体内に侵入したウイルスを撃退するインターフェロンの分泌を増やすたんぱく質を、理化学研究所の研究チームがマウスで発見した。致死量のウイルスに感染したマウスに、このたんぱく質を活性化する物質を投与し、救命することにも成功した。同様のたんぱく質はヒトにもあると考えられ、新型インフルエンザなどの大流行に対抗する新薬の開発などにつながる成果だ。18日付の米科学アカデミー紀要に発表した。
インターフェロンは、ウイルスや細菌に感染した時に細胞から分泌され、病原体の増殖などを抑える。
理研免疫・アレルギー科学総合研究所の渡会浩志上級研究員らは、インターフェロンを生産するマウスの細胞の細胞膜で、ウイルス感染時だけに現れるたんぱく質を発見し、PDC−TREMと名づけた。PDC−TREMの働きを弱めると、インターフェロンの生産量が10分の1に減ることを確認した。
また、PDC−TREMを活性化する物質をマウスに投与したうえで、通常のマウスなら100%死ぬ量のヘルペスウイルスに感染させたところ、約8割は死ななかった。
渡会さんは「人為的にインターフェロンの量を増やせれば、新しいウイルスに対しても感染初期にはかなり有効だ。インターフェロンが多すぎて起こると考えられている膠原病など自己免疫疾患の治療にもつながるのではないか」と話している。
体内の免疫系統に強い影響力をもつインターフェロン。その役割は様々で、ウイルス感染時にも非常に役立っていますが、そのインターフェロンを人為的に増やしてやろうという試みですね。
将来、PDC-TREMを投与することが、感染症対策として用いられるようになるかもしれません。今はインターフェロンを外から打つぐらいしかありませんでしたが。
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