東京都臨床医学総合研究所などの研究チームは、早期発見すれば治療可能な遺伝病を、簡便に診断できる技術を開発した。血液一滴で解析できる。
「ファブリー病」と呼ぶ遺伝病患者で有効性を確かめた。他の遺伝病の判定にも応用できる。新生児段階の検査として普及できれば、遺伝病の超早期発見によって病気の進行をくい止め、通常の生活を送れるようにすることも可能になりそうだ。
新診断技術は、患者の血液一滴を染み込ませたろ紙と、DNA(デオキシリボ核酸)の断片をくっつけた抗体を使う。病気の指標となる原因酵素に抗体が結合した後、DNAを増幅させて検出する仕組み。3種類の酵素を同時に測定可能。診断結果は数時間で出る。
Fabry病は、細胞内のリソソーム酵素の一つであるαガラクトシダーゼの活性が欠損もしくは低下して生じる糖脂質代謝異常症です。リソソームというのは、要するに消化工場のようなもので、この工場が生まれつき運営を停止している状態のため、セラミドトリヘキソシドという糖脂質が分解されずに、血管、皮膚、角膜、神経、腎、心臓に蓄積されてしまいます。
遺伝病はこのように、生まれつき何かがなかったりします。例えば生物が生きていくためには糖を分解していって、ATP(エネルギーの塊のようなもの)を作り出さなければいけませんが、その代謝経路の中の酵素が1つ異常を来たしているために溜まるはずのない物質がたまってしまったりします(糖原病)。これは大抵が、常染色体劣性遺伝です。
その他、例えばアミノ酸の分解経路で酵素の異常があったりした場合にも勿論病気になります。数多くの酵素が存在していますが、1つ1つに意味があり、欠損すると病気になることが多い、というわけです。こういった先天的な代謝異常の疾患は遺伝することが多いので注意が必要です。
一応、日本では新生児マススクリーニングとして、先天性代謝異常を検査しています。「ガラクトース血症、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎皮質過形成」が対応疾患です。これら以外の遺伝する疾患でも対応可能であれば、かなり多くの疾患を早期発見することが可能になると思われます。
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