生命の設計図であるゲノム(遺伝情報)の解読データがわかれば、人工的な化学合成で目的の生物が作り出せる−。米民間の「J・クレイグ・ベンター研究所」(メリーランド州)の研究チームが技術開発に成功したのは、そんな「神の技」ともいえる生命科学の領域だ。体細胞からどんな細胞にも成り得る人工多能性(iPS)細胞の技術が登場するなど新たな生命操作の技術が開発されるなかで、またひとつ、人類に役立つ可能性がある技術が加わった。
ゲノムは4種類の物質(塩基)を1列に長くDNA上に並べて、わずか4種類の文字で書かれた暗号のように遺伝情報をつづっており、この情報をもとに生命活動が行われている。
今回の研究は、このDNAの塩基の配列を人工的に化学合成して再構成したもの。微生物のなかでも塩基の数が少ないウイルスではすでに合成されているが、塩基数の多い細菌ではできなかった。しかし、人などに寄生しないと生きられないウイルスに対し、自己増殖する能力を持つ細菌のゲノムの合成技術開発は、生命の基本型を作り出すともいえる。この点で今回の成功は大きな意味を持っていた。
ゲノム解析で知られる榊佳之理化学研究所ゲノム科学総合研究センター長は「自己増殖の能力がある細菌でDNA合成ができたことは重要な進歩です。あらかじめ遺伝情報を設計して合成し、DNAを抜いた細菌のカラ(容器)に改めて入れて機能させる方法などが考えられる」と評価する。
ただ、遺伝情報を一から設計して、地球上に存在しない生物をつくるという技術は、食料や燃料の増産など有用な研究であるとともに、生物兵器などに悪用されたり、自然界の遺伝子とまざって環境を変化させたりする可能性もある。影響が大きいだけに、研究の歯止めとなる国際的な基準を早手回しにつくっておくことが求められる。
こういう技術は、倫理的にいっても今の世界では受け入れられないんでしょうねぇ。いや、倫理なんてものは、そのときそのときの技術によって吟味され続けるべきものであって、新しい技術を無視することではないはずです。
DNAを自ら合成したというのは非常に、非常に大きな進歩だと思います。その応用分野は数え切れないぐらいです。まぁ、作られたところで、上記のような倫理的問題から、実現するのは難しいんでしょうけれども、人が倫理的により高い次元へ進化するためにも、こういう技術をめぐっての良い論争が必要なんでしょうね、いつの時代も。
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じし' )ノ
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