「がんにかかった時、どの医師に診てもらえばいいのか」。患者の不安に応えるため、日本癌学会などでつくる法人「日本がん治療認定医機構」が、がんに関する幅広い知識と技術を持つ認定医制度を創設した。昨年十一月末までの初めての募集には、予想を大幅に上回る五千人以上の医師が応募。一回の講習会、試験では対応しきれず、五月にも第二回を開催する。最初の認定医は三月下旬に誕生。同機構は「十年で数万人を送り出したい」としており、全国どこでも同じレベルのがん治療提供に向けた新たな取り組みが動きだした。
医学系の各学会にはそれぞれの専門領域ごとに専門医や認定医の制度がつくられているが、がんにかかった患者からみれば「どの専門医に診てもらうべきか」など分かりにくいのが現状。また、それぞれの専門医も自分の分野には深い知識を持っていても、それ以外となると最新の知見や進歩が早い技術などを習得するのが難しい。
今回創設された認定医には、がん治療全般に横断的な知識と技術が要求され、患者が最初にかかる「がんの総合医」的な役割が期待される。認定された医師なら安心して治療を受けることができ、専門外の臓器のがんだったとしても、その分野に精通するほかの適切な医師を紹介することができるという。
日本がん治療認定医機構は、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、全国がん(成人病)センター協議会という、がんの専門家集団である四団体がつくった。各地にある三十二のがんセンターなどで構成されるがんセンター協議会が入ったことで、制度に臨床現場の声を取り入れたという。
がん治療の認定医になるには、まず「基盤学会」と呼ばれる内科学会や外科学会などの認定医であることが条件。その上で、がんの症例を多く受け入れ、設備も整っていると機構が認定した医療施設で、二年間の実地研修を受ける必要がある。
こうした条件を満たした医師約千七百人が一月十三、十四日の両日、明治大で開催された第一回の講習会、試験に臨んだ。
講習は生物学、疫学、病理学といったがんに関する基本的な分野のほか、インフォームドコンセントなど患者とのコミュニケーションのとり方、国内での体制が不十分で患者団体からの要望が高かった緩和ケアや放射線治療にまで及んだ。
講習と試験が行われたホールと大きな会議場はどちらも満員。若い医師だけでなく、ベテランの姿も目立った。同機構理事長の今井浩三札幌医科大学長は「緩和ケアや放射線治療などを知らなければ現在の治療に対応できないと知っているからだろう」と分析した。
「五年もたてば古びてしまう知識や技術がある。がん治療に携わる者は常に新しい知識を得ることが必要だ」と話すのは同機構教育委員長の森武生都立駒込病院長。認定医になっても五年に一回は講習を受けることが義務付けられ、最新の知見を学ぶことになる。
日々勉強。医師は学ぶ姿勢を諦めた段階で医師ではなくなります。
日本でも欧米のように、腫瘍内科といいますか、癌に特化した人ができれば、抗がん剤を適切に使って、できるだけ副作用を抑えたり、今ある治療法で最大限の効果を発揮したりできるかもしれません。
国民皆保険制度があり、全国どこでも安価で最高の医療を受けられる日本。癌医療においても、同じように「どこでも一番効果のある治療法が受けられる」ようになってほしいと思います。
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