塩素消毒したプールで泳いだ後に水道水で目を洗うと塩素で角膜が傷ついた目の表面の粘液が洗い流されてしまうことが、坪田一男・慶応大教授(眼科)らの研究で分かった。厚生労働省や文部科学省はプール後の洗眼を呼びかけているが、逆に細菌やウイルスに感染しやすい状況を作っているという。米国の医学雑誌に発表した。
研究チームは、20〜30代の男女10人の協力で実験。国のプールの水質基準に従って塩素消毒剤を溶かした生理食塩水▽水道水▽生理食塩水▽蒸留水−−で50秒間目を洗ってもらった。
その結果、塩素消毒剤入りを使うと角膜上皮細胞が破壊される程度が他の3種類より激しく、目の表面の粘液を洗い流す作用も強かった。水道水も粘液を洗い流す作用は同程度だった。
厚労省は発熱や結膜炎などの症状が出るプール熱の感染拡大を防ぐため、プール利用者に洗眼を呼びかけるよう、都道府県などに求めている。文科省は体育教員への指導手引で、水泳後の洗眼指導を例示している。眼科医の間では、プール後の洗眼は問題視されていたが、根拠となる研究が少なかったという。
チームの加藤直子・慶大講師は「プールの中で目を開けるのならゴーグルをつけてほしい。そうでなければ、プール後の洗眼は避けるべきだ」と話している。
へぇーーーーー
通説が俗説に変わる瞬間かもしれませんね。
褥創や、傷口は「乾燥させるほうがよい」とされてきた時代がありました。ついこのあいだまで「キズドライ」という商品が発売されていたぐらいです。消毒をキッチリして、かさぶたをつくることこそ回復への早道だとされてきました。
しかし今では、過度の消毒は傷を回復させる細胞をも殺してしまうとされ、まず水で傷口を洗い、どろを落とし、次に乾燥させないようにすることが大事であるとされています。褥創の場合にも乾燥はご法度となっています。
プールの後の目の洗顔も実際は粘液が洗い流されるからやらないほうがいい、んですねぇ。水圧って結構身体にダメージありますからね(乾燥肌の人や、肌の弱い人は、シャワーの強い水圧でもダメージを受けてしまうので、あまりよろしくないそうです)。私も水泳後に、こんなに目に強烈に当てていいものか、と思っていましたが、逆に感染しやすい環境をつくっていたとなると、目薬持参が一番いいんですかねぇ。
関連
医学処:とろみをつけた目薬「アスパラ目薬モイストCL」を発売
医学処:まつ毛エクステで目のトラブルが続発している。