第17回びわ湖国際医療フォーラムでMICかながわが報告 海外の医療事情や外国人患者への医療などを話し合う「第17回びわ湖国際医療フォーラム」が5日、大津市で開かれ、神奈川県の特定非営利活動(NPO)法人・多言語社会リソースかながわ(MICかながわ)が医療通訳の派遣システムについて紹介した。MICかながわでは県や地元の病院、医師会を巻き込んだ派遣システムを構築。この6年間でおよそ1万件の派遣を行った。
通訳内容に関して、医療従事者、外国人患者の双方から高い評価を得ているという。
神奈川県は、1980年代のベトナム、ラオス、カンボジアからの難民受け入れの影響で、定住外国人の数が比較的多い。県内の外国人登録者数が16万7600人(166カ国)で、人口比率は全国平均より0.2ポイント高い約1.9%。
このような環境を背景に99年、県社会福祉協議会ボランティアセンターと地元診療所、通訳ボランティアらが、MICかながわの前身となる任意団体「外国人医療とことばの問題を考える会」を発足した。同会は県の医療通訳派遣制度検討委員会のメンバーに加わり、地元医師会や薬剤師会、行政に協力を求めてきた。
2002年にMICかながわを設立し、県医療通訳派遣モデル事業に着手。NPO法人と県との協働事業に対して資金を支出する県の「かながわボランタリー活動推進基金21」に採択され、03年度から県事業としてスタートした。
●協定医療機関17病院 通訳ボランティア142人 医療通訳を必要とする病院は、MICかながわの医療通訳派遣コーディネーターに電話で依頼。コーディネーターが適当な医療通訳に連絡し派遣する。この派遣システムに関して、県医師会、病院協会、県、MICかながわで基本協定を交わしており、派遣できる協定医療機関として現在、済生会神奈川県病院、東海大医学部付属病院、横浜市立市民病院、聖マリアンナ医科大病院など17病院が参画している。
スタッフ数はコーディネーター13人、医療通訳ボランティア142人で、スペイン語、中国語、タイ語、タガログ語、カンボジア語など10言語に対応可能。医療通訳には1回の派遣で3000円(交通費込み)の通訳料を支払う。
新人通訳のレベルは、MICかながわがロールプレイを交えた研修を実施しチェックする。一定の水準に達している新人を県に推薦。県は医療通訳として登録し、身分証を発行する。02-07年度の県事業としての派遣件数は9555件に上った。
医療従事者、患者ともに評価 医師や看護師、医療ソーシャルワーカーら医療従事者を対象に昨年行ったアンケートでは、およそ9割が「満足」と医療通訳を評価。派遣システム開始前から医療通訳を導入している医療機関に通訳レベルを尋ねたところ、9割近くが以前より優れていると回答した。
医療場面別に見た通訳の信頼度では、「初診時の主訴聞き取り」「治療方針説明」「重病告知・手術説明」などすべての場面で訓練された医療通訳が、友人や家族、言葉のできるボランティアを上回った。MICかながわの取り組みを発表した西村明夫プログラム・アドバイザーは、「やはり訓練された通訳はどうしても必要」と付け加えた。
また、患者向けのアンケートでは、通訳を利用した感想は「満足」「まあまあ満足」のみで不満がなかった。通訳内容への理解度や、自分の言いたいことを医師に伝えられた外国人患者の割合も高かった。西村氏はこれらの結果から、「いいシステムだということが分かった」と述べ、県からも高評価を得ていることを披露した。
一方、
県からの協働事業負担金(940万円)は最長5年間で打ち切られることから、MICかながわは07年度、試験的に病院が通訳料のうち1000円を負担する仕組みを導入した。すると、07年度派遣実績は前年度より767件増え2928件となった。
このような試みを踏まえ、今年度から派遣先病院の通訳料全額負担に踏み切ったところ、4-5月の派遣件数は過去3年間と比べて伸長。年間件数も前年度を上回る勢いという。ただ5病院は、患者に1000円の負担を求める制度を取り入れた。
今後の課題としては、医療通訳のレベル維持を取り上げた。通訳料を負担する病院側からはさまざまな要望が出てくることが予想されるものの、3000円の負担ではベテラン通訳の獲得は難しいとの認識を表明。通訳への報酬を海外の先進地域並みに現在の3倍に引き上げるとともに、診療報酬で加算を設けることがシステム持続に不可欠であるとした。
外国から来た方、日本語も英語も喋れない人は、とても不安だと思います。異国の地で、病気になっただけでも心細いはずです。
医療通訳のレベルに合わせて報酬を上げるのは歓迎だと思います。むしろ1回1万円払っても安いぐらいでは?ただどこが負担するのか、となると、「病院側」なのはちょっとオカシイ気も。1万円の報酬の出ない治療なんていくらでもありますからね。ボランティア精神で、赤字になる医療を提供しつづけなければいけないのかというとハテナです。だからといって患者が払うとなっても大きな負担となるような。
ですが、外国から来た方には、出来るだけ親切にしたい。そういう気持ちを忘れずに日本人が考えて行動していけば、きっと良い解決策に繋がるはずです。医療通訳の方がいることで、確実に患者さんは安心しますし、医師も最高の医療を提供できますからね。ここは、寄付とかそういうもので成り立つと、より楽なんですけどねぇ。なかなか日本じゃ難しいか。