全身の筋肉が委縮する難病「筋ジストロフィー症」の加藤慎大郎さん(20)=府中市=が成人したのを記念し、6年間の日常生活を収めた写真集が16日、出版される。母親の道子さん(55)と撮影した元小学校教諭、菊池和子さん(62)は「病気が世の中に認知され、治療薬が一日でも早く開発されてほしい」と訴えている。
「写真、楽しみ」。自宅で目をぱちくりさせ、慎大郎さんがささやいた。菊池さんが相づちを打つと、まゆを上下させて白い歯を見せた。
慎大郎さんは生後2カ月で筋ジストロフィー症と診断され、生まれてから立って歩いたことがない。1年半前、食べ物が流れ落ちないよう気管をふさぐ手術に踏み切り、声帯が使えなくなった。
菊池さんは1999年、当時勤めていた調布市立石原小学校で、6年だった慎大郎さんと出会い、筋ジストロフィー症を初めて知った。担任ではなかったが、車椅子で通学し、感情表現豊かな慎大郎さんと触れ合うなかで、難病への関心を抱くともに、「みずみずしい姿を撮りたい」と思った。慎大郎さんが卒業後に養護学校へ通うようになり、府中市へ転居してからも日常生活に密着してきた。
週3回訪れる通所施設での日々、大好きな電車に乗り込む姿、紋付きはかまで出席した成人式など、15〜20歳までの姿をまとめた。小学生時代の写真集は出版済みだが、菊池さんは「先天性の患者が成人するのは大きな喜び。その記念に」と2冊目の出版を決めた。
慎大郎さんはこれまで40回以上の入退院を繰り返し、救急車で運ばれた数も20回を下らない。道子さんは「同情ではなく、いろいろな人とかかわって楽しく生きていることを知ってほしい」と話す。
写真集は「二十歳になりました−筋ジストロフィーの慎大郎君の日々2」(子どもの未来社、2100円)。B5変型判96ページで約80枚の写真を収録している。出版に合わせ、調布市多摩川5の喫茶店「カフェ大好き」で16日から5月15日まで写真展を開く。
同じ病気で苦しんでいる方、そのご家族にも、励みとなるのではないでしょうか。
病気であるというマイナスのことや、写真集にできたというプラスのことを抜きにしても、「ありのまま」を写真に収めることに、大きな意義があるのかもしれません。
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