米国自治領サイパンで生まれた重い心臓病の新生児が県立あいち小児保健医療総合センター(大府市)で手術を終え、14日に退院した。現地では心臓手術に対応できないため、北マリアナ諸島連邦(サイパン政府)と同センターは2月に医療協力で合意したばかり。初の適用ケースとなった。
フィリピン出身の両親から3月下旬に生まれた長女アンジェラ・ビラモアちゃんは1万−2万人に1人という心臓奇形の先天性心疾患。手術しなければ1カ月ほどで死んでしまうところだった。
空路で中部国際空港(常滑市)を経て、4月8日にセンターに入院。同10日、人工血管で肺動脈に血が流れるようにする手術をした。血中酸素が欠乏するチアノーゼで真っ黒だった顔も、すっかり色つやを取り戻した。1、2年後に再び手術して完治する。
母親のユセミアさん(38)は「大変幸せ。医師の力で娘の命が助かった」と満面の笑み。父親のレガラドさん(44)も「娘にかかわったすべての人にお礼を言いたい」と話した。
合意内容は、渡航費や治療費をサイパン政府が負担し、現地で対応できない高度な医療をセンターが引き受ける。2年前、心臓病手術のためサイパンから米国へ向かった新生児が機内で容体が悪化、中継地の中部空港からセンターに搬送され一命を取り留めたことがきっかけ。空路でハワイや米国本土は長時間かかるが、中部なら4時間半で済む。
この日、サイパン政府のジョセフ・ケビン・ビラゴメス公衆衛生局長(47)も駆け付けてセンターにお礼を述べた。執刀した副センター長兼循環器科部長の前田正信医師(58)は「医者として一つの命を救えた満足感がある。サイパン政府の思い切った決断は高く評価できると思う」と話していた。
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医学処:完全大血管転位症を治療するためアメリカへ、向かう途中の日本で手術成功
なんといっても、サイパン政府が、同じ国であるアメリカで治療を行うのではなく、同レベルの医療を提供できるよその国に治療をお願いしている点が、凄い。大変評価できる、柔軟な思考です。ワケのわからない柵にこだわるのではなく、幼い命をできるだけ優先すべきですからね。