袋井市立袋井市民病院の市橋鋭一・脳神経外科部長(47)が、脳梗塞の原因となる「頸動脈狭窄」に対する新しい治療法「経皮的頸動脈ステント留置術」の指導医に、県内で初めて認定された。この治療法は、4月から保険が適用されるようになったばかりで、入院期間が従来の半分程度で済むなど、患者の体の負担が少ないのが特徴。市橋部長は「ステント治療に適した患者は多い」として、普及を目指している。
のどの横の左右にある頸動脈は、最も動脈硬化が進みやすい部位の一つとされる。肥満などが原因でこの血管が詰まるのが頸動脈狭窄で、脳に血液が行かなくなり、脳梗塞の原因となる。
この病気は従来、頸動脈を切開し、血管内側にコレステロールがたまってできる病変「プラーク」を削るのが標準的な治療法だったが、この手術は全身麻酔が必要なうえ入院も1週間から10日以上に及ぶなど、患者の負担が大きい。高齢者や心臓病などの合併症がある人は危険も伴う。
これに対し、最近広まっている「ステント留置術」は、足の付け根からカテーテル(細い管)を挿入し、プラークができている頸動脈の内側に金属製の網状の筒「ステント」(直径6〜20ミリ、長さ2〜6センチ)を留置する方法。局所麻酔でできるうえ、入院も3〜5日程度で済む。高齢者にも行いやすく、昨年度は全国で約3800件が行われ、手術の約2500件を上回ったが、保険が適用されず、数十万円の費用がかかっていた。
新しく保険適用されたステントは米国の医療機器メーカーが販売している。厚生労働省は、この製品を安易に使用した不適切な治療が広がるのを防ぐため、対象患者や治療承認の条件を制限している。
市橋部長はステント治療全般で150件程度の実績があったが、新たに講習を受けてこの新製品による治療を重ねた。その結果、新しいステントと関連器具を使え、他の医師に技術を教えることができる指導医として、国内の関連する12学会の基準を満たし、厚労省の定める製品使用条件をクリアした。
市橋部長は、「この治療法は、頸動脈狭窄への優れた選択肢」と話す。市橋部長は沼津市や浜松市などの病院にも出向いてこの治療の指導を始めており、今後の普及が期待される。
実際にテレビや新聞を目にしているだけでは手に入らない治療法というものはかなりあります。それはもう、入院した病院による、としかいいようがありませんけれど、効果のある治療法ならば日本全国どこの病院でも出来るようになるべきですよね。それこそが日本の医療の特徴なのですから。
こういう、各地域ごとのパイオニア的存在が、精力的に指導してくれることで、地域の医療レベルが向上するというのは本当にありがたい話です。医療は一人じゃできません。先人たちの何も大学病院でなくても、こういう治療が出来るんだ、と。
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