)」を選択し、利益の獲得を実現します。そして、この「報酬」といいますのは「外的報酬」と「内的報酬」に分けられます。

通常、「外的報酬」といいますのは知覚入力によって与えられますが、「内的報酬」といいますのは「内在的な欲求」として発生するものです。摂食行動の場合、「餌」という知覚刺激が外的報酬に当たり、空腹状態における「食欲」が内的報酬となります。そして、この二つが組み合わされることによって初めて接近行動が選択され、動物は「満腹」という利益を獲得することになります。

さて、「満腹」とは「快感・達成感」であります。ならば「快感」とは「報酬」でしょうか。実は、この時点ではまだそうはなりません。何故ならば、我々動物にとって「報酬」といいますのは「接近行動」を選択させるためにあるものだからです。欲求が満たされ、満腹になってしまってもまだ摂食行動を続ける動物がいるでしょうか。
このように、満腹といいますのは摂食行動に対して「回避行動」を選択させるためのものです。従いまして、「報酬」とは接近行動を選択させるものでありますから、「満腹・快感」とは報酬刺激ではないということになります。

では、この「快感・達成感」を「報酬」とするためには必ずや学習が必要です。「快感・達成感」が成功報酬としてひとたび学習されるならば、次の行動からはそれが接近行動を選択するための「未来報酬」として働くことになります。脳内に「快感・達成感」が発生するのはこのためです。

大脳辺縁系の情動反応やβ―エンドルフィンの分泌によって我々の脳内に発生する「満足感・幸福感」といいますのは「内的報酬」に当たります。ですが、これは「食欲」や「性欲」などとは違い、このままでは接近報酬としては使えません。ですが、これが実際の利益獲得として実現され、ひとたび「快感・達成感」として学習されるならば、それは行動選択のための立派な未来報酬として運用することができるようになります。我々はこのようにして向上心を獲得します。従いまして、「快感の生物学的意義」とは、「学習結果に基づいて接近行動を選択させ、より価値の高い結果を獲得するための内的報酬」ということになります。

さて、高い学習能力を持つ我々高等動物の脳内では、「β―エンドルフィン」は中脳・腹側皮蓋野「A10DA(ドーパミン)報酬回路」に対して比較的高い作用を持つことが指摘されています。

生命中枢における「食欲」や「性欲」といったものとは違い、「A10報酬系」によってもたらされる「快感」といいますのは学習が成されなければ実際の報酬としては使うことができません。では、我々の脳内には、どうして「学習を前提とした欲求」などというものが存在するのでしょうか。これは、与えられた生後環境の目まぐるしい変化に柔軟に対応し、生命活動をより有利に実現するためです。これが生後学習による環境適応能力であり、我々の向上心であります。

「知覚入力―大脳辺縁系―A10―前頭前野」という報酬系の基本経路ではA10は大脳辺縁系を介して環境の変化と繋がっています。ですからこの場合、発生する幸福感は知覚入力によってもたらされた実際の幸福体験と対応しています。そして、この回路であるならば食欲や性欲など、予め定められた報酬刺激に対しても反応は発生しますし、それを成功報酬として新たに学習することも可能です。

ですが、「視床下部・下垂体―βエンドルフィン分泌―A10―前頭前野」この系統では実際の幸福体験が伴わなくとも我々の脳内には強制的に幸福感が発生してしまいます。従いまして、こちらの系統では「達成報酬の学習による向上心の獲得」という説明は成立しません。では、β―エンドルフィンとはいったい何のために分泌されるのかということになりますと、それは強い鎮痛・覚醒作用を持つ自律反応であり、いざというときの保護・遮断回路としての機能を果たすのではないかと解釈されます。ですが、もしこの反応が実際の幸福感と一緒に学習強化されてしまうならばどうなるでしょうか。それは常習性の強い覚醒効果を持つことになり、我々は向上心を持つことはおろか、生命活動を全うできるかどうかも危うくなります。従いまして、我々の脳内には何故このような「脳内麻薬」が存在するのか、また、如何なる理由でこれが学習機能を有する「A10報酬系」に強く作用するのかといったことは、まだはっきりと説明を付けることができないと思います。
posted by さじ at 20:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | NEWS