公的医療保険の価格を定めた診療報酬点数が、4月から改定される。現在は一部にしか保険がきかない「先進医療」のうち、約5分の1にあたる24の技術が保険適用になったほか、外来では処方せんなどの扱いも変わる。
□がん治療
IMRT(強度変調放射線治療)という、がんの形に応じて様々な方向から放射線を当て臓器への副作用を軽減する放射線治療に、保険が適用された。前立腺がんや頭頸部がんに主に用いられ、一部に保険がきく「先進医療」で行われている施設では、現在90万円前後の患者負担がかかっている。4月からは保険の高額療養費の上限までの負担で済む。
腎臓や前立腺など泌尿器がん手術で、腹腔鏡を補助的に用いながら数センチの切開幅で行う小切開手術も、現在の「先進医療」に代わり保険が適用されるようになる。
子宮がん手術後などの後遺症として患者の悩みが大きいリンパ浮腫に指導管理料が新設された。治療用の弾性ストッキング代も、年2回を限度に保険で賄われるようになる。
□その他の先進手術
患者の体への負担が少ない治療として現在は先進医療になっている痔のPPH(自動縫合器による直腸粘膜切除術)という手術法が、保険適用になる。歯科分野では、歯周病の歯周組織再生誘導手術が、保険診療になる。
□処方せん
価格の安い後発医薬品の普及を図るため、2006年の改定で、主治医が「後発品への変更可」欄にサインすれば変更できるようになった。4月からは様式がまた代わり、主治医が「変更不可」の欄にサインしない限り、後発品への変更が原則できるようになる。
明細のわかる領収書の発行は2006年の改定で医療機関の努力義務とされたが、400床以上で会計が電算化された病院には、患者の求めに応じて発行が義務づけられる。
混合診療を認めさせて、先進医療は自費でやってちょうだい、というのが、国や厚生労働省の願いです。そのほうが、医療費全体が安くなりますからね。しかし混合診療を認めてしまうと、保険適用すべきなのに保険適用になっていない医療が増える(保険適用しようとしなくなる)のではないかと懸念されています。
まぁ実際医療費を削減する目的で混合診療合法化を目指しているわけですから、混合診療を認めたら、厚生労働省は今まで以上に保険適用を遅くするでしょうね。金があればやれるじゃん、ってノリで。
今回は先進医療のうち、保険適用になったものがいくつかあります。これで、今までお金がなくて使えなかったいい技術(身体への負担が少なくなった技術など)を、安価で患者さんに提供することができるようになりました。患者さんにとっては嬉しいことです。しかしそのお金は税金から賄われているということも、同時に、認識しましょう。医療はタダではなく、湯水の如く使っていいものでもないので。
日本は国民皆保険制度という、ある意味では医療の理想論を今まで貫いてきた国です。これからも出来ることなら貫いていきたい。そのためには厚生労働省も保険適用をできるだけ早く行う、そして患者になりうる一般の方も、医療はタダではないことを自覚し、双方が「安価で最良の医療を受けられる制度」を維持していこうとする姿勢をとろうではありませんか。
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