12日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ 東京都杉並区で平成11年、割りばしがのどに刺さった保育園児、杉野隼三ちゃん=当時(4)=が、杏林大付属病院(東京都三鷹市)で受診後に死亡した事故で、園児の両親が、病院を経営する杏林学園と診察した医師(当時)の根本英樹被告(39)=1審無罪、検察側が控訴=に計約9000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。加藤謙一裁判長は「診察に過失はなかった」として両親の訴えを退けた。両親は控訴する方針。
事故では、東京地検が根本被告を業務上過失致死罪で起訴。1審東京地裁は18年3月、過失を認める一方、延命可能性を認めず無罪としていたが、民事では医師の過失についても認定しなかった。
訴えていたのは、隼三ちゃんの父、正雄さん(56)と母、文栄さん(50)。訴訟では、(1)割りばしが脳内に刺さっていることを予見できたか(2)適切な治療として延命可能性があったか−の2点が主に争われた。
加藤裁判長は、これまでに報告のない症例▽神経障害などの症状が見られなかった▽折れた割りばし片が口の中で確認困難だった−などの理由から、「当時の医療水準や受傷状況から、割りばしが脳を損傷させた可能性は診断できなかった」と指摘し、根本医師の過失を否定した。
その上で、隼三ちゃんの死因について「割りばしが刺さったことが原因だが、具体的な仕組みは不明」と判断。「適切な診察や治療を行ったとしても、延命の可能性は認められない」と結論付けた。
判決によると、隼三ちゃんは11年7月、杉並区で開かれた盆踊り大会で転び、綿菓子の割りばしがのどに刺さったため、杏林大に救急搬送されたが、根本被告は塗り薬を付けただけで帰宅させた。隼三ちゃんは翌朝、容体が急変し死亡した。
「息子にかける言葉ない」 割りばし死亡事故訴訟で両親
「死んだ息子にかける言葉がない」。割りばし死亡事故で、杉野隼三ちゃん=当時(4つ)=を診察した医師、根本英樹被告の過失を認めなかった12日の東京地裁判決。過失を認めながら、死亡との因果関係を否定して無罪とした刑事事件の1審判決よりも遺族には厳しい判決となった。「どうして息子が死んだのか、ただ知りたいだけ」。事故から約9年。そんな遺族の願いはまたも閉ざされた。
「過失さえ認められず非常に残念。これまでの積み重ねを無視する判決で納得できない」。判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した隼三ちゃんの父、正雄さん(56)は悔しさをにじませた。
母親の文栄さん(50)は「被告側の主張をなぞったような判決。刑事事件の判決よりも悪くなった」と述べ、唇をかみしめた。
ひたすら走ってきた9年間だった。数多くの専門書に目を通した。医療過誤を訴える遺族らとも交流を深めた。すべては真相を知るためだった。「9年間は真相を知るための大切な時間だった」と正雄さんは話す。
昨年秋、保存されていないとされていた隼三ちゃんの臓器片が、司法解剖を行った大学病院で見つかった。「隼三が『本当のことを話したいから見つけて』と呼んだのだと思う」と文栄さん。この臓器片は現在、隼三ちゃんの死因を特定する大きなカギとして、根本被告の控訴審で鑑定が行われている。
「今まで以上に大変な道で、何年かかるか分からないが、必ず真相を明らかにする」と正雄さんは会見で力を込めた。
診察そのものに過失がない、という判決。
私もそう思いますが、遺族からしてみれば納得のいかないところでしょう。
割り箸が見えていたのかどうか、また親が「割り箸が刺さった」としているがその異物片の残りを持っていたのかどうか、など、色々なことが考えられると思います。
一口に「割り箸が刺さった」と言っても、喉に当たって傷ができただけでしたら、画像診断などをする必要はないように思います。勿論可能性を考えれば、その先の部位が損傷していることなども考えなければなりませんが…。万が一を考えてこういった事例では全て検査を行ったほうが良いのでしょうか。風邪だろうけどもしかしたら風邪のような症状が出ているだけかもしれないから血液検査とX線はやっておきましょう、といった具合に。
医療面接において重要となるのは、問診です。どういった経緯で割り箸が刺さったのか。折れたといわれる割り箸の残りはあったのか、など。「割り箸が刺さって折れた」のであれば、喉に刺さっている可能性を医師は予測しなければいけないと思いますが…そういう意味で刑事事件では「過失あり」としたのでしょうか。
法医学的な見解が気になりますね、この事件は。医師が予見できる範疇にあったのかどうか、なども含めて。ご遺族のいう「本当のこと」も、法医学的にどうであったかによって分かる気がします。決して有罪にすることが「本当のこと」ではないはずです。
事件の経緯はこちらをご覧下さい。平等的立場ではなく医師擁護側ですが、容易に理解できると思います。
関連
医学処:綿菓子の割り箸が脳に刺さった事件を覚えていますか
医学処:割り箸死亡事件で過失を認められたが無罪となった医師
「割り箸が脳に刺さったわが子」と「大病院の態度」 (小学館文庫)
杉野文栄 (著)
http://www.amazon.co.jp
にてのカスタマーレビューが参考になりそうな気がしますが・・・。
特に「★」印が少ないレビューでしょうか?
母親(教師)が仕事絡みで祭りに行く, 2006/3/30
By アマゾン1号
[1] 母親(教師)が仕事絡みで祭りに行く
[2] 我が子は他人にまかせっきり、自分は仕事
(引率の仕事があるのに4歳児を連れてきた)
[3] 「子供がこけて喉に割り箸が刺さった」と他人から聞く
[4] 救急車で搬送(喉に薬を塗られる)
[5] 父親に子を引き取りに来させて、自分は飲み会(祭り打ち上げ)
[6] 酔っ払ってグースカ中に容態急変 → 死亡
[7] CTスキャンでも割り箸判別不能→変死追求で解剖
[8] 解剖により脳から割り箸発見
ここまでの単純化はアレですけど、大筋でこれがホントならば、
この母親の保護者としての監督責任はどうなんでしょうか。
取り返しのつかない、自らの過酷かつ残酷になろう呵責の念を回避するがために
医師・病院の責任を糾弾しているように思えるのですがね。
傾向が変わってきてるようですね。
医者側が有利だったのは裁判官が医学に無知であり患者側の証人
になる医者がいないからだと思いますがどうして患者が勝訴する
ケースが増えたのでしょう?
実際、小児科医療の現場において、親御さんたちの医師への怒り方は尋常ではなかったりします。医師も、子供を持つ親は子供のことになると盲目的になることは仕方がないことだと分かっていますけれど、だからといって実際に裁判沙汰になってしまうと話が違いますよね。
>>イクラさん
昔より、医師がミスを起こして隠蔽しようとすることは出来なくなったという意味では、患者が訴訟に勝つのは称賛されるべきことですが、逆に医師が悪いことをしていなくても、さもミスであるかのように批判されてしまうのが哀しい現状です。裁判官が医学に無知だからこそ、医師がミスをしたように仕立て上げてバッシングすることが可能になったんだと思いますよ。