名古屋大学環境医学研究所の錫村明生教授と竹内英之助教を中心とするグループが3日、細胞の増殖に深くかかわる「成長因子」を抑制する核酸医薬を使ったマウス実験で、自己免疫性脳脊髄炎の治療に効果があったと発表した。関節リウマチや膠原病、アトピーなどの自己免疫疾患の新しい治療法として、大いに期待できるという。
錫村教授らは、人体の免疫機能を制御する働きを持つ「調節性T細胞」を増やすことによって、免疫機能を高める研究をしてきた。
通常、がんなどが進行すると、健康体の人にはほとんど見られない「成長因子」と言われる特殊なたんぱく質が、多く現れることがわかっていた。だが、成長因子の働きについてはよく分かっていなかった。
今回、錫村教授らは、実験で成長因子の働きを抑える核酸医薬を化学的に作り、既に自己免疫性脳脊髄炎にかかっているマウスに投与したところ、免疫機能を高める調節性T細胞が増加し、症状が改善された。実験によって、成長因子が調節性T細胞の働きを抑制していることが、初めて明らかになった。自己免疫疾患の治療では、抗体を使った治療が一般的となっている。核酸医薬投与による治療は、核酸の大量生産が簡単で、品質も安定しているなどの利点があるという。発表した研究成果は今週中、米国科学アカデミー紀要電子版に掲載される予定。
直接抗体をどうこうするという治療法ではなく、間接的に、免疫機能に異常を来たしている原因を取り除いてやろうという治療法ですね。
最近こういう治療法の確立が著しいと思います。それだけ身体というものは、お互いにフィードバックしあっているということですね。短絡的ではないからこそ、多様性が生まれ、「生きる」ことを調節しているわけです。
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