■大阪市阿倍野区 乾峰子 77歳
今年、私たちは結婚54年を迎えた。亭主殿の病歴を振り返ると、改めて感無量になる。結核、胃がん、術後の腸閉塞、転倒による膝の骨折、バイクにぶつかる事故、ヘルニア、硬膜下血腫…。そして今度は肺炎で入院した。まさに“病気問屋”というほかない。
そんな夫が病院で「こんなとこで死ぬのはいやや。家で死ぬから帰りたい」と言い出した。駄々をこね、看護師さんに哀願作戦で訴え続けたところ、結局、医師が折れた。「熱も下がったから、まあいいでしょ」。半ば無理やり退院許可をぶんどった。そうして帰ってきたら、途端に食欲が出て元気になった。死ぬのはコロッと忘れたらしい。
そして81歳の今、娘婿の会社で会長兼倉庫係を務めている。毎朝、弁当を持って、いそいそと出勤。若い社員からも重宝がられ、結構お役に立っているらしい。数々の病を乗り越えて、夫は生きがいのある幸せな毎日を送っている。
どんな病気でも、個人差というものがあります。
いや、個人差といいますか、どんな病気にかかったとしても、最終的にその人の人生にどのような影響を与えるかは、わからないものです。
「人生何が起こるか分からない」、そんな言葉が私の口癖になっています。あきらめの言葉に聞こえるかもしれませんが、その言葉の中に、希望も見出せませんか。