インドネシア人看護師・介護士、厚労省が受け入れ準備開始 厚生労働省は17日、インドネシア人看護師・介護士を2008年度から2年間で1000人受け入れる準備に入った。同日の衆院本会議で看護師らの受け入れを盛り込んだ日・インドネシアの経済連携協定(EPA)が自民、民主、公明各党などの賛成多数で承認され、発効のめどがついたため。まず今年7月に看護師200人、介護士300人が入国する見通し。EPAを活用して外国人労働力を受け入れる初めての事例となる。
日・インドネシアのEPAは早ければ月内に参院でも承認される。道路特定財源関連法案の審議などを巡って国会が混乱すればずれ込む可能性もあるが、同協定は憲法の規定で衆院の優越が認められており、参院が30日以内に議決しない場合は自然承認される。インドネシアでは批准のための国会手続きは不要。
クローズアップ2008:インドネシア人受け入れ 急激な高齢化で人手不足が懸念される看護や介護の分野に、インドネシア人が入ってくる見通しになった。同国との経済連携協定(EPA)が今国会で承認されるのが確実になったためだ。専門的・技術的分野以外で、日本が外国人労働者に本格的に門戸を開放するのは初めて。7月にも第1陣が来日するが、看護師、介護福祉士の団体は、国内の労働環境の整備が先決だと反対している。
「
人手不足だから受け入れるのではない」。厚生労働省は受け入れについて、「あくまでも特例的」と説明する。労働市場の開放を求めるインドネシア側の要求に基づき、EPAで受け入れを盛り込んだことに対応した措置との姿勢だ。
厚労省によると、
資格がありながら働いていない潜在看護師が約55万人、潜在介護福祉士が約20万人いる。厚労省はこうした人材の活用などで人手不足に対応することを考えており、外国人労働者に頼ることは想定していないという。国内の労働市場への悪影響を懸念し、受け入れは2年間で1000人(看護師400人、介護福祉士600人)と抑えている。
だが、現場の実感とは大きなズレがある。
介護現場は夜勤や入浴介助など厳しい労働条件の下で、うつや腰痛などで職場を去る人が後を絶たない。06年の離職率は20・2%に達し、他産業に比べて高さが目立つ。
現場で働く介護職員は現在、約110万人。厚労省は、急激な高齢化で今後10年間で新たに40万〜60万人必要になるとみるが、確保の見通しは立っていない。03、06年の2度の介護報酬引き下げで、介護職員の賃金水準は男性で一般労働者の約6割の月額22万7000円程度。都市部を中心に人材難が慢性化し、外国人労働者に頼らざるを得ないと考える施設経営者も少なくない。
そのツケは既に表面化している。東京都世田谷の特別養護老人ホーム「博水の郷」は今月から、ショートステイ用18床を一時閉鎖した。3月末に職員の2割近い8人が退職したためだ。都内の別の特養でも介護職員が確保できず、定員を一時減らして運営を続ける事態になっている。特養の入所待機者は06年3月時点で38万6000人に上り、04年11月の調査に比べて約5万人増えている。
一方、日本看護協会や日本介護福祉士会は現段階での外国人労働者への門戸開放には反対している。
資格を持ちながら就業していない日本人の復職で十分と考えるためだ。
夜勤など家庭との両立が難しいことが背景にあるとみられることから、日本看護協会の楠本万里子常任理事は「勤務形態を多様化して人材を確保すべきだ」と話す。日本介護福祉士会の石橋真二会長は「賃金を底上げし、将来に希望の持てる職場作りが必要だ」と訴える。
インドネシアでは、昨年11月にEPAに関する計画が発表された後、希望者を受け付ける保健省に、看護師らからの申し込みが相次いでいる。
ジャカルタ近郊の病院で働く看護師のムタジールさん(25)もその一人。「
日本の進んだ医療・看護技術を学べるのも魅力。妻も賛成してくれた。月に2000ドル(約20万円)は稼げるんじゃないか」と期待を膨らます。現在の給料は残業代を含み約200万ルピア(約2万2000円)だ。
日本で働くには、インドネシアの看護師資格を保有し、2年以上の実務経験があることなどの要件がある。給料についてはEPAで「日本人と同等以上」と定めるが、インドネシア側の窓口となる海外労働者派遣・保護庁(NBPPIW)の担当者は「給料がどの程度確保されるかなど、日本側からの十分な説明はまだない」として、さらに待遇面などでの協議が必要と話す。
一方、介護福祉士として働くには、大卒もしくは高等教育機関(3年)の修了者で、半年程度の介護研修修了などの要件がある。インドネシアには現在、介護福祉士の研修システムがなく、第1陣は看護師資格を持った人に限られる見通し。だが、来年度以降に介護士の資格認定などを行う労働・移住省は「与えられる仕事内容に比べて、学歴などの要求される条件が高すぎる」と指摘し、人材確保の見通しについて楽観していない。
日本はフィリピンとも06年9月、同様の仕組みで看護師、介護福祉士を受け入れるEPAを締結しているが、同国議会での承認手続きが遅れている。
日本側施設は、インドネシア人希望者を20人程度選び、インドネシア人希望者も、希望施設を20位まで選択する。双方の希望をコンピューターで組み合わせ、最適な受け入れを決める仕組みだ。
施設が決まると希望者は来日し、
研修施設で6カ月間、日本語などの研修を受講。その後、
希望の施設で働きながら国家資格取得を目指す。看護師は3年、介護福祉士は4年の在留期間内に国家試験に合格しないと、帰国しなければならない。
宗教や文化の違いへの配慮が必要だ。インドネシアの大多数がイスラム教徒で、1日5回の礼拝がある。豚肉食が禁止されており、調理器具の使い分けを希望する人もいる。日本の文化や習慣を押しつければ摩擦につながる。インドネシアは20年間で百数十万人の家事職を含む看護・介護職の労働者を海外に送り出しているため、今回の派遣が日本進出の突破口との期待もあるはずだ。
日本語を話せて、日本の看護師と同等レベルの技能を持ち、何よりも性格が温厚で、真面目に働き、患者さんに暖かく接する人であれば、インドネシア人であれど、日本人と同等の給料を払うべきだと思いますね。
実際「資格を持ちながら就業していない日本人の復職で十分」と言いますけれど、無理でしょうね。勿論、育児後に復職するための研修で戻ってくるのは歓迎なんですけれど、何より働く意志が劣っているのではどうしようもありません。家の事が忙しいから〜とか言うなら別にインドネシアの人でも構わないのでは。
それで問題があるようでしたら社会問題にでもして何とかすればいいわけです。個人的には医療従事者1人あたりの負担が減るので歓迎ですね。あとはその人件費を増やすために、はやいとこ医療費を増やしてほしいってところでしょうか。
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医学処:フィリピン人看護師の受け入れ、2008年度から始まる。医学処:外国人看護師、どの程度病院は受け入れますか。