電話に出た相手に名前を伝える必要はなく、相手も名乗ることはない。それでも、自らが抱える心の悩みや、誰かに聞いてもらいたい思いを、電話の向こうでしっかりと受け止めてくれる。「こちらに寄せられる1本1本の電話が、まさに『一期一会』の出会いになるんです」。事務局長の中道京子さん(48)は話す。
「いのちの電話」は1953年に英国ロンドンで始まり、今では世界70カ国に500以上の電話センターがある。日本では71年に東京で初めて開設され、現在、全国49のセンターで相談を受けている。
神戸は国内で12番目に開設。専門の研修を受けた無償ボランティアの相談員が、複数人ずつ交代で待機する。95年の阪神大震災では施設が全壊する被害を受けたが、約2カ月後に活動を再開した。01年から365日無休の相談受け付けを開始。05年には、土曜夜から日曜の夕方まで夜通しの受け付けも始めた。
現在、相談員は計約160人。うち8割強を女性が占め、年代別では50〜60代が多いという。年間約1万3000件の相談に応じている。
近年は、DV(ドメスティックバイオレンス)や、うつ病をはじめ精神面での問題に関する相談などが増え、加えて介護や引きこもりの問題など、相談内容は多様化している。相談時間に制限はなく、中には1人で1時間以上に及ぶこともある。
それでも「元気が出ました。ありがとう」「これで仕事に出かけられます」といった感謝の言葉が、相談員にとっても励みになる。「相手の気持ちになり、耳や心を傾け話を聞くことで、相談員も価値観を広げることができています」と中道さんは言う。
活動費(年間約1000万円)の大半を、維持会員(個人)と賛助会員(法人・団体)からの会費や、一般からの寄付に頼っている。運営は決して楽ではない。「社会的ニーズとして、1人でも多くの声を聞けたらいいし、そのためには人的パワーがさらに必要です。でも基本的には、相談を受ける質の高さを維持することが、まず大切だと思います」(中道さん)。
今月から、新たに相談員になることを希望した24人の研修が始まった。来年2月まで続く計約30回の講座を通じ、「傾聴」「受容」「共感」といった相談員としての基本姿勢を学ぶ。
「人は一人では生きていけない。誰かに支えられてこそ、生きていけるのだと思います。相談を受けることで、『あなたは一人じゃないんだ』というメッセージを伝え続けていきたい」。中道さんが語った。
維持・賛助会員への加入や一般寄付も常時受け付けている。事務局は電話078・371・4405(兼ファクス)。
こういう、社会的に役立つボランティア活動をされている方、ほんとお疲れ様です。そして、ありがとうございます。
電話というコミュニケーションツール1つで、今まで何人の人を救ってきたのか、想像もつきません。
国が補助金を出してでも、より拡大して活動してもらいたいところです。日本はボランティア概念がなかなか根付きませんけれど、頑張って下さい。
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