若年性認知症の患者を地域で支える動きが少しずつ広がっている。「社会に役立ちたい」という患者の願いに応え、仕事や生きがい作りにつなげようと、さまざまな工夫をこらしている。
東京・町田市のデイサービスセンター「おりづる苑せりがや」は毎週土曜日、若年性認知症の患者だけが利用する“おりづる工務店”に早変わりする。
工務店の仕事は、市内の8保育園と提携した掃除やペンキ塗り。午前10時、出勤するとタイムカードを押す。登録しているのは男性6人。みな名刺を持つ。この日は、床のワックスがけと通用口の清掃の依頼があった。同苑管理者の前田隆行さんは「働き盛りで発症した人たちばかり。実際にはお金にならないボランティア活動だが、なるべく仕事の雰囲気を出すよう努めている」と話す。
一般に高齢者のデイサービスセンターでは、室内でゲームなどをすることが多い。ところが、若年認知症の利用者は「まだ体が動く」「社会経験を生かした仕事をしたい」という意識が強く、高齢者と一緒のゲームにはあまり興味を持たないという。
そこで、同苑では、保育園の協力を得て、昨年1月から工務店を始めた。利用者の要介護度は3〜4だが、みな自分のペースで働き、「仕事は楽しい」と話す。家族からも、「家の中でぼんやり座っているばかりだったが、工務店に通うようになって表情が明るくなった」「一日の出来事を自分から話すようになった」といった声が上がる。
前田さんは「将来は賃金がもらえる仕事ができるように発展させたい」という。「おりづる工務店」の活動は、さわやか福祉財団理事長の堀田力さんら専門家でつくる「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」から、先駆的な活動として今月、表彰された。
こうした活動は広がり始めている。東京・新宿区にある支援施設「ジョイント」は、NPO法人「若年認知症サポートセンター」が昨秋に開設した。公園の清掃や、ちらしの封筒入れなど「就労型」活動を行っている。
認知症介護研究・研修東京センター主任研究主幹の永田久美子さんは「ちょっとした工夫や支援で、若年性認知症の人たちも地域でいきいきと暮らすことができます」と話している。
もし今、自身が認知症になってしまったら、と考えると怖いですね。しかも本人が若く、働き盛りであるというのに、今の社会の大半を占める労働ができなくなってしまう。。。
社会の受け皿部分が発達すれば、若年認知症患者が清掃等の仕事で収入を得られるようにサポートするボランティア、もできるのかもしれませんが、ボランティアという行為がまだまだ馴染みのない日本では難しいかもしれませんね。少なくともアメリカなどのようにボランティアをすることが当たり前のようにならないと。
若年性認知症
65歳未満で発症する認知症。働き盛りで発症するため本人・家族の精神的、経済的負担は大きい。患者は全国で数万人いるとみられている。
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