京都大学の杉山弘教授らは、体の様々な臓器・組織に育つ新型万能細胞(iPS細胞)を安全につくる基本技術を開発した。がんの遺伝子やウイルスを使う代わりに化学物質でiPS細胞を作れるようになる。再生医療への応用には安全性の確保や量産が欠かせない。この技術は課題克服につながると予測している。
杉山教授らが新たに合成した化学物質は「ポリアミド」の1種。iPS細胞研究の日本拠点に決まった京大の「物質─細胞統合システム拠点(中辻憲夫拠点長)」と共同で、効能の検証に入った。
新物質はiPS細胞のように臓器・組織の素となる細胞のDNA(デオキシリボ核酸)に結び付き、成長をつかさどる遺伝子の機能を調節する。大人の細胞を生まれたての新型万能細胞に後戻りさせたり、万能細胞を神経細胞などに効率良く生まれ変わらせたりするとみている。
月内にまず万能細胞の代表格であるネズミの胚性幹細胞(ES細胞)で効果を試す。iPS細胞でも検証する。万能細胞は特定の遺伝子が細胞を生まれたての状態に保つ。この種の遺伝子の働きに手を加えれば、古い細胞でもiPS細胞に戻ることを山中伸弥京大教授らが示した。
だが現在の方法は、がんの懸念が残る遺伝子などを使ううえ、作製に手間がかかる。医療応用する際に課題が残る。このため細胞の成長を操れる安価な化学物質や安全な細胞作製法を開発できるかどうかが、次の焦点となっている。
凄い勢いで進歩しています。2008年もそのスピードは健在だそうです。
がん遺伝子、ウイルスを使わないということで、医学的、倫理的に用いやすくなりました。来年あたりには臨床応用できるのではないでしょうか。画期的な技術なだけに、1歩1歩確実な進歩に、期待したいところです。
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