マウスの胚性幹細胞(ES細胞)から、赤血球のもとになる赤血球前駆細胞株を作ることに、理化学研究所のグループが初めて成功した。ヒトES細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも同様の細胞株が作製できれば、感染症のリスクがない輸血用赤血球の大量生産につながる。研究は6日付の米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
グループは、マウスES細胞を分化させて、赤血球を産み出す3種類の細胞株を作製。この細胞株をマウスへ移植し、体内で赤血球を生み出すことを確認した。
重症の貧血を起こさせたマウスの実験では、細胞株を移植しないマウスは3日後に8匹中1匹しか生存しなかったのに対し、移植したマウスは8匹中7匹が生き残り、“輸血”の効果が実証された。
また、移植後約半年を経過しても腫瘍の形成や白血病発症などは見られず、赤血球ができた後の拒絶反応もなかった。
理研バイオリソースセンター細胞材料開発室の中村幸夫室長は「今後はヒトES細胞やiPS細胞からの細胞株作製を目指す。細胞株は試験管内で半永久的に増やすことが可能なので、輸血用血液不足の解消へつながる」と話している。
臓器そのものを再生することは難しいですが、赤血球のような細胞単位であれば実現も近いかもしれません。
日本では献血者が慢性的に不足しています。加えて、検査目的で献血しようとする輩もいるため、その血液が100%安全とはいいきれません。
しかしこのように技術的に「創った」血液ならば、その心配はありません。癌化がないという点も実用化の大きなメリットとなるでしょう。