札幌市の産婦人科の救急医療で、重症患者を診る二次救急を引き受けている札幌市産婦人科医会(遠藤一行会長)が「各病院の負担が重く、これ以上は担いきれない」として、二次救急からの撤退を市に申し入れていたことが、二十六日分かった。市は医師や住民による協議会を三月中に設置し、負担軽減策を話し合う考えだが、同医会は具体案が出ない場合は、九月で撤退すると通告している。市内では現状でも妊婦のたらい回しが起きており、撤退となれば、市の産婦人科救急に大きな影響が出そうだ。
札幌市の各診療科の夜間、土日・祝日などの救急体制は《1》軽症者を診る初期救急《2》初期救急の医療機関から重症者を受け入れる二次救急《3》より重症な患者を二十四時間受け入れる三次救急−に分かれている。このうち、産婦人科は同医会所属の医療機関のうちNTT東日本札幌病院など九医療機関が、二次救急に加え、夜間(午後五時−翌日午前九時)の初期救急も担ってきた。
担当医師の負担が増えたのは、産婦人科医の減少で二次救急を毎日交代で引き受ける医療機関が、四年前の十四から五カ所も減少したため。各医療機関の担当回数が二週間で一回から一週間で一・三回程度に増え、担当医から「産婦人科は慢性的な人手不足で、受け持ち患者の診療と出産で手いっぱい。これ以上、救急を分担できない」と、声が上がった。
このため、同医会は二○○八年度に向け、市の夜間急病センターに夜間の初期救急を診る産婦人科医を置き、初期と二次を分離するよう市に要請した。遠藤会長は「センターで患者を振り分け、子宮外妊娠や早産などの重症患者だけを二次救急に送れば、医師の負担が大幅に軽減される」と説明する。しかし、市は新年度予算案に、二次救急医療機関への報酬の一千万円増額を盛り込んだものの、センターへの産婦人科医配置は見送ったため、医会として撤退を申し入れた。
市医療調整課の飯田晃課長は「夜間急病センターに産婦人科医を配置すると、約七千万円の予算が必要になる。財源が限られる中、住民合意を得られるだろうか」と説明。三月中に協議会を設置し、負担軽減に向けた代案を話し合う。
医療機関に二次救急を担う法的な義務はない。撤退が決まった場合、市が個別の医療機関に担当を依頼しなければならず、三次を担う市立病院や、市の依頼に応じる一部医療機関の負担が増大するのは確実。最悪の場合は救急体制が崩壊する恐れもある。
遠藤会長は「医療にどうお金をかけるか、市と住民で考えてほしい」と話している。
別に医師側は、市や市民に無理難題を押し付けているわけではありません。
むしろ医師側はできる限り市民の役に立とうと、自身の時間を削って応対していたわけですが、なんかこう、市と市民側が非協力的なんですよね。勿論市側にそういう意図はないんでしょうけれど、「我々ではどうすることもできないから医師のみなさんなんとか頑張って下さい」という姿勢は、問題を医師に全て押し付けているようなもの。そりゃ産科も崩壊します。
そもそも産婦人科領域でミスが起こって裁判という流れが増えていますけれど、産婦人科医一人当たりの負担が大きくなって医師の疲労が蓄積することこそ、ミスに直結するはずです。お産でそういうミスが許されないというのなら、産婦人科医の負担を減らすような工夫を考えるべきです。
その工夫が医療機関内で行われることならば、既に医療機関側が自主的に実施しています。それでも解決できないほど追い込まれているのでしょう。
医療は医師のものではなく患者のものです。勿論診断や治療は医師がします。一般の方には、医師が働ける環境を作る、手助けをお願いしたいのです。
「飛び込み出産危険」産婦人科医ら現状学ぶ
日本産婦人科医会県支部主催の学術研修会が23日、仙台市青葉区の県医師会館であり、妊婦健診を一度も受けずに医療機関に駆け込む「飛び込み出産」や産科救急搬送の現状が報告された。
医師、看護師ら約80人が参加。仙台赤十字病院の谷川原真吾産婦人科部長は「飛び込み出産では、早産や新生児異常となるケースが県内の中核病院で増えている。健診を受けていれば、緊急帝王切開手術をしなくても済んだ例は多い」と危険性を指摘した。
仙台市消防局の小野清救急課長は、妊婦の搬送で医療機関の照会に時間を要した事例を説明。18回目の問い合わせで受け入れ先が決まった2006年の搬送などを例に、「仙台では救急隊の現場到着が早くなっている半面、搬送開始までの時間が長くなっている。より効率的な照会方法を探りたい」と述べた。
参加した医師は「1人で当直しているときなどは、搬送を受け入れたくてもできないことがある。消防との話し合いがもっと必要ではないか」と提起した。
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