順天堂大医学部の池田志斈教授(皮膚科)らのチームがヒトの万能細胞(iPS細胞)を使い、皮膚の難病の治療に向けた研究に乗り出した。患者の皮膚細胞からつくったiPS細胞に遺伝子を入れて異常が起こらないようにしてから体内に戻し、正常な皮膚を再生させることを目指す。
重症の先天性水疱症が対象。遺伝子の問題で全身の皮膚に水疱ができ、潰瘍になったり、皮膚がんになったりする。腎機能が悪化して透析が必要になる例や、生後1年以内に死亡する例も。
池田教授が想定する治療法は、患者の皮膚細胞からつくったiPS細胞の遺伝子を操作して患者の血液中に戻し、正常な皮膚を再生させるというもの。想定通りに正常な皮膚が再生するのか、京都大の山中伸弥教授のチームのiPS細胞を使って基礎研究をする。
培養皮膚を移植して先天性水疱症を治療しようとしても、拒絶反応などの問題があって難しい。iPS細胞を使えば免疫を制御する細胞もできるので、再生皮膚への拒絶反応を抑えられる可能性があるという。
現在、iPS細胞の培養法の確立など、京都大チームの協力を得て準備を進めている。池田教授は「研究で確認するべき課題はまだ多いが、重症型は有効な治療法がなく、一日も早く治療につなげたい」と話している。
皮膚の先天性疾患は本当にツライです。
先天性水疱症には色々あるのですが、先天的に表皮細胞間接着障害を生じる代表疾患が、Hailey-Hailey病とDarier病です。デスモソーム蛋白遺伝子の異常ではないかと言われています。
記事中には「重度」「生後1年以内に死亡」とありますので、適応となるのは接合部型先天性表皮水疱症かもしれません。この疾患はHerlitz致死型先天性表皮水疱症とも呼ばれ、表皮基底膜部特異的細胞外マトリックスにあるラミニン5の欠損によって起こります。先天性表皮水疱症の中では最も重症で、生まれたときから全身に水泡を形成し、急速に拡大していきます。
遺伝子の異常によって皮膚が保てない、しかし現段階の治療法ではその皮膚をどうすることもできない・・・。そこで登場したiPS細胞。治療法の確立に繋がれば、皮膚の疾患で命を落とすこともなくなるかもしれません。
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