精神科医の和田秀樹さんが映画を撮った。その名も「受験のシンデレラ」。東大医学部を卒業し、受験指導のカリスマとなった男が、末期がんで余命いくばくもないことを告げられる。男は家庭の経済的事情で高校を中退した少女を東大に合格させることに自分の最後の日々をかける。和田さんはそんなドラマに格差社会や終末医療といった現代的テーマを盛り込み、努力すること、生きることの意味を問い掛ける。
受験指導本で数々のヒットを飛ばし、「受験の神様」の異名を取った和田さんでなければ撮れない作品だろう。
「目指したのは受験版『あしたのジョー』です。日本の青春は、受験抜きには語ることができないと思う。ところが、ドラマになるのはスポーツや恋に熱中する青春が大半。受験勉強に励む青春というのは、大人の言いなりになっているようで、ドラマにはならないと、大人が勝手に思い込んでいるのではないでしょうか」と和田さん。
制作にあたって文化庁に助成を申請したが認められず、完成後も、東京国際映画祭と釜山国際映画祭に出品しようとしたがはねられた。東大受験を真正面から肯定的に描くことに、反発があったのかもしれない。ところがである。暴力描写のない映画を対象としたモナコ国際映画祭で、最優秀作品賞、最優秀女優賞(寺島咲)、最優秀男優賞(豊原功補)、最優秀脚本賞(武田樹里)の4冠に輝いた。
「いまの日本では、恵まれない家庭の子供ほど自分の人生を早くあきらめてしまう。でも、あきらめないでほしい。勉強をして学歴を手に入れることで、はい上がることは可能なんです。自分の力で人生は変えることができる、というメッセージを映画というメディアを利用して多くの人に伝えたかった」
受験と医学部については色々考えはありますが、まぁそれは今回は置いておきましょう。
確かに青春の一部が受験という意見には賛同します。今や大学受験というのは若き日に目指すゴールの1つでもありますからね。甲子園に近いものなのでは?(それが青春という価値の高いものに値するかどうかは別として)
本来大学というのはゴールにするようなところではありませんし、それゆえに本当に才能のある人が理想の環境で勉強できなかったり、1つの学問をやりたくても受験勉強の壁に泣く人が出てきて、いいことはありませんけれど、現実としては学歴こそ1つのステータスとして存在しますからね。
はっきり言ってしまえば、大学受験は、何かをやりたいと思っている人には何の役にも立たない代物だと思います。本当は、医学を学びたいと強く熱望する人に医学部に入ってもらいたい。しかし実際には親が医者だからとか、偏差値が高いからという理由で受験者が殺到しています。そのために、やりたくもない科目の勉強もしなければいけません(医者になるのだからある程度の教養が必要だとは思いますが、正直現状の大学受験システムでは教養は計れません)
実際に、大学受験でそうとう成績の悪い人でも、医学を学ぶことを熱望している学生は、大学で大きく伸びますからね。医者としての適正や、教養もかなりある人が多いと思います。そういう人を浪人させること、浪人してしまうシステムを運営していることこそ、国の損失に値するのではないでしょうか。
何百年かして、人が自分のやりたいことを出来るようになったとき、大学は初めてその機能をフルに生かすことができるのかもしれませんね。
この映画、非常に面白そうなので、見てみたいと思います。