まつ毛の1本1本に人工毛を接着する「まつ毛エクステンション(エクステ)」で角膜炎など目のトラブルが急増している。角膜炎は、治療が遅れると視力低下や最悪の場合、失明する危険性もある。手軽に「目力」をつけられるとして、若い女性の間で急速に広まったまつ毛エクステだが、施術後に目がごろごろするなど異常を感じたら、角膜に傷がついているかもしれないので、早めの手当てが必要だ。
全国の消費者センターには平成16年ごろから、まつ毛エクステに関するトラブルの相談が増え始め、19年は18件と前年の2倍だった。内容は「接着剤が目に入り角膜炎になった」「まぶたがはれて痛い」「まつ毛の半分が損傷した」など。
都内の相談内容を分析した東京都生活文化スポーツ局では「実際に危害に遭った人は相談した人の20〜30倍になると推定される。都内では急激に店が増えたことで、施術水準の低い店もあるようだ」と注意を呼びかけている。
梶田眼科(東京・芝浦)でも数年前から、まつ毛エクステによる目のトラブルを抱えた患者を、月に1度はみるようになった。「目がごろごろする」「しみるように痛い」といって受診する患者が多く、施術当日や翌日だけでなく、2週間から1カ月後にトラブルとなる人もいた。時間がたってからのトラブルは、はがれかかったまつ毛が目に入ったり、接着剤の固まりがまぶたの裏に張りついたりして、角膜を傷つけたことが原因だった。
梶田雅義院長は「人工まつ毛は本物のまつ毛より硬くて太いため、目に入ったときに角膜を傷つけやすい。このため、施術したまつ毛がすべて抜けるまでトラブルが起こる可能性がある」と指摘する。
ひっかき傷など皮膚についた傷がすぐ治るのと同じように、たとえ角膜に傷がついても小さなものだとすぐ治るのが普通だ。痛みも数時間で消える。問題は、この傷から細菌などが入り込み、炎症や潰瘍となること。角膜潰瘍の治療が遅れれば、傷が治っても視力が低下したり、最悪の場合は失明する恐れもある。
傷から細菌が入るのを防ぐため、梶田院長は、目がごろごろするなど異常を感じたときには、抗菌剤入りの目薬をさすことを勧める。接着剤など溶剤が目に入ったときも、水で溶剤を洗い流すだけでなく、必ず抗菌剤入り目薬を使うことが肝心。水道水中の雑菌が炎症の原因となることがあるためだ。
梶田院長は「目薬をさせば、通常は翌日には痛みがなくなる。翌日も痛みが続くようなら、炎症を起こしている可能性が高いので、早めに眼科を受診してほしい」と呼びかけている。
厚生労働省は今月、「まつ毛エクステの行為は、美容師法に基づく美容に該当する」との通達を都道府県などに出した。つまり、まつ毛エクステの施術を行えるのは、美容師だけという見解を示したわけだ。
業界の中でも、施術に「資格が必要ない」と思っていた人は多く、美容師以外が施術を行っている施設は相当数あるとみられている。
ただ、施術水準は資格の有無で判断できないのも事実。接着剤が目に入るだけでなく、施術中に誤って目にまつ毛を突き刺すなどのトラブルは、だれがやっても起こりうる。目のトラブルへの対応は自分でするしかないのが実情で、施術する人は気をつけたい。
美容師のみ、なんですねぇ…。無許可でやってもまぁバレなさそうといいますか、誰も取り締まっていないような気もしますが。
いっそのこと角膜の知識ごと整理しましょうか。角膜の場所はまぁ分かると思いますが、角膜は、以下のように分けられます。
1.角膜上皮層:上皮細胞からなる。最表層の細胞間隙にはtight junctionがあり、微生物などが角膜実質に侵入するのを防いでいる。
2.Bowman膜:コラーゲン原線維からなる。再生能力はなし。
3.角膜実質層:角膜の厚さの90%を占め、コラーゲン原線維が層状構造をなしている。透明性を維持している。
4.Descemet膜:内皮細胞から分泌され、内皮細胞の基底膜に相当する。再生能力あり。
5.角膜内皮層:多角柱細胞の単層からなる。分裂再生能力なし。内皮細胞は加齢や外傷で減少する。
わずかあれだけのちっぽけな組織にもかかわらず、このように5種類もの層で構成されています。角膜は透明で、無血管な構造物です。
角膜の病気といえばまず感染症が考えられます。
有名なのが単純ヘルペス角膜炎。単純ヘルペスによる感染症です。上皮型の単純ヘルペス角膜炎は樹枝状角膜炎、地図状角膜炎を呈し、この時に病院に来れば予後は良好です。しかし来ないと実質型になり、円板状角膜炎、壊死性角膜炎を呈します。これは難治性です。
また、単純ヘルペスではなく、帯状ヘルペスウイルスによる角膜炎もあります。
角膜真菌症という、真菌による感染症もあります。これは抗生物質やステロイドなどを広範な使用に用いたときに生じる日和見感染症として急増しています。角膜真菌症は農村型と都市型に分けられ、農村型は植物の枝や葉による外傷で、Fusarium属の菌に冒され、都市型は免疫不全によりCandida属の菌に冒されることで起こります。治療は、抗真菌薬の局所、全身投与、および病巣部の掻爬(三者併用療法)が有用とされています。
ソフトコンタクトレンズの使用者が、レンズケアの時に水道水を使用した場合で、角膜の上皮障害がある場合、アカントアメーバに感染し発症する「アカントアメーバ角膜炎」もあります。初期には放射状角膜神経炎、移行期には中央部のリング状混濁と毛様充血、上皮内浸潤、輪部浮腫があり、完成期には角膜中央部の混濁が強く、周辺部はむしろ透明となります。こちらも治療には三者併用療法が有用とされています。
匍行性角膜潰瘍という、緑膿菌やブドウ球菌、セラチア菌などの細菌による角膜の炎症によって、角膜潰瘍を形成するものもあります。強い浸潤を伴った円形の潰瘍で、高度になると前房蓄膿を呈します。眼はすりガラス状混濁となります。
この他に、免疫疾患として、角膜に炎症や潰瘍を呈するものがあります。代表的なのがアトピー性角結膜炎、春季カタル、その他、フリクテン、周辺部角膜浸潤、Mooren潰瘍などがあります。
眼はただでさえデリケートな部位です。美容も大事ですが、その付近の部位も、適切に扱う意思をもって、ケアして下さい。まつ毛の量が増えたからといって、眼が炎症を起こしたり潰瘍になったりしたら、せっかくの綺麗な瞳も台無しになってしまいますから。
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医学処:まつ毛エクステで目のトラブルが続発している。
医学処:プール後の洗顔は逆に感染のリスクを高める。