白血球の型が完全には一致しない家族から生体腎移植を受ける患者に、臓器提供者の骨髄も一緒に移植して拒絶反応を抑えることに、米マサチューセッツ総合病院などのチームが成功した。
患者が副作用のある免疫抑制剤から解放される画期的な成果で、24日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに論文が掲載された。
拒絶反応は、患者の免疫が移植された臓器を異物と判断して攻撃する現象。同総合病院のD・サックス医師らの研究チームは、まず患者の免疫の一部を薬剤で抑え、腎臓移植の際、提供者から採取した骨髄も患者に注入した。患者5人のうち4人で治療が成功し、9〜14か月後に、飲み続けなければならない免疫抑制剤が不要になった。腎臓は移植から2〜5年たった今も正常に機能している。
骨髄は、免疫の主役となる白血球などを作り出す造血幹細胞が多く含まれる。移植後しばらく患者と臓器提供者の造血幹細胞が共存することで、移植臓器に対する攻撃の抑制につながるらしい。
研究チームの河合達郎医師は「今年から、白血球の型が合わない移植を対象に、多施設で試験をする計画」と話している。
造血幹細胞移植が専門の加藤俊一・東海大医学部教授の話「腎臓の生着を助けるため、骨髄をボディーガードに連れて行く手法だ。骨髄が拒絶反応を弱めたと考えられる。免疫抑制剤がいらなくなることのメリットは大きい」
腎臓移植は腎機能を正常化する画期的な手法ですが、その臓器は他人のものなので、異物と認識して拒絶反応が起こる点が大きなデメリットでした。
骨髄移植をすることで、免疫システムも臓器の持ち主のものとした手法です。これによって白血球も臓器を異物を認識しなくなるため、拒絶反応は起こりません。一生のみ続けなければならない免疫抑制剤を飲まずに済むという、何とも大きなメリットです。免疫抑制剤には、サイトメガロウイルスなど、普通の免疫能力を持っている人ならばかからないような感染症にかかりやすくなるという欠点がありましたが、これも同時に防げるわけです。
しかし通常の移植よりも、骨髄を移植しなければならないという点でリスクがあるような気もしますが、実際にかなりの割合で成功しているみたいですし、今後の治療にはこの選択肢も増えるようになるかもしれません。
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