福島県大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開手術で女性(当時29歳)を失血死させたなどとして、業務上過失致死などの罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)(求刑・禁固1年、罰金10万円)の公判が16日、福島地裁で結審した。
医師が決めた治療方針の結果として起きた事故の過失責任がどこまで問われるのかを争点にした裁判は、8月20日に判決が言い渡される。
無罪を主張する加藤被告は「精いっぱいのことをしたが悪い結果になり、一医師として非常に悲しく悔しい思い。再び医師として働かせて頂けるのであれば、地域医療の一端を担いたい」と述べた。
弁護側は最終弁論で、加藤被告の起訴が医師の産科離れを加速させたとの指摘に触れ、「お産難民という言葉さえ生まれた実態が生じたのは、わが国の医療水準を超える注意義務を課したため」と批判した。
検察側の論告では、加藤被告は04年12月17日、妊娠37週の県内の女性に対する帝王切開手術で、子宮に癒着した女性の胎盤をはがして大量出血を引き起こして、約4時間後に失血死させたとされる。また、死体検案で異状を認めたにもかかわらず、24時間以内に警察に届け出なかったとして医師法違反にも問われた。子どもは無事生まれた。
公判で争点となったのは、子宮に癒着した胎盤をはがす際の出血が、死亡するほどのものかを予測できたかという予見可能性と、死に至るほどの大量出血を回避する注意義務。
検察側は「胎盤をはがすために子宮と胎盤の間に手を入れた時点では癒着を認識しており、子宮摘出手術などに移って生命の危険を避ける必要があった」と、予見可能性と注意義務がともにあったと主張した。
これに対し、弁護側は「手ではがし始めた際に癒着を認識することはあり得ない。はがし終えれば子宮が収縮して出血が収まることが期待でき、判断は妥当で標準的な医療」と反論。医師法違反について弁護側は、「院長の判断で届け出を行わなかった。異状死には当たらない」としている。
[解説]産科離れ事件後広がる
今回の弁護側の最終弁論は、5時間半にも及んだ。「捜査当局が、医師の裁量の範囲にまで踏み込んで罪を問おうとしている」という医療現場の危機感を受けたためだ。
お産で医師が逮捕された影響は大きい。大野病院は医師がいなくなり、産科を休止した。地元の病院や診療所は、難しいお産を避けるようになった。全国的にも、産科をやめて婦人科専門としたり、若い医師が産婦人科を希望しなくなったりしている。
今回の事件で医師が有罪となれば、さらにダメージは大きいだろう。大野病院と同地方の福島県いわき市立総合磐城共立病院産婦人科の本多つよし部長は「患者のための手術が犯罪になるのなら怖くてやってられない。有罪が決まったら病院を辞める」と言い切る。
ただ、女性の遺族は事件としての捜査を強く求めていた。「真実を知りたい」とも強く訴えている。
医療現場にはリスクがついて回る。国は、医療事故の原因を調べる第三者機関「医療安全調査委員会(仮称)」の設置を検討している。今回の事件でどういう司法判断が下るにせよ、患者と医師の双方が納得できる問題解決の枠組み作りが必要になっている。
いよいよ結審。日本の産科医療を左右すると言われているこの事件も、ようやく結論が明らかとなります。
まぁ結論によってはとんでもないことになるであろうことは、容易に想像つきますけれども。少なくとも公正な判決となってほしいものです。
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医学処:産婦人科医の過剰な逮捕は、医療を萎縮させる。
医学処:福島大野病院事件の加藤医師に禁固1年求刑。
医学処:我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します
やはり、検察は控訴するだろうし。。。
ここまでされても、産科医の足並みはそろってないみたいだな。「くい止める会」に名を出せない理由はなんなんだ。地方が崩壊したら、東京もヤバいよな?